千秋真一×野田恵
![]() マロニエにプラタナスの紅葉 焼き栗 霧に霞むエッフェル塔 やはり、パリの秋はいい…。 窓から見下ろす銀杏並木は陽に輝く金色がとてもよく似合う。 窓辺のカーテンは陽の光に透けてひるがえり、 時折風に乗って飛んできた銀杏の葉をやさしく招き入れた。 午後の気だるい日差しの中、床に散乱した楽譜に木漏れ日が散る。 ソファに深く体を埋め、楽譜を眺めながら全体的な構想を考えるオレの肩に 体を預けるのだめはうっとりと夢見心地に。 横から楽譜を覗き見ては指をピアノを弾くようにトントンと動かす。 楽しげに踊る指に、飛んで跳ねるような音が聞こえるような気がした。 肩にかかるのだめの重さと温かさに胸が一杯になるような妙な甘酸っぱさが広がる。 陽だまりののだめは少し眠そうに身体をすり寄せて来る。 少し冷めたエスプレッソとミントティー。 そしてチョコレート。 チョコをつまむのは専らのだめの長い指。 ふと、最後の一粒を見つめる瞳が悪戯っぽく輝いた。 「ふぇんぱい…♪」 そのチョコの半分を唇に挟んでタコみたいに突き出して冗談半分にこっちに向ける。 …かわいくねぇ……そのクチやめろ…。 こんな顔した女にキスなんてありえねぇーだろ、普通。 このシュチュエーシュン、いつもなら確実に特撮ではり飛ばしているところだが…。 ………しかし…まぁ…。 こいつにいつも驚かされっぱなしじゃ面白く無い。 大体いつも人のこと振り回しやがって…。 背中に軽く手を添えるとのだめはハッとしたようにオレを見る。 無言で素早く唇でチョコを挟んで奪った。 らしくないけど、まぁいいだろう。 たまにはおまえが驚け。 グラスにびっしりとついた水滴が流れて床を濡らす。 ミントの葉は頼りなく揺れて。 光を受けてキラキラと反射する氷がカランと鳴った。 チョコと一緒にキスも奪われたのだめは予想外のリアクションにかなり驚いたらしく まばたきも忘れて呆然としている。 オレは何気ない顔をして奪い取ったチョコの端をかじった。 …なんて甘ったるいチョコだ。 「いっ…今のは反則デス…!」 のだめは真っ赤になって鼻息も荒く抗議する。 しかし油断するおまえが悪い。 必死で手を伸ばして残りのチョコを取り戻そうとするのだめの額を掌で掴んで制する。 「むきゃぁぁ……チョコ・プリーズ!!のだめのチョコ―――!!!」 リーチの差で当然届かず…それでもジタバタするのだめについ笑いが込み上げる。 のだめは唇を尖らせて非難する視線を向けた。 やっぱり…かわいくねぇ。 むしろ笑えるくらいだ。 「…あー、もー、わかったから…暴れるなよ」 ホント…しょうがない奴……。 額を掴む手を横にスライドさせてそのまま後頭部に回した指に力を込めると、強引に引き寄せた。 何でオレ…。 もう一度チョコをくわえ直すとのだめの唇に唇を寄せる。 「はぅ……?」 こんな異星人みたいな女が好きなんだろ…。 「返す」 舌でそっとチョコを押すと溶けて舌と舌が触れ合った。 ミントティーとエスプレッソの様に違う二人が 一粒の小さなチョコレートで溶け合う。 人肌に溶けたチョコを舌で絡めあうような深いキスに細い溜息が洩れる。 唇を軽く咥えて唇の裏を舌先でソフトに愛撫するとのだめは官能に小さく身体を震わせる。 …こいつって…変態で異星人だけど……たまにかわいいよな………。 突き出す様にして求めてくるのだめの舌を、軽く舌でつつきながら様子を伺う。 絡み合う視線に感情の糸はもつれて、舌よりも雄弁な眼差しは簡単に自制心を崩壊させる。 戯れるように焦らして…執拗に吸い上げる。 粘膜と粘膜がこすれて、柔らかく反発してはぬめってすべる。 舌の粒のざらつきを感じながら粘膜で包み込むように吸う。 のだめの唇の端から唾液が溢れた。 痺れるような甘さに意識が溶けそうになる。 貪欲なキスにのだめは少し酸欠状態だ。 それでもまだ…こうしていたい。 こいつの前で理性的でありたいとは思うが…なかなか難しい時も、ある。 名残惜しい舌先を最後に軽く吸って唇から離す。 潤んでトロンとしたのだめの瞳は空をさまよい、頬は上気して少し息が荒い。 半開きの唇の端からは透明な液がたらっと垂れている。 あまりにだらしない顔に呆れつつ、苦笑交じりに涎をグイッと指で拭ってやる。 「………はぅ…今日の先輩はサカリのついた猫みたいデス……」 「もっとマシな表現はないのか…」 あんまりなのだめの感想に瞬時に激しい脱力感に襲われる。 「だって、先輩…なんかいつになく……激しいデス」 「…発情してて悪かったな」 憮然としてそっぽを向く。 仕掛けたのはオレだけど、さすがにがっつきすぎたかもしれない…。 オレの顔を覗きこむのだめはムカつくくらいに能天気な顔で笑っている。 「あはぁ…先輩もしかして照れてるンですかぁー?」 こいつって妙なところでホント鋭い。 「別に」 「かわいー」 「………」 ああ…止めときゃよかった…。 自爆………。 「うきゅ♪」 のだめは小さく含み笑いすると、人差し指でオレの頬をちょんとつついた。 「先輩、口にチョコがついてますヨ」 「え…うそ…どこ?」 「違いマス…ココ…」 のだめがオレの唇の端を舌先でぺろっと舐める。 「うそデス」 今度はオレが呆然とする番みたいだ。 「ぎゃはぁ……さっきの仕返しデス!」 そう言って明るく笑った。 ……こいつの方が反則だろ。 「これで痛み分けデショ?」 鼻息をフーンと強くして勝ち誇った様に堂々と宣言する。 完敗かもしれない。 考えてみればこいつにはいつも最後のところで負けてる気がする。 甘くかわいい嘘への報復に、たまらずオレの方もキスを返す。 甘い嘘は砂糖の香りに溶けてキスに変わる。 「まだ、ついてマス…」 「嘘つくな」 「ホラ…ここも…ぷぷ…」 「ん…ココだろ…?」 「やぁ…せんぱい…くすぐったいデス」 じゃれ合うような小さなキスを幾度も交わす。 のだめはクスクス笑って、オレの胸に逃げ込むように顔を埋めた。 ===================== 「やばい…」 胸にもたれ掛かるのだめの髪に顔を埋めるようにして溜息を一つ。 「どうかしました?」 「…キスだけじゃ足りなくなってきた」 軽く耳朶を唇で挟んで引っ張る。 のだめの耳はピンク色に染まってほんのり温かかった。 「せ、先輩……本格的に発情ですか?まっ、まだ明るいデスよ?」 「…嫌か?」 「……嫌……って言ったらドーします?」 「…え?」 意外な切り返しに一瞬動揺してしまったがなんとか平静を装う。 「………言う訳ないの知ってるんだけど」 「ぎゃぼ…で…でも……のだめを陥落させるのは…中々むつかしいと思いマス」 のだめの奴、今日はちょっと反抗的じゃないか…。 いつもならこいつの方から求めてくるくらいなのに。 どうしたんだ? 耳に舌を入れるとのだめの身体がビクンと反応する。 明らかに感じてる。 「…したくないの?オレはしたい」 「お、女の子の口からそんなこと…言えまセン…」 「今更だろ…言えよ。」 「い…嫌デス」 「本当に嫌?」 「や……」 嫌と言いながらも拒む様子の無いのだめにとうとう痺れを切らしてしまう。 オレの方は…もう止められないのに。 「あんまり…焦らすなよ……とっくに陥落してるだろ」 ワンピースの上からブラのホック部分を引っ張りパチンと音をさせて外す。 「あっ…」 急に自由になった胸の感覚にのだめは頬を染める。 「先輩、き、器用デス…ね」 「うん」 前ボタンを胸くらいまで手早く開けるとブラを押し上げてズラす。 赤くとがった蕾がもうツンと主張している。 ワンピースから胸だけが露出したような格好になった。 やっぱりこいつのって………でかい…よな…。 掬い上げるように下から両手で押し上げるとクッキリとした谷間が出来る。 …柔らかいし。 そこに顔を埋めると…微かに甘いようなのだめの匂いが鼻腔に広がった。 「あっ…やんっ…せんぱ……ここで?」 「うん…」 「ふぉぉ……ココ……ソファの…上…ですヨ……?」 「うん…」 上の空のような返事を返し、ゆっくりと押し倒す。 ワンピースの裾から手を差し入れて太腿を撫で上げる。 「ふっ…服…着たままで……?」 「うん…」 ゆっくりと内腿に指をすべり込ませる。 「き…聞いてます…?」 「うん…」 「…のだめのコト…好きデスか?」 「…………うん……」 ショーツのクロッチの部分を布越しに触れる。 そこはもう形がうっすら判る程に濡れて布に滲みだしている。 のだめは腰をくねらせ膝を合わせて必死に隠そうしたが 無視して両膝を少し強引に割って思いっきり開く。 そのままふくらはぎを掴んで持ち上げるように開脚させると 益々染みは大きく広がり、ショーツはぐっしょりと濡れてツンと尖った形を顕にする。 たまらず、片方の紐を解くと、透明の蜜が溢れて流れた。 靴を放り投げるようにして脱いで、ベルトを外すのももどかしく、引き抜くようにズボンとパンツを脱ぐと すでに自身は固く隆起して、たらたらと透明な先走りが流れ出している。 ……アレが無い。 「そのまま、ちょっと待ってて」 ゴムが無いのに気付き、のだめの脚を開いたままソッと置いてベットサイドに取りにいく。 手早くその場で付けて、ついでに箱から数個持って戻る。 のだめは脚を開いた格好のままでぼんやりと待っていた。 焦らされて潤んだ目が熱っぽく見つめ返してくる。 クリトリスは赤く充血して待ち侘びていたかのようにとがって蜜にあふれて光っている。 割れ目を伝って流れる蜜液がワンピースをぐっしょりと濡らして汚していた。 堪らずのだめの蜜口に先端をあてがう。 柔肉は何の抵抗も無く招き入れ、くちゅり…と水音が響いた。 先端で掻き回すようにすると溢れきった蜜が絡んで 部屋中にぐちゅぐちゅと淫猥な音が響く。 浅めに上の辺りを突くとかわいい声で啼き始めた。 片方だけ辛うじて腿にぶら下がる蝶の形に結んだ紐が打ちつける度に揺れるのが見える。 挿入したモノを一度ズルっと引き抜くと、粘度を伴い白濁した蜜が糸を引いて垂れて流れた。 蜜口からは尚も物欲しげにたらたらと蜜が溢れ、ヒクヒクと誘う様に震えている。 硬度を増した自身は痛い程に起立してピクピクと行き場を求めて疼いていた。 高く掲げたのだめの脚を折り畳むように曲げると深く自身を埋めた。 剥き出しの結合部分から押し出された蜜がジュブ…と溢れるのが見える。 その淫猥な光景に耐えられずのだめは眉根を寄せてぎゅっと目を閉じた。 汗ばんですべる指でウエストをつかんで何度も激しく打ちつける。 「あっ…あっ……あっっ………あんっ……!!!」 その度にのだめがあげる高く甘ったるい声がだんだん大きくなっていく。 「はぁ……あ……く…っ…!」 熱くきつく締め付ける感触に蕩けそうになる。 のだめの中はあたたかく湿って絡みつき、ぎゅうぎゅうと締め上げてくる。 のだめは軽くイッたようだったが構わず突き続ける。 「やっ……!あ……あ…あ…あぁ…ンっ…!や、やぁ……やめっ…はぅ…ん…っ…!」 イッたばかりの敏感な身体は小さく抵抗を訴えたが、更なる快楽に変えてねじ伏せる。 「やっ…また……ッ…!!」 一度達してしまった身体は再度の波に簡単にさらわれる。 何度も逝かされてもう溶けそうに熱くどろどろになったのだめに執拗にピストンを続ける。 「…し…いちくん…も………やだぁ…っ…」 立て続けに逝かされ続けたのだめはもがくように微かに震える手を伸ばしてきたが その手首を取ってきつく押さえつけて更に奥まで打ちつけた。 汗で髪が額に張り付いて頬をつたう。 湧き上がる欲望は止めどなく、身も心も流されて。 叩きつける様に全身を駆け巡った。 感じるポイントを丹念に攻めると膣内が益々熱くきつく締め上げてうねり、呑み込む。 なんて…あつい。 汗まみれの肌がしっとりと吸い付き合うように交歓する。 限界を感じたが寸前のところで堪えた。 もっとだ…。 まだ……。 まだ、足りない…。 もっと乱れていい。 もっと淫らな姿を晒して欲しい。 誰も知らないおまえの顔をオレだけが知っている。 独占欲? 所有欲? そうかもしれない。 涙と涎でぐちゃぐちゃになったのだめの顔に何故か堪らなく欲情した。 「ホラ、逝けよ」 蹂躙するように胸を揉みしだいては上を向いて勃ちあがった乳首を甘く噛む。 つったようにピンと伸ばされたのだめの足先がビクンビクンと動いた。 足の甲を掌でスウッと撫で上げると背を反らせて甲高い声を上げ、果てた。 …だけど、おまえが思ってる以上にオレはおまえの事――――。 今度こそ抗いがたい波がオレをさらっていく。 のだめの中へ…。 紐のほどけたショーツだけがソファを伝って下に落ちていった。 ==================== 「やだー、先輩!」 シャワーから上がるとのだめがカーテンの端をめくって頓狂な声をあげた。 Tシャツとスエットを素早く身に着けて戻る。 身体に軽くブランケットを巻きつけただけの格好で窓を覗き込む。 「窓開けっ放しだったんデスね〜」 …お、おい……。 血がさぁっと一瞬にして退いていくのが分かった。 まだ少し濡れた髪を拭いていたタオルを落としそうになる。 「みんな今日は出掛けてるみたいデスけど…」 言いながら窓を閉めてカーテンを引いた。 「そ、そうか…」 「のだめ先輩の凄テクに結構大きな声出しちゃってたからはずかしー!」 「ぶっ…!…それが恥ずかしがってる奴の言い草か!?」 「だってー」 「おまえ声デカイんだよ」 「…のだめ、やだって言ったのに…先輩が何度もイカせるんデスもん…」 「止まらなかったんだよ……しょうがないだろ…」 「のだめ、泣いて頼んだのに…………」 「エ…いや……その…………ゴメン…」 「陰湿で粘着で…のだめ壊れるかと思いましたよ?」 「陰湿で粘着で悪かったな…でも…今日はおまえの方も…煽るようなことするから… その……オレもつい………何ていうか……」 「のだめだってそういう気分じゃない時はあるんデスヨ!それに………」 「な、何だよ」 「先輩だって相当イロっぽい声出してましたヨ?」 「え…?うそ……」 「本当デスヨ〜。結構啼いてまシタ」 そう言われてみれば…。 なんか夢中であんまし覚えてないけど…そんなことも…した…かも……。 「のだめが乳首攻めた時なんか特に…」 「………」 「真一くん、とっても気持ち良さそうにの…」 「も…もういいっ…!!」 慌ててのだめの口を塞いだ。 ………なんか…ものすごく…恥ずかしくなってきた。 「先輩?」 「…ちょっと散歩してくる」 外のひんやりとした風に当たりたくなった。 頭冷やそう。 その辺の椅子にかけてあったズボンとカットソーに着替えて ごくカジュアルなジャケットに袖を通す。 「のだめも行きたいんですケド……先輩の驚異的なスタミナにもう…腰ガクガクデス………。 ………………………う〜んと…何回しましたっけ…?…いち…にい………」 口を尖らせて指折り数える。 「…………ふぃ――……しんいちくんのすけべ…」 ぐったりとソファに寝そべるのだめは軽口を叩いているが疲労の色が隠せない。 ちょっと、無理させすぎたか…。 「…すけべで悪かったな……いいから寝てろよ…。腹減ってない?何か買ってこようか?」 「あうー、先輩が優しい…」 「そんなに珍しい事か…?」 「そうじゃなくてー」 「ん?」 「………エッチの後に優しくされるのはしあわせな気分なんデス……」 微笑むのだめに愛おしさが胸いっぱいに込み上げる。 「のだめ……」 「はい?」 「…………」 「何デスか?」 「…………いや、何でもない」 「照れないで『愛してる』って言ってもいいんデスよ?」 「言えるかっ!!」 バタンとドアを乱暴に開けて勢いよく閉めた。 逃げるように階段を下りるとふと足を止める。 …言えばよかったかな。 欧州育ちのオレには容易なハズだ。 『愛してる』くらい………。 うん……。 ………。 フ、フランス語でならどうだ。 ジュ…ジュ・テー………。 …………駄目だ…。 考えるだけで恥ずかしい。 しかし…何であいつ、こういう時だけオレの考えてる事解かるんだ…? さすが異星人だけの事はある…。 ==================== 階段を下りていると丁度買い物にでも行っていたのか 紙袋をさげた長田さんが階段を上がってくるところだった。 「真一、出掛けるのか?」 「ちょっと散歩に」 「そうか、元気だな」 「今日は買い物ですか?」 「いや…」 長田さんはニヤっと笑うとオレの肩を叩いた。 「近所の雄ネコが発情したらしくて…それが真昼間から窓全開でいちゃつくネコでなぁ……」 え………それって…。 血の気が一瞬にして引く。 まさか……。 「どうにも当てられてね…ちょうど画材も切れてたんで出掛けて今帰ってきたところだ」 一気に汗が噴出す。 自分が滑稽な程赤くなっているのが分かる。 「真一もやっぱり男だったんだな」 「す…すいません」 「まぁ、何だ。気にするな」 「いや…あの……」 「若いっていいなぁ!『おお、愛はわれらを幸福にする。おお、愛はわれらを豊かにする』…」 芝居がかった両手を上に掲げる大仰なポーズとる。 ポエムの朗読っぷりはさながら某雑誌記者のようだ。 「……何ですか、それは…」 「ハイネだ!」 何でオレのまわりにはこう変人ばっかり…。 「…堕天使は一人の若者の接吻によってヴィーナスに生まれ変わった…… そして若者もまたヴィーナスの接吻によって恋の囚われ人となる……」 「はぁ…」 …眩暈がする。 一刻も早くここを立ち去りたい。 「しかし、真一は見かけによらずけっこう情熱的なタイプなんだな!」 「へっ!?」 「あんまり女の子に無理させちゃー駄目だぞ〜」 「………」 お…おい…どこまで聞いてたんだ……!? 「じゃーな、しんいちく〜ん♪」 え………。 青褪めるオレをよそにムッシュー長田は大声で笑いながら階段を上っていった。 どこかのネコが非難がましい声で鳴いた。 ような気がした。 ==================== 後日オレの部屋を訪れたムッシュー長田に手渡されたキャンバスには ピンクと白の色彩で溢れかえった孔雀が描かれていた。 「最近の『真一くん』のヴァイオリンだ」 「真一くん言うなッ!!」 「タイトルはずばり『アムール』!どうだ〜!?」 「ふ…ふざけるな―――ッ!!」 オレが力一杯にそのキャンバスを放り投げたのは言うまでも無い。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |