マシュマロ
千秋真一×野田恵


ベッドの縁に腰掛けて下着を着けていくのだめの後姿を、千秋は見ていた。
前かがみになった時一際大きさを主張する乳房が、レースのあしらわれたブラで包み込まれていく。
寄せて上げるしぐさをしながら、のだめはあれ?と首をかしげた。

「何?どうかした?」
「…ん〜〜。……最近ブラがきついんですよね〜」
「……太ったんじゃねーの?」
「太ってまセン!!体重変わってないですヨ!!…レディーに対して失礼な!!」
「…誰がレディーだ……」

まあ、太った感じはしないよな。…いや、むしろ…最近、くびれができてきてイイ感じだ……。
のだめの体のラインをじっくり見ながら、千秋は顔を緩めた。

「やっぱりそうかも…」
「だから何だよ」
「……胸、おっきくなったみたいデス」
「マジで?!」

がばっと起き上がって声をあげた千秋を、のだめはゆっくりと振り返る。

「…随分と嬉しそうじゃあないですか。……何デスか、その顔。やらしー」

自分でも、顔がにやけてしまうのがわかる。

「えっ、いやー…ぅほん」

どうしてもにやけてしまうのを抑えられず、わざとらしく咳をしてみた。
いやらしげな表情の千秋をからかうように、のだめは唇を尖らせる。

「おっぱい星人……」
「……くそっ、何とでも言え…!」
「ぎゃぼ…!!」

後ろから覆い被さるようにのだめを抱きしめると、胸を隠そうとするのだめの腕をものともせず、掌でその豊かな胸を鷲づかみにした。

「確かめないと。どれどれ…」
「もうっ、先輩のバカー!ダメです━━!!」

千秋は無言で手指を動かした。
ブラの上から、突起にに人差し指が当たるようにし、小刻みに震わせながらすくい、寄せ上げる。

「…ホントに……駄目デスってば…ん……」

反応よく突起がしこり始めると、千秋はすばやくホックをはずし、ストラップを肩からずらせた。
腋の下から腕を通し、あらわになった白い胸を直に掌に包み込む。そして再び蹂躙していく。
それはどこまでも柔らかく、それでいてしっかりと指を跳ね返す弾力に満ちていて、飽きることなく千秋を楽しませる。

「でかいな…、おまえの……。マシュマロみてー……」
「駄目デスってば……先輩…ゃあん」

そしてまた、のだめの肩越しに見える自分の掌の中で形を変える双丘は、千秋の官能を奮い立たせるのに十分だった。

「なあ、のだめ……」
「駄目デスー!!」

いいだろ?と千秋が問い掛ける前に、のだめは腕をがっしりとつかみ、千秋の動きを静止した。

「言ったでしょ!これから学校なんですヨ!!」
「…そうだったな。忘れてた」

のだめは千秋の腕をすり抜け、再びブラをつけた。千秋は若干ふてくされ気味でベッドに寝転んだ。

「あーあ、このブラのセット、気に入ってたのに…」
「サイズが変わったらつけられないのか?」
「合わないサイズだと、胸の形が崩れちゃうんですヨ。だから、新しいの買わなきゃ……グスン」
「ふーん」

のだめはワンピースに袖を通し、コートを羽織る。

「…先輩のせいですヨ。いつも、胸ばっかり揉むから……責任とって下さいヨ」
「そっ、そんな風に言うなよ…。しょうがねーだろ、そんなの」

「おっぱい星人…!!」
「……うるさい!!早く学校行け!!」

『おっぱい星人』というレッテルは千秋の自尊心をいたく傷つけるらしく、千秋は真っ赤になってうろたえた。
その様は普段の彼からは想像できないほど滑稽でかわいらしく、のだめはくすくすと笑った。

「じゃ、行ってきまーす」
「あ、のだめ」

ドアノブに手をかけるのだめを千秋は呼び止めた。

「学校終わったら連絡しろよ。買い物、行くぞ」
「買い物?」
「…買ってやるよ、下着。……お、大きくした責任、取ってやる」
「ぎゃはあ…!やったー!しますします、電話!!」
「今日は部屋にいるから」

わかりましたー、とのだめは笑顔でドアを出て行った。…と思うと、細く開けたドアから顔だけのぞかせ、千秋を呼ぶ。

「何だよ。遅刻するぞ」
「先輩も一緒に選んでくれますよね?…たまには黒とかどうですかネ?先輩好みのセクシーなの…ギャハ」

じゃ、行ってきまーす、とのだめは元気にドアを閉めた。

「…何考えてんだあのバカ……」

セクシーな黒なんか似あわねーだろ、と毒づいてみるものの、想像の中でのだめに着せてみると意外にも似合いそうで……。

「…ま、まあたまにはいいか、そーいうのも……」

とつぶやいてしまう千秋なのだった。






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