図に乗って(非エロ)
千秋真一×野田恵


のだめは、オレとふたりっきりで城に行きたかったようだが、
独演会(リサイタル)はのだめにとっては初めてのことだし、
ターニャにも聴いてほしかったのだろう。
それにしても、海の近く、というのが嫌だ。忌わしい記憶が蘇る。それだけがあまりにも嫌だ。

のだめがそばに来て言った。

「ふたりっきりになれなくてガッカリなのはわかりますケド」。

ちがう!かなりちがう。でも、まあ…、のだめリサイタルは聴きたいのは確かだ。

「みなさんに喜んでいただけるようにがんばりマスよ!」

フ…そうだな、と思っていると、

「フ…そうだな」

とのだめもまた言った。つづけて

「恵の初リサイタル、オレもすごく楽しみにしているよ」

と、のだめはオレの声色を真似て自分でしゃべりやがった。
でも、オレはすんなりと聞けた。

「恵の」という言い方は、のだめが自分自身でしゃべっているからかまわないことだが、
オレも初リサイタルをすごく楽しみにしているのは本当だ。
わざわざオレは楽しみだとは言わないが(俺様学)、思ったままのことを言われて認める気分になっていた。

のだめは、オレが拒否反応を示さないのをいいことに図に乗って続けてしゃべりだした。

「ついでにその教会で結婚でもすっか?」

と、オレの声色を真似たまましゃべりつづけた。

アテレコ(吹き替え)するなよ!変態!






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