魔法少女まどか☆マギカ こんなエンディングだったらいいな 前編(非エロ)
番外編


深夜の駅。
人っ子一人見られなくなったホームのベンチには、腰を掛ける2つの人影。
青い髪のショートヘアの少女が、手のひらに乗っていた宝石を
もう一人の少女に見せた。

「・・・!?」

それは真っ黒だった。
目を見開き息を飲む、長く赤みがかった髪を後ろでまとめた少女。

「あたしって・・・ほんと、バカ」

悲しみの雫が溢れ、流れ落ちる。
その涙滴が手の平の上の宝石・グリーフシードへと落ちたとき
濁った青の部分はガラスのように砕けて剥がれ落ち、魔の瞳を開いて黒い嵐を吐き出した。

周囲の景色は一変した。
チェス盤のような、白と黒の格子模様で構成された床。
バイオリンとディストーションギターの、おどろおどろしい弦楽器の音色と共にサイケデリックな世界が広がり
赤いポニーテールの少女を包み込む。

「さやかぁ〜〜っ!」

五線譜が流れ、車輪が飛び来る中
赤い魔法少女へと姿を変えた杏子は、海の底へと沈み行くようにゆっくりと落下する
ぐったりとした青髪の少女の身体を抱き留める。

『うわあああああぁぁぁぁぉぉおあぁっっ!!!  ぐぁぁぁあああああっっ・・・』

すると、断末魔に似た叫びが巻き起こった。
その魂の叫び声の主、西洋の甲冑を着込んだ巨大な何かに向かって
杏子も負けじと叫び返す。

「なんなんだよっ、てめぇ一体なんなんだ。 さやかに何をしやがった!?」

なおも襲い来る車輪の群れ。
その1つが、目の前に迫った瞬間。

ズトンッ!

突然爆発を引き起こし、車輪は木っ端微塵に爆ぜ割れる。

「―――さがって」

そんな声が聞こえた。
動かないさやかを抱えた杏子の元に。
けっして大きくはない、けれどはっきりとした良く通る声が。
続いて、甲冑に鎧われた何かの目の前に
突如として手投げ弾が姿を現し、爆発する。
爆煙が流れ、その中から姿を現したのは
長い黒髪の少女だった。
座り込む杏子。
その黒髪の魔法少女はこちらを振り返りもせず、手だけを差し伸べて。
ただ一言

「掴まって」

と言った。

蒸気機関車の汽笛が聞こえる。
疑問をぶつけようとするも、急かされ
仕方なしに杏子は右手で、差し出された彼女の手を掴んだ。
瞬間。
世界は全ての音を止めた。
いや、音だけではない。
ハート型の鉄兜を被ったような巨大な魔女も、周囲をひた走るSLも
狂った弦楽曲を演奏する使い魔たちも。
動くもの全てが静止していた。

グラグラグラ・・

「っわ、わわわっっ!?」

巨大な鉄兜を被った魔女から、焦った女の子の声がした。
全てが止まったはずの世界の中。
時を止めた本人、黒髪の少女・暁美ほむらは訝しげに首を傾げる。

「・・なんだ?」

ほむらの手を握り、さやかを抱えた杏子も眉を顰める。
途端。

メキメキメキメキ〜〜ッ、ベキッ・・・どしゃああぁんっ

いきなり魔女の首がもげた。

否、それは魔女ではなかった。
西洋甲冑っぽい上半身は鉄でできてはおらず、銀のラッカーを吹きかけただけの
ただの張りぼて。

「うわっ、スイッチが止まらない!?」

少年の声がした。
首を失った魔女が、時間静止しているにもかかわらず
突如としてカックンカックンと動き出す。
その動きは機械機械したもので、操り人形のようにぎこちなく
剣を持った腕を頭上で、一定の間隔で振り続ける。

「・・・うわ、おいっ、何やってんだよ、てめぇら!」

杏子が立ち上がり、ベニヤ板や支えの角材剥き出しの魔女だったものに怒鳴り
その拍子にうち捨てられた制服姿のさやかが、背中を地面に撲ちつけ

「ぁイタっ!」

と声を漏らした。

「ごご、ごめんなさいぃっ」
「ごめんね、みんな。 首取れちゃった」

すると、敵のMPを吸い取ろうと不思議な踊り繰り返す魔女の裏側から
鹿目まどかと巴マミが顔を覗かせた。

「ちょっと、だれか。 ブレーカー落として!
魔女の動きが止まらないよ」

暴走しておかしな動きを延々と続ける魔女の影から飛び出してきたのは
右手に金槌、左手に電動ドライバーを握りしめた上條恭介。

「おお〜い、セットが倒れるぞ〜」

それはまるで、8時だよ全員集合だった。
誰かの危険を知らせる声がしたかと思うと、背景の音楽ホールの書き割りが
ドリフのオチよろしくバッタバッタと倒れ始める。

「―――カットよ、カメラ止めて」

丸いシールドを左腕に取り付けた黒い魔法少女の冷静な声がして、画像は暗転した。

―――――――――
―――――――
―――――

「ええと、これは何・・?」

巴マミの自宅のリビング。
ワイド型のテレビを前にして、鹿目まどかは額に汗と顔には苦笑いを浮かべ
編集機械を操作する暁美ほむらに問いかけた。

「魔法少女 まどか☆マギカのNG集よ。 これは売れるわ」
「そんな恥ずかしいもの売らないでよ」

ボタンやレバーをカチャカチャ操作するほむらに、まどかがツッコミを入れる。
寡黙な黒髪の少女がさらに機械を操作すると、今度は別の映像が映し出された。

―――――
―――――――
―――――――――

それは、どこかの更衣室だった。

『――――鹿目さん、着替えは終わった? もうすぐ出番なんだけど』
「は〜い、急いで着替えまーす!」

画面の外。
更衣室の扉の外から掛けられたものだろうか。
少しくぐもった巴マミの声が、絶賛着替え中の鹿目まどかを呼んだ。
返事をしたまどか本人はというと、可愛いフリルのあしらわれたピンク色の下着姿。
履いていたスカートのホックを外し、ストンと床に落としたところだった。

中学二年生。
画面に映っていたのは、第二次成長期を迎えた
幼児体型から成熟した大人の女へと変わり行く少女の
まどかの瑞々しい、胸やお尻が自己主張を始めた肢体。
カメラは固定されているためか、アングルが変わることはなかったが
やや下から見上げたような構図で、ブラとパンツのみになったまどかを撮り続ける。

―――――――――
―――――――
―――――

「えぇとっ・・・こ、これは何・・!?」

巴マミの自宅のリビング。
ワイド型のテレビを前にして、鹿目まどかは額に汗と顔には引きつった笑いを浮かべ
編集機械を操作する暁美ほむらに問いかけた。

「魔法少女 まどか☆マギカのメイキングビデオ(盗撮)よ。 これは売れるわ!!」
「そんな恥ずかしいもの売らないでよっ!  酷いよ、あんまりだよ!!」

拳を握りしめて力説するほむらに、まどかが顔を真っ赤にしながら激しく抗議した。

「可愛いまどかの あ〜んな姿やこ〜んな姿を何度も見放題ということだぁ〜っ!
これはもう買うっきゃない!」

背後から聞こえたのは、美樹さやかの声だった。

「もう、さやかちゃんてば・・・・人ごとだと思って」

頬を膨らませ、ぶうたれる。

「でもこの時のNGが一番酷かったのよねぇ」

トレイの上にアイスティー。
お茶受けの菓子などを乗せた巴マミが、苦笑いを浮かべながら話に加わる。
5つのティーカップを透明な三角形のテーブルに乗せ終えると
頬に手を当て、しみじみと語り出す。

「人魚の魔女だけ機械仕掛けにしたのがいけなかったのかしら」
「でもさ、全部CGで合成ってのはいただけないだろ?」

テーブルに置かれた茶菓子のクッキーをつまみ上げ
佐倉杏子は八重歯が特徴的な口を大きく開けて、中へと放り込む。
もっきゅもっきゅと咀嚼し、ごくんと喉を上下に動かしてから

「大道具係りの仕事がマズかったんじゃね〜の?」
「む・・・ちょっと、それって恭介が悪いって言いたいわけ?」

しれっと、一言。
杏子が遠回しに上條恭介をけなしたことに気付いた彼の幼なじみは
お菓子をボリボリむさぼり食う少女に食ってかかる。






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