視線の先には
千秋真一×野田恵


なんつーか、やっぱりおまえの思考回路はよくわかんねぇな。
真性の変態かと思うと、変なトコロで純情というか何というか……。

「視線の先には」

さっきから何か妙な視線を感じて顔を上げると。
のだめと目があった。
途端に嬉しそうな顔をして微笑むから。
つられて口元を緩めそうになるけれども咳で誤魔化して、再びスコアに集中する。

いつものように二人で晩飯を食べたあと、のだめはピアノを弾き始め。
オレはそのBGMに耳を傾けながら一人黙々と楽譜に目を通していた。
やがてピアノの音が止み、ふと見るとのだめは本を読んでいて。

「最近、曲の構造を勉強中なんデス」

フーンと鼻を鳴らしながら言った彼女の言葉を
思い出した。
勉強するなら自分の部屋行ってやれ、とオレは言ったのだけれど。
ヤです、と一言返事をするのもメンドクサイといった様子で真剣に文字を追っていたから。
ま、いいかとそのままほうっておいた。
そして今に至るのだが……。

またもや視線を感じたので、今度は顔を上げずに言葉を掛けた。

「おい、勉強はもういいのか?」

ギャボッ! と奇声を上げながらのだめはボソボソと言い訳を始める。

「……だって、なんか難しいんデスよこの本」
「ふーん」
「マンガとかで面白わかりやすく説明してくれるモノないデスかねー?」

あるわけねーだろ! とつっこむとそですよネーと悪びれもせず笑った。

「終わったんならもー帰れよいいかげん」

タバコに火を付けながら言うと、意外にも「おジャマですか?」という殊勝な
答えが返ってきたので。
びっくりして顔を上げた。
見ると、少し俯き加減にちょこんと座っているのだめがいて。

思わず「いや、邪魔じゃないけど……」と本音を漏らしてしまった。
よかった〜と無邪気に笑うのだめの姿に。
顔が赤くなるのを感じながらでも、とオレは続ける。

「オレ黙って楽譜見てるだけだし、おまえつまんないだろ?」
「いえぇ、先輩見てるだけでのだめ充分楽しいデスよ?」
「見てるだけで楽しいって……。オレ別になんもしてないぞ」

オレの言葉にのだめは首をかしげながら笑った。

「何をしてるでもいいんですヨ。……先輩にはこの乙女ゴコロがわかんないデスか?」

はあ!? と疑問の表情を浮かべるオレにのだめはそんなんじゃ王子失格デスネと
鼻で笑いやがった。

「うるせー! だいたいその視線が気になるんだよ!!」

言い放つと。

「じゃー影でコッソリ見つめてマス……」

そう言ってトボトボとピアノの裏に回り、顔だけ覗かせて少しいじけた目を向けた。
その様子にオレはぶっと噴出して、それじゃあ余計気になるだろと楽譜をしまい。

「コーヒー入れるけど、飲む?」

と聞いた。

すると、「飲みマス!」やっぱり嬉しそうに笑った。

お湯を沸かしている間にコーヒー豆をミルでゴリゴリと挽いていると。
のだめが後ろからオレの手元を興味深そうに覗き見ている。

「また乙女ゴコロってやつか?」

からかうような口調で言うと。
そーですヨーと飄々とした感じで答えたので。
オレは少しこいつに意地悪をしたくなった。

ミルから手を離してのだめの顔をじぃ、と見つめる。
すると初めはキョトンとしていたのだめの顔がだんだん赤くなり、ふいと目を逸らした。

「な? じっと見られると困るだろ?」

そう言ってフフンと笑うと。

「せ、先輩は乙女じゃナイからだめなんデス!」

真っ赤な顔をしたまま頬を膨らませた。

「まー確かに乙女ゴコロってのはわからねーな。だって見つめてるとさ……」

こーいうことしたくなるし、とオレはのだめの腕を掴み。
その耳元に唇を寄せた。
途端にひゃっという声が上がるが無視してそのまま首筋に舌を這わせ。
最後に深く口付ける。

「……んんっ」

漏れ出る甘い吐息に心の中でしてやったりとニヤリ笑いつつも。
唇を離した瞬間に見えた、上気した頬と濡れたように光る瞳に。
オレの余裕はどこかへ吹き飛んでいった。

そのままのだめを抱き上げてシンク横の空いたスペースに座らせ。
後ろのファスナーを下げ、ブラジャーのホックを外す。
ワンピースから肩紐ごと腕をぬくと、パサリという音とともに上半身が露になり。
オレはそのふっくらと丸みを帯びた胸に手を伸ばし、頂を指で転がす。

「ちょっ……、待って――」

言いかけたのだめの唇を再び自分のそれで塞ぎ。
ゆっくりとふくよかな胸の感触を味わう。
やがてのだめの腕が抵抗するのを止め、オレの背中に回されるのを確認すると。
オレはワンピースの裾から手を差し入れ、そこがもう充分に濡れていることを
確かめてから下着を剥ぎ取り。
一気に中へ入っていった。

「んっ……、あぁっ!」

お湯が沸いたことを告げるケトルの笛音に混じって、のだめの甲高い声が上がる。
その汗ばんだ額を撫でると、うっすらと目をあけて見つめ返してくる。
こういう視線は、悪くないんだけどな……。
そう思う自分に心の中で笑いながら、もう一度口付けると。
のだめの片足を持ち上げ、さらに深く彼女の中に沈みこんでから。
自身を解放した。

「……もうっ! 先輩の視線はオオカミさんデス!!」

そう言って恥ずかしそうに俯きながら怒るのだめにおれはゴメンと謝りつつも。
男は見つめられても見つめても、その相手を抱きしめたくなるんだよなと
勝手に頭の中で自分の行動を正当化していた。

「コレが乙女の視線というやつなのか……?」

ふざけんな――っ!!! ギャボ――ッッ!!! 
千秋がのだめの盗撮写真を発見していつもの夫婦漫才が行われるのは
もう少し先の話。






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