今一番欲しい物
千秋真一×野田恵


最初は一週間程前。
いつものように、千秋の家で早めの夕食を取り、のだめは学校の課題で
分からないところがあると言い、ソファで二人、あーでもないこーでもないと
仲良く議論していた時のことだった。

突然BGM代わりにしかなっていなかったテレビから卑猥なあえぎ声が響く。
どうやら映画の中の過激なラブシーンのようだが、こういう時、誰かといると
非常に気まずいのは、ここパリの地でも同じだ。
ましてや、まだ肉体関係を結んでいないカップルにとっては針のむしろ以上の何者でもない。

「だ、だから、この時の主題が、えっと第三楽章で生きてきてるんだろ?」
「第二楽章じゃなくて…第三ですか?和声パートしかないですけど…」
「あっそうそう第二楽章の…」

ぐだぐだになった議論は、ますます二人を妙な雰囲気にさせる。
気まずい雰囲気だけ残し、テレビは別のシーンへと変わった。
その後は、なんだか居心地が悪く、あいつは、明日の準備があります!と部屋に戻っていったけど…。

俺も何年もシてないし、人並みに性欲もある方だけど、付き合い始めてしばらく経つのに
のだめに手が出せない。
というかなんだかうまく交わされてるような気もしてきた。
あいつだってもう20歳過ぎなんだから、なんにも知らないってわけじゃあ無いと思うんだけど、
なぜかそういう雰囲気に持っていけない。

「はぁ…。」

つい、ため息をこぼしてしまう。
明日から公演が始まる。
最終チェックをしなければと、スコアに手を伸ばした時だった。

ピ〜ンポ〜ン♪

来た…。
時計を見ると6時を回ったところで、夕食の時間には早い。
っていうか考え事をしてて、何の準備もしてなかった!
まぁいいか…その辺でテレビでも見ててもらえば。
そう考えドアを開けると、案の上のだめはいた…が、何か違う。
のだめは、いつものワンピースでは無くて、薄手のピンクのニットにチェックのミニスカートを
履いて、珍しくきちんとメイクをしていた。

「突撃!北の将軍様!!」
「はぁ〜?」

見とれている場合では無い。
また何奇抜なこと言い出すかと警戒したが、要するに俺を外食に誘いたいらしい。

「うっきゅっきゅ〜。ターニャとお買い物してきたデスよ。カウンターでお化粧してもらったんですけど
変じゃないデスか?千秋先輩を拉致って今日はお洒落なお店でディナーしたいんデスけど〜。」

人差し指をツンツンしてカワイコぶってるが、要するにどっか連れて行けってことらしい。

でも、改めてよく見ると、明らかに男好みの服のセンスと言うか、体のラインがよく分かると言うか…。

「その服、ターニャが選んだんだろ…?」
「しゅごーい!なんで分かったんですか?」
「いや、なんとなく…。それより、どこ行くんだ?明日の公演の前祝いしてくれるんだろ?」
「あ、お金は今日使っちゃ…あ、ちょうちょ…」
「ごまかすな。」
「も〜!!それより早く着替えてのだめをエスコートしてくだサイ!」

また丸め込まれてしまった…が、欧州育ちの俺様のプライドにかけて、ジェントルマン振りを発揮したい所だ。
まぁ純粋に可愛く着飾ったあいつを見せびらかしたいだけなんだけど…。

さて、どうするか。
エスコートって行ってもあいつの格好結構カジュアルだしな。
タイは無しでもいいよな…。店は…。

色々思案していると、リビングからのだめがピーピーとうるさい。

「先輩!のだめ米が食べたいので、前行った和食のお店がいいデス。」
「お前の言う“お洒落な店”ってそんなんかよ…。考えて損した…。さ、行くぞ。」

ジャケットを羽織り、通りに出ると、のだめがいつものように腕をからませてくる。

「ふぃー、寒〜い。日本だったらとっくに春なのに…。」
「バカ、当たり前だろ、フランスは日本より北にあるんだから。わかったらもっと暖かいカッコしろよ。」
「でも、こうしてくっついてれば暖かいデスよ。二人はいつも一緒デス…。」

そう言ってますます寄り添ってくる…が、腕に当たる感触に顔まで赤くなってしまう。

「お前、計算してやってんのか…?」
「えっ、単位ですか?足りてますよ。」

なぜそうなる…。っていうかはぐらかしてないか…?

「ふぉー。お腹いっぱい…。やっぱり日本食はいいデスね。先輩!」

日はすっかり暮れ、人通りもまばらになったシャンゼリゼ通りを、のだめは数歩先をルンルンで歩きながら
千秋を振り返る。

「あ、あぁ。しかしお前よく食うな…。お前を飼ってからエンゲル係数上がりまくりだ、まったく…。」
「そんな人を穀つぶしみたいに言わないでくださいよ…。今日は、先輩の公演を祝してプレゼントがあるんデス!」
「え?」
「何だと思いますか?」
「何だと思う…って…。指揮棒とか?」
「そ、そこまでいい物じゃないですよ…。でも!先輩の今一番欲しい物デスよ!」
「今一番…」

つい、立ち止まって考え込んでしまうが、欲しい物と言えば一つしか思い浮かばない。
それは、やっぱり…。そうなのか!?それで、今日は着飾ってるのか!?

「うきゅ〜。帰ってからのお楽しみデス!寒いから、早く帰りましょ!」
「あ、ああ…」

のだめに引っ張られ歩き始めるが、頭の中では疑惑が確信に変わり、もうその気になってしまう千秋だった。

アパートに着き、部屋に入るなりのだめに促されるまま、ソファに座らされる。

「先輩、今からのだめがいいって言うまで目を開けちゃダメですよ。」
「はぁ〜?なんで…」
「いいからいいから♪」

これからの展開に期待を抱きながらも、素直に目を閉じた。

妙に楽しそうだなこいつ…。目を閉じてる間に全裸になってるとかか?
いきなりそれは無いか…。せめて下着姿だろうな…。いかん、ドキドキしてきた…。

言われるまま目を閉じている千秋を横目に、のだめは静かに動き始めた。
できるだけ音を立てないように慎重に気を配ってセッティングしようとするが、千秋の部屋の廊下は
幅が狭く、どうしても壁にぶつかってしまい、音が出てしまう。

ガタ…ドン…あ…壁紙…まいっか…ガタタ…

「………のだめ。」
「ぎゃっ、な、なんですか。床に傷は付けて無いですよ!」
「床…?」
「あー!ダメです。まだ目ぇ開けちゃダメ!」

しかし、千秋はうっすら目を開けると同時に、やり場の無い怒りにふるふると体を震わしながらも静かに必死なのだめに声を掛けた。
思ったのと真逆のプレゼントに、怒りは倍増してしまう。

「……のだめ、それはコタツに見えるが、気のせいか…」
「あーー!!目ぇ開けちゃダメって言ったじゃないデスか!ひどいデス!」
「ひどいのはどっちだーー!」
「だって、先輩、こないだ久しぶりに鍋がしたいなって言ったじゃないデスか!だからのだめ…」

くそっ!今日こそはと思ったのに…こいつに普通の行動を期待したのが間違いだったのか…。
しかし、このまま引き下がるのは自分が不憫すぎる…。
もう、こいつがその気になるのを待ってられん…。

千秋は最後のコードをつなげようとしているのだめの腕を引っ張った。

「ぎゃぼっ…コードつなげないと使えないデスよ!」
「安心しろ、使わないから。それより、俺の一番欲しい物くれるっつったよな」
「えっ、せんぱ…」

まだ喋ろうとするのだめの唇をふさぎ、ソファに押し倒す。
腕を押さえているせいか、まだらの電源プラグは静かにのだめの手から落ちた。

それまでの期待とさっきの怒りが相まって、強引にのだめの歯列をこじあけ、その間に舌を滑り込ませる。
余すところ無く口内を舐め回すとのだめは苦しそうな声を上げ始めた。

「ん…んむっ…せんぱ…待って…」

のだめの綺麗に引かれたアイラインの淵に微かに涙が滲んでいるのを見て、千秋は慌てて離れた。

「ご、ごめん…」

無理やり過ぎたか…?

まだ呼吸を整えているのだめの、今にも泣き出しそうな表情に、幾分かクールダウンし、今度は
怯えさせてしまったのでは無いかと不安になる。

「先輩…のだめの事、そんなに…欲しかったとデスか?」

何聞くんだこいつ…?
そんなの、決まってる。
出来るなら片時も離れずに傍に置いておきたい。
でも、こいつは糸の切れた凧みたいに、すぐフラフラするし、俺のこと、ほんとに好きなのかも
曖昧だし、早く自分のものにしたくて堪らなかったって言うのに…!

「あぁ…欲しくて我慢できない…。でも、お前が嫌なら…」
「嫌じゃないデス…でも、のだめ初めてだし…嫌われちゃいそうで…」

初めてだから嫌いになるってどういう理屈だ…。最高じゃないか。

「嫌いになんてなる訳ねーだろバカ。」

そう言って軽くキスをすると、のだめをいわゆるお姫様だっこで暗い寝室まで連れて行き、そっとベッドに寝かせた。

「ふぎっ…、王子様みたい…縁の下の力持ち…」
「バーカ。俺はフロントマンなんだよ。しっ…黙って…」

さっきのキスの続きだ。
今度はのだめもおずおずとこっちの舌の動きに合わせようとする。

くちゅり…くちゅ…

静かな寝室に二人のキスの粘着質な音がやけに大きく聞こえ、興奮を誘う。

空いた右手をのだめのニットの裾から入れ、ブラの上から触ると、のだめの肌が粟立った。
神経がそちらに行っているのか、舌の動きが止まる。

「あ…。」

今度はゆっくりとその手を動かし、揉んでみると、目をぎゅっと瞑り、恥ずかしいのか顔を背けてしまった。
それにしても、……でかい…。いや、でかいのは知ってたけど、触ると更に胸の大きさを実感する。
そのまま耳元に唇を寄せ、舐めあげると、やっ、と小さく声を上げて、益々顔を背けてしまう。

可愛すぎる…。
まだほとんど何もして無いのに、下半身が充血しきっており、ミニスカートの裾から
下着越しに主張しまくっている。当然のだめも気付いてるんだろう…。ここまで余裕が無くなるとは
思って無かったけど…。

耳穴をねぶり続けると同時に、ブラを上に押し上げて、今度は直接肌に触れるともうその乳首は隆起して
硬くなっていた。

「あ…あ…やっ…せんぱ…やだ…」

乳首を指腹で撫ぜ続ける俺に抗議の声を上げる唇を塞ぎ、なおも続けると乳首がますます硬くなってきた。
左手で服の上から反対の乳首をつまむと、びくっと体を反らせて反応する。
服を捲くり上げ、今度はその硬くしこった先を、舌で味わった。
でかい割りに敏感で、小さな乳頭を吸ったり舐めたりと繰り返す。

「やっ、あっ…あぁ…せんぱい…もうのだめ…うぁっ…」
「…もう、何…?」

顔を近づけ耳元でささやくと、のだめは涙目になっていた。

「も、もう、何か変です…のだめ…」
「変って…どう変なの?」

そう言いながらさりげなく、スカートの隙間から手を入れ、下着の上から指腹で円を描き始めると、そこはもう湿っていた。

「やっ…!先輩…やだ…!」

手の動きは止めず深いキスをする。
嫌だと言われてももう止めようが無い…。

「んむぅ…!ん」

のだめの主張を吸い込み、指を下着の隙間から進入させると、ぬるぬると指に液を絡みつけ
そのままクリトリスをそっと撫ぜた。

「ん…んっーー!んむっ!」

必死に俺の体を押し返そうとするが、男の力に敵うはずも無く、次第にその抵抗も無くなった。
そのままクリトリスをなで続けると、今度は淫靡な響きにその声を変えた。

「んっ…んん…あぅ…あっ…やめ…せんぱ…あぁっ…」

俺の背中に爪を立て、痛い位に力が入り始めた。
なおも続けると、足を閉じ、つま先をピンと張ったと思ったら、急にビクンビクンと弓なりにしなった。

「あぁ…!あ……あ…あ…はぁ…せんぱい…」

まだ息も付けずに、何が起こったかも分からない虚ろな目でぐったりとしているのだめを力いっぱい抱きしめる。

「せんぱい…のだめ…恥ずかしくて死んじゃいそうです…こんな…変な声…それに、汚いとこ触らせて…」
「俺は嬉しくて死にそうだけど…」
「え…?」

そろそろこっちは限界だった。
ズボンの中で痛いぐらいに張り詰めてるのが分かった。

のだめの服と下着を脱がせ、全裸にさせた後、自分も服を脱いだ。
再度、のだめが濡れている事を確認して、声を掛ける。

「のだめ…入れてもいい…?」
「こ…怖いデスけど…が、頑張ります…」

カタカタと震えている体をぎゅっと抱きしめ、軽くキスをして、そっとのだめの膣口に自身をあてがった。
そのままゆっくりと前進させる…が、やはりきつくて思うように行かない。

「のだめ、力抜いて…」
「し、自然に力が入っちゃいます…」
「頭の中でヴィヴァルディの四季を流して…」
「え…はい…」

ますます力が入っている。

「おい…冬じゃないぞ、春だぞ…」
「あ…冬を流してました。春デスか…」

脳内音楽で少しはリラックスしたのか、力が抜けてきた。
時間を掛けてゆっくり入れて何とか根元まで挿入するが、あまり激しい動きはこいつの体が持たないだろう…。
現に苦痛に耐えているのか眉間にしわが寄っている。
俺はというと、さっきの興奮と、三年ぶりのセックスですぐにイってしまいそうだ。
早漏と思われるのもしゃくだが…。

「のだめ、動くぞ…」
「う〜…痛い…デス。ゆ、ゆっくりお願いしマス…。」
「あぁ…」

のだめの右足を抱え、前後に動き始めるとのだめの胸がそれに合わせて揺れる。
キツくて、でも柔らかくて…やばい…めちゃくちゃ気持ちいい…。
ごめん、と小さくつぶやいてゆっくりという約束を破り激しくピストンしてしまう。
のだめは歯をくいしばって耐えている様だがそれも短い時間のこと。
すぐに果ててしまった…。

「のだめ…ごめん…痛かった…よな…」

まだ虚ろな目をしている彼女のおでこに張り付いている髪の毛を避けながら抱き寄せる。
俺は、嬉しくて愛しくて堪らないけど、きっとこいつは苦痛の方が大きかったよな…。

「痛かった…けど、し、幸せデス…千秋先輩と…のだめ…」
「俺も…我慢してた甲斐があった…」
「な、なんデスか、我慢って…下品デス!」
「な…仕方ねーだろそんなん。好きな女が四六時中一緒にいるんだから…男の事情ってのがあったんだよ!」
「ほわぁ…今の、今のもっかい言ってください!」
「え?男の事情?」
「違います!その前です…」
「四六時中…?」
「…先輩…わざとでしょ?」
「あっはっは、ほんと面白いなお前。………好きだよ。」
「ぎゃはぁっ!死にそうデス!」

腕から逃れ、布団をかぶってしまったのだめを追いかけ、背中越しに抱きしめる。

「愛してる恵、ジュテーム、ヤーリュブリーバース、ウォーアイニー」
「も、もう十分ですから…」
「あぁ、コタツは持って帰ってくれよな…」






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