千秋真一×野田恵
![]() バダン……大きく音を立て、そのドアは閉じた。 二人で外で食事を終わらせた後、じゃれ合うように帰ってきた二人は 部屋に入るなりどちらからでもなく堰を切ったようにその唇を重ね合わす。 千秋は玄関のドアにのだめの体を押しつけると、腰を抱き これ以上ないほどに体を近づけ、割開いた唇から舌を差し入れる。 歯列をなぞり、歯茎を舐めあげ、戸惑う舌を捉え乱暴に絡めると その甘い唾液を吸い上げた。 溢れ出す愛しさが堪えきれず吐息となり、 何度となく絡み合う舌はもつれ合って離れない。 その激しさに息をつくことを忘れていたのだめが、 苦しさに千秋の背を叩くと、名残惜しそうにその唇は離れた。 額が触れるほどの顔の距離で潤んだ熱い瞳が混じり合う。 千秋は力任せに抱いていた腕の力を弱めると、 高ぶる気持ちを落ち着かせるように その柔らかい栗色の髪に顔を埋め、片手で彼女の頬を包み込む。 ゆっくりと唇をスライドさせて、額に頬に耳朶に甘く口づけて その愛しい顔にキスの雨を降らせた。 慈しむような優しい口づけは、次第に熱を帯び チュッという音を立てて彼女の柔らかい肌を吸い上げた。 まるで味わうように舌を這わせ、肌を舐めあげ 吸い付いては、その白い肌に赤い花を散らしていく。 千秋はのだめの首筋や項、その胸元にいくつもの花を散らすと 満足げに口元を緩めて、彼女の背中のファスナーに手を伸ばした。 パサリ……と小さく音を立てて彼女の身を包んでいた ドレスが剥ぎ落とされる。 包み隠されていた彼女のたわわな胸の谷間が露わになり 千秋は引きつけられるようにその谷間に顔を埋めた。 彼女が……のだめが、欲しい。 ふわりと指に絡みつく栗色の髪も 柔らかで弾力のあるその白い肌も 赤く染まる頬も その甘い吐息を漏らす唇も ふくよかに主張する胸も すべて自分だけのモノにしたい。 その濡れた瞳に映るのは、世界中でただ一人。 自分だけでいい。 だから…… 彼女の体の至る所にこの赤い花を散らし 自分だけのものである証を刻もう。 千秋はベッドの上にのだめを横たえると、 上から覆い被さって彼女の首筋に唇を落とした。 チロチロと舌先を遊ばせて、吸い付いては赤い華を散らし 自分のモノだと言う主張を刻んでいく。 片手で彼女の体を押さえつけ、片手でその体のラインを なぞるように撫で上げると のだめは堪らないといった様子で千秋から顔を背け、 体を走り抜ける痺れに眉根を寄せる。 千秋の長い指が……その大きな掌が……… 滑らかな肌を辿り体中をまさぐって 慈しむようにその胸に触れる。 唇での愛撫を続けたまま、掌でその大きな胸を包み込み、 やわやわと揉みしだいては、上下左右へと揺さぶる。 「はぁん……」 という甘い吐息がのだめの口元からこぼれ落ちて…… その声が可愛くて……もっと聴きたくてもっと鳴かせたくて 千秋は指先で軽くその頂を弾いた。 途端、のだめの体がしなやかに仰け反り、悲鳴にも似た声を発す。 「あぁぁ…やぁ…ん」 その仕草が、声が、たまらなく千秋自身を刺激する。 「かわいい……」 こみ上げる愛しさを言葉に託して耳元で囁くと 千秋はほんのりピンク色に染まったその頂を舌でつつき、 軽く舐め上げると口の中に含んで転がせた。 柔らかい胸を吸い上げて、その柔らかい甘い肌を楽しむと 固く沿った頂が口の中でその存在を主張する。 愛しくて…………愛しくて……… 彼女の全てを食べてしまいたい。 こんな気持ちになるのはのだめが初めてだ。 他の誰でもない。のだめでないと感じない。 そう…あの時に似ている。 三善の家で共に奏でたエルガーのヴァイオリンソナタ。 心地よいヴァイオリンの音色に絡みつくピアノの音。 甘い余韻は快楽にも似ていて…… のだめでないと味わえなかった。音の快楽。 快楽の波に無抵抗で身を任せ、飲み込まれる心地よさ。 溺れたい。どこまでも。 この波に沈みたい。 胸への愛撫を続ける千秋をのだめは熱に潤んだ瞳でジッと見据えた。 汗ばんだ漆色の黒髪が肌を擦り、夢中になって自分の胸へ愛撫を 続ける彼の表情は子供のように楽しげで どれほど見つめていても飽きることはない。 彼が、欲しかった。 ずっとずっと……… 初めて彼の部屋で彼のヴァイオリンと音を重ねたときからずっと…… 彼に触れて欲しくて、彼に抱きしめらたくて、 唇を重ねたくてたまらなかった。 求めて………求めて…… 求めてたまらなかった彼が今自分を抱きすくめる。 逃がすまいと力一杯腕を掴み、無我夢中といった感じで 自分の胸を頬張る彼。 その姿が愛おしい。 彼に触れられる度に甘い痺れが全身を駆けめぐり 快楽が全ての感覚を支配する。 のだめは千秋の頭にそっと手を伸ばして、その頭を撫でつけた。 「せんぱい……」 優しく頭を撫でつけられる感触に千秋は胸への愛撫を止めると 「なに?」 と熱っぽい瞳で彼女を見上げる。 「やっぱり……なんでもないデス」 潤んだ熱い瞳に見つめられ、のだめは照れくさそうに身をよじる。 「なんで?なに言おうとしたの?」 千秋は体を起こして、のだめの顔に顔を近づけた。 「言えよ」 「嫌です」 「いえって」 「いーやーー」 のだめは駄々っ子のようにそういうと、 千秋の腕から逃れるように背をむけて、 その背中を千秋が追いかけ包み込む。 「言えって!ほら」 「言わな〜い」 「言わないとやめるぞ?」 千秋は少し強い語調でそう囁くと、のだめの頭を腕の中に包み込み 耳へ軽く口づけた。くちゅり……という音が耳について、 のだめはクスリと微笑みを浮かべる。 「できないくせに」 そのイタズラな瞳に見つめられ、千秋は思わず吹き出した。 「おまえ、生意気」 「だって、そうででしょう?」 そういわれると、否定できない。 こんなにも求めてる。 心も体も早く彼女が欲しいと叫んでる。 目の前にあるこの瞳を、この声を、この肌を、この唇を、 この胸を、この体を、彼女のすべてを支配したい。 だから彼女を包み込む。 腕の中に閉じこめて、押さえつけて、逃げられなにように。 そしてそれから、彼は彼女の全てを手に入れた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |