ピンクモーツアルト2
千秋真一×野田恵


早足だ…これじゃ速歩じゃないか。
のだめに手を引かれて、俺はブノワ城の長い廊下を歩く。
のだめが変なのだ。
ヴォルフガングの衣装のまま、走りだしそうな勢いで、俺を引きずらんばかりに歩き続ける。
かつらから出ている耳が赤い。
いくらさっきのパーティ会場での演奏に興奮したからとて、いったいどうした。
俺の手をにぎる、のだめの手も赤くて熱い。
ずんずんと、なおも無言で進むのだめ。
部屋が見えた。
ダッシュ!
本当に引きずられる俺。
ドアを開け、飛び込む様に部屋に入るなり、のだめは振り向いた。

「せんぱい!」

両腕を広げ、背伸びをして抱きついてくる。
あまりの勢いに、いつかのように肩に噛みつかれるかと思った。
が、そうじゃなくて、熱烈なハグだった。
れ…冷静に、のだめをだっこしたまま、後ろ手を伸ばして、ドアを閉める。

「のだめ、どう(した)」

ぶちゅーっという感じでキスされた!

「む…むわてっ!」

顔と肩をつかんでむりやり引き剥がす。
俺の唇が持っていかれそうになった。

「俺を食う気かっっ!!」
「ひ…ひどいアンドレイ…さっきの続きを…」
「俺はもっとムードが…ちがうっ!かつら取れ!…じゃなくて、それよりさっきの最後のトコは何だ!!」

はた、と気がついたらしく、のだめが一瞬フリーズする。

とたんに、ばっと身を翻して逃げ出した。
狭い部屋の中をだーっと半周して、ベッドの陰に隠れた。

「ほんとに犬かおまえは!」

そーっと顔を出すのだめ。

「ごめんなさいごめんなさい!ちがうキラキラ星、弾いたから怒ってるんデスネ」

ちょっとかわいい。

「…かつら取れ」

ぽふ、と音を立ててベッドにかつらを置くと、まさにに犬が尾をフリフリしているかの様な、しなを作って見せた。

「おこんないデスカ」

お…怒れん…。

―――――――――――――――

「キラキラ星はですね、のだめの子供の頃、沢山弾いた曲なんデスヨ。
今回はオクレール先生に正しい譜で教えてもらったデスけど。
いままで忘れてましタ。」

客室のティーセットで紅茶を入れて、のだめにカップをに渡す。
俺も茶をすすりながらベッドに並んで座った。

「意味判んないんだけど、子供の頃のは正しいのじゃなかったのか?」
「リカちゃん先生は正しく弾いてましたヨ。でも、のだめは変化させるのが面白くて、演歌風とか、セイコちゃん風とか、沢山作って遊んでたんデスよ…子供の頃の事デスから…」

ゆるちてネ、ていう感じでウインクするのだめ。Ruiの真似かそれは。

「だんだん判ってきたぞ。
つまり、キラキラ星は当時の流行歌をモーツアルトが12曲のヴァリエーションを作ってまとめた訳だから、子供のおまえはそれをパロディだと思ったんだな。」
「そです、そです、さすが夫です。」
「夫じゃねえ!それにしてもだな!なんでモーツアルトを勝手に変えて弾くんだ!城主がいたら怒り出したかもしれないぞ。」

ぎゃぼっと奇声をあげて、頭を隠して身を引く。
ぶたないのに。

「えと、えと、何か盛り上がっちゃってエ、調子が良くてちょっと舞い上がっちゃったんデス。
弾いてるウチに、さっき先輩とシタ事で頭がイッパイになっちゃって、ついあーいう風にやりたくなっちゃったんデスヨ…ゴメンナサイゴメンナサイ」
「俺のせいかよ!」

大声をだしたので、のだめが枕を盾に身を縮めた。
はああ、と俺はため息しか出ない。枕を取り上げる。

「今後、人前でああいう演奏はするな。おまえがもっと有名になって、プロになって、誰からも認められるようになるまでは、勝手なアレンジは駄目だ。…俺の前では良し。」

そう言って抱き寄せた。

「学生の内は楽譜通りにやらなきゃだめだ。それはおまえも今は判ってるんだろう。」
「オクレール先生にも、いつも怒られてマス。でも先生は優しくてぶったりしませんけど。」

そうだ。こいつは体罰はだめなんだ。
だからオクレール先生は教えるのが上手いんだな。

「だったら俺のいう事も聞け。」

耳の後ろにキスをした。

「ハイ…」
「それから、パリに帰っても、今夜の事は誰にも言わない事。オクレール先生にも。もったいないけど…」

うなじにもキス。

のだめが体をねじり、振り返ってハグしてきた。

「もー忘れちゃいマシタ。同じのできませんかラ。」

そうしてベッドに、俺はのだめに押し倒された。

「ま…待て!カップを片づけないと…。」
「後でいいじゃないでスカ。」
「良くない!だからお前の部屋は汚いんだ馬鹿!かたせっ!」

しぶしぶという感じでのだめは起きあがり、カップとソーサーを2人分持ち上げ、カチャカチャいわせてサイドボードまで持っていった。

「おいのだめ、そこで衣装を脱げ!」
「へ?」
「明日返すんだ。しわになると恥ずかしいぞ。」

俺もベッドに座り直すと、半ズボンとタイツをぬいでその辺の椅子にひっかけた。
シャツも脱いで背中を確認する。
なんだそんなに汚してなかった。ホッ。
のだめを見ると、長いベストのボタンの多さにまだ難航していた。

「こっちこい。手伝ってやるから。」

ぱああ( ゜▽ ゜)と嬉しそうな顔になり、走りもどってきた。コイツこんなに犬系だったかなあ。
のだめはベッドに座る俺の前に立つと、子供のように胸をはって偉そうに「お姫様みたいデス」といった。

「ばーか」

残り3個の裾ボタンをはずしてやる。
ベストをのだめは自分で脱いだが、俺は首のタイを引っ張ってのだめの顔を近づけさせた。

やっとキスをする。
浅いキスを、角度を変えて繰り返し、手は長いタイをほどいてシャツのボタンにかける。
指の動きが鈍くて、もどかしく感じるうちに、だんだん俺も興奮してきた。
ようやく外し終えて、つい乱暴にはだけさせた。
ピンクのキャミソールの上半身になり、いつもののだめらしさに俺の脳内のスイッチが、がちんと音を立てて入った。
腕を引っ張って、今度こそ俺がのだめを押し倒す。

「あふん」

のだめの首すじに舌を這わせながら、ズボンのボタンを片手ではずしていく。

「アーっっ、なんでこんなにボタンが多いんだこの服は!」
「あはははは、先輩手伝いマス。」

ふたりで可笑しくなって笑いながら起きあがり、のだめは正座して腰の飾りボタンを一個一個はずす。
ボタンの下にファスナーが隠れていて、一気にさげおろすと、ぱぱっと座り脱ぎして、ぽーんと俺が衣装を掛けた椅子に放り投げた。
ズボンの下に履いていたタイツも脱ごうと、パンツごと尻までさげていたところで、俺は待ちきれなくなってのだめに覆い被さった。
「ぎゃぼ!マダですヨ先輩…あうー…」

タイツが太股の半ばで止まったままの状態で、両足を抱えあげる。
閉じたままの足の間に、秘部が桃の種のように現れ出た。
無言でその割れ目にしゃぶりついた。

「や…ダメ…先輩、早いデスヨ…」

屈伸の姿勢をとらされて、あえぎながらのだめは残りのタイツをくるくる巻きはずした。
そうして自由になった脚を、大きく開いて見せる。

「あ…アン」

のだめのそこは熱くて、本当はもうずうっと俺を待ちこがれていたのじゃないだろうか。
そう思わせるほど、そこは潤ってぐしゅぐしゅになっていた。
いくらか性急だが、俺もパンツをおろし、のだめの上に這い上がると、一気に進入をはじめた。

「ああーっ」

あ、ゴムつける余裕も無かった。やばいかなあ。と思ったのは頭の端っこの方で、身体は快感に支配されて、律動を繰り返す。

「はっ、あっ、アア、ア、ア!」

のだめの腕がぎゅうっと巻き付いて、下の締め付けも同時に強くなった。

「はあ、はあ、」

サルの仔の様に俺にしがみつくのだめの背を抱いて、力ずくで起きあがると、座位の姿勢を取った。

「あン…」

ベッドのスプリングを利用して、上下に揺すりあげる。
のだめの天井に強くあたる感触がある。

「あっ、ダメ、や、あ、あ、あ、アン…」

のだめも自分から腰をたたきつけるように動き出した。
能動的な水音が室内に淫猥に響き渡る。
キャミソールをまくり、自由運動していた、のだめの乳房にかじりついた。

「あっツ…やあっ…」

歯形がつくほど噛み付いた先に飛び出ている突起を、口のなかで舌で転がした。

「ひいっ…い、ア、あ・あ・あ・し…いちくんッ」

俺の首に回していた腕が、背中をさまよい、爪を立ててひっかいた。

「つ…。」
「あっ…キモチい……〜〜〜〜っくっ、アッ…」

先にのだめがいった。きゅううう、と俺を締め付けて、やばいこの体勢だと!
ふいっと腕の力が抜けてきた、のだめをそのままベッドに寝かせ、俺は自身を引き抜いた。
ぱ、ぱ、ぱ、と音を立てて白濁した飛沫をのだめの腹の上に吐き出す。
はあ、はあ、はあ、はあ、……。
のだめの片方の乳雲のまわりに、俺の歯形がくっきり残り、赤紫の輪になっていた。

「はっ、はっ、はっ、はっ…へんぱい……」
「何だ」
「おっぱい痛いデス……」
「あーーーごめんごめんっと」
「ひどい…先輩野獣…」
「おまえが先に今日ははじめたんだろ」
「それはソーデスけどお…」

口が悪いのとは裏腹に俺は、ティーセットの湯でハンカチを湿らせると、のだめの腹の汚れを丁寧にぬぐった。

「ごめんな、今度はちゃんと用意するから。」
「だっこ…」
「はいはい」

のだめの横に沿って体を横たえると、ベッドの上掛けを引っ張りあげ、のだめを腕の中に収めた。
そのまま二人とも眠っちまって、次の朝はまた朝食に遅れた。






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