Sincerity
千秋真一×野田恵


「セ・ン・パイ♪ギュっ、してくだサイ」
「・・・。///」
「クンクン、ふぅー、先輩いいニオイデス♪」

一生の不覚だけれど、変態の森に自ら飛び込んでいって以来。
こいつと抱き合うのは、もうずいぶん慣れた。
誰も見ていない地下道で、オレからキスをしたことだってある。
・・だけど。

「あのさー のだめ・・・、言っておくけど」
「なんですか?」
「オレ、しないから」
「へ?」
「おまえが、ネットでいろいろ勉強してたよーなヤツ。しないからな」
「・・えっー」
「おまえ、まだ学生だし、オレだって全然、安定してないしな。」
「・・・」
「もっと状況が整うまで、オレ待てるつもりだし、オレたちにとってその方がいいと思う」
「せんぱい・・」
「だからってターニャに、いつまでもしてくれないとか、絶対相談するなよ。
そのために、わざわざ言ってやってるんだからな///」
「はぅ・・・」
「それに・・おまえだって、今は心の準備できてないだろ?」

そう言って、抱いたまま彼女の首筋に舌を這わせてみると。

「ひゃぅっ!」

と叫んで、顔を真っ赤にして首をすくめ、勢いよく身体を離してしまった。

「もう、先輩!・・わかりましたっ」

オレは、俯(うつむ)く のだめの両手をとった。

「それに・・オリバーの話、聞いてさ」
「オリバー?」
「あいつ、熱心なクリスチャンなんだ、聖歌隊に入ってるくらい。
聖書の教えでは " 神様は、結婚前の肉体的な接触を喜ばない " から
クリスチャンは、結婚式の誓いのキス が ファーストキス、っていうのが
神様から最大に祝福を受けられるってことらしい。
オレはもう、おまえにしちゃったけど・・・」
「そ、デスね」

のだめの瞳を見つめながら、オレは言葉を続ける。

「神様なんてわからないけど。バッハをはじめ、多くの作曲家や音楽家が信仰してきた事だし。
パリに来て、教会にも出かけたりして、ちょっと影響されたかな。
・・ま、大事にしたいと思ってるから。おまえのこと」
「せ、せんぱい・・今日は饒舌デスね・・///」
「でもオレも男だから、大変なこともあるから、三つ協力してくれ」
「?」
「ぎゅ、してもいいけど1分以内。それからソファで隣には座らない事。
あと、オレの前でもどこでも、薄着になるな。いつかみたいな水着なんて絶対だめ。」
「ぎ、ぎゃぼ・・」
「男の理性なんて脆(もろ)いもんなんだから、女性が協力的じゃないと大変なんだよ」
「真一クンも男、なんですネー」
「あたりまえだろ」






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