千秋真一×野田恵
![]() 「ん……」 千秋がその頬を撫で、か細いうなじに優しく唇を落とすと、 うつ伏せて眠りに落ちているのだめはくぐもった声を上げながら身じろぎした。 パサリと枕に落ちる茶色がかった猫っ毛。 毛布のはだけた白い肩と、滑らかな背中。 そして、自身の身体につぶされる格好でまろび出た、僅かに覗く豊かなふくらみ。 その清らかでいてこの上なくいやらしい様に、千秋は人知れず胸を高鳴らせた。 もう何度も肌を重ねているのに、彼女の魅力は底知れない。 恋人同士の関係になって早数ヶ月。 不思議なもので、一度自覚して心を決めてからは、彼女に対して愛情を表現することに 何らためらいがなくなっていた。 彼女への想いは自分でも驚くくらい素直に溢れてくるのだった。 そして、彼女が自分の前で頬を染める度、 千秋もまた彼女の新しい魅力を発見して、密かに胸を焦がすのだった。 千秋は、ナイトテーブルの明りに浮かび上がるのだめの白い背に、唇を這わせた。 「…ん、……」 腰のあたり、丁度くびれた部分に唇を優しく押し付け、舌で潤いを落とす。 そのまま背骨に添ってちろちろと這わせてゆき、背の中ほどまで舌を進めたところで、 改めてそっと口付けた。 二度、三度。 軽く開いた唇で、食むように。 のだめの背は温かく、華奢な造りにもかかわらず柔らかだった。 のだめは、微かに身体を震わせる。 千秋はもう一度、のだめの背中にキスを降らせた。 「…っん、ぁ……」 のだめはうつ伏せた状態のままゆっくりと顔だけを振り向かせ、うっすらと目を開けた。 「せんぱ…い……?」 千秋は目を細めて微笑むと、その小さな頭を撫でてやってから、またその背に口付けた。 「…ひゃぁっ……」 途端に目を瞑り、背を反らせて再びベッドに沈み込むのだめ。 まだはっきりしない意識で、 しかし自分のキスに可愛らしい反応を返すのだめを愛しく想いながら、 千秋は彼女の何も身につけていない身体を抱き上げて、大事そうに胸に収めた。 「ほわぁ……先輩…なんだかきもちいデス……」 まだ意識のはっきりしていないらしいのだめは、 露わになった両の胸を隠すこともせずに、弛緩した身体を千秋に預ける。 千秋はのだめの胸をちらりと見遣って、童顔に似合わないたっぷりとした質感を確認し 思わず再びむしゃぶりつきたい衝動に駆られたが、 ふーっと軽く息をついて、その欲望を抑えた。 今の千秋には、他に目的があるからだ。 「今…何時デスカ〜?のだめ、ガッコの準備しないと……」 のだめのその、やみくもに首を振って周囲を確認しようとする頼りない様子に笑みを零すと、 千秋はのだめを横抱きにしてベッドを降りた。 「…ぎゃぼ?!」 すると、さすがにのだめもはっきりと目覚め、 自由な両腕をもって、落ちまいと慌てて千秋にしがみつく。 …そんなことをしなくても、千秋がのだめを取り落とすことは絶対に無いのだが。 二人の情事でベッドからすっかり剥ぎ取られたシーツが腰や脚に巻きついて、 まるでローブのようにのだめの身体の一部を覆い隠している。 それは裸体よりよほどエロティックで。 ところどころ隠された肢体は、逆に露わにされた豊かな双丘の美しさを際立たせている。 また、さながら華奢な身体の抵抗を封じ込める清廉な拘束具のようでもあった。 「まだ2時だよ。1回しただけだしな」 その言葉を聞いて、のだめは思わず頬を染めた。 そう、1回。 昨夜(といっても数時間前)二人は、それぞれ学校と仕事が終わった後に 久々に外で夕食を取り、その後千秋の部屋で食後の紅茶を楽しんだのだった。 のだめは学校で出された課題曲を弾き、千秋はその姿をゆったりと見つめて。 2杯目のレモン・ティーが底をつきかけた頃、千秋とのだめは、 どちらからともなく腕を絡ませ合い、濃厚なキスを交わしながら求め合ったのだった。 そうして濃密な時間が過ぎ、今に至る。 「……風呂、入るぞ」 そう言いながら千秋は、のだめを軽々と抱き上げたままバスルームに向かう。 「ちょ、ちょっと待ってくだサイ、先輩。のだめはいいですから、先輩、先ドウゾ…」 「一緒に入るんだよ」 のだめは目を見開いた。 何年もの想いが通じた末、千秋とは既に数え切れないくらいベッドを共にしている。 しかし、一緒にお風呂に入ったことは未だ無かったのだ。 「な……何言ってるんデスか!だ、駄目デスよ!!」 のだめは千秋の腕の中でもがいた。 千秋は器用にバス・ルームの扉を開け、バス・マットの上にのだめをそっと降ろした。 フランスはバスタブ付きのシャワー、つまり日本のように洗い場があるタイプではないのだが、 この部屋だけは、千秋が幼い頃家族で住んでいた時に洗い場付きの日本タイプに仕立ててあるのだ。 のだめはバス・マットの上で、絡まったシーツのせいで自由にならない両脚をバタバタと動かし、 しゃがみこみ、にじり寄ってくる千秋から逃げようと後ずさった。 千秋は膝をついてのだめをマットの上に押し倒し、両腕を掴んでその頭の上で抑えつけた。 「…ぎゃぼ!もう、せんぱ……」 のだめも裸体に近いが、もとより千秋は何一つ身につけていない。 見慣れた逞しいその胸に眩暈を覚え、のだめは頬を染めて口をつぐんだ。 強引さを装ってのプレイは、今までも何回かあった。 のだめは、本心は優しいとわかっている千秋が、 男の本能を隠さずに、わざと強引に自分を求める様子に弱いのだった。 手首を抑える腕の強さ。 自分を見下ろす、真剣な眼差し。 のだめに、それ以上抵抗できるはずもなかった。 「…いいだろ?」 途端に縋るような声色でのだめの髪を撫でる千秋に、のだめは目を瞑った。 すると、吸い寄せられるように千秋の唇がのだめのそれに重ねられる。 やわやわと、お互いの柔らかさと、唾液の温かさを感じ、 官能の舌触りを交歓する二人。 やっと唇が離れた頃には、のだめの目はとろんと溶け、 千秋のモノは再び硬くそそり立っていた。 「…あ、先輩、……おっきくなってマス」 嬉しそうな表情でぽやんとつぶやくのだめを誤魔化すために、 千秋は顔を赤くして抱きしめた。 「…いいから、風呂!入るぞ?一緒に!」 強引な言い方をしながらも、千秋は、のだめが返事を返すまでぴくりとも動かない。 のだめは、そっと千秋の背に腕をまわした。 「…しょうがないデスねぇ……千秋先輩はぁ、 たまに赤ちゃんみたいに駄々っ子になっちゃうんデスから……」 するとのだめは、先のキスで毒気が抜かれたように、 うっとりと千秋の胸に顔を寄せ、目を閉じた。 「いいデスよ……入りまショ、…一緒に……」 *** 「ほわぁ……お湯が張ってありマス……」 立ち上る湯気と共に広がる、ハーブの香り。 汗で湿ったシーツを千秋に剥いでもらうと、のだめは、 もうもうと湯気の立ち上るバスタブをうっとりと見つめて その芳しさを胸いっぱいに吸い込んだ。 「気持ち良さそうデスねぇ……それじゃ、よいしょっと…ぎゃぼ?!」 「お前!身体も洗わずに湯につかるなんて何事だ! 折角のオレ様が張った湯が汚れるだろーが!!」 早速バスタブにつかろうと身を乗り出したのだめの首ねっこを、千秋はむんずと掴んで引いた。 のだめの身体のあちこちに飛び散った、のだめ自身の蜜は別に気にならない。 しかしのだめの身体には、ティッシュで拭き取ってやったとはいえ、 千秋の白濁した液体がこびりついている。 その液が、自分たちが浸かろうとしている綺麗な湯に溶けてしまうことが、 千秋にはどうにも我慢ならなかったのだ。 「えぇぇ!だって、まずあったまらなきゃ始まりマセンよ?! のだめの家ではまずお湯につかってリラックスしてから身体を洗うのが 代々のしきたりなんデス!」 「ここはお前の家じゃねぇ!ふざけんなー!」 千秋はもはやのだめの肩口を腕に収め、 今にもお湯に触れようとするのだめをがっしりと引き止めていた。 「じゃ、じゃあシャワーで流しマスよ!」 「お前の汚れがシャワーだけで落とせるかー!!」 お互い裸体だというのに、色気も何もなく息を切らせながら、洗い場で均衡を保つ二人。 「う……しょうがないデスね。やっぱり先輩はカズオなんだから……」 のだめがバスタブへの突入を諦めて唇を尖らすと、 「…誰がカズオだ……」 千秋は、シャワーのコックを勢いよく捻り、適度な温度になったお湯をのだめの頭にかけた。 「わ!わぷ!先輩何す…がぼがぼがぼ」 逃げるのだめの頭にシャワーの攻撃を浴びせながら、千秋は腰掛を引き寄せてのだめを座らせた。 「いいからお前は黙って俺様に洗われてろ!」 そのまま、片手でシャカシャカとのだめの髪と梳く千秋。 のだめは千秋のその動作に、今度こそおとなしく身を預けた。 「先輩に髪洗ってもらうの久しぶりデ…がぼがぼ」 「喋ると口に入るぞ。黙っとけ」 その口ぶりは乱暴だったが、千秋の手つきは徐々に優しくなっていき、 のだめの頭皮を労わるように、心地良い力でのだめの心をほぐしていった。 のだめの髪は、少し伸びた。 お金も無いのに一体どこで切っているやら、のだめは数年来常に同じ髪型を維持していたが、 ここ数ヶ月は伸びるままにしているらしく (前髪は自分で切っているらしく、たまに妙に不恰好な長さで切り揃えられたりしていたが)、 しっとりと水気を含んだ猫っ毛は、素直に流れていた。 そののだめの髪は、千秋が嗅ぎ慣れた彼の使うシャンプーの香に包まれてゆく。 千秋は、言いつけ通りに口をつぐむのだめの髪を洗ってやりながら、 その髪の柔らかさにふと酔いしれた。 低い椅子に腰掛けて、頭をうな垂れているのだめ。 当然だがその華奢な身体には何一つ身につけていなくて。 白い肌はしっとりと水気をまとって、いつも以上にキメ細やかさを主張していた。 そして、組まれた腕の奥には、あの、胸。 意外なほどに豊かで、ピアニストでもある千秋の大きな掌に しっくりと馴染むあの豊満な胸が、窮屈そうに収められていた。 そして、うなじから背中にかけての、滑らかなライン。 指先から伝わる頭皮の感触が、千秋を昂ぶらせる。 のだめはシャンプーが入らないようにしっかりと目を瞑っているから、 千秋が今どんな表情でのだめの髪を洗ってやっているか知る由もない――……。 トリートメントを終え、健康的なしなやかさに彩られたのだめの髪は、 千秋の掌によって水気を払われた。 「ふぁー……、気持ち良かったデスー。今こんな気分デス〜」 頭を上げたのだめは千秋の掲げるシャワーで顔を洗うと、ぷはー、っと、笑顔を見せた。 「なんだよまたココナッツ島か?」 「違いマスー先輩の奥さんですー」 「アホかー」 言いつつも、つい緩みきった笑顔でのだめの顔を拭いてやる千秋。 そっと、耳周りまで丁寧に水気を拭いてやってから、 千秋は自分の髪をシャワーにさらした。 「ほら」 そう言ってタイル張りの床に腰を下ろすと、千秋はのだめに頭を突き出した。 「の…のだめ、人の髪なんて洗ったことないデスよ?」 のだめはシャワーを受け取ると、おそるおそる千秋の髪に触れた。 「俺だってなかったっつの。…爪立てるなよ」 のだめは腰を下ろしたまま、千秋の頭に手を伸ばす。 そうして、ゆっくりと、愛撫するように千秋の頭皮を撫で回した。 ……やべ、気持ちいい……。 千秋は目を瞑って、のだめの指先を感じる。 白いタイル張りのバス・ルーム。 柔らかな泡に包まれて、千秋は、一瞬とも永遠とも思えるようなのだめの指先に身を任せた。 「洗えましたヨー、先輩?寝ちゃいましたカ?」 シャワーを止めて顔を覗き込むのだめの声に、千秋はゆっくりと目を開けた。 「できるじゃねーか」 千秋はその夢のような数分間を名残惜しげに手放すと、 のだめの頭をわしわしと撫でた。 「気持ち良かったデスかー?」 にっこりと微笑むのだめに、千秋は頬を染めて視線を外す。 「ま、まあぎりぎり合格点かな」 言いながら千秋は、ボディーソープを手に取って、泡立て始めている。 「厳しいデスねー」 のだめはなんとなく嫌な予感を感じてあとずさりながら、 敢えて千秋の手元を見ないように背を向けた。 「じゃあ、早速お湯に入るとしマスかねー」 「今度は俺の番だよな」 さりげなく逃げようとするのだめの腕をそっと掴むと、 千秋はにっこりと笑みを浮かべてのだめを見つめた。 うさんくさいぐらい、作られた笑顔。 その両手いっぱいに泡立てられたボディーソープ。 のだめは予感が的中し、引きつりながら後ずさった。 背中にバスタブの堅い感触。もとより、逃げるなんて不可能だ。 「い、いいデスよ…のだめ、自分で洗えマスから……」 千秋はにっこりと笑顔を崩さずに、のだめを引き寄せた。 「ひぃっ!!」 「また人を強姦魔みたいに……」 千秋は溜息を一つついたが、泡立てた掌をのだめの首筋に這わせた。 「むきゃぁっ」 「変な声を出すな……」 千秋は、一瞬にしておとなしくなってしまったのだめの身体に、掌を這わす。 首筋から、華奢な肩口へ。 よく泡立てられたソープが、千秋の大きな掌を以ってのだめの身体を包んでいく。 「…気持ちいいデス〜」 目を瞑ってうっとりと笑顔を零すのだめは、千秋にされるがまま、 身体を差し出していた。 「お前の身体、柔らかいなー」 「むきゃー、太ってるってことデスカー」 「いや、学校始まってから痩せただろ。ちゃんと食わないともたないぞ」 千秋の掌は、細いけれど柔らかなのだめの二の腕を伝って、長い指先へ。 指先を1本1本、丹念に泡立てたソープで撫でてやる。 そうして、指の又を、殊更ゆっくりとした動作で拭ってやった。 「…っん、……」 思いがけずと言うべきか、思惑通りと言うべきか。 のだめの紅く染まった唇からは押し殺した甘いさえずりが漏れ、千秋は顔を上げた。 のだめは、先ほどとはうってかわった、とろんとした表情で自身の指先を見つめている。 「…な?いいもんだろ」 のだめはバス・ルームに立ち上がる温かい湯気に頬を染めながら、こくりと一つ頷いた。 「だからおとなしく俺様に洗われとけって言ったんだよ……」 千秋は人知れず満ち足りた笑みを浮かべた。 のだめをこの手で、滑らかな泡を以って洗ってやりたかった。 撫で回してやりたかったのだ。 指の又、手首、肘の内側。 千秋の指先が殊更皮膚の薄い部分をまさぐるたびに、 のだめは甘やかな吐息を漏らす。 千秋の掌が再び肩口へ戻った時には、のだめの瞳は既に熱く潤んでいた。 そうして、千秋の掌が肩口から殊更ゆっくりと伝い降りていくと、 のだめは豊かな胸を上下させて大きく息をついた。 「先輩の手……、なんか、エッチデスね……」 目を瞑り、熱い吐息とともに言葉を紡ぐのだめ。 千秋の掌は、指先は、緩慢にふくらみを伝ってゆく。 「エッチなのはお前だ。俺は身体洗ってやってるだけだぞ?」 するとのだめは困ったように眉根を寄せ、僅かに顔を背けた。 「違いマス…、先輩が、…っぁ……」 千秋の両の掌は、溢れる衝動にかられて、ついに、のだめの両胸のふくらみを包み込んだ。 大きな掌に、ぴったりと吸い付く豊かなふくらみ。 キメ細やかな白い泡が、その滑りをよくする。 「やぁっ…そんな風に、揉んじゃ、ダメ…です……」 泣きそうな声色で訴えかけるのだめは、ベッドの上とはまた違った表情を見せていて。 千秋は思わずごくりと唾を飲み込んだ。 「揉んでないって。洗ってるだけ……」 「せ、先輩の意地悪……っん、」 千秋の掌に触れた突起。 その感触を、白い泡の中に見え隠れする桃色を、千秋の掌は存分になぶっていく。 「やぁっ…や、ヤダヤダ、先輩、そんな風に触ったら、のだめ……」 甘い声色とは反対に、苦しそうな表情で なんとか逃げようとするのだめの上半身を千秋は片手でぐいと引き寄せると、 更に追い詰めるように、愉しむように、もう片方の手でむにゅむにゅとゆっくり揉みしだく。 「ゃ、ゃ……先輩、のだめ…なんか変デス……!」 のだめの両脚はきっちりと閉じられていて。 腰掛を軸に、まるで誘うようにもどかしげにくねられていた。 千秋は腰を支えた腕でのだめの身体を更に引き寄せると、 先ほど自身の手で洗ってやった耳に舌を這わせた。 「…ひゃぁんっ……」 びくりと大きく身体を揺らし、硬直させるのだめ。 「やらしいな、のだめ。自分で洗ってる時もそんな声出してるのか?」 相変わらず胸への愛撫をやめない千秋。 むしろ、掌と指先を余すことなく使い、その感触を愉しみながら一層のだめを追い詰めてゆく。 「…そんなわけ、ないじゃないデスかっ! のだめじゃなくて、せ、先輩がエッチなんデス……ッ」 のだめは何か言いたげに眉を寄せて千秋を見つめるが、 その余りに優しい、とろけるような微笑みに胸を突かれて、また視線を外してしまう。 「先輩は……、ズルい…デス……。のだめ、いやらしい気持ちになってきちゃいマス…」 か細く告げるのだめ。 千秋は腰掛の上でバランスを取ることすらままならないのだめを引き寄せると、 床に座る自身の腿に乗せ、その腕の中に収めた。 「もうなってるだろ?やらしいな、のだめは…」 そうして、一層まろやかにのだめの胸を揉み上げる。 あくまで優しく、ソフトに。白い泡をこねるように、塗りたくるように。 張りのあるのだめの豊かな胸を、持ち上げてはこねて、指先で突起をくすぐる。 白い泡が、面白いくらい千秋の掌を滑らせる。 「ひゃぁんっ…!!ぁ、や、先輩……!!」 のだめは逃げ出すことも叶わず、強く目を瞑り、千秋の胸にしなだれかかった。 時に膝に力を込め、びくりと背を逸らす。 すると千秋はその隙を逃さず、耳たぶを甘噛みし、舌を差し入れて蹂躙した。 「ゃ、ゃ、先輩、意地悪……!!のだめ、もう、もう……」 いやいやをするように苦しげに首を振るのだめが懇願すると、 千秋はのだめに口付け…というよりも、その唇を食む。 まるで、唇を、胸を、身体の隅から隅までを千秋に食まれているような感触。 のだめは感じるままに切ない嬌声を上げることしかできない。 「なんで意地悪?そんな気持ち良さそうな声出してるくせに……」 千秋がひときわ優しく胸を揉み上げると、 のだめの華奢な身体は千秋の膝の上でびくりと波打ち、悲鳴のような嬌声が上がった。 「い、意地悪デス…ッ!のだめ、先輩のせいで…っ、ぁんっ」 のだめの腰が、もどかしげに揺り動かされる。 「触って欲しいデスってば……ッ!!」 のだめは嗚咽交じりの声を上げると、幼子のようにしゃくり上げた。 千秋はそんなのだめに唇を落とすと、ゴメン、と呟いた。 「じゃあ俺に寄っかかって…ホラ脚、開いて……そうだ」 千秋は荒い息で肩を上下させながら不安げに見つめるのだめをバスタブの縁に座らせると、 自分の手とのだめのそこを軽くシャワーで流してやってから、 大きく脚を開かせ……ようとした。 「…やっ……恥ずかしいデス……ッ!」 しかし千秋はそんな抗議を無視して、無理やりのだめの膝を割り開いた。 バス・ルームの柔らかな光が、のだめの秘所を煌々と照らし出す。 「……ゃぁあっ……」 途端に両手で顔をおおうのだめだが、次の瞬間、大きく身体をのけぞらせた。 千秋がのだめの脚の間に入り込み、その中心に顔を寄せて…… 溢れてやまない蜜をいっぱいにまとった蕾をべろりと舐め上げたのだ。 「…ひゃぁんッ」 鋭い快感にのだめはびくりと身体を奮わせた。 そのままのだめの秘所を執拗に嘗めまわし、はじき、唇で挟むことを繰り返す千秋。 どんなに恥ずかしくても、その、身体の芯に直接響く快楽には耐えられない。 のだめは両脚を大きく開いて抵抗すらできないまま、千秋の舌に犯されていった。 狂おしい愛撫は、終わりが無いかと思うほど長く続いている。 千秋の端正な顔が、のだめの一番いやらしい部分にうずめられている。 それだけでも恥ずかしくて死んでしまいそうなのに。 自分でもわかるほどにぬるぬるとぬかるんだそこを、 おかしいくらい敏感になってしまったそこを、その千秋の舌や唇に、ひっきりなしに愛撫される。 「…ぁっ…あっ……ッぁ、ゃあん……ッ」 それでも始めは、多少抵抗していたのに。 のだめの脚は、今やもう限界まで左右に大きく開かれ、千秋の舌の愛撫を受けていた。 細い腰は、くねるように動かされている。 千秋を誘うように前後に動かされ、快感に酔いしれるようにひくひくと震える。 「…あ、あ、あ、…あ……ぁあ!!」 千秋が舌を差し入れれば、のだめの膝はびくりと宙に浮き、 嬌声と合わせてぶるぶると震えるのだった。 「……気持ちいいか?」 上気した頬に、水滴とも涙ともつかない雫を滴らせているのだめは、千秋の問いかけに素直に頷く。 「…ハイ……」 千秋はその長く堅い指先を、のだめのおなかを伝って滑らせていく。 ようやくのだめの触れて欲しい部分――今の今まで千秋がその舌を、唇を以って ねぶっていた部分に到達した時、のだめは再び微かに身体を震わせて、か細い声を上げた。 そうして千秋が指先を沈めてやると……のだめは軽く唇を開いて、は、と息をついた。 「うわ、のだめ、すごいヌルヌルしてる……」 「知りマセンッ…!」 そのまま千秋は、何の抵抗もなく長い指先を二本差し入れる。 ヌルリと飲み込まれるが、膣内はきゅっと締まり、千秋の指先はのだめに飲み込まれた。 「…ぁ……ぁ…、ぁ……」 のだめは千秋の腕の中で喉をのけぞらせ、爪先までピンと張り、腰を揺り動かす。 「のだめ、エロい……腰、振ってるぞ……」 「…そ、そんなこと……!!」 千秋は未だ泡に包まれたのだめの上半身を強く抱きとめ、かき回すようにのだめの内壁をまさぐった。 「…ぁ、は……っん、ん、…あ……!!」 のだめの腰の動きに合わせるように、千秋の指の動きは激しさを増してゆく。 そこは、ソープは洗い流されているのに。 のだめ自身の蜜によって、微かに白く、泡立っていた。 千秋の指先は、のだめの膣内のざらざらした部分を探り当て、一層強くこねくり回した。 「…ゃあっ!せ、先輩!のだめ……」 のだめは身体を震わせて、必死に訴えかけた。 「……うん」 いつもならここで無理矢理のだめに言わせる千秋だったが、 既に千秋にもそんな余裕は残されていなかった。 なにせ裸体の恋人が、腕の中で泡だらけになって胸を上下させ、 大きく脚を開いて自分の指を飲み込み、腰を振ってよがっているのだ。 「ちょっと待ってろ」 千秋が指を引き抜くと、のだめの身体は一層強く波打った。 部屋からゴムを取ってきた千秋は、袋を開けるのももどかしく、 手早く自身にかぶせて先ほどと同じように床に腰を下ろし、 力なく床にくずおれているのだめを抱き上げた。 「のだめ、脚開いて。ゆっくり腰、落として」 座位は初めてだった。 しかしのだめは、充分に焦らされた身体をもどかしげに動かすと、 躊躇することなく、しかしゆっくりと千秋の上に腰を下ろした。 …ズブ…… 「………ぅ、んっぁ、あぁん……っ!!」 重力と腰を支える千秋の手に助けられて、くぷ、と千秋を飲み込むと、 のだめは甘い吐息と共に一際倒錯した声を上げた。 「…っく……!!」 千秋もまた、いつにも増してまとわりつき締め付けるのだめの膣内に、 声にならない声を漏らす。 「…あ……全部……」 重力も手伝ってのだめの腰は限界まで千秋に落とされ、 千秋のモノを根本まで飲み込んでいた。 のだめ腿が千秋の腰にぎゅうぎゅうと押し付けられ、 小さなシャボン玉が幾つか舞った。 「…先輩、全部、……全部、……」 目を瞑って天井を仰ぐのだめが、うわごとのように繰り返す。 「ん、全部、……入ってるな」 のだめは千秋の首に腕をまわして力なくくずおれると、 ハァハァを荒く息をつきながら、その首筋にそっと口付けた。 すると、それが合図のように、千秋はのだめの背を抱え込み、勢いよく突き上げた。 「…あぁっ…あっ、ゃんっ!!」 律動。 落ちてくるのだめの身体を迎え撃つ千秋のモノ。 重力に逆らいようもないのだめは、されるがままに、千秋の激しい突き上げに 身を委ねるしかない。 「…あンッ!す、すご、せんぱ、あんっ!」 ……本当に、すごいな…… のだめの身体を抱きしめたまま幾度となく突き上げ続ける千秋は、倒錯した意識の中で思った。 のだめの全身にまとわりつくボディーソープのぬめりは千秋にも擦りつけられ、 まるで全身が性感帯になったかのように、気持ち良い摩擦を生じさせる。 特にのだめの、柔らかでいて張りのある大きな胸。 二つのふくらみが、まるで何かをねだるように、 千秋の逞しい胸に押し付けられ、こねられている。 千秋は片手でのだめの胸を掴むと、ぬめる肌を愉しむように揉みしだいた。 その間も、律動を送り込む。 ギュッっと締め付る膣内は千秋の肉棒を強く咥え込み、 激しく上下する動きに合わせて千秋をきつく攻め立てる。 バチン、バチンと、二人の腿がぶつかり合う。 幾つものシャボン玉が、まるで譜面に踊る音符のように軽やかに舞う。 そしてまたのだめの身体も、千秋の上で踊るように跳ねる。 初めてのシチュエーションに二人は高揚し、 快感の異常な高まりが、早くも限界の近さを予感させていた。 「…………のだめ」 千秋はのだめの唇を食むと、にゅるりと自身を抜いた。 「…ぁあんっ……」 千秋は、自身もハァハァと息を切らせながらのだめの手と腰を抱え込み、 バスタブの縁に手をつかせると、自分たちが今座っていた床に膝立ちにさせた。 「……センパ……何す…」 千秋はのだめが言い終わるのを待たずに、後ろから一気に突き立てた。 「…やあん…ッ!!」 のだめの喉がのけぞり、白い背が勢いよくしなった。 一瞬にして最奥まで押し込めると同時に、のだめが締め付けてくる。 千秋はあまりの快楽に顔を歪め、しかし更に押し込むべく、のだめの腰をがっしりと抑えつける。 そのまま、パン、パン、と打ち付ける。鮮烈に響く、肌のぶつかり合う音。 腰を引くたびに、膣内が絡み付いて、逃すまいと強く締め上げられる。 突き立てるたびに、恐ろしい弾力を以って、ひだに奥へと誘われる。 ズプリ、ズプリ、と耳をふさぎたくなるような淫靡な蜜音。 突き上げればのだめは、鋭く身体を波打たせて伸び上がり、 繰り返すたびに小刻みに、しかし激しく震わせて、喉から絞り出すような声を挙げるのだめ。 「…ゃあっ、あぁんっ!!ゃ、やだぁっ、き、気持ちいデス……ッ!!」 なぜか突き上げから逃げようとしてしまうのだめの身体。 その腰と肩に手をまわし、逆に更に密着し深く突き立てることができるように、 千秋は、のだめを腕の中から決して逃がさない。 低い声を漏らしながら激しく腰を振る千秋。 のだめはされるがままになりながらも、千秋の熱情に火をつけるがごとく、 感覚のままに甘く鋭い高い声を上げ続けている。 のだめの手は縋りつくものを探してバスタブの縁を掴もうとするが、 ソープの泡にまみれたその掌は、つるつると滑ってしまう。 頼れるものが何もないのだめは、ひっきりなしに強く、深くまで挿入される快感に 身を持て余し、降参するように声を絞り出した。 「…っん、あぁ…!!し、しんいちくん、のだめもうダメです……!!」 千秋は、悲鳴のようなその声と、快感に歪められた表情、ふるふると細かに震える身体。 そしてその呼びかけに、千秋は辛抱たまらずといった感じでのだめを抱え込むと、 より深く、強く突き上げた。 「…んっ、め…ぐみ、オレも、」 千秋は身体を震わせると、柔らかなのだめの肌に更に割り入るように、 限界まで強く抱き寄せて、のだめの膣内をえぐるようにこねくり回した。 「…やぁぁっっ……!!」 「…くっ…あぁ……ッ!!」 一つになった身体が一際大きくしなると、 二人の身体からは糸が切れたかのように力が抜け、床に倒れこんだ。 「ハァ、ハァ、……ん、ぁ……」 千秋は肩を上下させつつも、同じように荒い息をつくのだめに口付け、 ズルリ、と自身を抜いた。 「んゃ…ッ」 顔をしかめて嬌声を上げるのだめに、千秋もまた身体を震わせる。 そうしてくったりと力を失った彼女を抱き上げると、 一度強く抱きしめてから、泡とぬめる液体でべとべとになった身体をシャワーで流してやった。 もう一度のだめの身体を洗ってやり、自身もサッと洗い終えると、 二人は少しぬるくなってしまったバスタブに身を沈めた。 「…はあぁぁぁ……」 千秋の胸に背を預けるようにして湯につかったのだめは、 すっかり上気した頬で、心地良い溜息をついた。 バス・ルームには、千秋が入れたハーブのバスコロンのえもいえぬ芳しい香が充満していた。 その弛緩した華奢な身体を千秋は湯の中でゆったりと抱きとめ、 洗い立てののだめの濡れた髪に顔を埋めて、心地良さを満喫している。 「…気持ち、よかったデス……」 軽く目を閉じて顔をほころばせるのだめは、 甘えるように千秋の肩に後頭部を擦り付けた。 その猫のようなあどけない仕種に、千秋は笑みを零す。 「お前、泡だらけで腰振ってんのなー」 「ぎゃぼー!腰振ってたのは先輩でショー!!」 「…知らないな……」 バスタブの縁に残っていた情事の名残の透明な泡が、 湯気と共に、虹色のシャボン玉となって立ち上る。 温かいお湯の中で、二人は弛緩した肌を寄せ合い、長くそうして睦み合っていた。 その後仲良く二人で風邪を引いたのはご愛嬌。 しかし翌日他の部屋の住人から、音の響くバス・ルームでの深夜の大音量に苦情がきて、 色んな意味で真っ青になった千秋がいたのだった……。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |