キッチンプレイ(着たまま)
千秋真一×野田恵


カタリ、という音が聞こえたような気がして目を覚ます。ソファに座ってCDを聞いているうちに少しだけうたた寝をしてしまっていたらしい。
もう窓の外は真っ暗だ。ひざの上にはチェックのブランケット。のだめが掛けてくれたらしい。

心地よい音楽にそのまままどろんでいると、今度はぎゃぼーという声が聞こえてくる。
ため息をつきながら声のしたほうへと向かう。
たどり着いた先には空のボールを片手に床に散らばった野菜を拾っているあいつ。
「あ、先輩、起こしちゃいましたか。スイマセン。」
せっかく夜ごはん用意してびっくりさせようと思ってたのにー。愛のお料理大作戦?リターンズです。ギャハ!!
などと言いつつ拾い終えた野菜を洗っているのだめから、目が離せない。

「な、なんなんだー!そのかっこは!!」
「あ、かわいいでしょう?今朝ヨーコの新作です。また某ブランドのデザインをパクったらしいですヨ。」

淡い色のノースリーブのワンピース。形もふわりとして涼しげで夏らしい。確かにかわいい。
……ではなくて。

「その上だ。上。」
「あーこれデスね。ターニャに貸してもらったんですよ。」

そう、のだめが着ているのは純白のエプロン。柔らかそうなコットン生地で胸元と裾はレースで縁取られている。
腰のあたりにつけられたポケットにいたってはハート型だ。

「どうしたんですか?まだ疲れているんなら休んでてもらってもいいんですよ。先輩最近忙しそうだったし。
料理もターニャに教えてもらったからばっちりです。」

無邪気に笑うのだめ。いつも通りののだめだ。とりあえずお色気大作戦ではないらしい。

とりあえず気持ちを落ち着かせようと試みる。そう言えばいい匂いだ。

「俺も手伝うよ。ボルシチの匂いか?」
「ふぉぉ、先輩よく分かりますね。ターニャのお母さんの味だそうですヨ。
のだめの故郷の味に衝撃を受けたターニャが作り方を教えてくれたんデス。」
「あのカレーのことか… あれを日本の味だとは思われたくない…」

青い顔をして俺が言うとのだめが口をとがらせて抗議する。

「むっとしますね。今日はさらにのだめ特製のサラダ付きなんですよ?
このサラダも失敗したことがないんですよ。」

フーンと胸を張ってのだめが言う。

「ただのグリーンサラダじゃねーか。どうやったら失敗できるんだ…」
「ぎゃぼ、先輩ひどい… このドレッシングに秘密があるんですよ。よっくん直伝デス。」

味見してみてくださいヨー。とのだめが言うので。
指先でボールのなかのドレッシングをすくって舐めてみる。以外にも確かにうまい。
そう言うとのだめは顔を輝かせて。

……俺の指先を舐めた。

「あ、ほんとにおいしい。さすがよっくん」

とのだめが言うのと。
俺があいつを抱きしめて床に押し倒すのがほぼ同時だった。
空を切るのだめの手を捕まえて顔の横に押し付ける。

「ぎゃぼー!先輩!何するんデスか!!」
「おまえは自分でも味見したことのない物を人に食わす気だったのか…」
「ちょっ、先輩、セリフとやってることがぜんぜん違いますヨ!目がすわってマスよ!」

真っ赤な顔をして抗議するのだめの唇にそっとキスを落とす。
はじめはゆっくりと、唇をはみ歯列をくすぐる。
そのうちにだんだんと強く、舌を口内に差し入れてその舌を吸い、口内を蹂躙する。
そうしている間にものだめの胸に、背中に、腰に、すらりとした足に手を這わせていく。
のだめのくぐもった声が聞こえ唇を放す。

「先輩、のだめを殺す気ですか?」

はあはあと荒い息を吐きながら悪態をつくのだめ。でもその頬は紅潮していて。
目もすでに官能に濡れている。
柔らかい髪。柔らかいからだ……
小さな耳朶に、ワンピースからのぞく鎖骨に口付けながらささやく。

「でも、お前気持ちよさそう。……嫌か?」
「…は…ん…… イヤじゃ…ない…ですけど……」

「けど?」
「だって… ここキッチンじゃないですか…… しかもなんで急に……」
「……お前のせいだろ?誘ってるみたいじゃねーか… それ……」
「……! さ、誘ってマセンよ!もう、ムッツリ……きゃ…」

言いながら千秋は可愛らしく結ばれた紐を解いていく。そこは既にしっとりと湿っていて。
周囲を軽くほぐしながら指を差し入れるとするりと飲み込まれていく。
がくがくと震えるのだめの腰をしっかりとつかみながら蕾に舌を這わせてやると、
のだめの声にならない声が聞こえてくる。
流れ出る雫でもうシーツもぐっしょりと湿っている。

絶え間なく与えられる快感にのだめはいやいやをするように髪を振り乱し、背をそらし登り詰めた。
ぐったりとシーツに沈むピンク色に火照った体。悩ましげに寄せられた眉、荒い息。
―――すべてが苦痛に耐えているようにしか見えないのに、
いま彼女が官能のとりこであることがわかる。

その華奢な体を抱きしめ、耳もとでささやく。

「……のだめ………」
「……!! …しんいち…くん……待って!…待って下サイ……」
「……何…?」
「…だって……ん…まだ…服……ふたりとも!……」
「…脱いだらもったいないだろ?せっかくの新しい服に、エプロン」

そのままのだめのなかに自身を沈めていく。
待ち望んでいた快感にすぐにでも意識を飛ばしそうになってしまう。
汗が流れ落ち、お互いの結合部からはくちゅくちゅといういやらしい音と
恥骨がぶつかり合う摩擦音が聞こえてくる。
絡ませた指には思いっきり力がこめられ、快楽に溺れ切っていることを伺わせる。
耳元には甘い、甘いのだめの声。切なそうに自分の名前を呼んで、自ら体を揺らしている。

「のだめ……体、揺れてるぞ」
「……やぁん…… そんなこと……してな……ぃ…」
「……えっち……」
「……もう……ムッツリー!カズオ!!」
「…てめ……」

千秋はのだめの足を自らの体の下におりこみ、加速度的に抽迭を早めてゆく。
ノースリーブワンピースの隙間から手を差し入れて胸の突起を直接蹂躙すると、
ひときわ高いのだめのあえぎ声が聞こえてくる。
ひんやりとした床の上で、互いに汗で濡れた髪を振り乱しながら激しく求め合う。

「…あ…や……もうだめ……しんいち…くん…… いっちゃ……!!」

声を震わせて上り詰めるのだめ。腕は千秋の体にすがりつき、足もその腰に絡みつけられている。
その膣の中の、誘い込むような激しい痙攣に促されるまま、
千秋はのだめの中に己の欲望を吐き出した。

まだもうろうとする頭でとなりののだめを抱きしめる。
情事の余韻からかのだめの足はまだ震えている。

「……悪かったよ。ちょっと乱暴だった。ゴメン。」
「……いいデスよ… のだめも気持ちよかったですし。それより床が……」
「……べたべただな。体も、服も…… とりあえずシャワー浴びるか…… 

連れてってやるよ。メシはその後だな…」
千秋はのだめに小さくキスをすると、その体を抱え上げバスルームに向かう。
バスタブにお湯を張り、汗でびしょびしょに濡れた服を脱がせ湯船に中に入れてやる。
と同時にバスルームに響くのだめの叫び声。

「あ!先輩!着替えの服がないです!!下着も!何にも!」

そういえば…… 今までものだめがうちに泊まる時に、朝着て帰る服がないことがたびたびあった。
まあ隣の部屋までだし、前の日の服を着させて部屋に帰していたが…… 今日はとてもそんな状態じゃない。

「まあいいですよ。先輩がのだめの部屋から着替えを取ってきてくれれば。」
「……俺にあのゴミの小宇宙の中から服を探せと?」
「むきゃー!!じゃあのだめはお風呂から出て何を着ればいいんデスか!?」
「……俺のシャツとか?」
「そんなもの着たらもう一度シャワーを浴びなきゃなんなくなる気がするのは気のせいですかネ?」

というのだめの叫びは聞こえないことにした。






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