千秋真一×野田恵
![]() 惜しみない拍手と賛辞の中、少し照れくさそうに深々とお辞儀するのだめの姿を 見つめながら先程までの演奏を思い返して少し切ない気分にかられていた。 あのコンクールの日から2年、月日は流れ・・・ 昨夜の屈辱的な朗読と生き地獄による寝不足と、そしてリサイタルが無事成功に 終わった事への安堵からか、少しばかり疲労感が漂う。 何時の間にか黒木君とターニャが席を立ち、隣に来ていた事にもすぐには気づかず。 『もー、千秋ったら、ぼっとして 放心?感動して声も出ないって?』 からかう様にターニャが肘でこづいてくる。 『いや、でも千秋君が放心するのもわかるよ 凄いよ恵ちゃん、あれが初めての リサイタルだなんて・・・』 (すずらん舞う) 『放心してたわけじゃない。ちょっと寝不足で』 心の内を覗かれたような気がしてわざとつっけんどに答えてしまう。 『寝不足ですって?』 一瞬ターニャ−の目が怪しく光る。し、しまった・・・ 『やだ、何でそんな疲れてるのかしら〜、頑張ったのね〜レオポルト〜!アハハ』 『な、何言って・・』『まあまあ、いいじゃないの、孔雀時なんだし〜』 ターニャの肘鉄攻撃が加速する。 とその時 『あれ?恵ちゃん達の傍にいるのブノワさんの身内かな?似てるし』 『えっ!!!!む、息子??』 ドスッ!!!鋭い衝撃が走った。 『・・・っう、ごほっ』 息子に反応したターニャの肘鉄がみぞおちを強烈にヒットした。 『大丈夫?千秋君』 『だ、だいじょうぶじゃな・・・お、お前殺す・・気・・ゴホっ』 激しくむせながらターニャを睨みつける。 バツが悪そうに目をそらしながら 『あ、のだめがこっち来るわよ・・息子・・・幾つよ』 と話をそらす上に、あやまらねえし。 むせている俺の傍にのだめが駆け寄って来た。『せんぱい?どうしたんデスか?風邪?』 心配そうに俺の顔を覗き込む。『いや、ちょっと、むせた だけ・・・』 俺の返事にほっとした表情に変わる。のだめの後を追ってブノワ夫妻もやって来た。 『いやいや、魚ちゃん、素晴らしかった!皆にも今晩頑張ってもらわないと』 ブノワ氏の“皆”にすかさず反応したか、黒木君とターニャ−が少しずつ後方へスライド して行く。卑怯だ、俺もと思った瞬間、婦人の手が俺とのだめの手をしっかりと握りしめた。 『本当に素敵な演奏だったわ。それに、この人がモーツアルト以外の曲を褒めるなんて』 のだめに優しく微笑みかける。『め、メルシー、マダム』はにかんだ表情ののだめ。 そして、今度は俺に向かって優しい視線を向ける。 『自慢の奥様ね、大切になさい』 感傷的な気分がそうさせたのか・・・・ 『どうも・・・手のかかる妻ですけど』 自然に口から出た。 『もきゃっ、せ、せんぱい?い、今何と?』 『何だよ?文句あるか?手がかかるのは事実だ』 『いえ、その前の・・・も一回・・』 赤面しながらもじもじ呟くのだめを愛しく感じて抱きしめたい衝動にかられる。 『・・・良くやったな・・・』 今はそれだけ言うのが精一杯で、夫妻に夜のパーティまで休むと告げて、抜け殻状態の のだめを引きずるようにして教会を後にした。 ゲストルームに戻ると言葉もなく体を抱き寄せた。 『し、真一君?』 『少し、このままで』 柔らかなのだめの髪が鼻先をかすめる。 『じゅ、じゅうでんデスか?』 二人の体の隙間を割って、そっとのだめの右手が添えられる。 『たまには俺にも充電させろ・・・』 抱きしめる腕の力を強めると、ターニャに食らった 痛みが残るみぞおちにそえらえたのだめの手を自ら押し付けてしまった。 『っっつ・・・痛っ』 強めた力を思わず弱めて顔をしかめてしまった。 『せ、先輩?胸が痛いんデスか?どこか具合でも』 『いや、や、少し休めば・・』 こいつの演奏に放心してたせいでターニャにからかわれたなんて言えるか・・・ 『大丈夫だから』 心配そうなのだめを再び軽く抱き寄せ耳元で囁く。 『はい・・あ、そだ、のだめのシュベルトどうでした?』 少し不安気に言葉を待っている。 『良かった あんな風に弾くの知らなかった』 『ふぉぉぉぉぉ、良かった せんぱいコンクルの時の事覚えてますか?』 『ああ、シュベルトは気難しい人 だろ?』 まるで昨日の事の様に覚えてる。 『コンクルでお客さんから一杯拍手もらったんデスよ・・・』 『うん・・・』 『でも先輩に聴いて貰えなかったから・・今日は・・先輩の為に弾いたんデス』 胸に熱いものがこみ上げた。反則だろ?泣きそうだ・・・思わずのだめの体を引き離した。 純真無垢な瞳で俺を見上げて、きょとんとした表情。 『せんぱい?怖い顔・・・どうしたんですか?ちょっと顔色悪いデスよ・・・』 『お前、俺がどこかに行ったらどうする?』 不意にこぼれた言葉。いや、逆だ。 のだめがどこか遠くへ行ってしまったら、どうするんだろうか? 自分のへの問いかけなのかもしれない。 『ぎゃぼっ、また、どっか行くんですか?あ、ミルヒーと?』 少し切なげな目。 『いや・・・そうじゃなくて・・・・もっと遠く、帰ってこれない位・・・』 言いかけてはっと我に返る。俺は一体何を・・一瞬のだめの表情が歪むのを見てノエルの 日の飛び蹴りが蘇った。やばい。 『悪い、今のは忘れろ!!!』 何か勘違いするかもと慌てて話を切ろうとした。 軽く俺の腕を持っていたのだめの手に力が入った。 『せんぱい・・・・』 『な、何?』 『なんかのだめに・・・隠してませんか?』 険しい表情のまま俺の目をにらむ様に。 『そんな事はないっ!あれだ、バカンスが終わったら、俺もマルレの関係で忙しいし』 『じゃあ、何で目をそらすんデスか?』 腕を掴む手が更に強まる。 『別にそらしてなんか・・疲れただけだ。少し休む』 早く話を切り上げたくてのだめの手を 静かに振り払うとベットに倒れこんだ。横たわった俺の左隣にのだめも寄り添うように座る。 まだ何か追求してくるのかと思いきや、そっと前髪の隙間から温かい感触。 『じゃあ、パーティまでゆっくり休んでくだサイ のだめ起こしてあげますから』 少し寂しげな表情で、そっと俺の瞼を閉じるように優しく触れた。・・・こいつズルい。 瞼を軽くかすめたのだめの左手を思わず掴み力一杯引き寄せていた。 驚いたのだめの顔が至近距離に。そっと彼女の頬にかかる髪を左手ですきながら頬に 触れると温かさが伝わってきた。そのまま顔を引き寄せるようにして唇にふれようとした瞬間 思いがけずのだめの右手が俺の左手を押し戻した。 『あの・・・の、のだめ急用思い出したんで、センパイは寝てて下さいっ!すぐ戻りマス』 そういい残すと部屋を飛び出して行った。何だよ?急用って、そんなもんあるわけねえだろ? 置き去りにされて力が抜けたせいか、考えるのも面倒になって、そのまま目を閉じた。 どれ位時間が過ぎたのか、ドアをノックする音に反応して目を開けると部屋の中は暗かった。 のだめか?いや、あいつはノックなんて。暗さに目が慣れず手探りでドアの所まで歩く。 扉を開くと執事が申し訳なさそうな顔で立っていた。 “お休み中のところ申し訳ございませんが、パーティーが始まっておりますのでお呼びしに” “えっ?もう、そんな時間?すいません着替えたら、すぐに行きます・・・あ、彼女は?” のだめの所在を尋ねると “はい、のだめ様は旦那様に呼ばれて、広間においでです” うやうやしくお辞儀をすると執事は部屋を後にした。 何だよ起こしてあげますとか言って、あいつ冷たい。置き去りにされた事も手伝い苦々しい 気分で上だけ白いシャツに着替えると急いで広間に向かった。 広間では、のだめが大勢の人々に囲まれ城主の孫らしき二人の子供と交互にキラキラ星を連弾。 楽しそうな様子に思わず先程までの怒りも忘れて顔がゆるむ。 演奏が終わると大きな拍手が湧き上がった。満足げな城主がのだめ達の傍に歩いて行く。 “諸君、いや、今日は本当に素晴らしいリサイタルだった。モーツアルトの人生は35年と 10ヶ月だったわけだが、その殆どが父と一緒に旅をしていたわけだ” また、この話か、パーティーに参加している誰もが、表情を曇らせる。構わず続ける城主。 “旅をしない音楽家は不幸だとモーツアルトは言っている そこで” お、リピートしない? のだめの肩を抱き寄せ “魚ちゃん、素晴らしい演奏のご褒美に紹介したい人間がいる” “ふぉぉぉぉ、だ、誰ですか?” “うむ、君はこれから色んなところへ旅をした方がいい” “旅・・・ですか?” 何か嫌な感じがよぎった。城主は一体何を・・・ “彼が君を広い世界に導いてくれる筈!紹介しよう、ピアニストのマサユキ・チアキ” 今・・・何て言った・・その名前は・・・会場が一気にざわめきたった。頭がガンガンする。 “チアキ、こっちに” 城主が、その男に呼びかける。 足元がゆれる。視界が急速に薄暗くなりかすんでいく。声を出したいのに声が・・・出ない。 一人の男の影がゆっくりと中央に歩いて行く、その気配を感じるものの姿が見えない・・・ “魚ちゃん、さあ、彼の手をとって” やめろ・・・・ “は・・・はい。” やめてくれ・・・・ ゆっくり差し出される手のシルエットが揺らぐ。 その手を取るな。視界は更に暗くなり、もはや、のだめの姿も捉えられない。 “私と一緒に世界中を旅しよう きっと素敵な毎日があなたを待ってるから” アイツの声? 何故だ?何故・・ここに・・のだめを俺を奪いさっていくのがアンタなんだ!何故? 天地を引き裂くようなハウリング・・・飛行機?日本に帰る途中だった・・・ 俺達を捨てたあいつから。アンタは、そうして・・・2度も俺を捨てるのか? 激しい揺れが俺の体を襲う。 “真一君” 不意に近くで響いた のだめの声。 “のだめ” 色彩が戻ってくる。ゆっくりと色彩を取り戻す視界に映った静かな笑顔。 “のだめ、行きますね” “何故だ?俺と一緒に・・・ずっと一緒にいるんだろう?” ゆっくりとのだめの唇が動く“神様が呼んでるから行かなきゃ” 俺の問いかけを空しく宙に放り出す言葉。 その言葉は・・・いつか、どこか・・・で 聞いた 気がする・・・そう、あれは・・・ 再び視界が真っ暗になり、激しい揺れが再び俺をおそった。 『・・・ぱいっ!せんぱいっ!』 遠くで響いていた声をはっきりと耳に捕らえたと同時に激しく体を揺さぶられる振動に目を 開けると、心配そうに覗き込むのだめの顔があった。 『え?ここどこだ?俺・・・』 『せ、先輩、凄い汗・・・苦しいんデスか?お、お医者さま呼ばないと』 涙目になっている。 『・・・・のだめ』 『は、はい』 『パーティーは?』 『こ、これからです・・・センパイ起こそうと戻ったら・・・センパイ苦しそうにして』 ひゃくりあげそうになりながら涙を拭っている様子から、状況を理解した。何て夢だ・・・ 『ひっく・・・きょ、今日は、も・・休んでた方が・・・』 『いや、大丈夫だから・・・ちょっと悪い夢みただけ、 いや・・・何でもないから』 『で、でも』 不安そうな顔で俺の手を握り締めるその手を、強く握り返してやる。 『平気だから。さっさと行くぞ。お前主役だろ』 正直、パーティなんて気分ではなかったが、まさか正夢ではない筈と思いつつも嫌な感じが 漂っていて部屋にいる気がしなかった。 リサイタルの時とは別の仮装(しかもまたモーツアルトかよ・・)に着替えたのだめの手を 引いて広間へ向かった。のだめの登場に人々の拍手が湧き上がる。 『さあ、魚ちゃん、乾杯だ』 城主が手招きする。 不安そうに俺の顔見るのだめの背中をそっと押した。 『ほら、行ってこい』 もう一度俺の顔を見て、頷くと、のだめは広間の中央にゆっくりと歩いて行った。 パーティーは華やかなものだった。城主が毎年招いていると楽隊と共に俺達も演奏する事を 余儀なくされたが、やはり演奏するのは何だかんだ言って楽しかった。 ただ一つ、仮装を強制された事を除いては。 それにして・・・積極的に仮装を受け入れた黒木君、意外な奴・・・ パーティーも終盤に近づいてきた頃、のだめは城主の孫2人にせがまれ、キラキラ星を交互に 連弾していた。何も起こらない。ただ楽しい音楽の時間が流れているだけ。 その楽しげな姿を眺めているうち自然と心が安らいでいた。 ようやく落ち着きが戻ってきたので、主役を残し一足先に部屋に戻った。 部屋でくつろいでいると程なくのだめが戻って来た。 『せんぱい?気分どーですか?』 走ってきたのか少し呼吸が乱れている。 『うん、さっき寝たし、大丈夫』 『そーですか、のだめ、汗だくなんで、シャワー浴びてきます』 そう言ってバスルームに消えた。 5分程して、ドアをノックする音。誰だ?こんな夜中に? ドアを開けるとワゴンを手にした執事が立っていたので、先程の悪夢が一瞬蘇り思わず身構えた。 『お休み中のところ申し訳ありません、のだめ様よりお部屋にお持ちするようにと』 そういってワゴンを部屋に運び入れた。ワゴンの中にはシャンパンとグラスが二つ。 『これ?のだめが?』 『はい、お部屋で乾杯されたいとの事で、ではお休みなさいませ』 夢と同じく、うやうやしくお辞儀をして去って行った。だよな、夢は夢だし。ほっとする。 それから15分程して、のだめがバスルームから出てきた。昨日と同じ白のネグリジェ姿。 思わず顔が赤らむのを悟られないように、読みたくもない本を読んでいるふりを続けた。 『むきゃっ、シャンパン、執事さんにお願いしといたんです。乾杯しましょ』 『そうだな、結局あんまり飲めなかったし』 ボトルの栓を抜き、グラスに黄金色の液体を注ぐ。 小さな気泡がグラスの中で美しくはじけていった。クリコか、ケチだな、あの城主も。 ラベルをチェックしているとのだめがグラスを手にした。俺も自分のグラスを手に取る。 『じゃあ、リサイタルの成功に乾杯』 向き合ってグラスを前に差し出し、少し傾けるように 乾杯の仕草をすると、グラスに口をつけた。口の中に芳醇な香りが・・・・?!?!?! ぶはっ!!! 『お、お前何やってんだ!!!』 ラッパ飲み。 のだめは手にしていたグラスではなくボトルごと掴んでラッパ飲みしている。 『お、おいっ!!』 慌ててのだめの手からボトルを奪い取る。 『ぷはぁぁぁぁぁぁ〜、今日は、いい夜デス』 すでにボトルは空になっていた。 『そんな飲み方する奴があるかっ!!!』 『いいんデスよ、のだめはマグロで鼻からスイカ ひっひっふう〜デス!むん』 『・・・・おい、どこの星と交信してる・・・』 溜息をつくと、のだめがキッと目を据えて俺を顔を食い入るように見た。な、何だ・・・ 『今日は初夜デス』 こいつ・・今何て言った? 『初夜なんデスよ』 唖然とする俺を無視して繰り返すのだめの顔はいつになく真顔。 『・・・初、初夜って、おい』 のだめの言葉に急激に顔が紅潮する。 『ったく、じゃあ、初夜で、何でラッパなんだよっ!このバカ』 動揺から声を荒げてしまう。 『で、・・・・までなんですか?』 急に声のトーンが落ちて聞き取れない。 『え?何?』 『だから、いつまで生きられるのかって聞いてるんデスよ!』 『はあ????何の話だ?』 理解出来ないでいる俺を見るのだめの表情が歪む。 『・・・・だって・・・・センパイもうじき死んじゃうんでしょ・・・・』 絶句。 『ふっ、ふざけんな〜〜〜!!!!!!何で俺が死ぬんだよ!!!!!』 ベッドの枕を手に取り思わずのだめに投げつける。『ぎゃぼっ、何するんデスか!カズオ〜〜』 のだめが飛びついて来た。体勢をくずし二人ベッドに倒れこむ。不意に頬に熱い水滴が降って来た。 上から押さえつけるように俺を見下ろすのだめの目に光る涙。 『お前・・・泣いて・・・』 そっと指先で涙を拭ってやると、のだめは少し落ち着きを取り戻した 表情になった。しかし、まだ無言のまま。 『何で、そんな事思ったんだよ?』 今度は優しく問いかけた。 『ぐすっ・・・だって、センパイ、今日は変デス 妙に優しいし、いつも言わない事言うし』 だから?声には出さず、続きを促すように見つめたままで。 『それに・・・変な咳して、む、胸の辺りが痛いみたいだし・・・何かねちっこい目でのだめの事 じっと見てるし・・・どこかに行っちゃうとか・・・普段カズオな人が急に・・・』 昼間の会話が脳裏をかすめた。 『ば、ばか、あれは』 『・・・それに、さっき寝てる時、末期症状みたいに呻いてて・・・そういうの、不治の病に なっちゃった人って相場が決まってるんデスよ!』 何の相場だ・・・・・・眩暈がする・・・末期症状って・・・ねちっこい目かよ・・・ 『・・・・お前、漫画の読み過ぎ・・・・』 『あの・・・・もしかして違うんデスか?』 『当たり前だ、バカ』 へなへなと覆いかぶさるように 抱きついて来た。まあ、変に心配させたのは悪かったかもしれないと、のだめの体にそっと腕を まわして優しく抱きしめた。何だか可笑しくなってきた。 『だけど、何で、それが初夜の酒盛りになるんだよ』 『そ、それは・・・・せんぱいのしたい事全部、出来るだけ・・・その初夜もそうですけど・・』 『?うん・・・』 『イタリアのヴィエラ先生にも会いに行かなくちゃだし・・・・オケストラも やる事いっぱい』 『だから?』 『時間がないと思ったから・・・』 い、意味わかんねえし。 『わかるように喋れ!』 ちょっとイラついて軽く頭をこづく。すると、のだめは起き上がり正座した。 つられて俺も起き上がる。流石に、正座はしないが・・・・ 『は、初めてって、痛いって言うじゃないデスか・・・』 『う、そうだな』 初めてに反応してしまう。 『痛くて、我慢出来なくて、うっかりセンパイ蹴っ飛ばしちゃったら、び、病気の進行が・・・』 ぶっ・・・こ、こいつって・・・病気の進行・・・・(苦笑) 『で、酒か?』 『は・・・い 峰君が酒でも引っかけてマグロになってろって』 『なるほど・・・・』 って、え?峰?今峰って言ったよな・・・・。急速にパーティー前の情景が蘇る。 『お、お前さ、急用って、一体、どこで何してた?まさか・・・・』 嫌な予感。 『どしていいか、わからなくて、真澄ちゃんに電話したら家に居なくて・・裏軒に電話しました』 ひぃぃぃぃぃ・・・・最悪だ。し、死にたいかも。 ♪ のだめ@チャット BY 再現フィルム ♪ ますみ : 何なんのよー、全く 裏軒まで電話してきて アンタ暫く留守にするって のだめ : 今日は センパイとのだめの初夜デス ますみ : き〜〜〜!!!何ですってええええええ!!! ケンカうってんの???? ますみ : 殺す 絶対 殺す〜 待ってなさいよ〜 のだめ : 秘訣を教えて下サイ ますみ : 何無視してんのよ ふざんけんじゃないわよ〜〜 このメクソっ のだめ : 真剣デス 早く 教えて下さい!! ますみ : 知らないわよ!!! つーか、アンタ やっぱり嘘ついてたんじゃないの!! のだめ : 何がデスか? ますみ : 何が 服着る暇がないよっ 千明様が汚れる手助けなんて しないわよっ! ますみ : 何よ、なんとか言いなさいよ!!! のだめ : 時間ないんデス・・・・ ますみ : きィ〜〜!!!こっちだって忙しいわよ ! のだめ : イエ、そうじゃなくて・・・・センパイが・・・その・・・限界なんデス ますみ : ・・・・・・本当に殺すわよ みね : おい、おめーら打つの早すぎ のだめ : いたんですか みね : ぷぷぷ、何だよ 千秋限界って・・・ぶはは そうか よし男の事は俺にきけ! ますみ : みね アンタ余計な事すんじゃないわよ!!! のだめ : 痛いんですよね? みね : あー、痛いらしいな のだめ : どれ位 痛いんデスかね みね : 鼻からスイカ出すくらい いてえらしいな ますみ : そーよ だから 余計な事すんじゃないわよ 千秋様に!!!! のだめ : どーすれば 我慢出来ますか? みね : 任せてりゃ いいだろ 千秋に あいつ天才なんだろ ますみ : アンタまともな事いってんじゃないわよ!!! のだめ : 任せるって どーするんデスか? みね : マグロだよ でーんっと寝っころがって マグロになってろ のだめ : マグロ・・・デスか それから? 痛いとマグロはどーするんデスか みね : 痛くなったら ひっひっふーの呼吸法だ! ますみ : アンタ それラマーズ法・・・・ のだめ : ひっ ひっ ふ〜 ですね 後は? それだけデスか? みね : まあ、酒でもかっくらってマグロになってりゃ 千秋が何とかするさ のだめ : 酒デスね みね : ぷぷぷ アイツ むっつりだからな いっそ 縛られてろ のだめ : マグロの一本釣りデスね ますみ : 下品な事言わないでちょーだい !!! 千秋様よ あの千秋様が 縛り・・・ みね : 何だよ アイツだって男だろ? のだめ : のだめ頑張ってみます みね : あ、おい、あとで教えろよ ますみ : イヤァァァァァァやめて〜〜〜・・・・でも・・・・報告しなさいよっ のだめさんが退室されました ますみ : あのひょっとこ娘がっ!!!! 本当に・・・・ みね : くくく 楽しみだな つーか、俺たちも 戻るか 『・・・・お前・・・・限界って・・・』 『だって・・・もうじき死ぬとか 悲しくて 書けませんョ 頭まっしろで』 正座したまま、少し涙目で可愛らしく言い訳する。憎たらしい反面、やっぱり可愛いと 感じてしまう。怒る気力も失せ、正座したのだめの背後にまわり、そっと抱き寄せた。 細い肩に顎をのせると鼻先をシャンプーの残り香を纏った髪がくすぐる。 『馬鹿・・・そういう事は、先に俺に確認しろ』 『ふぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・何か、あの時みたいデスね』 耳を擽るようなのだめの声。 『ん?あの時って』 心地よさに思わず知らず甘い声が出た。 『センパイが実家まで来た時』 ヤパイ・・・何か、欲情して来た。この体勢は・・・そっとネグリジェの上から胸に 触れると、ぴくんと小さく反応した。 『し、真一君?』 『きょ、今日は・・・初夜なんだろ?』 ちょっと声が上ずったかも・・・ 『もっっきゃー・・・・そ、それは 』 耳まで赤くなっている。 『俺に初めてをくれるんだよな?』 故意に耳元で囁いてやる。俺を翻弄した罰だ。 『め、冥土の土産デスよ・・・』 冥土の土産って・・・・おい、どこまでも生き地獄か? けれども、悪態をつきながらも、のだめは、そっと俺の体に寄りかかってきた。 少し、体を横にずらすようにして、そっとのだめの頬を自分の方に傾ける。 『・・恵・・・』 最初は、そっと触れるだけのキス。やがて物足りなくなり、深く舌を差し入れる。 戸惑いながらも応えるように舌がからみついてきた。それを合図にのだめの体に 覆いかぶさるように深くベッドに沈みこんでゆく。柔らかく、温かい感触。 そうだな、確かに限界だ。 白いネグリジェの裾をたくし上げると、何も身につけていないのだめの白い肌が ゆっくりと浮かびあがり、思考が止まった。 峰、販売促進会議@裏軒(おまけ) 『よしっ!これでいい、親父、期間限定メニューだ』 『お、新しいメニューか?』 『おう、千秋の記念すべき夜に 千秋真一・マッハ・ゴー・ゴー丼だ!』 『先生の?だけど、何で鉄火丼なんだ?』 『まあ、追求すんなって(ニヤニヤ)・・・』 (限界って事は、あいつ絶対、あっという間に・・・・ぶははは) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |