千秋真一×野田恵
![]() 「せんぱい?真一くん?」 一月のある日。大晦日の大掃除もむなしく、 のだめの部屋はまたちょっと散かり気味で 我慢しきれなくなった真一くんが突撃してきて 一ヶ月ぶりの掃除となった。 で、それも終わって互いの部屋でシャワーを浴びて 暖まって…綺麗になったから今晩はお前の部屋でって 緑のビンのビールを二本、大きな手で握って腕には 買い物袋をぶら下げて再び私の部屋にやってきた。 ……ソウデスカ…そういう理由でしたか。 寒波がやってきて寒さの厳しい今年のパリ。 お鍋が恋しくなるのはよくわかります。 でももっと恋しくなったのは……このおこたですね、真一くん。 決して口には出さないけれどわかるのデス。妻デスカラ。 ま、鼻歌交じりで素敵な鴨鍋を作ってくれたので からかわないでいてあげましょう、今日は。 そんな風にして二人で日本でのあの時みたいに ビールを飲みながら鍋を楽しんで…気がつけば 先輩はおこたで横になってしまって今に至る…というわけデス。 「…起きませんね」 正方形のおこた。先輩のすぐ隣に私がはいっている。 すーすーと寝息が聞こえてきて、とても気持ちよさそうに眠っている。 そのポーズはベットの中と同じ。 おこたの角に身体を向けて赤ちゃんみたい丸くなっていてとてもかわいい。 でも、でもこのままじゃ風邪ひいちゃいますしね…どうしよう。 そう思いながら私も先輩と向かいあうように横になってみる。 目の前には先輩の端正な顔。黒いさらさらしている髪に白い肌、 少し動いてる睫にちょっとビールの香りが混じった先輩の息。 「はう・・・ん」 そんな先輩にちょっとのだめ…久々に…って。 まってまって。えーっと。え?どうしよう。 なんか…なんで?………どうして? この急に心臓がドキドキしだして、びくっと反応した私の身体は何? しかも……しかも…。 なんか…熱いのは…おこたのせいでは…ないデスヨ…ネ。 ってそんなの知ってる。 私たちの間がそんな関係になって、もう随分たつけれど… 確かに孔雀さんになるのは...大概が先輩なんだけど…でも…でも、 いえないけど…でも、時々…私が孔雀な時もあるわけで。 急に先輩が…先輩のあの身体が欲しいと思う時が私にだって近頃はある…。 あの身体に抱かれて...彼に教えてもらった知らない世界に行きたいって。 そう何がきっかけかわからないけどそれは事実。 そんな時は今まではなんとなくというか適当にじゃれて先輩にただただくっついて、 ひたすら…くっついてみて…アホですね…のだめ。 きっとそれだって先輩にはお見通しなんデスヨ。はううう。 でもでも…。欲しいって気持ち…はもってていいんデスよね? 今はその…私が欲しい先輩は寝ている。 最近忙しかった先輩。実は夕食を一緒にとるのも久し振り。 だからちょっとゆっくりさせてあげたいって気持ちもある。 それでもそんな私の心と裏腹にそっと私の手は彼の顔に伸びていく。 「…しんいちくん」 起きて…あ、でも起きないで。 そうデス、のだめが…我慢すれば…いいことデス。 孔雀の羽をしまえばいいんデス……。 でもでも…。 「せんぱい…」 そっとこれだけ、これだけと思って自分の顔をそっと寄せる。 自分の唇の行き先はもちろん彼への唇。 でも軽く触れるだけ、そう触れるだけ。 そう言い聞かせて私はそっと目を瞑った。 「…おめざめのキスか?」 「ぎゃぼーーーーー!」 あと少しってというか多分ちょっと先が触れた瞬間先輩はぱっちりと目を開けた。 「うっせーよ」 「すすすす、すびば…セン」 目をぱちぱちして頭を少しかきながら先輩が私の顔を見ていった。 うう…起こしてしまい…マシタネ…いろいろな意味で大失敗なような気がします。 「…で?」 「え?」 「で?続きは」 と、そういうとまた先輩はいじわるそうに目を閉じていった。 そんなことされると…普段の私ならともかく…今の私は……って誘われてる?そ れともそう思いたいの?私。 「できま…セン」 「なんだよ…自分で誘っておいて」 片目だけ器用に開けて少し笑いながら彼はいう。それだって…それだって……。 あ……うそ…。 「のだめ?」 すると私がだまって真っ赤になってうつむいているのが気になったのか、 今度は私の名を呼んで先輩が私の頬に手を寄せた。 「やんっ…!」 「え?」 思わず声がでる。ただ手が私の頬に触れただけなのに…それだけなのに…。私…私。 「…のだめ?」 「……」 「…ん…と、…ふーん」 「…」 無言。私は無言の返事。 だって私の体の中は今どきどきと先輩にも聞こえているかと思うくらいで、 そしてどんどん体温も…うんうん……中が、私の中が熱くなっているのが分かる。 分かってしまうているから…これ以上は今は無理。 「…したいの?」 「え?え???」 ストレートなことをいわれて困惑して、 でもうんといいたくてもいえない私をぐっと先輩は引き寄せて強引に唇を重ねた。 「…ばか、こいよ」 「あ、だって…んっ、ふぁっ…あ…ン」 と返事をしようとした瞬間、彼の唇が私に触れた。 ……気持ちいい…。 固くぎゅっと目を瞑って私は先輩の唇を舌をその動きにそのまま感じてしまう。 いつもならいつもなら…少しは私でも恥らうというか抵抗するけど…でもでも…今は…。 このまま感じていたい。 そう求めるようにゆっくり真一くんの腕の中に納まる。 二人ともまだおこたの中に足はあって ちょうど私の胸が二人の間をさえぎるような柱の上にぶつかっている。 それですら…今は…今は……。 真一くん…ごめんなさい…のだめ、のだめ…感じてます…。 * * * * * * * * * * 「やあんっ…」 そっとこたつ布団に隠れて見えない柱の上にあるのだめの胸を 手探りで探し当ててそっと触れてみるといつもよりずっと甘いのだめの声があがった。 …たまにある、こんな時。 人のことを孔雀だ孔雀だというけれど、いつからか… きっとあのヴァカンスの後くらいからか… のだめが俺に時々女の視線を送ることが度々起こるようになった。 そういう風に俺を求めるようになったのだめは…また違った意味でかわいくて。 でもそのことに恥ずかしいという感覚はさすがののだめにもあったようで… しかも経験がないせいかそんな時のコイツ誘い方はとてもこどもっぽい。 ひたすらひたすら俺にじゃれてくる。 けど…その目が…少し潤んだ懇願する目が… ものすごくたまらないということは決していえない。 今ののだめはまさにそんな目をしてる。目で俺を求めてる。 …とめられないし、とめる気はない。 「のだめ?」 「はぁんっ…」 セーターの上からゆっくりゆっくりと弧を描くようにその胸を撫でると びくっと反応して声をあげて身体を竦める。 顔は蒸気してほんのり赤いのは酒やコタツの熱さだけじゃない。その証拠に…。 「気持ちいい?」 「いやん…いぢわる…デス…」 耳朶に唇を寄せ、息を吹きかけながらそう囁くとこたつの中で絡ませた足が 内側にびくりと反応して…また声を上げる。 きっとのだめが一番感じやすいあそこはもうすでに… だけどあえて、いやまだまだそこに触れる気はない。 実際そこまでまだいかなくても胸への愛撫はセーターからの上の擦れる感覚が普段と違い また刺激的らしく、しかもコタツの中で動きが制限された状態できつく俺が抱きしめたり、 そっと首筋に舌を這わせたりするともういってしまいそうな甲高い声をあげる。 どののだめもたまらなくそそる。 「いいよ…感じて…」 「あん…いやぁ…」 「いや…じゃないだろ、いいんだろ?」 「…ばか…ばかぁ…ふぁ…っ」 セーターの下からそっと手を入れて今度はブラの上からやさしく胸に触れる。 ますますぎゅっと前のめりになるようにのだめは反応をする。 「あ…あ…んっ、しんいち…く…んっ」 といってもこちらもコタツの柱が微妙に邪魔をして思うように動かず のだめの柔らかい頂にあるその突端になかなか触れることができない。 それは…俺にとっても、そしてコイツにとってももどかしいことで。 「…のだめ」 とりあえず一度手を引き、その自分の手をのだめの背中にまわした。 「あっ!」 慣れてしまったこの行為…俺はさっとブラのフックをはずし、 またセーターの上からそののだめの胸に触れ、撫で回しはじめた。 「っ……はぁ…はぁ…は…っ…んっ…ふぅ…」 ブラのフックは外れたが、セーターは着たままで、 いろいろな異質感がのだめにはより刺激になっている。 あげる声も一段と艶めいて…愛しくてたまらなく 何度も何度ものだめの頬に額に鼻に耳に唇にキスをちりばめる。 そして首元に強く所有の刻印をつけた。 「あんっ!」 びくりと…びくりとまた身体が反応し声があがる。 「のだめ…のだめ…」 「ふあっ…んっ…気持ち良いぃ……」 「…そう?一人で??」 「…やぁああ、んっ…真一んっ…やらしい…」 互いに目と目を合わせて見詰め合って、 でも俺の手は止まらずのだめも逆に必死にしがみついてきて、俺の唇を求める。 だから二人でもう一度唇を重ねた。 「…柱痛くないか?」 「…ちょっと……」 どんなに密着しても二人を邪魔するこたつの柱。しかもそろそろ俺も限界だ…。 「出る?コタツ?」 「…あう…はい…でも……」 「何?」 「少しでも…離れたくない…デス」 「…バーーーカ」 そういってもっと真っ赤になりやがって…本当に。 「じゃ…もう少し」 「え?あ…ふぅっ、はっ…あぁっ!!」 俺はさっと右手をのだめのスカートに忍び込ませ… 予想通りもうすっかり湿っているそこに触れた。 のだめは一瞬油断をしていたようで思わぬ行為に大きく身体を震わせた。 「あはっ…くぅんっ…はぁ、はぁ…」 そして首をのけぞらしてぎゅっと目を瞑り必死に俺のシャツにしがみついて声を上げる。 のだめの一番敏感なそこは雫を掬い触れるだけで、ぴくぴくと反応し、 のだめ自身に強い刺激を送りつける。 「あふっ…くっ…はぁんっ、はっ、あん…なに…やぁ…」 自分の目の前で首を振りながら必死に意識を飛ばさないように耐えるのだめ。 顔にはうっすらと汗の玉が流れ落ち、口は半開きのままその甘い声を漏らし続ける。 …やばい…やばすぎる。 夢中になってのだめのその幼い芽を指で弾きながらそう思った。 いくら少し離れていたとはいえ…コイツがこんなにこんなに… 俺を別の世界に連れて行くなんて…。 絶対はなさい。 絶対誰も渡さない。 絶対誰にも触らせない。 俺だけの俺だけの…。 「あっ、あっ………だめぇぇ」 「…いって…いいから…」 びくりと身体がしなったかと思った瞬間のだめはその甘い声と共に達した。 * * * * * * * * * * こたつで横になったまま、また知らない世界に連れて行ってもらった。 でもまだ私の意識は朦朧としていて…はぁはぁと呼吸は乱れたままだ。 そんな私を先輩はまた間近で見つめながらそっと私の前髪を掬って頭を撫でてくれている。 「…平気?」 「…平気…デス…」 そう返事するとうれしそうな…多分私しかしらない笑顔を向けてくれる。 あぁ…この顔好きデス…大好き。 って…あ、そんなこと思っているとすっと先輩がコタツから抜けて、 さっと私の後ろにきた。 「おいで…」 そういってそっと私の肩に手を添えて、ゆっくり私の身体を起こし、 向き合うように身体を向けたら先輩はそのままぎゅっと私を抱きしめてくれた。 「…えとー」 「…なんだよ」 「暖かいデス…」 「そうか」 こうやって抱き合う二人。とても幸せな二人で…。 「だけどお前…その格好…」 「え?…ギャボ!」 確かに…乱れた衣服。セーターは胸元まで上がり、スカートはずり落ちている。 「…脱ぐ…か?」 「…えと……」 先輩が困ったようにでもちょっと懇願するように私に問いかける。 そです…よね。気持ちよくなっちゃったのはまだのだめだけで…。 でもちょっとお部屋はこたつをいれた関係でヒーターは弱めで… まだ脱ぐのは躊躇われる温度で…。 「しんいち…くん」 「何?」 「このままじゃ…ダメですか?」 「え?」 「あ、えっと…うんと…続き…デス…」 「…ばか」 「今日はバカの回数多すぎ…デス」 「ワリイ…」 ちょっと目をそらしてそう返事をされた。それがなんとなーく可愛くって、 イイデスヨっていいながら頬にキスをしてあげた。すると…。 「痛かったらいって…」 「え?あっん!」 私はそのまま振り返った先輩におこたの横に押し倒され… 気がつけば先輩が目の前に覆いかぶさっていた。 そして先輩はまたさっきみたいにゆっくりゆっくりと私の身体を撫で上げていく。 その触れられた部分がまたひとつふたつ私に熱を帯びさせる。 そして今度は柱もなく二人を隔てるものは何も無い。 そっと先輩は私のセーターを捲り、自分のシャツのボタンを外した。 先輩は…うんうん、私も…熱い。 ちょっとこのままなんていった自分がおバカだったと思ったけど、 それは一瞬のこと…先輩が私の胸に口付けて、 吸い上げるとまた私は別の世界へといざなわれていった。 「はぁ…はぁ…はぁんっ…」 さっきまでの余韻があるからか…私はまた先輩の手に自然と感じていく。 セーターとはだけたシャツから少しだけ重なりあう身体と身体も…それも心地いい…。 ゆっくりとやさしく先輩の唇は私のあちこちに散らされて、 そしてその手はやさしく、滑らかにじっとりと太腿を、 すでに濡れていたあのあたりをなでて、そして…わたしのあの紐を解いた。 「あっ…」 何かがすっと引っ張られるような感覚に声を高くあげる。 先輩はそんな私の顔を覗きこみながらいつもの準備をしてちゅっと額にキスをした。 「のだめ…」 「あ…んっっ…」 そして…はいってくる…先輩自身。 ゆっくりゆっくりその暖かい先輩がそのままそうこれが終わったあとに いつも私の胸のに埋もれていくように…私の中で…先輩が…。 「ふぁっ…」 ゆっくりと奥まで届いた瞬間わたしは身体に痺れを感じた。 知らない世界に行く前の…そう先輩がいる…先輩が私の中にいるっていう…この感触。 とてもとても今わたしが一番好きなこの感触。 「しんいち…くんっ…あぁっつ…ふぁああ」 「のだ…めっ」 ぎゅっとそのまま私を抱きしめて、そして耳を甘噛みして… わたしがまた感じはじめると先輩はゆっくりゆっくり動きだした。 「んっ…あ……ああ…ん」 奥までゆっくりゆっくりノックされて私の身体はぐるぐると乱れ始める。 先輩以外、真一くん以外誰も知らない私の扉。 でもそこは刺激が強すぎて、そのことは先輩もよくわかってて、 私か真っ白になりそうになるとすっと引くように動き、 今度は浅い入り口付近でまた…動く。 でも今の私にはそれもものすごく…だめ…だめ……だめ…で。 「……ぅ…あ…はぅんっ!」 「…これも…気持ちいい?」 「…あ、ああぁ…んっ…」 もう返事なんか出来ない。ひたすらひたすら先輩にしがみついて ただ首を縦に振るしかない。 …もう、もう。 「せんぱぁ…い…」 「ばっか…そんな風に呼ぶなっ…」 繰り返されるその行為。ふと横をみるとその綺麗な肌に汗が一筋… そっとその汗を私は掬うように彼の顔に舌を触れ、その道をたどった。 「はうっ…のだ…めっ…」 「やっぁあんっ!」 お返しに先輩は私の左胸に手を置いてなで上げたと同時に 私に唇を重ね互いに互いの舌を追い求め、何かに何かに向かって集中しだした。 「ぁ…っつ…しんいち…くんっ…のだめまた…」 「…いい…よ、俺も…俺も…」 「あっん…あ!……あ」 また、またあの世界に。二人だけの…二人だけの…二人だけしかいけないあの世界に…。 真一くん…好き……。 * * * * * * * * * * 「くしゅん!」 「…冷えたな…やっぱり」 「…そ、デスネ…」 のだめがもそもそこたつの中に再び入る。 「おい」 「だってー」 「だってもくそもない。シャワー浴びるぞ!」 「むきゃー!シャワー浴びに行くまでが遠いデス!」 確かにここはのだめの部屋で、出来たらゆっくり暖まりたいがバスタブはない。 シャワーだけだと帰って冷えそうだ。だけど今こんな状態で俺の部屋に戻っても… 誰かにあったらやっかいだし…何よりも二人で風呂なんか入ったら …今は…今度は俺が止らなくなりそうだ…。 「とにかく先に浴びろ」 「むー」 「…お前がはいってる間にさっきの鴨鍋の雑炊準備しとくから。 暖まるし、それに小腹空いただろ」 「ムキャーーー!やった!!」 ったくさっきのアレはなんだったんだっていうか…すっかりいまや色気より食い気か。 ま、でも。 「ま、俺は一足お先にごちそうさまだったけど」 「ほげ?」 「…お前を」 「…ムキャーーーー!えっちー!!」 「さぁ?どっちが??」 「ばかーー!」 「うるさい。ほらいってこい」 「真一くんも無理しないでおこたで待っててくださいね」 「あぁ…」 コタツ…コタツねぇ。 そんなのだめの言葉に甘えてさっと準備をして…また俺はコタツで横になった。 またあのかわいい彼女の唇が降ってくることをちょっと期待して…。 このコタツで。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |