体を繋いでしまった二人の間の空気
千秋真一×野田恵


あの発作的なキスの日から数日─

のだめの心のなかで、どういう決着がついたのかは窺い知れないが
びっくりするほどあっさりと、のだめはいつもの調子に戻っていた。

千秋に対する態度もまるでいつも通りで、あの日のキスのことは激情に
流されて覚えていないのかもしれない、と千秋は考えていた。
そしてそれは正直ありがたかった。
あの時の自分の行動を千秋自身も理解できずにいたので、のだめに対して
どう接していいものかと思案に暮れていたからだ。

しかし、揺り返しは夕食後のコーヒーを飲んでいる時にやってきた。

「千秋先輩、もうキッスはしないんデスか?」

いきなり千秋の顔をのぞきこみながら、そう言い切ったのだめの顔に千秋は思いきり
コーヒーを吹きつけてしまった。

「なんだ!!いきなり」

千秋が怒鳴るのを慣れた様子でスルーしながら、のだめは唇をとがらせていた。

「あの時びっくりし過ぎてイロイロ忘れちゃいました。なんかムツゴロウを生で
かじった時みたいな感触はおぼえてるんデスけど〜」
「お前はムツゴロウを生で…」

言いかけて千秋は言葉を飲み込んだ。
のだめは頬を真っ赤にして、潤んだ目で千秋を見つめていた。

「寝るときにいつも思ってました。あれは夢なのかな〜って。またしてくれないかって
ずっと待ってたんデスけど、先輩いつも通りデス…。涼しい顔して…のだめばっかり
ドキドキデスよ…」
「そんなことはない」

千秋もまた、あの瞬間のことが頭から離れずにいた。
音楽の世界にダイブしてしまえば、完全にそちらに没頭できたが、食事や風呂、日常の
行動の合い間合い間にのだめが出てきては千秋をかき乱した。

千秋は手をのばし、そっとのだめの頬に触れた。
そのまま頬を撫で、親指をのだめの唇に割り込ませた。
薄く開いたのだめの口に、そのままくちづける。
びっくりするほどの勢いで、千秋の欲望に火がついた。ほんの数分前の平静さが
嘘のようだった。
いや、平静じゃなかった─
ずっと胸のなかがチリチリしていた。それを押し殺していた。
自分が「欲望を抑えていた」という事実に千秋は初めて気がついたのだ。

荒くなる息を抑えながら、千秋はのだめの舌を吸う。
のだめの唾液は、健やかな人間特有の甘い味がした。
唇を離し、頬にもくちづける、そして首筋に。

「あへー」
「ぎゃほぉわー」

「ヘンな声をだすな!!!!!」

いつものパターンで声を荒げてしまった千秋だったが、
のだめは体を震わせ、目に涙を浮かべていた。

千秋のなかにわずかばかりの嗜虐心が湧きあがった。
思えば、ここしばらくずっとのだめにかき乱されっぱなしだった。
今度は自分がのだめをかき乱してやる、快楽に翻弄させて我を忘れさせてやる。
長らくずっと忘れていた感情だった。

「来い」

千秋はのだめの腕をひいたまま寝室へ行き、無造作にのだめをベッドに放り投げた。

「ほぎゃ」

枕に顔を埋めて低く呟いたのだめが、振り返って見たものは
自分のシャツを脱ごうとボタンをはずしている千秋の姿だった。

「せ…先輩何しよっとデスか!」

うろたえてプランケットを頭からかぶるのだめに、千秋は薄く笑いながら言った。

「やめるか?」
「………」

のだめはしばらくうつむいていたが、やがてキッパリと「やります」と言い切った。
千秋は笑った。彩子とつきあって頃に比べるととことん色気のないやりとりだが
それは不思議と心地よかった。

のだめの服のジッパーをおろし、下着をはずし、慣れた手つきで千秋は
のだめを剥いていった。

色気皆無のようなのだめだが、裸は意外にもそそる色気があった。
肌は白くしっとりとして、胸も千秋の手にあまるほど大きく、くびれと肉感が
いいバランスでついていた。
彩子は舞台栄えを気にして少々痩せすぎだったが、のだめの体は全身を撫でまわしたく
なるような柔らかさがあった。

恥ずかしさに身をよじるのだめを押さえつけながら、ショーツをおろし千秋はギョッとした。
のだめの恥丘には産毛がわずかばかり生えているだけだった。
普通なら隠されているはずの割れ目も、すべて千秋の視線に晒されている。

「子供…みたいだな」

言葉を選んで千秋は言った。のだめは息を荒げながらも言葉を返した。

「そう…なんデスよ。のだめ毛ー薄いんデス…。腋毛もまだ生えてなくって…はうん」

千秋は心のなかでうなだれた。
このズボラな女が、しょっちゅうノースリーブのワンピースを着てるのは、腋毛の処理を
しなくても済むからか…。

「やっぱりベイベちゃんみたいデスかね?先輩やっぱり大人が好きデスか?」

のだめの言葉は千秋の色々な感情をひきだす。
笑ってしまうような、呆れるような、けれど甘くひたひたと胸を温めるような。
これを好きというのだろうか?
千秋は再びのだめにくちづけると、言った。

「俺がいまから大人にしてやるから」

千秋は左腕でのだめの頭を抱え、右手で彼女の胸、腰まわりを撫でまわした。
昂ぶらせるというより、落ち着かせるための愛撫だったが、それでもじゅうぶんに
のだめは蕩けていたようだった。

彼女の頬やまぶたに絶えずくちづけながら、千秋はゆっくりと股間に手をのばした。
恥毛のほとんどないそこの手触りは千秋にとっても初めてで、わずかばかりの
とまどいがあったが、慎重に指をなぞらせた。

「はっ…はっ…はっ」

のだめは、もういつもの奇声をあげることもせず、千秋のなすがままになっている。
音楽の時と同様、のだめは千秋の技巧に酔っていた。
千秋は二本の指で、のだめの淫核をまわりの肉ではさむように扱いた。
時にゆっくりと、時にリズミカルに。

「先輩…のだめヘンになりそうデス…っ」

のだめは身をよじった。自分でももどかしくて、どうしていいかわからない様子だった。

「のだめ、つま先を突っ張れ」

千秋が息を吹き込むように囁く。
素直にのだめはつま先をピンと伸ばした。

「あっ…あっあっあっ…ダメ…ダメデス」

千秋の腕に爪を食い込ませながら、のだめは全身を強張らせた。

「いけ」

千秋の師のような力強いひと言に、のぼりつめた。

「あああああああ…っっ」

それはのだめにとって、初めての絶頂のようだった。

目を閉じ、涙を浮かべながらぐったりしているのだめの姿は、千秋の望むもの
であったが、それを楽しんでいる暇はなかった。

彼女がぐったりしている間に、破瓜という難関を突破しなくてはいけない。
千秋は体を起こし、のだめの足を抱えあげた。
したたる彼女の露を、、自分の張りつめたものに塗りつけながらグッと腰をいれた。
亀頭の半分がぬるっとはいったが、その先に押し返されるような圧迫感がある。

「んあっ」

弛緩していたのだめの体が、その衝撃でまた強張った。

「力を抜いて」

いつもと違う柔らかい言い回しを千秋はしたが、のだめの体の強張りは解けない。

「ぬ…ぬけません〜…。勝手に力がはいっちゃいますっ…」
「息を吐いて…テンポはadagioで」

その言葉に促され、のだめは息を吐いた。
体がほんのわずかに弛んだ、その一瞬の隙に千秋は渾身の力を込めて、のだめの
閉じた部分をこじあけるように貫いた。

「あああああっっ」

のだめはのけぞり、そして脂汗をどっと額に浮かせた。全身が震えている。
彼女の痛みととまどいを考えると、千秋も胸が痛んだ。
しかし、こういうのは、かさぶたをはがすのと同じで一気にやってしまわなくてはいけない。
千秋はのだめの頭を抱え、自分の「異物」がのだめのなかでなじむのを待った。

体を密着させながら、二人はしばらく互いの心音を聞き合っていた。
のだめの汗ばんだ体から、石鹸と(さすがに風呂にはいっていたらしい)人肌の
温められた匂いがしている。
こっちに来てから、人のいる場所では常にパフュームの匂いを感じていた千秋は
この自然な匂いをとても好ましく思った。

「のだめ」

囁きながら千秋はゆっくりと動き出した。

「ほあっ」

のだめがのけぞる。

なるべく摩擦を感じさせないように、腰を密着させてこねるように動いた。
のだめのなかは熱く狭く、激しく動けば千秋のほうが撃沈しそうでもあったからだ。
千秋も息が荒くなる、額に汗が滲んでくる。
ふと千秋が閉じていた目をあけるとそんな千秋の顔をいつの間にか、のだめが見つめていた。

「…なんだ?」
「先輩の顔、エロチックデスよ。初めて見ました…」
「軽口たたけるようになったじゃないか」

少し意地悪い気持ちで、千秋はのだめを突きあげた。

「はあっ、あっ、あんっ」

抽送を繰り返すたびに、のだめがもらす声にかすかに甘い響きが混ざってきた。
まさか感じているわけはないと思いつつ、千秋は「気持ちいいのか?」と聞いた。

「わ、わかりません…。ただ嬉しいんデス。だから…気持ちはいいのかもデス」

性感ではなく、千秋に抱かれてる喜びを全身でのだめは感じているらしかった。
最初は痛みと緊張で、それを感じている余裕もなかったのだろう。
千秋はホッとした。そして同時に絶頂が近づいてきた。

「のだめ…っ、出すぞっ」

千秋はうめいた。

「出すって何をデスか!?」

のだめの叫びに千秋は危うく、射精のタイミングをはずすところだったが
それでもなんとか、のだめの膣からペニスを引き抜き、外に射精することができた。

(まさかこんなことになるとは思ってなかったので、当然避妊具などは用意してなかった)

熱いほとばしりがのだめの腹から乳房にふりかかる。
白い凝りのなかに、うっすらと赤い糸のような血が混じっていた。
千秋はしばらく荒い息をついていたが、やがて呼吸が整うと、のだめの頭をピシャリと
ひっぱたいた。

「はぎゃ!」
「こんな時までボケてるんじゃない!」

本当にどこまでも、のだめはのだめであると千秋は思い知った。
しかし、それでいいと思う。
それでこそののだめであり、のだめのピアノであるのだ。

そして千秋はそういうのだめのピアノを愛している。

しかしそんなことは口に出さず、千秋はのだめを引き寄せながらベッドに埋まった。

「もうどっと疲れた…寝る」

体を繋いでしまった二人の間の空気が、これからどう変わるのか。
のだめの音楽になにか変化が現れるのか。

まったく変わらないような気もうすうすしながら、千秋は眠りにおちようとしていた。






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