千秋真一×野田恵
![]() 千秋は呆れたように溜息をついた。 「なんでお前がここんとこ毎日うちの風呂に入りに来たかわかったよ…」 のだめは、あはは、と笑う。 「そんな簡単に止められるかよ……。 明日管理人さんに言えよ。壊れてんだろ、ガス」 のだめは素直に頷くと、気の抜けたような笑顔を返すが。よく見ると、どこかぎこちない。 まるでなんとか笑い顔を作ろうと装っているかのような。 …さっきまでの威勢はどこいったんだ……。 しかし千秋は、とりあえずのだめが笑顔で答えてくれることに内心救われてもいた。 もし今、この雰囲気が壊れたら。千秋はぶり返す欲望を今この場でぶつけてしまうだろうから。 何せつい今し方、茶化し合いで流れたとはいえ『これからヤるぞ』と言ってしまったようなものなのだ。 「じゃあ着替え取ってこいよ。風呂沸かしておくから」 千秋はなんとか平静を装いつつ、立ち上がりながらのだめに言った。 「うー…そうしマス……」 のだめは、未だほんのりと赤みを帯びている頬に手を宛てながら、千秋を見上げた。 そんなのだめを見て、思わず千秋も頬を染めかけるが、そんな想いを無理矢理押し込める。 「遅かったら閉め出すからな」 するとのだめは、少し緊張が解けたようにいつもの笑顔を見せた。 「んもー!ラピュタじゃないんデスから40秒なんて無理デスよ〜?」 「はいはい」 手を引いてのだめを立たせてやりながら、千秋も笑う。 その瞬間、二人の視線が交錯した。 のだめは、しっかりと見つめ。 千秋は、思わず目を逸らした。…しかし、つい口にしてしまった。 「……あの下着、持ってくるのか?」 その言葉が、二人の空気を唐突に現実に引き戻す。 千秋の手を握るのだめの手に、僅かに力が込められる。 …言ってしまった。 千秋はその声に、そうと意識しないままどこか容赦のない含みを持たせてしまったのに気づいた。 言うべきではなかったのかもしれない。 けれど、言わずにはいられなかったのだ。 のだめの身体は強張るが……静かに首を横に振った。 「…………。」 それは、単に恥らってのことか、それとも拒絶の意味なのか。 俯いたのだめの表情からはそれが読み取れず、千秋は己に対して苦々しささえ感じていた。 ……本当に、何を焦ってるんだ。オレは、そんなに、のだめが欲しいのか……。 それは、愛しい者を想う男のサガ。 自分が妙に小さく思えて、千秋は自らの発言を悔いた。 「いいから、ほら、行けよ」 諦めの入った声色になってしまうのは不可抗力。 千秋はのだめの肩を軽く抱くようにしてドアまで連れて行ってやった。 ……のだめがこのドアから出たら最後、今晩は千秋の元に戻らないことも覚悟して。 ドアノブに手を掛けるのだめ。しかし、一呼吸置いて振り返った。 「チガウんです、先輩」 のだめは顔を上げた。その瞳は、心なしかまた潤んでいて。 「着てるんです」 「は?」 千秋は、のだめに見入る。 のだめは、小さく繰り返した。 「…着てるんです、今。あの勝負下着……」 のだめはそれだけ言うと、また目を逸らしてしまった。 頬が、赤い。唇は、とがっている。 「な……なんで?」 千秋の頭の中では今、マングースが縦横無尽に駆け回っていた。 想像はつく。けれど、訊かずにはいられなかった。 のだめは言いよどむように視線をさ迷わせたが、唇を引き結び、千秋を見上げる。 「いつものだめが茶化して逃げちゃってたから…!悪いなって思ってたんデス…。 だから、今日こそはって思って、のだめ……」 のだめは最後まで言うことができなかった。 千秋に唇をふさがれたから。 荒々しさを抑えることができない千秋。 のだめの首筋を押さえ、深く、長く、キスを繰り返す。 ノブにかけたのだめの手を、掌で包み込みながら。 「ふわぁっ……!」 のだめはその激しさに顔をしかめ、無意識の内に逃げようとのけぞってしまう。 しかし。 ドンッ 後ろはドア。のだめはドアに押し付けられる格好になってしまった。 千秋の左手は、のだめの二の腕に。 右手は、相変わらず首筋に。 のだめの唇をむさぼりながら、まるで逃げ場がないことを知らしめるかのように、追い詰めるように、 千秋はのだめのその華奢な身体をドアに押し付けた。 口内に受ける感触と身体を抑えつける千秋の力で、頭がいっぱいになるのだめ。 手足は痺れ、快感を逃がすこともできないまま、徹底的に口内を犯されていた。 千秋の温かく柔らかい、それでいて激しく口内を舐め取られる感触に のだめは、ドアノブを強く握り締めることでかろうじて耐える。 背中いっぱいに広がるドアの固い感触が、のだめの感覚をきりきりと絞ってゆく。 二人の唇の僅かな隙間から漏れ落ちる唾液。 「…んっ…………」 やっと解放されたのだめの柔らかな唇は、千秋の唾液でつややかに彩られている。 千秋は熱い吐息をゆっくりと吐き出しながら、じっと熱い眼差しでのだめを見つめた。 「…もうっ……!あんなコト言うの、恥ずかしかったんデスよ……!!」 のだめは拗ねたような表情で、千秋の視線から逃げるように顔を背けた。 千秋は、可笑しそうに、しかし優しく微笑む。 …これがあのいつもののだめか……? ただもう、愛しくて。千秋は全力で変態の森を駆け回る心境だった。 「もう、……。のだめ、着替え取って…」 再び背を向けようとするのだめを千秋は制し、軽々と抱きかかえた。 「むきゃ!」 「風呂はあとでいい」 千秋はのだめを横抱きにしたまま、大股で部屋の奥に戻る。 「着てるとこ見ないとな、……勝負下着。」 のだめは千秋の腕の中で、思わず俯いてしまった。 耳までが朱に染まるそののだめの様子から、照れた表情は容易に想像がついてしまう。 「Dカップも、まだ見せてもらってないしな」 「……先輩の、バカ」 千秋は、はやる気持ちを抑え、のだめをそっとベッドに横たえた。 「やんっ」 ふかふかのベッドは、いくら静かに下ろされても気持ち良く弾んでしまう。 「なにがやんっだ」 千秋は、自身もベッドに膝をつきながら笑った。とても優しく。 なぜなら、のだめのそのセリフに日本でのことを思い出したからだ。 連弾の譜読みが全くできないのだめにレッスンをつけようと、部屋を訪ねた時のことを。 「のだめ」 千秋の脳裏に、『恋のレッスンABCはまた今度!』のだめの声が蘇る。 「…恋のレッスンC、だからな」 千秋はわざと冷静さを装って言った。 …口元は、笑いをこらえるので精一杯だったけれど。 のだめも、赤い顔で吹き出した。 初めて経験する大きな壁を前にしているのに。これからそれを二人で越えようとしているのに。 緊張のほぐれた、ほんの一瞬だった。 思い返してみれば、色々あったが平和な音大時代だった。 いつもあんなに、一緒に居たのに。 考えてみれば、今までこうならなかった事の方が不思議なくらいなのだ。 のだめは、千秋が自らのシャツのボタンを一つ二つと緩めるその動作をじっと見つめた。 対して千秋の視線は、手は動かしながらも、一心にのだめに向けられている。 上気した頬と胸の高鳴りはとうてい隠せない。 「…先輩、イジワル、デスよ。のだめにあんなこと言わせて……」 「…自分で言ったんだろ」 千秋は靴を脱がせてやりながら、のだめに覆い被さる。 のだめの言う「あんなこと」が、勝負下着の事なのか恋のレッスンの事なのか、それはわからない。 けれど、今となってはどちらでも構わないことだった。 千秋はゆっくりとのだめに覆いかぶさった。 「ぎゃぼっ!」 場違いのようないつもの叫び声を上げるのだめ。 「先輩、い、痛いです、…ベルト……」 千秋の真鍮製のバックルが、のだめの身体に食い込んでいた。 「あ、悪い……」 千秋は一度身体を起こすと、ベルトを緩めて、抜く。 どんなに疲れてベッドに倒れ込む時も、ベルトは必ず緩めるのに。 …オレ、舞い上がってるのか……? 苦笑しつつ、再びのだめに覆いかぶさる千秋。 「先輩、可愛いデス」 のだめは千秋の目を見つめてふうわりと微笑んだ。 …舞い上がるのも当然、か。 千秋は再びのだめを組み敷き、負担をかけないようバランスを取りながらも、のだめにのしかかる。 一方のだめは。 千秋の身体が熱い、そう思った。 そのあまりに密な感触に、のだめはそっと目を細める。 千秋の左手はのだめの小さな頭に宛がわれ。 右手は、のだめの頬を優しく撫で…… キス。 そっと唇を離して、また、 キス。 キス。 キス。 キス。 「…んっ……」 眉を寄せて身をよじるのだめ。 しかし、千秋の身体に阻まれてその身は決して自由にはならなかった。 もう、後戻りは、できない。 優しく、小鳥がついばむようなキスを幾度も。 その度にのだめは、声にならない声を漏らす。 …譜面通りに弾かないめちゃくちゃなピアノ。 それなのに、その余りある才能には幾度も感嘆させられた。 豊かな内面がその指に込められていて、幾度も心を奪われた。 そののだめが今、溢れる情感を隠すことなく自分にさらけ出している。 その、感動にも似た激情に千秋の胸は更に昂ぶっていく。 やがて、触れるだけのキスでは物足らなくなる。 一度は静まった欲望が、更なる熱を伴ってもたげてくる。 引き結ばれたのだめの唇に割って入るように、千秋の舌が差し入れられた。 「んぅっ!…ん、ぁ、んん……」 反射的に逃げようとするのだめの顔をしっかりと押さえつけ、 のしかかった身体は、のだめの弱々しい抵抗を自然と阻む。 今までに何度も抱きしめた。 ほんの少し、強引にしたことも。 しかし、こんなに一方的にのだめの身体を自由にするのは初めてだった。 千秋は、倒錯した思いで自身の唇を押し付け、のだめの口内を余すことなく犯していった。 「…ん、ん、…っあ、」 のだめの声に熱がこもる。 「…ぁ、は、……のだめ、眉間に皺、寄ってるぞ」 千秋は、少し唇を離すと、乱れた息で微笑みながら言った。 のだめはそっと目を開けて、千秋の顔があまりに近くにあることに今更ながら面くらいつつも、 弱々しく、抗議するような声を出した。 「……先輩のせいデスよ」 「オレのせいか」 言いながら千秋の右手は、のだめの肩口、二の腕を伝って下に下りてゆく。 その感触に、のだめの身体はついびくりと反応してしまうが。 「…そうデスよ…。いつも先輩は、いきなりなんだから……」 千秋は、こんな場面でものだめがのだめらしく憎まれ口を叩くことに、安堵さえしていた。 会話の合間に、繰り返されるキス。 次第に下りてゆく右手は、ゆっくりと。 薄手のニットのワンピースを通して、肉薄ながらも柔らかく弾力のある肌を丁寧に撫でてやりながら。 「いきなりはお前だろ。…このDカップめ」 千秋はのだめのふくよかな胸に触れた。 「…ッ!!」 …やっぱり、大きい。それに… 「…柔らかいな……」 「…ん、っや……」 のだめは、背をしならせ、首をのけぞらせた。 千秋がいっぱいに掌を広げても、余りあるそのふくらみ。 千秋は、両の手でのだめの胸の感触を味わっていた。 重そうに下から掬い上げ、そっと、しかし抵抗をしっかりと感じながら優しく揉み上げる。 むにゅむにゅという擬音が聞こえてきそうなほど、たわわに実ったバスト。 「…んぅ……」 その胸は千秋の掌によって自在に形が変えられて。 のだめは表情を隠すように両腕を顔の上に置き、そのしなやかな身体をくゆらせる。 千秋は胸の感触を愉しみつつ、左手をのだめの背中と布団の間に差し入れた。 「ひゃあっ」 油断していたのだめは、背中への突然の千秋の手の感触に反射的に身体を反らした。 「…おい、これ、どうやって脱ぐんだ……」 予想していた背中のファスナーが手探りで見当たらないため、千秋は問い掛けた。 勿論、胸への愛撫はそのままに。 身体の表と裏からの千秋の手の感触に囚われたのだめは、 短く浅い吐息を繰り返しながら、首を振るばかり。 答えを返せないのだめに千秋は諦めて、 のだめの白い腿までたくし上がっているそのニットワンピースの裾に右手を差し入れた。 「ひゃっ!!」 腿に千秋の手の冷たく硬い感触が掠めて、のだめは身を縮こませてしまう。 「…まだ、何もしてないって」 思わず面映い気持ちで苦笑する千秋。 そう、まだ、何も。全ては、これから。 千秋はワンピース越しにDカップの感触を愉しみ、そして今、やっとのだめの素肌に触れたことで、 言いようもなく煽られていた。 のだめの肌は、滑らかで、柔らかい。 日本に居た頃は「お色気」とかいって胸元やら背中やらが無防備に開いた服をよく着ていたのに。 あの頃それを目にしても動じなかった自分が逆に不自然にさえ感じるほど、 今、千秋は、のだめの素肌に昂ぶっていた。 千秋の右手は、のだめのワンピースの中にどんどん侵入していく。 のだめはぎゅっと目を瞑り時折びくりと身体を震わせながら、 甘んじて千秋の手を受け入れていた。 「…ん!」 ワンピースの中の千秋の手が、のだめの胸に到達した。 千秋の右手は、もはや胸までたくし上げられたワンピースの中。 当然、ショーツもくびれも、光の元にさらけ出されていて。 しかし千秋は、今にも触れようとしている豊かな胸のことで頭がいっぱいだった。 ニットワンピースの中でうごめく、千秋の手。 千秋は、ブラごとのだめの胸に触れた。 「ん、」 のだめはぴくりと反応する。 千秋はせき立てられるように一度その胸を鷲掴むと、急き立てられてホックさえ外さないまま、 男性的な無骨な手をブラの中に無理やり滑り込ませた。 「〜〜〜〜〜〜!!」 のだめは声も出せずに、千秋の掌に飲み込まれ、ベッドに沈み込んでしまう。 その反動で、のだめの茶色がかった猫っ毛がふわりと宙を舞う。 素肌に直接触れられる千秋のその掌の感触は、恐ろしいほどリアルで。 そんなのだめの扇情的な表情に、千秋もまた息を荒くした。 「…ふひゃあぁぁぁ……!!」 のだめは一層頬を染め、これ以上ないくらいに身体をよじる。 しかし、当然ながら、千秋の手が休まることはない。 「やあ、あ、せ、せん…あ、あんっ!先輩!!」 理性が飛んだかのように激しく、しかし、優しく揉みしだく千秋。 千秋の掌は、今まさにのだめの胸のふくらみに直に触れていて。 たぷんたぷんと跳ね返る、肌の感触。しっとりと、掌に吸い付いてきて。 「あ…………」 その声は、もうどちらのものかわからなかった。 …すごい………… のだめの胸を直接触るその感触は、形容しがたいほど淫猥だった。 むにゅん、むにゅん、と。揉みしだく度に掌から零れ落ちる柔らかさ。 軽く口を開けたまま、切ない表情で悶えるのだめ。 滑らかな肌は、千秋の掌を滑らせる。 大きなふくらみは、やわやわと千秋の掌の中で揺れる。 そのボリュームは見事なもので。 千秋は掌をいっぱいに広げて、優しく掴む。離す。掴む。離す。掴む。 まるで円を描くかのように揉み、掌の内で遊ばせる。 その中心の突起は、もう充分に硬くなっていて。 掌が擦れるたびに、のだめの唇からは、一層高い、悲鳴にも似たか細い喘ぎが断続的に漏れる。 千秋は熱い吐息を漏らしながら、長く硬いピアニストの指先でその突起を摘み上げた。 「きゃあんっっ!!」 のだめはたまらず、ふるっ…っと身体を奮わせて啼いた。 初めて受ける、異性からの…好きな人からの愛撫。 のだめはうなされるように、ただただ、首を横に振ることしかできない。 その感触は、脚のつかない深い海で溺れる、何かにすがろうと必死にもがく様に似ていて。 救いようもないほど、千秋の指先に翻弄されていた。 千秋はそんなのだめの表情を、食い入るように見つめている。 桃色の突起をそっと摘み、こりこりと転がす。 「や、や、やデス、ぁあんっ!や!…あっ!」 千秋の指先は、のだめの嬌声にはおかまいなしに、 まるで小動物が這い回るかのように激しく突起を責め立てる。 だんだんと遠慮なく力を込めていき、強く押し込み、 転がすように撫で回すように、ぐりぐりと押し付ける。 「や!ひゃ、あ!せ、せんぱ…い……ゃっん!」 そののだめの高い声。 表情。 自らの指先が触れる、柔らかくもしっかりと堅い感触。 千秋は衝動的にワンピースを全て押し上げ、のだめの頭から抜いた。 「…むきゃ!」 あられもない、乱れた下着姿。 繊細なレースに彩られたブラは完全に喉元まで押し上げられて、 もはや下着の役目を果たすことが不可能になっている。 むしろ、ふくよかな胸をよりいやらしく見せるための小道具のようで。 千秋は初めて目にするのだめの裸に、息を飲んだ。 「きれいだ、……恵…」 呆然と。 思わず口にした名前が本名だったことにすら気づかないまま。 肌はきめ細かくどこまでも白く透き通っていて。 華奢な肩や細い腰には不釣合いなほどわたたな胸は、 普段ののだめからは想像できないほどいやらしくて。 ピンク色に染まっている胸の突起は、ぷっくりと存在を主張している。 「…っゃ、ぁ……。恥ずかしいデス……」 一心に自分に注がれる千秋の視線に、のだめは目を伏せて恥らう。 消え入るようなその声。 思わず両の胸を隠そうとする腕。 その一つ一つが、初々しく、いじらしい。 千秋は目もくらむような思いで、衝動的にのだめの胸に唇を落とした。 「あ…、ふぎゃぁっ、んっ、ん〜〜〜、先輩、ダメ!」 ふいにのだめが、抗議の声を上げる 「……ヘンな声を出すな」 ダメと言われても止まりようもないが、千秋は顔を上げた。 「…電気、消してくだサイ」 「消したら見えないだろ」 すると、そっと千秋から視線を外すのだめ。 「…見られるの、恥ずかしいデスよ……」 そののだめの表情。 頬は上気し、唇を僅かにとがらせ、長く濃いまつげが影を落とす。 千秋はその憂いに満ちた表情に思わず息を飲むが。 「…見せるための勝負下着だろうが」 「や…恥ずかしい………けど……」 「けど?」 千秋は、のだめのふくらみに唇を落としながら言う。 「………ちょっとだけ、見て欲しいかも、デス」 照れたように微笑むのだめ。 そんな自分に戸惑うように、ちょっと困惑したような顔つきになってしまうのはしょうがないけれど。 千秋はふっと笑みを零すと、少し身体を伸ばして、唇にキスをした。 「……ん。」 そうしてまた、胸への愛撫を再開する。 もう、余裕なんてどこにもなかった。 たわわなふくらみを食み、熱い突起を嘗め回し、責め立てる。 どうしても荒くなってしまう掌で、存分に揉みほぐしながら。 そして食むだけでは我慢しきれずに、むしゃぶりつくように口に含み、転がす千秋。 「あ、や!…あ、あんっ!ま、待って、せ、…ん!先輩待って!!」 そのあまりにも必死な懇願に、千秋はハッと我に返り、顔を上げてのだめを見つめた。 のだめの目尻には涙が光っている。 「……なんだ?」 のだめは口を開けたまま、首を横に振った。 「あ、あの、だから…あの、やっぱりちゃんと見て欲しいデス、…勝負下着……」 千秋は、ともすれば泣きそうに緩んでしまう表情で微笑んだ。 …なんて、バカなんだ。愛らしいんだ。 「…見てるって。似合う、きれいだ…」 「そうデスか…?」 のだめの大きな瞳が瞬かれる。 濃く長い睫が、その頬に影を落とした。 「ヨカッタ……」 のだめは、安堵を浮かべる、嬉しそうな表情を浮かべる。 千秋はそっと身体をずらすと、その頭を胸に抱いた。 「あぁ、きれいだ。この日のための勝負下着だもんな?」 千秋はのだめの胸に手を置いたまま、片方の手で頭をなでてやり、額にそっと唇を落とした。 のだめは力なく頷く。 そして。 「…のだめは勝負に勝ちましたカ?」 上目遣いで悪戯っぽく千秋を見上げるのだめ。 「…………。」 ……降参だ。 苦笑しながら、唇を重ねる。 と同時に、今度はブラのホックを片手で外し、 腕を痛めないよう注意しながらストラップを片方ずつ抜いた。 ブラを完全にはぎとると、のだめの胸元で輝くルビーが映えて、可愛らしくその白い肌を彩る。 千秋はその光景に満足そうに微笑むと、完全に露わとなった胸へ手を戻した。 「…ぁ、ぁふ、ん、…んう……」 胸を揉みしだいて突起を弄びながら、千秋は再びのだめの口内に舌を深く差し入れてゆく。 すると、今までされるがままだったのだめが、おずおずと舌を絡ませてきたのだ。 「…!!」 煽られて、確かめるようにその舌を舐め上げ、尚いっそう深く粘着質に絡ませる千秋。 目を瞑り必死になって、おぼつかない動きでなんとか千秋の舌に応えようとするのだめ。 粘着質な水音と、唇が触れ合う乱暴な音が部屋に響く。 千秋は一度唇を離すと、軽く触れるだけのキスを落としてから、 再び胸の突起を口に含んだ。 のだめの舌には、唇の代わりに自身の指先を絡ませて。 「…ふ…んぅ………あぅっ?!…ん、んん……」 のだめは一瞬その異物感に驚くが、千秋の指先だとわかると、 自らの手を秋の指先に手を添えて、必死に、丹念に舐め上げる。 …溶かされる……。 のだめは、千秋の指先に淫猥に舌を絡ませる。 千秋がのだめの舌にそうしてくれるように。 唾液がしたたり落ちるのも構わずに。 …気持ちいいかも……。 のだめの舌が織り成す指への陵辱に一層かき立てられ、 先ほどよりもなお一層激しく突起を追い立てながら、千秋は言った。 「…のだめ、………気持ちいいか……?」 のだめはその声にもびくりと身体を震わせた。 口を開きながらも声にならない声を上げ、うんうんと何度も頷く。 しかし千秋はそれだけでは許さない。 「…気持ちいいんだな?」 答えはわかっていたけれど。 のだめの声で、聴きたかった。 千秋は祈るような気持ちで、まるで答えを引き出す為のように一層その突起とふくらみをなぶった。 「…あぅっ……。気持ち…いいデス……、先輩、先輩、」 のだめは目を瞑り、ハァハァと大きく息とついて肩を上下させ、続けた。 「先輩……!のだめ気持ちいいです…!!」 既にのだめの胸の突起は、千秋の舌技によってぬめぬめと粘着質な液で光を反射させていた。 千秋は何かを押し殺したような余裕のない表情をしながらも、この上なく優しく微笑む。 「そうか……」 ふいに、のだめが、涙で潤んだ瞳をそっと開けた。 交錯する視線。 しかし千秋は見逃さなかった。 視界の隅で、のだめの腰が、僅かだがくねるように動かされていることに。 「のだめ……」 千秋は無意識の内に、囁くような声でその名前を呼んだ。 のだめの唇に預けていた指先を一旦引くと、その腕を首に廻して抱き、 胸を愛撫していた右手を、身体の稜線に沿ってゆっくりと下部に移動させながら。 「せ…んぱい……?」 その、肌を降りていく焦らされるような感触に、のだめは自然と吐息を熱くする。 千秋の右手は、徐々に、その部分へ。 のだめが身につけている最後の衣服へと到達すると、のだめは息を飲んで、再び顔を手で覆った。 「顔、隠すなよ」 千秋は左手で、のだめの腕をどけさせる。 左手は布の表面を伝い、じりじりと、その中心へ。 「ゃ……ヤだ、怖い…デス……」 のだめはすがるように千秋を見つめ、自分を抱く手を握り締めた。 青ざめたその表情を見てちくりと胸が痛む千秋だったが。 そこに後悔の意志はない。 「怖くないだろ。オレ、ここにいるから」 千秋はのだめを抱く左手で、その頭をそっと撫でてやった。 そしてのだめの耳元で甘い吐息をつきながら、繰り返す。 「いる、から」 千秋の右手は、ついにその部分へ。 「…んっ……!!」 千秋の指先は、のだめのそのしっとりと潤んだ柔らかい部分に触れた。 のだめの目が強く瞑られ、頭を撫でる千秋の手を、ひときわ強く握り締める。 「あっ…………」 そこは既に潤んでいて、薄い布地が下着の意味を為さないほどに濡らしていた。 千秋は、そっと、その部分を撫でてやる。 「ん、ん、…………」 快感なのか、未知の感覚に耐えるのだめの苦しそうな表情が、千秋の胸の内を一層焦がす。 押し付ければ、布を通してじんわりと染み出すのだめの蜜。 割れ目にそって撫でれば、浮きがちにふるふると震える華奢な腰。 千秋は、問うことなく下着の隙間から硬い指先を差し入れた。 「…ひゃあっ……ッん…………」 のだめのそこは、柔らかくて。溢れるほどの蜜で乱れていた。 「…あ、…のだめすごい…すごい濡れて……」 千秋は思わず声を出す。 それは感動にも似た何か。 「気持ちよかったのか……?」 さっきも訊いたのに、そう問わずにはいられない千秋。 のだめは泣きそうに表情を強張らせることしかできない。 「もっとよくしてやるから、待ってろ」 千秋はそう言うと、腰のサイドで可愛らしく結ばれた紐を解く。 パラリと片方の紐が自由になり、のだめのその部分は、千秋の指先によって露わにされた。 「や、恥ずかしい…から……ダメ…デスッ……!」 千秋の手を強く握り締めて懇願し、脚を引き寄せてその部分を隠そうとするが。 千秋に許されるわけもなく。 蜜を絡ませた千秋の指先は、その柔らかい部分をまさぐった。 撫でるように、慈しむように、余す所なく丹念に。 「ゃ、ゃ、…んっぁ……」 のだめは、ハァハァと息を荒げる。 腰はくねり、逃げ出すように千秋から遠ざかろうとするが、 千秋の指はのだめのそこに吸い付いて離れない。 幾層ものひだを、丁寧に、ゆっくりと撫であげる。 その度に身じろぎし、声にならない声を上げるのだめ。 膝は浮き、つま先は、きゅっと力が込められている。 ゆっくり、ゆっくりと。 しかし千秋にも限界があった。 「…のだめ……!!」 のだめの快感にうち震える無防備な肢体に誘われ、千秋は唐突に指先に力を込めた。 「あんっっ!!」 のだめは大きく身体を震わせた。 くぼみの周囲を揉みしだく千秋。 粘着質の蜜は、どんどん溢れて千秋の指先に絡まってゆく。 その蜜を、のだめの柔らかな部分のそこここに塗りたくるようにしてこねる。 「…ふぁっ!ん、んはっ!!」 そうする内に千秋の指先は、熱く硬く起ち上がった蕾を探り当てる。 びくりと身体を奮わせるのだめが、ただ、愛しくて。 「のだめ、好きだ……」 千秋は、蜜でぬめぬめと光沢を放つ指先で、その蕾を撫で上げた。 「きゃあんっ!!」 悲鳴にも似た嬌声を上げるのだめ。 …可愛い…… 千秋は首に廻した腕でのだめを引き寄せ、しっかりとのだめを抱いてやった。 「せ、先輩……」 千秋はその蕾がぷっくりと存在を主張していることを指先で確認すると、 挟むように、摘むように、丹念に撫でていく。 蕾は、千秋の指先によって、右に左に押し上げられていく。 その度に、のだめの身体が大きくはねる。 千秋は、のだめを抱く腕にいっそう力を込める。 そして蕾を撫で上げる指を親指にシフトさせると、長い中指を、その潤いの中心に宛てがった。 じらすように、ほぐすように、その周囲をやわやわと揉んでいく千秋。 「…ん、ふ、…あ…せ、せんぱ……」 「のだめ」 千秋は、その中心に、ごく浅く、中指を。 沈めた。 「…ッ!!」 のだめの表情が、苦しそうに歪む。 「少し、我慢しろよ……」 千秋はのだめに口付けると、揉みほぐしながら、指の挿入を続ける。 「んん…ぃ、痛……!!」 その表情と、紛れもなく苦痛を訴える声色に、千秋は心底心を痛めるが。 千秋はのだめを抱く左腕にぐっと力を込める。 越えなければ、越えさせてやらなければいけない壁なのだ。 のだめの膣内(なか)は、とろけるように熱くて。 千秋の指をきつく締め付けるのに、たとえようのないほど柔らかい。 ズズ、ズ…… 「ん、ん、…ぃ…………」 この上なくゆっくり、ゆっくりと。 「…先輩、ぃ…痛い…デス……!!」 零れ落ちる涙。 千秋はのだめの苦しそうな様子に、千秋もまた身を裂かれるような思いだった。 決して代わってやれない痛み。 でも。 徐々に、膣内(なか)を割り開いてゆく。 のだめの全身は、指の先までも強張っている。 「のだめ、力抜いて……。オレに、つかまっていいから……」 千秋が頼りなげに宙を掴むのだめの指先をしっかりと捕らえると、 言われるがままに千秋の広い胸に顔を押し付け、背中に腕を廻すのだめ。 半分ほど挿入した千秋の指は、まっすぐには進まず、膣内(なか)の壁を、 そっと、そっと、揉み解す。 少しでも早くのだめが、ラクになれるように。自分の感触に慣れるように。 「…ん、…く………ぃ…痛ぁ……!!」 引きつらせた顔を千秋の胸に思い切り押し付けるのだめ。 「ちから、抜いて。ゆっくりだから」 のだめは、そっと頭を撫でてやりながら、優しく言う。 「せ…んぱっい!」 涙声ののだめ。それでも、やめて欲しいとは言わない。 のだめ自身もまた、わかっているのだ。 「大丈夫だ。ゆっくり、深呼吸して…」 潤っているから、慣れさえすれば大丈夫なはずだ。 千秋はわかっていた。 とはいえ、胸の中ののだめの尋常でない痛がり様が可哀想でならない。 優しく身体を撫で、声を掛けてやることしかできないことがもどかしかった。 しかし、徐々に。 揉み解された箇所からとろけていくように、だんだんと挿入が容易になっていくのがわかる。 とても、ゆっくりと、だけれど。 千秋は指を進める。傍目には動いているのがわからないくらいに、丁寧に。 ズ、……ズ、ズ……… 緩慢な動作でようやく根本まで飲み込まれると、千秋は一つ息をついた。 ……あたたかい…熱い……のだめの中…………。 全部挿入できたからといって、油断はしない。 内壁は依然揉みほぐすように、労わるように。 その指の動きに合わせて、のだめの吐息が荒くなる。 徐々に、強く。 押し広げるように、味わうように。 ふと、ラクになるかと親指で蕾を優しく転がしたが。 「ひゃはぁっ!ヤッ!変デスッ!!」 途端に痛いほど締め付けが強くなり、顔をのけぞらせて悲鳴にも似た啼き声をあげるのだめ。 「…ご、ごめん」 …ごめんって何だ。 つい言葉が詰まってしまって、千秋は頬を染めて吐息を漏らす。 と同時に、苦渋に満ちたのだめが、それでも必死で異物感と戦っているのだと思い直す。 「…ゆっくり…ゆっくりお願いしマス……」 ハァハァと荒い息をつきながら、のだめは千秋の胸に再び顔を埋める。 「…うん」 千秋はのだめの様子が多少落ち着いてきたのを見計らって、 そっと注意深く、2本目の指…人差し指を、中指に沿わせ、入口付近に浅く挿入した。 「…んっく……!」 のだえめはくぐもった声を上げるが。 それでも初めに中指を挿(い)れた時よりは、幾分余裕があるように見える。 「大丈夫か…?」 ダメと言われても、退ける自信はない。 とっくに自分のモノは、はちきれそうにズボンを押し上げている。 早く挿れたい、と濁流のようにひっきりなしに押し寄せる欲望を、 ずっと、必死で押し込めているのだから。 しかし千秋は、のだめを労わるあまりそう声をかけずにはいられなかったのだ。 「…だ、大丈夫デスよ…」 額に汗を浮かべながら、ひきつった笑みを零すのだめ。 「…バカ、無理して笑うな。キツかったら言え」 千秋は、少しでも負担を軽くしてやりたくて、のだめに答えた。 のだめの額に浮かぶ汗にそっと口付けながら。 その間も、二本目の指は、ゆっくりゆっくりと挿入を続けている。 「だ、大丈夫デス、のだめ、我慢できマスから……」 「いや……」 千秋は、優しく否定の声を上げる。 「言わないと、多分もうオレ、止まれない…から……」 のだめは驚いたように目をぱっちりと開け、自分を抱きしめる千秋の顔を見上げた。 情けなく微笑み返す千秋。 のだめは下半身に感じる圧迫で身体を動かせないが、逆に腕を伸ばして、 千秋の首を抱き寄せ… キス。 初めての、のだめからのキスだった。 「だい、じょうぶデス、先輩。のだめ、がんばれマス」 のだめの膣内(なか)の指への締め付けは相変わらずきつくて、 熱に浮かされたように浅い喘ぎを繰り返しながら、寸断なく顔を歪めているのに。 …いとおしい。 心底、愛しいと、思った。1人の人間を、こんなにも大切に思えるものかと。 溢れる想いに、深くため息をつく千秋。 のだめを抱き寄せる腕に、自然と力と熱がこもる。 「ダイジョブ、デス。…だから、先輩、遠慮なくヤっちゃってくだサイ…」 …ヤっちゃって、ってお前。 千秋は緊張感の中でも思わず吹き出しかけ、くぐもった笑いは、吐息となって零れ落ちる。 この期に及んでのだめらしさを失わない彼女への愛しさと共に。 苦しそうに、けれど悪戯っぽく、幸せそうに微笑むのだめ。 千秋は、抱いているのか抱かれているのか、わからなくなった。 「……ん、サンキュ…………」 千秋は、指の挿入を続ける。 ようやく二本目の指がのだめの最奥まで到達すると、のだめは、は、と短く吐息を漏らした。 慎重に。 千秋はのだめの様子をことさら気遣いながら、膣内(なか)をゆっくりとほぐしてやる。 「…ん、あ……」 のだめは再び目を瞑り、声を上げる。 痛みが完全にひいたわけではないのは明らかだが、それでもその声には艶がにじんでいて。 「わかるか、オレの指…今、お前の中に入ってる……」 のだめは頷く。何度も。 「…さ、最初はものすごく痛くて…痛いだけだったけど…ちょっと慣れてきたみたいデスよ……」 のだめは、そっと目を閉じて、自らの中に埋められた千秋の指を全身で感じとる。 「ん、先輩の、ピアノ弾く指が入ってる……」 千秋は頷き返してやると、挿れた時よりも慎重に、二本の指を引き抜く。 先端が抜かれる最後の瞬間に、のだめはひときわ高い嬌声をあげた。 「……ゃあっ、ん!」 紛れもなく、快感に彩られた声だった。 荒く息をつくのだめに口付けると、千秋はそっと身体を離す。 そして、おもむろに自身の衣服を脱ぎ始めた。 のだめは幾分放心したように、痛みに痺れる下半身を労わるように、 身体をベッドに預けてその千秋の動作を見つめる。 「…先輩が、服、脱いでマス……」 「…おかしいか」 千秋はのだめの声に、わざと拗ねたように返す。 気持ちはこんなにも急いているのに。 のだめがあまりに可愛らしくて、頭にもやがかかったように、その動作を緩慢にさせる。 千秋が最後の衣服を脱ぎ捨てると、のだめはそこを凝視し、身体を縮こませた。 明らかに、怯えた視線。 「……見るの、初めてか…?」 千秋のモノは、既に臍に届かんばかりに太く長くそそり起ち、硬化していた。 のだめは小さく頷くと、我に返ったように不自然に視線を逸らす。 「いいから、見ろよ。この先ずっと付き合うことになるんだから」 どこからか取り出したゴムをくるくるとはめながら、千秋は内心苦笑した。 …なんてムードもなにも無いことを言ってんだ、オレは。 しかしのだめは嬉しそうに微笑むと、はい、と返事をし、おそるおそる視線を戻した。 その時はもう、千秋はのだめの下腹部に移動していて。 千秋はそっと膝を割って、その間に身体を滑り込ませる。 のだめは少し抵抗を見せたが、拒まない。 一糸まとわぬ姿になった千秋は、自身に手を宛て、そっとのだめのそこに宛てがった。 「…………っぁ、」 吐息と共に、喉からくぐもった声を漏らすのだめ。 「いいか、…挿れるぞ」 千秋が意図しないまま掠れてしまった声を掛けると、のだめは千秋を見つめ、頷いた。 …ズ、ブ。 「…!」 「…………!!」 途端に目を強く瞑り、白い喉をのけぞらせ、口を大きく開けて声にならない声を出すのだめ。 千秋もまた、初めてののだめの感触に、思わず目を強く瞑る。 ほんの数ミリ入れただけなのに。 まだ亀頭の半分も入っていないのに。 絡みつくようなのだめのそこは、ねちゃねちゃと粘性を伴って、千秋を直に刺激する。 熱かった。 あまりの気持ちよさに、千秋は顔を歪めた。 同時に、このまま力の限り押し込んでしまいたい激情に襲われた。 全ての理性を総動員して、その欲望を必死の思いでとどまらせる千秋は、肩で息をつく。 のだめもまた、千秋の感触に、初めて挿入される感触に、世界がひっくり返ったような心地だった。 もう、上手く考えることができない。 身体の内部から中心をえぐられるような感覚。 熱くて、違和感があって。胸の内が、頭の中が、沸騰したようにおかしくなる。 痛みはあるのに、誰にも見せたことのない部分を大股開きで千秋の前にさらし、 その上千秋がその部分を自分に宛てがっているということが、異様なほど昂ぶらせていて。 「…の、のだめ……」 千秋はその状態のまま身体を倒し、慎重にのだめにのしかかった。 「…っぁ、ん!」 二人がつながっている部分が僅かに動き、のだめは闇雲に声が出てしまう。 千秋はのだめに覆い被さると、細い首に腕をまわし、片手でその小さな頭を抱え込んだ。 のだめの髪は汗でしっとりと湿っているのに、相変わらず心地良いシャンプーの香がする。 千秋は再びのだめに入りかけている自身に手を宛てると、またゆっくりと、少しだけ差し込もうとした。 「っつ……!」 途端に、悲鳴のようなのだめの声。 のだめの身体中が強張り、その腿が千秋の腰を締め付ける。 「い、痛いか…?」 小さく、しかし小刻みに激しく首を横に振るのだめ。 千秋は、息を荒げながらも腰を止め、のだめの顔を見下ろした。 のだめは相変わらず強く目を瞑ったままなのに、先ほどとは全く異なった表情で顔を歪めている。 奥歯を噛み締めているのは、唇が白くなるくらい引き結ばれていることからも容易に想像がつく。 潤いは充分すぎるほどなのに、まだ、亀頭すらも入りきっていない。 千秋は快感と罪悪感の両方に苛まれ、のだめの額に唇を落とした。 「悪い……、ゆっくり、する、から、……」 これ以上ないくらいの締め付けと、のだめと一つになれた昂揚感で、千秋は上手く言葉を選べない。 その状態で二人、息を荒げて止まっていた。 暫くすると、のだめがゆっくりと口を開いた。 「だ…イジョブ、みたいデス、よ……少しラクに……」 のだめはハァハァと肩で息をつきながら、か細く変に上ずった声で、囁いた。 千秋はそっとのだめの頭を撫でながら言う。 「…本当か……?」 頷くのだめ。 背中にまわされたのだめの指先には力が込められ、痛いくらいだが。 …のだめの痛みは、こんなもんじゃない筈だ……。 「…痛かったら、同じだけ、オレの背中に爪立てろ。いいな?」 のだめはゆっくりと目を開けた。 その目には、溢れるほどの涙が浮かんでいる。 のだめが首を振ると、その一滴が滑らかな曲線を描く頬に伝った。 「ヤ…です……先輩が痛いの、ヤ……」 「…………。」 千秋は胸を突かれて言葉に詰まった。 久しく忘れていた感情が込み上げてくるのを感じる。 口を開けば、嗚咽が漏れてしまいそうなほどに。 それほど、いじらしいのだめが……愛しかった。 「…………バカ、我慢するんじゃねぇって……」 言いながら、こんなにものだめを痛めつけてまでセックスをすることに、疑問すら感じてくる。 「…無理に、しなきゃいけないものじゃ…ないんだぞ……」 千秋はのだめの肩に顔を埋めた。 じわりとにじんだ温かいものが、自分のほほからのだめの肩を伝っていくのがわかる。 ……オレ、泣いてるのか……? 「……先輩」 それは、いやにはっきりとした声だった。 今しがたの痛みを耐え抜く声とは明らかに違い、凛とした響きさえも持っていた。 「先輩、がんばってくだサイ。のだめ…がんばってるんデスから、先輩もがんばらなきゃだめデスよ?」 のだめは、千秋の背中にまわしていた手を引き寄せ、千秋の頭をそっと撫でてやった。 「のだめは、先輩ともっと一つになりたいんデス……」 …またこの感じだ。 千秋は思った。 自分がのだめを抱いている筈なのに、逆にのだめに抱かれているような感覚。 のだめは、自分が思っているほど弱くないんだ、そう思った。 …でも、だからこそ、守らなければ。大事にしてやらなければ……。 「…いいんだな」 千秋は自分にも言い聞かせるようにゆっくりと言う。 「先輩がいいんです」 「男のオレにはわからないけど、多分これからもっと痛いぞ…?」 それは賭けだった。 わざと怖がらせたいわけではない。苦痛を与えたいわけではない。 でも、今こんなに痛がっている以上、それは事実なのだ。 もしのだめが少しでも躊躇するようなら、何も急ぐ必要なんかどこにもないのだ。 …自分さえ我慢して、待ってやればいいことだ……。 しかしのだめは、はっきりと頷いた。 頷いて、千秋の瞳を見つめた。 お互いに、涙をためた瞳。蛍光灯の光に反射して、キラキラ光った。 千秋もまた頷き返すと、のだめに口付ける。 この上なく優しく。 そして、また少し腰を押し進めた。 のだめは千秋の後頭部に手を伸ばし、千秋の唇に、力の限り自分の唇を押し付けた。 「……ン、んぅ…、ん、ん、ん……」 声は、漏れない。 千秋の唇に全てを吐き出すように、逃がしているから。 千秋は、ゆっくりとだが、徐々に深く挿入していく。 のだめの唇からもたらされるくぐもったうめきと熱い息を、充分に理解しながら。 頭を撫で、肩を撫でる。 少しでものだめの痛みがやわらぐように、のだめを労わる自分の心が少しでものだめに届くように、 想いを込めて。 のだめの膣内(なか)は。 とろけるようなやわらかさで千秋に絡みつき、きつく締め付ける。 その感覚といったら。 今まで自分はセックスをしたことがなかったんじゃないだろうかというくらいの快感だった。 のだめの柔らかい肌を抱きしめ、焦れながらも溶かされるような、 激しく突きたい衝動を必死に抑えながら、千秋はゆっくりと挿入していった。 どのくらい挿入(はい)っただろうか。 千秋は、のだめの身体に余計な負担がかからないよう細心の注意を払いながら、 下半身に目を遣った。 やっと、半分くらい。 半分が、のだめの中に埋もれている。 どこか安堵して、千秋はのだめの顔に視線を戻したが。 「…のだめ――――」 のだめの表情は、苦痛そのものといった感じで歪められていた。 涙の伝った跡は、一つ二つではない。 長い睫が濡れ、その濃さをしっとりと増していた。 しかしのだめは目を瞑ったまま、 その声から伺いしれる千秋の雰囲気に、泣きじゃくるように嗚咽を漏らし、首を振った。 「ヤ、ヤデス、先輩、やめないで、やめないで…のだめがんばりマスから、だからやめないで……!」 「のだめ」 千秋はそっとその名前を呼んだ。 のだめは嗚咽の合間に、肩を上下させて息をついた。 「のだめ、嬉しいんデス。先輩が好きなんデス。だからお願い、やめちゃわないでくだサイ……!!」 「のだめ」 再び、呼ぶ。 のだめはうっすらと瞳を開けた。 涙で曇るその目尻を、千秋はそっと拭ってやる。 「わ、悪い……オレ、も、もう、やめられない。いいな……?」 のだめが目を閉じて頷くと、唯一身につけているハートのルビーのネックレスも揺れた。 キラキラと、光を反射させながら。 「先輩、大好きデス…」 「…ん、オレも……」 千秋はのだめに口付けた。 もう幾度めのキスなのかなんてわからない。 「歯、噛むな。いいか、オレの肩をくわえて。歯でも唇でも何でもいい。 痛みは全部オレに戻せ。わかったな」 のだめは眉間に皺を寄せ、口許を歪める。 「いいな」 千秋はのだめの返事を待たずに、その口に自らの肩を宛がった。 「…力、抜けよ……」 拒否がないのを受諾と理解し、千秋は再び腰を押し進めた。 「…、ン、ン、〜〜〜!!!」 どうしても強張ってしまう身体を千秋に預けながら、のだめは唇で千秋の肩を食む。 もう、千秋は、止まることができない。 ゆっくりと、だが、断続的に挿入する。 のだめの閉じた膣内を押し進み、めりめりと突き破るかのようにのだめを痛めつけているのに、 気を抜くとイッてしまいそうなほど気持ちがいい。 そんな自分に罪悪感を持ちながらも、腰を勧めた。 どんどんキツくなる締め付け。 とろけるような熱さ。 肩に感じる、のだめの強い唇。 ……と。 長い時間をかけて、やっと最奥まで到達した。 深く息をつく千秋。 ……気持ちよすぎる…… のだめの華奢な身体を一層強く抱きしめ、そっとキスした。 「…どう、だ……?」 しばらくして、千秋は、のだめの額の汗を拭ってやりながら、遠慮がちに訊いた。 痛くない筈がない。 しかしのだめは、先ほどよりは強張りの解けた身体で、千秋をそっと抱きしめた。 「…ん、さっきより、大分ラクになってきたみたいデスよ……」 「そっか」 千秋は心の底から嬉しさが込み上げ、微笑んだ。 「よくがんばったな」 えへへ、と、未だ多少引きつりながらも笑顔を見せるのだめ。 「…オレが入ってるの、わかるか?」 「……わかりマス。千秋先輩の……」 そこまで言いかけて、のだめは蒸気した頬を更に紅く染め、視線を外す。 「………って…マス……」 「聞こえない」 千秋は意地悪く微笑んだ。 「……もう〜〜〜先輩は………」 未だ引きつりながらも、照れたように返事をするのだめ。 千秋がぴくりと動いた。 「…んあっ」 「…『んあ』って、オマエなあ……」 のだめは口をとがらせて抗議する。 「だって、先輩がいけないんですよ〜。ぴくんってなるから〜〜」 そののだめの言葉に、千秋の中で静まっていた激情に再び火がついた。 「先輩?」 千秋は、答えない。 のだめの目も見れない。 なぜなら、今顔を見てしまえば、もう、きっと、抑えがきかないから。 するとのだめは、そっと口を開いた。 「…いいデスよ。先輩、動いてください……」 「男の人って、入れてから、動いて気持ちよくなるんデショ? のだめ、もう、ダイジョブ…デス。だから、先輩に気持ち良くなって欲しいんデス」 微笑むのだめ。しかし、その表情はまだどこか引きつっている。 「でも…お前、痛くないわけ…」 「も〜、やっぱり先輩ってば的外れ!」 「ま…的外れ……?」 千秋は初めて唇を奪った時と同じ、その縁起でもない言葉に顔を引きつらせる。 「先輩はのだめが好きだから心配してくれてるんデショ? のだめだって…先輩が好きなんデスよ。先輩に気持ち良くなって…欲しいデスよ……」 千秋の胸は、ドクドクと高鳴る。 もう、限界だ。 「ん…なるたけ痛くないようにする…から……」 千秋は、あまり膣内を擦らないようにほんの気持ちだけ腰を引くと、 ゆっくりと、しかし力強く押し込めた。 「……ん、」 快感に顔を歪める千秋。 そんな千秋の肩に顔を再び埋め、痛みに顔を歪めるのだめ。 こんな表情、千秋に見せられないから。 こんなに幸せなのに、もし痛がってるのがバレたら、この人はきっと自分を気遣ってしまうから。 千秋はそのグラインドを繰り返した。 膣内を殆んど擦ることなく、逆に子宮の奥を鈍く突くように。 「…う……」 千秋は低い声でうめく。 のだめは、千秋の首にまわした腕にありったけの力を込める。 ゆっくりだが、何度も何度も繰り返される突き。 その度に歯をくいしばり、ジェットコースターから振り落とされまいとしがみつくようにその痛みに耐え、 千秋の熱と満ち足りた感情に酔う。 もしのだめの千秋への想いの深さを測るとしたら、その腕に込められた力が、何よりの証拠だった。 千秋は、まとわりつき締め付ける膣内に、とうに理性を奪い取られていた。 押し込んだモノを飲み込むのだめの膣内。 千秋は、指先で揉み解した時と同じように、今度は自身のモノで内壁をまさぐった。 すると。 「…ふわぁっ!!」 首にまわされていたのだめの腕の力が急激に抜け、 天から降ってきたかのような、はっきりと快感が滲む高い喘ぎが漏らされた。 「…の…だめ……?」 千秋は快楽に歪む表情を隠しもせず、のだめを見下ろした。 のだめは、驚いたような顔をして視線を彷徨わせている。 「…い、今のなんデスか……?」 「…どうした…?」 怪訝な表情をしながらも、千秋は再び内壁をこねた。 「これか?」 「ゃぁんっ!」 紛れもなく、嬌声だった。 「気持ちいいの…か……?」 半信半疑で問う千秋。 しかし、そうしながらも千秋の腰は、止まらない。 のだめの上気した頬と濡れた瞳は世界一美しい。そう思いながら。 「きゃんっ!…ゃ、なんかのだめ、おかしいデスッ…!い、痛いのに、ぁ、おかしいデス…!!」 「イイんだな?」 千秋は確信を持ってのだめをこねくりまわした。 「ゃんっ!…あ、先輩、千秋先輩……」 「ここにいるよ」 のだめはその声に力なく微笑むと、またすぐに、瞑る目に力を込めてしまう。 「せ、先輩、のだめがんばりまシタ、だからもう許してくだサイ…! のだめ、ほんと、は、すごく、痛いんです、でも、幸せなんデス、なのに… …な、なんか…おかしいんデス……ヘ、ヘンな感じ……もう今日は許してくだサイ…!!」 「ん」 千秋は、満足に答える余裕もなく、慎重に、しかし激しく内壁をこねまわす。 「あ…オレも、もう、…う………のだめ…っ!!」 一層強く最奥に押し込むと、千秋の身体ばびくんっと大きく波打った。 その振動はのだめにも伝わり、揺さぶられてのだめの身体が一瞬浮き、ベッドに深く沈みこんだ。 ハァハァと未だ荒い息を交わしながら、千秋はのだめに口付けた。 「…ん……」 ぴくりと身じろぎするのだめ。柔らかくてほっとするような、あたたかいキスだった。 「抜くぞ。…力抜いて……」 そろそろと千秋が自身を引き抜くと、のだめは卵をぐちゃぐちゃにかき混ぜたような表情をする。 「っんゃ…ッ……」 先端が抜ける時、またのだめの口からは嬌声が漏れて。 千秋はそっと微笑んでのだめの隣に横たわり、その弛緩しきった華奢な身体を抱いた。 ゆっくりと首を廻して自分を仰いで力なく笑みを零すのだめに、千秋はそっと微笑んだ。 「大丈夫か?」 「だいじょぶデス……」 千秋は、そう小さく言うのだめの髪を優しく撫でてやった。 「……痛かっただろ」 そう言って、千秋は、のだめのその紅い唇に口付けた。 そっと。労わるように。 「先輩…、ちゃんと、気持ち良かったデスか?」 千秋はのだめの額に唇を落とした。 「…うん」 その唇の感触に癒されるように、のだめはくすぐったそうに柔らかく微笑む。 …あの破天荒な音楽。すぐはねるピアノ。 好きデスと言いながら、オレがその気になるとすぐ話題を逸らした、……蝶。 「……つかまえた」 千秋は快感の渦に飲まれながら、笑みを零した。 のだめもまた、顔を引きつらせながらも千秋を見上げ、微笑んだ。 「…捕まっちゃいまシタ、ね」 そのまま二人は微笑みを交わし、互いの体温を感じながら、ゆっくりとまどろんでいった。 <終> 【Kiss it better】:キスして治す ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |