千秋真一×野田恵
![]() 初めて体を重ねた日から数日経った。 俺はというと、初公演の為、ホテルに缶詰状態で あれ以来、一度ものだめに会えない日が続いている。 携帯の着信履歴を見る…が、あいつの名前は無く、楽団関係者とエリーゼの名前しかない。 まるで、こっちが片思いしてるみたいじゃねーか!! 素直にこっちから電話すればいいんだけど、あいつは昼は学校だし、夜は 遅くにならないと時間は空かないし…。 初めての後なんだし、もっと甘ったるい関係を望むのは当然じゃないのか? 公演自体は大成功だが、千秋の関係者からの評価と、苛立ちは比例し 最終日を明日に控えた今夜、最高潮になっていた。 しかし、その苛立ちをぶつけることもできず、空になったミネラルウォーターのボトルを ゴミ箱に乱暴に投げつける…が、大きく弧を描いて見当違いの方向に落ちた。 まぁいいか…明日になれば会えるし、帰ったらサルみたいに…じゃなくて… 少しずつ慣らしてってやろう。 二回目だし、前よりはスムーズに出来るといいんだけど…。 幸せな妄想をしながら、千秋は眠りに落ちていった。 パリの朝 のだめはいつものように、ターニャに起こされると、面倒臭そうに髪の毛を梳かし始める。 「ノダメ!早くしてよー!私まで遅刻しちゃうじゃない!」 「ほぎー!待って、まだパジャマです!」 「もー!私が服選んどくからノダメは顔を洗ってきて!」 言われるまま洗面所に向かうのだめだったが帰ってくると、ターニャがクローゼットの前で のだめの服を広げ、座り込んでいた。 「どしたんデスか〜。今日の服選んでくれました?」 「ノダメ…あんたこないだ買ったばっかのニット伸びまくってるのは…。千秋って見た目以上にアニマルなのね…意外だわ。」 「ぎょわ〜!違いマス違いマス!ターニャエロです!」 「何が違うのよ。あの日シたんでしょ?」 ニヤニヤと嬉しそうに笑いかけてくるターニャに、顔を真っ赤にしながらもごまかせないと悟るのだめ。 「あ、あれは違うんデスよ!もう忘れたいんデス!」 「忘れたいって…まさかほんとに無理やりされた…とか?」 「そうじゃナイですよ…。も〜早くしてくだサイ遅刻しちゃいマス!」 「な…あんたを待ってたんでしょー!?」 バタバタと慌しく出かけて行く二人だった。 のだめは悩んでいた。 あの日の事。初めての…。 先輩は最初から最後まで優しくてくれたし、好きだとも愛してるとも言ってくれたけど… 翌日公演に出かけていった先輩を見送って…それで前日の事を思い出してジタバタと一人で 恥ずかしさと嬉しさにひとしきり大暴れした後、ふと悪い考えが頭をよぎってしまった。 先輩って…前は彩子さんと付き合ってたんデスよね…。 のだめ、初めてだし、あんなにスタイル良くないし…。 千秋先輩あんなにかっこいいから、その前にも綺麗な人といっぱい付き合ってて…。 きっと初体験は小学生の時の家庭教師のスタイル抜群なメガネ美人で…。 のだめの体見て、がっかりしたとか…。めいっぱい痛がって困らせちゃったし…。 ほいでもって優しいから、のだめを傷つけないように、優しくフォローしてくれただけで…。 考えれば考える程気が滅入ってくる。 さっきまでは、あんなに幸せな気持ちでいっぱいだったのに。 ピアノの蓋を開け、弾いてしまうのは魔王だった。 千秋が帰ってくる日がやって来た。 折りしもその日は寒の戻りか底冷えのする冬日だった。 その日に帰ってくる事は知っていたけど、なんだか会うのが 恥ずかしくて、嬉しいはずなのに、先輩の顔見るのが怖くて、個人レッスン用の部屋で一人暗くなるまで練習に耽っていた。 「こんなことしてても、どうしようもないけど、今はなんだか会いたくないんデス…」 ひとりつぶやいてまたピアノを弾き始めるが、もう時計は8時を回っていた。 そろそろ帰ろう…。 帰り支度を済ませ、とぼとぼとアパートへの道を歩き始めた。 下からアパートを見上げると、千秋の部屋には電気が付いていた。 帰ってる…って当然だけど…公演成功したのかな…お話聞きたいナ…。 きっと先輩のことだから天狗になりまくってんでしょうネ…。カズオ…ぷぷ。 会いたい気持ちは募るが、やっぱり勇気が出ずに、自室の鍵を音を立てないように注意しながら開ける。 電気も付けると帰ってきたの気付かれちゃうから、付けないでおこう…。 ガタッ… 暗がりの中、手探りでコートとマフラーを掛けようとするが、なにせ物が散らかっているせいか つまづいて転んでしまった。 「イタタ…しまった…気付いた…カナ。でも疲れて寝てるかも…。」 隣からは物音一つしない。 安心して、シャワーを浴び、やはり手探りで寝る準備をしている時だった。 ピンポーン ふいにチャイムが鳴り、のだめは口から魂が出るくらいビックリしてしまった。 のぞき窓からそーっと覗くと、案の定千秋先輩が腕組みして仁王立ちしている。 その姿にますますビク付いてしまい、じっと息を殺していると、今度はドアノブをガチャガチャと 乱暴に回したり、ドンドンと叩いてくる。 (ひえーっ、山賊みたいデスよ、先輩…!でも、今日は会いたくないんデス!のだめは留守デス!) しばらくそうしていると、諦めたのか音が止み、足音が遠ざかっていった。 ホッとしたその時だった。 月光が遮られ、人影が窓を覆った。 千秋は窓の外からコンコンとノックしてくる。 「おい、お前いるのは分かってんだよ。いい加減諦めろ。わかったら早く開けろ。」 声色は明らかに怒りを帯びていて、それもこれものだめが悪いから当然なんデスけど…。 でも、窓からってルパン三世デスか!? カーテンを開けずに返事をする。 「私はのだめの妹デス!留守を預かってるだけデスよ!」 「お前、いつ妹出来たんだよ…。早くしないと窓割るぞ。大家の身内だから許されるんだよ!」 その声に合わせ、本当にノックが激しくなる。 急いで窓を開けると、千秋はその隙間から滑り込んできて、のだめの両方の頬を思いっきりつねった。 「お前!何避けてんだよ!」 「しゃ、避けてないデスよ…にょだめ、実は結核なんデシュ。うちゅるといけないデシュから…。」 「血色のいい結核患者だな。人が疲れて帰って来てるってのに、出迎えも無しなんて…。 俺はお前に会うの楽しみにしてたんだぞ。お前は違うのか?俺が何した?」 一気にまくしたてる千秋に、二の句も告げずにうつむくのだめ。 やばい…泣きそうデス…心がモヤモヤして… 「と、とにかく今は会いたくないんデス!一人にしておいて!」 い、今のは結構傷ついた…。クリーンヒットだ…。 でも、本当にこいつなんかあったのか…?心当たりと言えばアレしか無いけど、まさかほんとに嫌だったとか…。 ひょっとして、早かったから嫌いになった…? それとも、あまりの痛さに俺が憎かったとか。 初夜の後、急に冷たくなるなんて、男の泣き所を押さえた素晴らしい攻撃をしてきやがって…! くそ…こんなにこいつの事だけ想ってるっていうのに…! 次の瞬間、泣きそうな顔で千秋を押し返すのだめの両手をつかみ、強引にキスをする。 そのまま、楽譜やらさきいかやら乗っているベッドに押し倒した。 「のだめ…今になって俺を拒むな…!!」 「や、やめてくだサイ…お願い…」 のだめは泣いていた。 いくら好きな女でも、泣いている相手を強引に、というのはやはり良いものでは無いだろう。 なんなんだよ…ほんとに…。 「ごめん…もうしないから…。」 「うっ…うっ…」 「ごめんな…ごめん…」 千秋はそれから小一時間のだめの頭を撫で続けて、寝たのを確認すると、今度は玄関から静かに出て行った。 それから数日、お互いに会わないように、避けている二人。 まるで、コンクールの後のあの日のように…。 そんな二人を見かねて、ターニャが、部屋に招待をしてくれた。 定番のウォッカに、酒の弱いのだめはすぐに真っ赤になって酔っ払い、 つい今回の事を話してしまったのだった。 「あ〜、それは死ぬ程ショックだったと思うわ。」 「死っ?」 「あたしが男だったらインポになってもおかしくないわね。立ち直れないわよ。」 「ほぎっ、のだめそんなつもりじゃあ…(インポって…?)」 「そんなつもりじゃないとこが自己中だって言うのよ。 い〜い?普通一回許しちゃうと、それこそサルのようにヤリたくなるものなのよ男って。 それが好きな女ならなおさらそうでしょ? しかもしばらく離れ離れでやっと会えたのに、そんな反応されたら、チアキは嫌われたって思ってるんじゃない?」 「でも、ノダメの方こそがっかりされちゃったと思って…もうダメです〜」 「がっかりって…チアキがそう言った訳?」 「言うわけないじゃないデスか!それどころかすごく優しくて…」 「じゃあ、何がそんなに不安なのよ。そんな夜中にノダメに会う為に窓から侵入なんて よっぽど想われてるんじゃないの?普通嫌いな女にそんなことする?」 「でも、先輩の前の彼女すんごく綺麗な人だったんデスよ?それに、先輩の初体験は グラマーな家庭教師なんデス…。そんな百戦錬磨の人相手にのだめ…」 「い、意外と軟派なのねチアキって…。でも、要するにー、ノダメ嫉妬してるのね。」 「嫉妬?」 「前の彼女ーズに嫉妬してて拗ねてるだけじゃない。 もー、そんなのに振り回されるチアキが可哀相!なんならあたしが…」 「あー、ダメですダメです!!先輩とのだめは一心同体なんですから!」 「一心同体なら、ちゃんと謝ってしっかり奉仕してあげなさいよ。まったくもー!」 「奉仕って…エロですターニャ!ロシアンエロですよ!」 酒宴は明け方まで続いた。 早朝、テーブルに突っ伏しているターニャを尻目に、昨日彼女に言われたことを考えてみる。 嫉妬…って、そうなんデスかね…。 のだめ真澄ちゃんや、萌薫姉妹には先輩を取られないよう闘争心が燃えたことはあったけど 彩子さんは、なんだか世界が違う人みたいでそんな気持ちになったことは無いけど…。 でも、彩子さんと比べられたのかも…って思ったらなんだか悔しくて悲しくなって…。 これは、つまり、前の彼女に嫉妬ってことになるのかな。 でも、先輩のだめのこと好きって愛してるって言ってくれた。 それをほんとに信じていいんデスか? のだめがどんなにみっともなくても嫌いにならないでくれるんデスか? もうのだめの中で答えは出ていた。 そっとターニャの部屋を出ると、その足で千秋の部屋に向かった。 ピンポーンピンポーン いつも通りチャイムを二回。 どうか先輩が出てきてくれますように…! しばらくして、静かにドアが開いた。 寝ぼけ眼の千秋はのだめの姿を確認すると、幾分か驚いたようだった。 「おま…こんな朝から…どうした?」 「あ…あの…先輩…」 そこからは上手に言葉が出てこない。 何かを悟ったのか千秋はのだめを室内に促し、ソファに座らせた。 「コーヒーでいいか?」 「あ、紅茶でお願いします!」 「図々しい奴だな…」 湯気の立つティーカップをのだめに渡すと、千秋はのだめの隣に腰掛けた。 「どした…?」 「あの、先輩、のだめがいいって言うまで目を開けないでください…」 「はぁ〜?またかよ。もうコタツはやめてくれよ…」 しぶしぶとのだめの言う通りに目を閉じる千秋だった。 少しの沈黙の後、のだめは意を決して、話し始める。 「あの、こないだはごめんなさい。 先輩疲れて帰って来てるのに、困らせることばっかり言っちゃって…。 のだめ…あの…前の… 初めての時、先輩と一つになれて、すごく嬉しくって、でも、なんかよく考えたら… 先輩は初めてじゃなくって、色んな人と多分きっとしてて、 彩子さんとか、家庭教師のお姉さんとか… それで、ちょっと、ううん、うんとだと思うんデスけど、その人たちに嫉妬しちゃって 悔しかったのと恥ずかしいので消えちゃいたくなって…。 それで、つい、嫌なこと言っちゃって…あの、ごめんなさい。」 先輩は、小刻みに震えている。 やっぱり怒ってマスよね…。でも伝えないと…! 「でも、先輩はもう嫌になっちゃったかしれないけど、のだめはやっぱり先輩と離れたくないデス…!」 そこまで言うと、急に先輩がこらえきれないように吹き出した。 「ぶっ、ぎゃはは、おま、あんまり笑わすな。誰だよ家庭教師のお姉さんって!」 「な…ひどい!のだめ真剣に言ってるんデスよ!」 「もう目ぇ開けていいだろ?」 目を開けた千秋はまだ笑い足りない様子だったが、のだめの真っ赤な顔を見ると 咳払いを一つして、真剣な表情になった。 「のだめ」 そう言って抱き寄せ、耳元でささやき続けた。 「俺は…お前に辛い思いさせちゃったから、もう嫌われたかと思ってた。でも、良かった…。」 「嫌いになんて…なる訳ないじゃないデスか…」 「いいから黙って聞いて。 お前は俺の昔のこととか気にするかもしれないけど、今、これからも お前のことしか好きじゃないから安心しろ。 それに、なにコンプレックス持ってたのか知らないけど、その、体とかは ストライクゾーンど真ん中だから…。」 「ぶはっ、セクハラです!」 「なに今更言ってんだ…もう他人じゃないんだから。」 「妻…?」 「と、ともかく、その、また前みたいにお前のこと、この先何千回も抱くと思うんだけど…嫌か?」 のだめは真っ赤になりながら、俯いて答えた。 「ゃ、やじゃないです…。」 「せ、先輩、電気消してください」 「消してる。」 「でも、まだ明るいデス…全部見えちゃう…」 「仕方ねーだろ。朝なんだから。」 そう言うと、千秋はのだめの服を順番に脱がせる。 必死に見えないように、手で胸を隠したりしているのだめだったが逆効果だ。 「のだめ、それは手ブラって言ってだな…もういい…」 強引にその手を取り去ると、乳首をねっとりとねぶり始める。 カリと軽く噛んでやると、ひと際高い嬌声を上げた。 「あぁっ…!ん…んっ…あ…きも…ちい…」 その言葉につい反応してしまう。 「今、気持ちいいって言った?」 「え…い…言ってない…」 「嘘付け…乳首感じるんだ…」 恥ずかしさに顔を背けるのだめの両方の先を指で執拗にいじると、眉間に皺を寄せて 可愛い声で鳴き始めた。 「あ…あん…あんっ…う…だめ…んっふ…」 のだめをベッドに座らせ、背後から再び両方の先を弄ぶ。 そして、のだめの首を後ろに向かせ、息もつかせない激しいキスをする。 すると、行き場の無いのだめの両手は俺の太ももの辺りをさわさわとさまよい、ますます一点が充血してくる。 「ん…んーっ…あ…はぁはぁ…背中に…」 「うん…お前が可愛いから…こんなになっちゃった…どうする…?」 言いながら手を下にスライドさせ、蜜のしたたる場所まで到達した。 片手で乳首をこね回しながら、中指をのだめの奥まで侵入させる。 くちゅり…くちゅり… 抵抗は全く無く、のだめはその進入を受け入れている。 「あぁぁ…あぁ…せんぱい…なんかのだめまた変な感じで…あっ…!」 中指を中に入れ、クイッと上壁を刺激するとまたも敏感に反応する。 親指でクリトリスを同時に責めると、のだめは掠れた嬌声を上げ続ける。 「あんっあぁあ!いやぁ…!あっあっあっ…!もうダメぇ!」 腕の中でのだめが急に力を抜いてしなだれかかってきた。 「すぐイッちゃうんだな…」 「嫌っ言っちゃやデス!」 そう言って涙目で振り返り、おれの言葉を遮るようにキスをしてくるのだめが最高に愛しい。 さっきから我慢汁がとめどなく流れてのだめの背中を汚している。 「のだめ…」 「はい…」 俺の誘導に応えて、仰向けになるのだめの上に覆いかぶさり、胸を揉みながらキスをする。 そして、誘うように蜜を出し続ける膣口に限界まで隆起した自身をこすりつけると 今度は一気に突き刺した。 「あっ…あぁぁ、そんな…はっ…!あん…」 根元まで挿入させると、じっとしたまま形を覚えさせる。 そして、ゆっくりと動き始めた。 深く…浅く…。 その度卑猥な音が響き渡り、あまりの気もちよさに意識を手放しそうになるが、それはのだめも 同じなのだろう。 前回とは違い、俺自身に対して快感を感じているのか、だらしなく開いた口唇から唾液が一筋流れ、 のだめの顎を濡らしている。 「あっあぅ、あっあっ…!ぁぁあ……また…!」 「うん…いいよ…」 つながったままキスを繰り返すと、のだめの中にビクビクと波が起こり陰茎を刺激する。 どうやらまた絶頂を迎えてしまったようで、余力の無い腕が、かろうじてシーツを握り締めている。 もう、俺も限界だ…。 のだめの両足を体幹の上に折りたたむと、深く深く挿入し、ベッドがきしむ程抽出を繰り返す。 くちゅっくちゅっくちゅっくちゅっ 結合部から流れ出した液がシーツにシミを作り出しているのを確認した後、 俺は絶頂を迎えた。 「はぁ…はぁ……恵……。」 気だるい快感が全身を覆い、のだめに体重を預けて息を整える。 「先輩…」 「すげー…やばい…」 「ん…な、何がデスか…?」 「離れられなくなりそうで…」 「え…」 「少し離れてたから、なおさらかな…」 「それってインポになったってことデスか…?」 「はぁぁぁぁ〜!?」 「だって、ターニャが、のだめの話聞いて、先輩がインポになってるんじゃないかって…」 「………もう、喋りたくない…」 「えっ…なんでデスかぁ?」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |