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千秋真一×野田恵


温かな湯気が狭い室内にたち込め。
足元には頭上から落ちてくる飛沫のたてる音が賑わう。
水は身体のあちらこちらに幾筋もの流れをつくり。
蜜事のほてりが残る肌の上を出会い別れてやがて渦に巻き込まれる。

その唇はあらゆる所を彷徨い。
その指は知りうる全ての快楽をもたらし。
貴方は何度も私を死へと導く。

先程まで彼の人の指や唇に翻弄されていた身体が。
私の元へ還る瞬間。
全てを熱い雨に漱ぎ。
水音だけが響くこの小さな空間で。
密かにけれども大きく息を吸い込む。

瞼を閉じて感覚を開き。
静かにその刻を待つ。
水滴が瞑られた瞳の扉を叩き。
私は新たな身体を抱きしめ。
右手は蛇口を捻り儀式の終わりを告げる。

タオル1枚を巻きつけた姿で。
彼の人の息を飲む音が聞こえる。
ふうわりと伸ばした腕は。
やはり捕らえられて自由を失う。
そして、彼の人は理性を失う。

新しい身体には再び所有の跡がつけられ。
私はクスクスと笑い声を上げる。
それもつかの間。
瞳が、唇が、指が、私が、彼が。
出会い別れてやがて光の渦に巻き込まれてゆき。

貴方は百も千も、私の身体を所有する。






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