千秋真一×野田恵
![]() 「じゃあ、2人はそっちの部屋…でいいかな? ベッド1つだけどいいよね?」 「充分だよな、千秋!」 「充分デス☆」 「……お前ら、うるさい…」 ここは音楽の都・ウィーン。 千秋の演奏旅行に休暇を利用して同行したのだめと、 久しぶりの再会に楽器を持って駆けつけた峰、そして、留学中の清良。 4人は、清良の下宿先で鍋パーティーを終えたところだった。 鍋パーティーとはいっても、そこはこの4人。 いつの間にか楽器を取り出し、即興のコンサートが開かれていたのだった。 「悪いな、清良」 「いいのよ、泊まってくれた方が楽しいし。どうせ部屋もベッドも余ってるし…」 ルームメイト募集中の清良の家は、一人で住むには広すぎて、 招待した清良の好意で、千秋たちは滞在先のホテルを引き払って宿を借りることになったのだ。 「シーツなんかはどうせお天気の良い日にまとめて洗っちゃうから、 気にせずに使ってくれて構わないからね。 それじゃあ、のだめちゃん、千秋くん、おやすみなさいー」 「清良さんどもありがとデス☆おやすみなさい〜」 にっこり微笑んで隣室に入る清良に、ワインで頬を染めたのだめが満面の笑みで手を振る。 「じゃな、…しっかし、お前らがな〜…ウププ、ま、良い夜を〜」 「シメるぞ」 清良に示された部屋は、峰たちの隣の部屋。 ちゃんと鍵もかかるし、新しくはないが綺麗に整えられた部屋。 アイボリーで統一された内装は、シンプルながらお洒落なものだった。 「ふおぉ…『赤毛のアン』みたいなお部屋デスね〜」 もの珍しそうに室内を見て回るのだめに、彼女と二人分の荷物を床に下ろすと、 千秋は、後ろ手で鍵を閉めた。 その頬は、のだめと同じく僅かに赤みがかっていて。 千秋は気付いていなかった。自分もまた、少々飲みすぎていたということに。 「のだめ」 千秋がその名を呼んで手招きすると、餌の時間の猫のように、のだめは笑顔で擦り寄ってくる。 4人で居るのも楽しかったけど、やっぱり2人きりは特別で。 のだめは千秋に促されるままに上目遣いで彼を見上げ、 千秋はそんなのだめの腰を抱き寄せ……唇を重ねた。 「んんっ……」 甘く喉を鳴らすのだめの両腕は、自然に千秋の首にまわされる。 のだめは少し背伸びをして、千秋は少し背を屈めて。 そうして千秋は、長くのだめを離さなかった。 ……やっと千秋が解放すると、のだめはフラフラとよろめいて、千秋の胸に顔を押し付けた。 「…おい、どうした?」 その柔らかな髪を撫でてやると、のだめは「アヘー」といつもの奇声を発する。 ……少し濃厚なキスをすると、今更なのに、すぐこれだ。 千秋は苦笑しながら、のだめを抱きしめ、その頭をそっと抱えた。 「大丈夫か?しっかりしろよ、…ったく……」 千秋がのだめの顔を上向かせると、そのままのだめは数歩下がって壁に寄りかかった。 「ちょっと、飲みすぎたみたいデスよ……」 「…ちょっとじゃねーだろーが……」 言いながら、思わず千秋はのだめの顔に釘付けになる。 のだめの瞳はとろんと霞がかっていて。 アルコールのせいで上気した頬は薄くピンクがかっていて、 唇はもう真っ赤だった。 のだめは明らかに酔っていた。 「センパイ」 のだめは上目遣いで千秋を見つめると、ワンピースのボタンに手をかける。 「…おい……」 1つずつ、ゆっくりと。千秋はその手つきと彼女の表情から目が離せない。 そして3つめまで開けたところで、のだめは壁にしなだれかかり、 露わになったキャミソールとブラの肩紐を、つい、と引っ張って見せた。 千秋もまた、そうと自覚がないままに酔っていた。 そんなのだめに誘われるように歩み寄り、その肩口へと唇を落とす。 「…っん……」 のだめが目をつむって鼻にかかった声を上げると、 それが合図のように、千秋の唇は鎖骨をなぞり、細い首筋へと辿ってゆく。 そんな千秋のキスを受けながら、のだめは、アハ、と緩みきった笑みを零した。 「……お色気作戦デスー。先輩ムラムラきましたか〜?」 冗談めかして微笑んで、再びワンピースのボタンを掛け直そうとするのだめだったが。 千秋の大きな手が、その手を取って制止した。 「…先輩?」 「もう遅い」 千秋はくぐもった声で言うと、のだめの手を壁に押し付けて、 その首筋から耳から、余すことなくキスを落としてゆく。 その唇の熱さに、のだめはハッっと我に返ったが。 「先輩……?」 千秋は無言の内にアワアワと焦るのだめのボタンを片手で全て外すと、 少し強引に、そのワンピースから腕を抜かせる。 パサリ、と軽い音を立てて床に落ちる、白いワンピース。 あっと言う間に下着姿にさせられてしまったのだめは、今更ながら蒼くなった。 何しろここは人の、清良の家。 しかも峰と清良は、すぐ隣の部屋に居るのだ。 「…先輩……じょ、冗談デスよ…?…ッぁ……」 しかし千秋は手を休めることなく、ブラをずり上げて、 露わになったのだめのふくらみを撫で上げた。 「シャレになんねーんだよ、もう、オレたちは」 …オレたちっていうより、オレは、の方が合ってるかな…。 頭の中でぼんやりと訂正する千秋だが、その手はもう止まらない。 のだめの両の胸は完全にブラから露わにされ、 千秋の愛撫によって、その突端は既に硬く存在を主張している。 「…せ、センパイ…だ、だめデスよ……ここ、清良さんのお家……」 「じゃあおとなしくしてるんだな。…声、出したら聞こえるぞ」 千秋のその言葉に、のだめはビクリと身体を震わせた。 「…ま、まさか先輩、本気デスカ……?」 柔らかく身体をまさぐる千秋の掌から逃げようとのだめは後ずさるが、もとより背後は壁。 逃げ場を失って、すっかり千秋に、壁に押し付けられるような格好になってしまう。 「…お前が悪い」 ……自覚ナシに、このオレを誘う真似事なんかするから……。 千秋の手は、くびれを伝って、下着をつけたままののだめの腰へ。 「…だ、だって、隣に……ゃんっ……」 躊躇なく下着から割り入れられた千秋の指先は、 最初、優しく撫でるように。 そのうち、段々と急き立てられるように、のだめの柔らかい部分をまさぐっていく。 そうして初めて、のだめは、彼に火をつけてしまったことに気付いた。 千秋はのだめに深く口付けてその声を封じながら、徐々に潤ってくるその部分を、 暴くように、焦らすように、こねていく。 壁を一枚隔てた隣に、峰たちが居る。 それは、リアルな切迫感を伴った、この上ないスリルだった。 声は出せない。 もし声が出てしまったら、今自分たちが何をしているかがバレてしまうから。 つい先ほどまで楽しく談笑していた仲間たちに、 自分たちが裸になって、いやらしいところをくっつけて、 卑猥な気持ちよさに我を忘れて求め合っていることがバレてしまう… それどころか、もし不審に思われて様子でも見に来られたら…と、考えるだけでも恐ろしい。 …恐ろしいのに、それは圧倒的に淫猥さがあって。 絶対見られたくない筈なのに、見られたらどうなってしまうんだろう、 峰たちはどう反応するのだろう、と思うと…… 千秋は、卑しい快感が高まってくるのを感じた。 天然でおかしなことばっかりするのだめの胸が実はこんなに豊満で、 意外にくびれた腰と滑らかな白い肌が、こんなにもいやらしいこと。 そして、官能に屈する表情の色っぽいこと。 そんな彼女の身体を、彼女の心ごと好きにして、めちゃくちゃにしている千秋。 彼女を激しく求めて肉欲に負けている千秋。 ……こんな痴態を、誰かに見られてしまうかもしれないなんて。 しかもそれが、親しい友人の峰と清良だなんて……。 酔いは、いつの間にか醒めていた。この代わりに千秋は、どんどんのだめに酔っていく。 千秋は倒錯しきった思いで、腕の中ののだめの柔らかい身体をまさぐり続ける。 彼女が声を必死に抑えようとしている、その苦しげな表情に益々煽られながら。 そして、今この状況に高ぶっているのは、千秋だけではなかった。 初めはただの冗談のつもりだったのに。 のだめは、千秋が濃厚なキスを求め、激しく舌を差し入れてきた時から、 こんなことになるのではないかと危惧……少しだけ、期待、してしまっていた。 アルコールで上気した頬は、千秋によって与えられる、別の熱にすり変わっていく。 隣の部屋には、友人たちが居るのに。 それでも、千秋の唇が、舌が、彼女に植えつけた官能に火をつけるから…… 衣服を全て剥かれ、こんな近くに峰や清良が居る場所で、全ての肌を蛍光灯の光の元に晒してしまうなんて。 そのあまりの羞恥に、のだめは、身体を震わせた。 ……しかし。 いつもよりも激しい口付け、執拗な愛撫、そして少しの意地悪をする千秋に、 のだめはくらくらと眩暈がするようだった。 意識が飛びそうな快感なのに、声を出してはいけない。 行き場を失った快感はのだめの中に篭り、内側から追い立てられるように、官能がどんどん高まってゆく。 のだめの身体は少しでも千秋から逃げようと、幼子のような頼りない抵抗を繰り返す。 彼が、自分を決して逃がさないとわかっていながら。 籠の中、まさに追い詰められた小鳥だった。 彼の端正な顔立ちに淫靡な色が添えられて、一層美しく、見える。 その彼に追い詰められたら、元より逃げるなんて不可能だ。 彼の大きな手は、長い指は、残酷なほどの快感をのだめに与え続ける。 声を、出したい。 気持ち良いこの官能を、思い切り漏らしてしまいたい。 けれどそれは不可能で。 のだめは、くぐもった声を喉の奥に押し込める。 何故と考えるまでもなく、隣に峰くんたちがいるんだから、と呪文のように頭の中で繰り返すのだめ。 千秋の愛撫は、いつもより執拗で、濃厚で… のだめはいつの間にか、足を軽く開き、腰を僅かに揺らしてしまっていた。 ……すると、ふいに、千秋の身体が離れた。 「……のだめ、声…、我慢できるか?」 いつの間にか二人とも床にくずおれていて。 のだめが目を開けると、千秋は彼女から身を起こし、立て膝でハァハァと、 押し殺した…しかし荒い息をついていた。 欲しい。…欲しい、もう……我慢なんてできない………… のだめは千秋の真意を察して、無我夢中で首を縦に振った。 ……声?声なんて、もうどうでもいい。 我慢できなかったら……その時は、もうどうとでもなれ、デス。 のだめは、もうとにかく、千秋が、欲しくてたまらなかった。 そして千秋は、のだめが頷いた時にはもう、自分の衣服に手をかけていた。 立ち上がってズボンから足を抜いて、乱雑に、しかし静かに放る。 そしてぐったりとしたのだめの身体をベッドに運んで横たえてから、 すっかり窮屈になってしまったボクサーパンツから足を引き抜き、鞄の中から取り出したゴムを嵌めた。 千秋は、組み敷いたのだめの身体に覆いかぶさるようにして、自身を宛てがう。 膣口に軽く触れただけでのだめの身体がビクリと震え、僅かに発声のある吐息が漏れる。 「口、閉じてろよ…」 千秋は片手を自身に添えると、くぷり、とねじ込んだ。 「……ッ!!」 途端に首にまわされたのだめの腕に力が篭り、 押し殺した、喉の奥から絞り出されたかのような僅かな声が漏れた。 そして千秋自身もまた、その拷問のような快感に眉をしかめながら、 朦朧とする意識をなんとか振り払おうとする。 とろとろに溶けたのだめの膣内は、びっくりするほど熱くてキツい。 絡みついて締め付ける襞、グチョグチョと粘着性のある音を響かせる、溢れかえった蜜。 千秋はのだめの頬に手を宛て、その表情を食い入るように見つめた。 眉は寄せられ、目は閉じられ、出せない嬌声を堪えるように、 呼吸すらままならないのだめの表情。 それは苦しんでいるとしか形容できない表情なのに、 千秋には、彼女が今猛烈な快感に蝕まれているのだとはっきりとわかる。 そんな彼女の表情と、柔らかさを以って間断なく強く締め付けてくる熱い膣内に誘われるように、 千秋は腰を進めてゆく。 ズブリ、ズブリ、と その一瞬一瞬を迎えるたびに千秋は低い呻きを必死で堪え、 のだめは口を大きく開けて首をのけぞらせたまま、淫らに脚を広げて、更に奥まで千秋を迎え入れた。 …気持ち良すぎる…… 全部挿入しきると、千秋はすぐさま腰を引き、再び、今度は力強く押し込んだ。 のだめの身体がはねて、反動で、その目尻から一滴の涙が伝う。 繰り返し、繰り返し、鈍い水音をさせながら、千秋のモノがのだめを深くえぐり続ける。 のだめはひくひくと小刻みに身体を震わせては、苦しそうに顔を歪める。 歯を噛み締めて、喉の奥から、声にならない声を漏らす。 しかし、激しい律動で突き上げられるたびに、今にも鋭い嬌声を上げるかのごとく唇を開いてしまうのだ。 「のだめ……わかってるのか?お前、が、声上げたら、峰たちに聞こえるんだぞ……」 千秋は腰を打ちつけながら、のだめの耳元で、ごく小さな低い声でささやいた。 のだめはびくりと震え、そして、その今まで聞いたことが無いような 千秋の低い声と熱い吐息に、「……あ」、と小さく声を漏らす。 「…峰が、今入ってきたらどうなる……? 裸で、足開いてよがって…お前のこんな格好、あいつに見られるんだぞ?」 のだめはその千秋の言葉を拒否するように目をきつく閉ざし、顔を背けた。 もはや、もう何かを答えられるような余裕がないことくらい、千秋にも簡単に見て取れる。 しかし千秋は、のだめを責めることをやめるつもりは、さらさらなかった。 のだめを追い詰めるような意地悪を言うことで、自身の快感が一層高まっていくのを感じていたから。 そして、羞恥のあまり泣きそうな表情をしているのだめが、あまりにも可愛かったから。 グチャ、グチャ、といういやらしい水音と、パン、パン、という互いの摩擦音が部屋に響いている。 のだめは倒錯した意識の中で思った。 ……もし…峰くんたちに見られたりしたら…… 自分自身ですら直視できない程あられもない姿。 二人とも、裸で。のだめは大きく脚を開いて、千秋はそんなのだめに自身を差し込んでいて。 激しく律動して、快感のままに顔を歪ませて。 そんなところを峰に想像されてしまったら、ましてや見られてしまったら…… さすがののだめでも、恥ずかしくてもう顔を合わせられない、と思った。 だからのだめは、口許を押さえて嬌声を耐える。 しかし。 千秋は、そんなのだめの手をどけさせると、その頭上で抑えつけた。 「…ホラ、こんな格好。お前、犯されてるみたい。胸、峰に丸見えだぞ?」 のだめは泣きそうな表情で首を左右に振る。 「…センパイ……意地悪デス……」 こんなに恥ずかしいことを言われているのに、 どんどん気持ちよくなっていく自分が、なんだかとても淫らになった気がして。 意地悪に微笑んで耳を塞ぎたくなるような事を言う千秋が、とてもいやらしうてで。 それなのに、意地悪なことを言われて益々昂ぶっていく自分の身体と、 同じように、苦しくも気持ち良さそうな顔をしている千秋。 のだめは、怖いくらいの快感に、無我夢中で首を振ることしかできない…… のだめは涙をにじませて、千秋の与える快感に犯され、なすがままにされている。 抵抗もできずに、ただ、その身体を大きく開いて。 時折上がる微かな嬌声は、彼女が最大限に我慢した結果だとわかる。 なぜなら彼女の表情が、快楽の渦に巻き込まれて、苦しそうに恥ずかしそうに歪んでいるから。 …とても、綺麗だと思った。 のだめを追い詰め、意地悪なことを言えば言うほど、自身の征服欲が増してゆく。 ……もっと。もっと、こいつをめちゃくちゃにしてやりたい…! 千秋は間断なく腰を打ちつけながらも、 必死になって快感に耐えるのだめの白い首筋に吸い付くように唇を落としてから、 その豊かな胸に片手を這わせた。 「…ぁ……ッ」 のだめは一層強く目をつむり、身体を縮こませる。 それに伴って、膣内も更にキツく締められ、千秋の背が粟立った。 思わず達してしまいそうになる誘惑と必死に戦いながら、 千秋は、彼女の頭上でその両腕を拘束した左手に力を込めた。 そうして途切れることなく腰を強く押し込み、右手でのだめの胸を自在に揉みしだいていく。 クリームのように柔らかい乳房は千秋によって思うままに乱され、 その長い指先が、ピンク色に染まって堅くなった突端を掠めるたびに、のだめの背が勢いよくしなる。 千秋は、誘うように中空に向かって突き出された胸に、唇を寄せた。 柔らかいふくらみに、……堅い突起に。 「…ぁっ…やぁッ……!!」 「声出すなって……」 千秋は必死で快感に耐えるのだめの表情をちらりと見て、人知れず微笑むと、 再びその胸を食むように唇を落とし、突起にぐりぐりと押し付けては、舐め上げた。 そうしていつしか、千秋もまたきゅっと目をつむり、 腰と舌に全神経を集中させるように、一心不乱にのだめを暴いていく。 「…せ、センパ……」 のだめは、大きな胸を一層上下させて、やっとのことで目を開けた。 その間も、胸への愛撫と千秋の律動は止まらなくて。 ズン、ズン、と突き上げられるその気持ちよさ。 千秋が最中に目を瞑るのは、よほど昂ぶっている時だと、のだめは知っていた。 そして、眠る時のそれとは違う、この上なく色っぽい表情だということも。 セックスの最中の千秋は、それは美しい。 眉は高められた官能に苦しげに寄せられ、 すっとした鼻筋は、光を背にした千秋の頬に影絵のような陰影を生んでいる。 のだめはそんな千秋の表情にぼぅっと見とれながら、 その千秋が一心に自分を貪る、その幸せと快楽に酔いしれた。 そうして徐々にのだめの腰も、千秋の律動に合わせるかのように、前後に揺さぶられていく。 …つと、千秋の額から流れ落ちた汗が一滴、のだめの胸元に伝った。 「…センパイ、センパイ…センパイ……」 波打つ身体から搾り出すように、のだめはか細い声で、うわ言のようにその名を呼んだ。 そんなのだめの両腕の拘束を解くことなく、千秋は再びその耳に唇を寄せると、 舐め上げながらささやいた。 「…そんなに、峰たちに見られたい?いつもより、凄い…いつもよりずっと濡れてるぞ……」 「……ゃぁぁ………」 のだめは茶色がかった猫っ毛を汗で額に張り付かせながら、思い切り首をぶんぶんと振った。 そして、声にならない思いを、心の内で思い切り叫んでしまう。 ……いつもより感じてるのなんて、そんなこと、とっくにわかっているのに。 こんな、隣に峰くんたちが居るって思うだけで、こんなに気持ち良いなんて、変態みたいでイヤなのに。 先輩が意地悪を言ったり抑えつけたりするたびに、もっと、って思っちゃうなんて、恥ずかしいのに……!! のだめの目には、快感と羞恥からくる涙がにじんでいる。 「…なぁ、のだめ、答えろ…よ……やめるぞ……?」 言葉遣いはキツイに、その口調はどこか甘くて。 「や、やめちゃ、ヤ、デス……!!」 慌ててそう答えるのだめだが。 彼女と同じく、荒い息遣いの合間にとぎれとぎれにささやかれる千秋の声に、 のだめはどんどん頂点に押し上げられてゆく。 「じゃあ言えよ…お前、峰たちに…見られたいんだよな……?」 「…そ、そんなこと…思ってマセン……ゃ、ゃだ、恥ずかしい…!!」 千秋がのだめの片脚をガバリと開くと、のだめは泣きそうな声を上げた。 その言葉に合わせるように、彼女の膣内が一層千秋を締め付ける。 …恥ずかしい?こんなに恥ずかしいことをしてるのに、これ以上恥ずかしいことが? ……あるわけ、ない。 千秋はその締め付けに耐え切れずに、更に激しく腰を前後させた。 前後させながらもその最奥を突くたびに、グリグリと、まわすように、こねくりまわすように、 のだめの膣内を、身体中で思い切り味わう。 パン、パン、パン、と、卑猥な音が響き渡る。 両腕を拘束されているのだめは、迫り来る快感に流されまいと千秋に抱きつくことも叶わず、 声すら満足に上げられず、無防備な状態で一番深い、感じる部分を突き上げられる。 徐々に二人の熱い吐息が重なり、ある一点に向かって急激に集束を始める。 のだめの締め付けが一層強くなり、その身体が、ブルブルッっと震えた。 「……ゃあッ!!…だ、だめ!のだめもうダメデ…ス……ッ」 のだめが悲鳴のような鋭い声を上げると、千秋は慌ててその唇に自らのそれを重ね、塞いだ。 「…ん、ぐ、…んぅ……」 我慢できないほど上り詰めた快感からもたらされる嬌声を、 千秋の舌に舐め取られ、激しい口付けに更に翻弄されるのだめ。 一時の間口付けて、嬌声を封じ込めると共に心ゆくまでのだめの口内を味わった千秋は、 のだめの両腕を拘束したまま、もう片方の手でのだめを抱いた。 そうしてその耳に、甘い吐息と共に、ささやきかける。 「…の、のだめ、…名前で……呼んで…」 のだめは仕草でもう一度キスをねだると、同じように熱い吐息を漏らしながら、呼んだ。 「…しんいち、くん……?」 「……もっと……ッっく…」 のだめは、潤んだ目をぱっちりと開けて、揺り動かされて焦点が定まらない中で、 千秋の目をしっかりと見つめて、繰り返す。 「しんいちくん…しんいち、くん……しんいちくん………ッ!も、イっちゃ……!!」 「…ぅ…ぅ、く!!」 ビクンッとのだめが大きく震えて達すると、その容赦のない締め付けに、 千秋もまた果てた…… 徐々に熱が引いてから、お互いTシャツとズボンという簡単な夜着に着替えて 寄り添ってベッドに横たわった。 そうして千秋はのだめの手首をそっとさすってやり、 千秋は申し訳なさそうにその手に唇を落とす。 「……悪い…。大丈夫か…?」 しかしのだめは、にっこりと微笑んで答えた。 「ダイジョブですヨ。それよりのだめは、…真一くんが、その…………」 頬を染めて毛布に頭までもぐりこみながら、千秋に背を向けるのだめ。 「なんだよ、はっきり言ってみろよ……」 のだめを後ろから抱きしめ、千秋は彼女を逃がさない。 そうしてその豊かな胸に手を乗せて、 セックスの時とは違う、穏やかな癒しを得るように、そっと揉んだ。 「…ぅうーん……。し、真一くんが……ちょっと意地悪で、すごくエッチで……」 「イヤだった?」 千秋はのだめを抱きしめながら、腕枕をしてやる格好で、優しく訊ねる。 勿論、胸を愛撫する手は止めずに。 「…イヤって言われても、なんていうか…さっきは、つい… でも…どうしてもイヤならなるべく…努力は……」 ごにょごにょと口ごもる千秋に笑みを零しながら、のだめは振り返った。 そして腕枕に頭を預けたまま、その胸に頬を摺り寄せる。 「…のだめ、ドキドキしました。…たまにはいいかな、とか… ……だって先輩、のだめいつもより……」 そこまで言うとのだめは恥ずかしそうに頬を染め、千秋の胸に顔を押し付けて小声でささやいた。 「…濡れてたんでショ……?」 その小鳥のようなささやきを聞き逃さず、千秋は優しく微笑むと、 恥ずかしがるのだめの顔を上げさせて、そっと口付けた。 何度交わしても飽き足らないといった風に、繰り返し…繰り返し。 「…あ、でも、のだめ…最後の方声抑えられなくて……だ、ダイジョブ…デスよね…?」 急に隣の部屋の存在を思い出したのだめが蒼くなって千秋に身体を寄せると、 千秋はその華奢な身体を抱きしめて、今度は頬に唇を落とした。 「…大丈夫だよ。仮にも音楽家の家なんだから、防音くらいしてあるだろ…」 そこまで言って、千秋は、あ、と口をつぐんだ。 目の前には、もしかしなくとも、頬を膨らませたのだめ。 「……先輩?確か先輩、散々言いましたよね… 『峰に聞こえる』って……、あれ、ウソだったんですか…ッ?!」 口を尖らせて真っ赤な顔をし精一杯抗議するのだめに、 苦笑しながらも、バツの悪そうな顔を視線を逸らす千秋。 「…は、恥ずかしかったんデスよ…!だからのだめ、苦しいの我慢してたのに!」 「……でもお前いつもより感じてたし」 「…こ、声出せないと、なんか変になっちゃうんデス!」 「じゃあこれからずっと声禁止にするか……」 「ムキャー!!」 そのまま暫く、二人じゃれ合っていたが。 「……センパ…、しんいちくん」 のだめは千秋の首に腕を絡ませて、その目を見つめて、ささやいた。 「お願い、デス」 「なに?」 小首をかしげる千秋に、のだめは少し上目遣いで見つめてから… …照れたようにはにかんで、言った。 「しんいちくんも、名前で呼んでくだサイ」 すると千秋もまた、優しく微笑んだ。 そっと額にキスをして、瞼、鼻先、そして……唇。 「めぐみ」 そっとささやくようにその名を呼んで、なんとなくこそばゆく、照れた微笑みを交わす二人。 しかし、その時。 「…ぁんッ…ゃ、ダメよ、聞こえちゃう……!!」 「大丈夫だよ、あれだけ激しきゃ、あっちは終わってすぐ寝てるって……」 のだめと千秋はギクリとして顔を見合わせた。 「それに、あんな濃厚なセックス聴かされて、黙ってられるかよ… のだめのやつ、意外に色っぽい声出すし」 ……。 のだめの顔から、サーっと血の気が引いていく。 「…うん……。千秋くんも…、ストイックに見えるのに、あんなに激しい人だったのね…愛の力かしら♪」 …………。 千秋は眩暈を必死に堪えながら、額に手を宛てて深く枕に沈みこんだ。 「それにしても…」 「あぁ…」 まだ何かあるのかと、押し黙って耳を澄ます、壁のこちら側。 「千秋くん…S入ってたなんて驚いたわ…」 「毎回あれじゃ、のだめも大変だな…」 蒼くなりながらも、思わずプッと吹き出してしまうのだめ。 そんなのだめの頭を、千秋は複雑すぎる表情で抱きしめた。 「でも…」 「うん?」 「何となく前からそんな雰囲気あったかも、千秋くん……」 …………。 …………。 「…しんいちくん……、声、筒抜け……?」 「…き、聞こえないフリをしろ……ね、寝るぞ……」 深い後悔に襲われながら、最中とは違った意味でキツく目を閉じる二人の耳に、 隣の部屋の声や物音は、一晩中聞こえたとのこと。 「(…み、峰くんたちにのだめたちの…聞かれちゃった…全部……?!)」 「(…オレ、今日何したっけ…。いつもはもう少しノーマルなのに……)」 しかし当然ながら、二人がゆっくりと寝られる筈などないのであった…… ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |