千秋真一×野田恵
![]() 「…のだめ………!!」 せんぱい? おかえりなさい、真一くん。先輩ったら、そんなにあせってー。 のだめはどこにも行きまセンよ?ああ、先輩…そんなに心配そうな顔しないで。 発情しちゃいます〜ギャハ☆ 高慢ちきな高い鼻も、時折見せる不安そうな目も、思わず盗みたくなる雄弁で傲慢な唇も のだめは全部萌え、デス(はあと)。 充電したいんですケド…体が動きません……。 のだめ何か体ヘンです…熱い……あ…………世界が…歪む………。 …先輩が居ないパリは闇色に曇って、なんにも見えませんヨ……。 ------------------------------------- のだめの奴、一体何日ロクに食事も摂らずにピアノを弾いてたんだ…!? 暖房もかけないで! 外は雪のちらつく真冬のパリだぞ!? 頭わいてんのか!? 携帯にも出ないし、虫が知らせたのか何故か無性に心配になって演奏旅行を終えて急いで帰ってきたらこれだ! バカ………!! のだめはオレの顔を見るなりバッタリ倒れこんでしまった。 さっき帰った医者によるとただの風邪。 2,3日で治るとのこと。 オレのベッドでのんきにクースカ眠り呆けるのだめの顔を見ていると殺意を覚えると同時に呆れるような……安心するような。 千秋はベッドの端に軽く腰掛けた。 複雑な感情に千秋は苦笑してのだめの髪をくしゃっと乱す。 窓の外はパリの夜景がきらきらと輝いて千秋を幻惑する。 そっと、のだめの頬に指先で触れる。 桃の様な柔らかな感触と熱が千秋の指先からじんわりと伝わってくる。 もつれた髪を指先でやさしく梳かしてやるとのだめは仔猫の様に気持ち良さげに鼻先を動かす。 のだめがあせる気持ちが判る。 何かを求めて、でも、届かなくて……。 日本でのだめに出会う前の自分に重なる…。 そしてのだめがこんなふうに倒れて、今更おかしい程動揺する自分に気付き愕然する。 いつのまに、こんなにこいつの存在が自分の中で大きくなっていたのか。 毎日、ふとした瞬間におまえの事を想う時間が長くなる。 あるいは、もっと早くに出逢っていれば…そんな詮無い事を思ったり…。 恋なのか、愛なのか、憧れなのか、それとも執着か……自分でも、よく解らない…。 知らない内にオレの世界に入ってきて、掻き乱して…今はいつも当然のように傍にいる。 わかるのは、コイツに出会ってからオレの人生は急速に鮮やかに景色を変え、動き始めたって事だ。 以前は、いつも何かに苛立っていた。 それが今は、訪れる事全てが新鮮で、毎日にワクワクしている。 全く、何て奴…。 RUIが言うには女にジュエリーを贈るのは独占欲の表れとか。 …独占欲………マジかよ……しかも相手はのだめだぞ? 部屋は汚いし、性格はずうずうしいし、オレの着替えは覗くし、風呂まで覗くし、時々異臭を放つし、 オレの着用済みシャツを持っていこうとするし、オレの落とした髪の毛集めてるし……オレ正気か? あんな変態にハマるなんて、俺としたことが…ありえねぇ…。 ありえねぇー、けど………………。 気分転換にCDでも聴こうかと千秋は目に付いたCDを手に取った。 ジョージ・ガーシュイン。 『ラプソディ・イン・ブルー』いつかのだめがオレと組んでやりたいって言ってたっけ…。 千秋はガーシュインのCDの何曲目かの曲に目を止めた。 ゆるやかな音楽が柔らかな声に乗って流れ出す…。 ***************************************** 『Isn't It A Pity?』 どうして私はあらゆるところを彷徨ったのだろう 何の理由もなく 貴重な時間を無駄にして 残念でならない 罪に思えてならない 旅は終わった 何もかもが素晴らしい あなたと今日出逢って 素晴らしい考えが浮かんだ ここに居よう 面白いもので あなたを見ると 今までなかったような スリルを感じる 今まで出逢えなかったなんて 残念でならない やっと出逢えた 夢のよう 私たち二人は 完璧な組み合わせ 今まで出逢えなかったなんて 残念でならない 今まで無駄にしてきた 孤独な年月を思い浮かべ 鮭釣りに出かけたり バックギャモンに負けたりしていた 味わえなかった喜びの素晴らしいこと 夜は寂しく ショーペンハウアーを読んで過ごした 昔のことは忘れて 合意しよう 私はあなたのためにいて あなたは私のためにいると 今までずっと出逢えなかったなんて ひどく残念でならない ------------------------------------- 目を覚ますと、千秋先輩の顔が傍にあった。 なーんか頭がクラクラふらふらしマス…。 せんぱい…ずっと看病しててくれたんでしょうか。 …疲れてるのに……。 先輩はベッドの傍に座ったまま布団に突っ伏して安らかな寝息を立てている。 「しんいちくん♪朝デスよ。うふふ…先輩の寝顔、かわいー……」 ほっぺたを人差し指でつつきながら話しかけると、千秋は色っぽい吐息を漏らした。 「ん………もっと…ン…」 ふぉおおお……!ナニをもっとデスか! 先輩の寝姿、モエモエすぎマス!! な、なんで、シャツの前をそげんか開けとっとデス…!? やばかー!テラやらしかーーーーー!!! エロいデス!最高にエロくてかわいくて…のだめ………。 。〇゜。゜〇。゜のだめ発情中。〇゜。゜。〇゜。 ------------------------------------- のだめの不穏な気配を感じ取ったのか千秋が目を覚ました。 「ん…のだめ…もう、大丈夫なのか?」 寝起きのぼんやりと焦点の合わない目をこすりながら千秋は体を起こした。 「ハイ、もうすっかり元気デス!」 ガバっと起き上がろうとするのだめを千秋は手で静止する。 「バカ、まだ寝とけ…顔、赤いぞ」 「でも、せんぱい…一週間後には演奏会でショ…のだめ、自分の部屋に帰って寝マス…」 殊勝な言葉で俯くのだめを見る千秋の目が優しく緩む。 「風邪が先輩にうつるとヤですから…」 千秋はなんとはなしに、のだめの茶色っぽい髪を少し手に取っては弄びながら言う。 「いいから…風邪は予防注射済みだし…それに……どうせ…勉強なんか……手につかねぇし……」 はぅ〜…、先輩のハンパな髪への愛撫は…余計ムラムラしますヨ…。 目と目が合った。 キス……するのかな…。 「……とにかく、まだ寝てろ!!」 らしくない言葉に照れたのか、のだめの頭をぐしゃと掻き回すと軽く枕を投げつけた。 踵を返し無言でキッチンの方へ歩いていく千秋。 「せんぱい…」 「何だ!」 「耳が赤いデス」 「うるせぇ!!」 照れる真一くんも◎デス。 「…雑炊でいいか?ハラ、減ってるだろ……?」 キッチンでエプロンを手早く着けてテキパキと家事をこなす千秋はさながら主夫の様だ。 のだめは千秋の後姿をぼんやり目で追う。 まくったシャツから伸びるしなやかな逞しい腕…シャツからパンツにかけての腰のライン……。 そして……引き締まったお尻……先輩のお尻を包むズボンにのだめはなりたい…。 ……ブラヴォッ……!…完璧デス…後ろ姿も完璧にのだめのツボですよ、千秋先輩……! 「出来たぞ、喰え!!」 ガチャン、とトレイごとベットサイドの台の上に置く。 「……のだめ食欲ありません」 プイっと横をむくのだめの顎をガシっとつかんで千秋は自分の方に向けた。 「食欲なくても喰え…!」 小皿に雑炊をわけてのだめに差し出す。 美味しそうなにおいとほかほかの湯気とちょと照れくさそうな先輩…普段ののだめなら3杯くらいは軽くイケるんですが…。 今日は胸がムカムカして……でも…。 「………先輩が、食べさせてくれたら……食べれマス」 「ち…調子に乗るな……!な…なんでオレがそこまでっ…」 気まずい沈黙が流れる。 恨めしそうなのだめの視線に千秋は舌打ちするとおもむろにスプーンを掴んだ。 「こ…今回だけだからな!!調子に乗るなよ!」 「ハイ、せんぱい……(はあと)」 ------------------------------------- スプーンを颯爽と掴み上げた千秋は「あーん」と言って口を開けるのだめを前に赤面しつつ硬直していた。 クソッ…!なんでオレ様がこんな……!! 気合を入れて一気に済ましてしまえばいい話だ! 勢い良くスプーンにてんこ盛の雑炊を取ってのだめの口元に持っていこうとする。 「せんぱい……フゥフゥは…?」 「は……?」 目を点にして千秋が固まる。 「ちゃんと冷ましてくれないと、のだめ火傷しちゃいマスー☆おんなの子はデリケートなんデス」 いつもなら鉄拳が飛んでくるパターンだが、あらゆる疲労で頭が麻痺し始めた千秋は 「こうか?」 とか言いながら唇を尖らせて雑炊を冷ましだした。 「ん…先輩……イイ感じデス…のだめのお口にお願いしマス」 のだめのセリフ…なにげにいやらしいな……。 ちょっと、オレやばい気がする……なんか…反応してきたかも…。 下半身に軽い硬直を感じたが、のだめに気付かれることだけは避けねばならない。 千秋は必死で平常心を装いつつも心が乱れるのを止めることが出来ない。 よく見てみるとパジャマ姿ののだめは当然だがノーブラで…。 パジャマ越しにも乳首の存在が判る。 そう思いだすと雑炊をほおばる可愛らしい唇が妙にエッチに見えてきたり…。 「こぼすなよ……おいしい……?」 「すっごくおいしいデス、真一くん…」 「…そんなにあせんな…ゆっくりで、いいから…」 「のだめ、こんなこと先輩にしてもらうの初めてデス…ラブラブですネ」 「オレだってこんなこと誰にもしたことねぇ…」 「のだめが、初めてなんデスね先輩…(はあと)」 「……うん。まぁ……」 「……んー、先輩…はぅん…もっと………」 「やっぱり、欲しかったんだろ…?」 「や、やだ…先輩ったら……なんか…言い回しがさっきからエッチですよ?」 「な…それは、おまえの方だろ……!」 気分に流されてついつい吐いてしまったセリフをのだめに指摘され千秋は羞恥のあまり顔を背ける。 「……先輩…雑炊食べて、のだめ汗かいちゃいました…のだめの体拭いてもらえませんか…?」 唐突な申し出に一瞬意味が汲み取れず固まる。 千秋は狼狽を隠せず、白目になって青ざめた。 体……拭く…………。 半ば布団に顔を埋めたのだめはエサをもらっていないネコのような恨みのこもった目でこっちを見ている。 「せんぱい…汗が気持ち悪いデス……」 そんなことをしたらもう変態の森から引き返せない気がする…嫌だ……!! そう思いつつも目の前の誘惑に千秋は揺れる。 「いやっ…でもっ……それは……!」 「先輩はのだめの彼氏デショ。恥ずかしがることなんかありまセンよ!」 「でも…オレ達まだそんな関係じゃないし……物事には段階ってモンがあるだろ……?」 「段階もへったくれもありまセン。先輩はオスでのだめはメス……自然な事デス…」 ------------------------------------- 妙に説得力のあるのだめの言葉につい了承してしまった…。 この女、魔性か………。 まだふんぎりのつかない千秋を急かすのだめの視線が痛い。 …一度決めてしまったことだ。 パァーと拭いてさっさと終わらせよう。 千秋は勢いよく掛け布団を跳ね上げた。 のだめの体に極力触れないようにしてボタンを外していく。 動悸が、のだめにも聞えそうなくらいに早く打つのを感じる。 顔が熱い。 凝視する視線に耐え切れず左手でのだめの目を塞ぐ。 「あん…せんぱ……」 一つずつボタンを外していくたびに、のだめの白い胸が露になって千秋の動悸が壊れそうな程激しくなる。 見ないでおこうと頭では思いつつも、目がふっくら盛りあがる2つの山に釘づけになるのを止めることが出来ない。 お湯で絞ったタオルを恐る恐るのだめの体の上に乗せる。 まず、胸の間だ。 ピクンと体が反応し、胸が微かに重たげに揺れる。 突然の感覚に不安になったのかのだめは目を覆うオレの手を払いのけようとする。 手の甲にあくまでも柔らかいのだめの胸の感触が伝わる。 何かが千秋の中ではじけた。 我慢…出来る訳がない。 千秋の手をおしのけようとするのだめの両手首を掴むとベッドに押し付けるようにして押し倒した。 いきなりの豹変に戸惑うのだめを無視して両足の間に割るようにして体を押しこむ。 ------------------------------------- 「せ…せんぱい……!?」 のだめの必死の抗議も無視して舌を鎖骨に這わす。 胸を揉みあげる動きが徐々に激しくなって、荒く、熱い息がのだめにかかる。 「…のだめ……」 耳元で囁く声は情欲にかすれて………凄くセクシーで…。 でも…でも…いきなり…こんな……。 のだめは千秋を押し退ける手に力を込める。 そんな弱々しい抵抗は、逆に今の千秋にとっては煽る行為でしかない。 「オマエの方が誘ったんだろ?あんだけ挑発しといて…。オレ…もう止まんないからな……」 小さく溜息を吐きながら荒々しい行為とは裏腹な耳元で囁く甘い声にのだめは腰が砕けそうなる。 キス、しそうな程の至近距離で見つめる千秋の目は熱を帯びて濡れている。 「俺はオスで、オマエは只のメス……なんだろ?俺は理性を捨てた。オマエも捨てろ」 「待って…せんぱ……」 「嫌だ」 「でもっ!のだめこんなのっ…」 「待てない……これ以上」 切ない溜息がのだめの頬にかかる。 千秋はのだめの唇を舌先でなぞるとゆっくりのだめの口内に入っていった。 ピチャピチャと粘膜のこすれあう音が響く。 千秋はワザと音を響かせるようにして、時折のだめの反応を伺う。 のだめは顔を赤くして、恥ずかしそうに目を伏せて千秋の視線から逃れるように体をよじった。 千秋の片手は胸の頂点をソフトに摘みあげながらももう片方の手はゆっくりと下がって、パジャマのズボンをずり下げる。 のだめの体がびくり、と跳ね上がる。 下着越しにもしっとりと湿り気を帯びているのが判る。 「のだめ、濡れてるのか?」 判りきったことをわざわざ尋ねる千秋の目がとても意地悪く感じてのだめは軽く首を左右に振って 千秋の腕の中から逃れようとするが、執拗に舌先を吸い上げられ、のだめは意識が朦朧と霞んだ。 ひもを片方だけスルリと解くと、隙間からのだめの秘所に指を差し入れる。 「あっ……せんぱ……いやっ…!」 そこはもう、ヌルヌルとした粘液で潤って千秋の指を簡単に呑み込んだ。 「やっぱり……すごく、濡れてる……」 のだめはあまりの羞恥にとうとう耐えらえなくなって真っ赤に紅潮した顔を両手で覆った。 「…………せんぱい…エッチすぎマス…」 千秋はそれも許さないとばかりにのだめの両手を取り、重ねて頭の上に万歳するような形にして自分の片手で押さえつけた。 「いつまでも、王子やってられるかよ……」 言いながらのだめの中の壁の小さな粒を擦り上げる。 「あっ……!せんぱ…」 のだめはきつく眉根を寄せて何かに耐えるように息を詰める。 「ココ、こんな風にするの初めて?」 「ぜんぶ…先輩が…んっ……のだめにするエッチな事…全部…初めてデス…」 「ふーん、あっそう……」 「や…せんぱいの…むっつり…んんっ……」 耳元で千秋がとろけるように低く囁く。 「もっとエッチな事……してやるよ………」 「しんいちく……!」 のだめの足を開くと千秋の指を呑み込んでヒクヒクと震えて蜜を垂らす秘所に顔を寄せた。 千秋の吐息がかかる。 髪が触れる。 あつくて、あつくて、焼け付きそう…。 「っく……んんっ……あぁぁんっ……」 声が……無意識に洩れる。 のだめの声…こんなにエッチになって…全部、千秋先輩のせいなんだから…。 先輩の触れる場所から、体中…痺れて、あったかくって、頭の中で……音楽が…鳴ってマス…体中に満ちて……。 うす黄色にピンク…水色…揺れて滲んで…のだめ、カスタードクリームになったみたい…。 淡い虹色の世界…デス……。 なんて…なんて………………もう何も考えられないーーーーーー………。 のだめは糸がぷっつり切れるように意識を手放した。 ------------------------------------- 「おい、のだめ!大丈夫か!?」 千秋は急に意識のなくなったのだめを激しく揺すった。 しばらくするとのだめは心配そうに覗き込む蒼白の千秋を安心させるようにうっすら瞼を震わせて口元を綻ばせた。 「せんぱ……つるきはぁ…また今度……デ…ス…」 朦朧としていまいちろれつの回らないのだめは千秋の首に弱々しく抱きつく。 「いいから……もう、しゃべんな………無理させて、ゴメン……」 手を当てると額が沸騰するように熱い。 つい夢中になってのだめが病人であることを忘れていた…なんてことだ……。 千秋は自分で自分の失態が許しがたく、それでいて呆然とするしかない自分の無力さに腹が立った。 いつのまにか規則正しい寝息が聞えてきた。 ほっと胸を撫で下ろすと、氷水に浸したタオルを額に当てる。 千秋はのだめの寝顔を眺めた。 「Isn't It A Pity?…あなたに今まで会えなかった年月が残念でならない……か…」 日毎、夜毎に姿を変える月の様に捕らえどころのない…。 千秋は無意識にのだめの頬にキスを落とす。 千秋は自嘲的な笑みを浮かべてはみたものの、頬がほんのり赤い。 踏み出せそうで、踏み出せない一歩がもどかしい。 「確かにオマエには、今までなかったようなスリルを感じるよ…どうしてくれるんだ……」 これ以上お前の存在が俺の中で大きくなるのが怖いなんて……。 千秋は覗き込むように前かがみになるとのだめの枕元にそのまま突っ伏した。 今は少し休息しよう。 千秋の中にも音楽が満ちる。 ゆっくりと侵食して、広がる…波のように。 二人の夢が重なる、ひと時…。 歌うような優しい静寂が二人を一つにする。 …やっと出逢えた 夢のよう 私たち二人は 完璧な組み合わせー………。 今まで出逢えなかったなんて 残念でならない…。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |