千秋真一×野田恵
![]() 朦朧とする意識の中、指が抜かれるのを体の奥で感じた。 「あ」 と漏れた声は、とても自分のものとは思われないほど甘さに満ちていた。 ゆっくり目を開けると、少し離れた所で先輩がゴムの準備をしているのがぼんやりと見える。 先輩の部屋の先輩のベッド。 暗闇に慣れた目に、こちらへ近づいてくる姿が映る。 「大丈夫?」 優しく微笑みながら、いたわる様に私の髪を撫でてくれた。 「ハイ、なんとか」 全裸で仰向け、という自身の状態に赤面し、くるりと寝返りをうってうつ伏せになった。 そ、と笑った先輩はベッドの端に腰掛け、そのままの姿勢でこちらを振り向き 「おいで」 と手を伸ばしている。 実はここのところ「最初は座位」というのが二人の間で暗黙の了解となっていた。 というのも最近になって、私がこの体位に酷く弱いというのが発覚したからで…。 先輩の上にまたがり、一つになるや否やすぐにスイッチが入って階段を登りつめてしまう。 「のだめに何回でもイってほしいから」 と、先輩は最初に必ずこの体位を促すようになった。 でも今日は… 「あのぅ、先輩…」 「ん?」 「その…今日は違うのでしませんか?」 突然の思いがけない提案に、俺は固まってしまった。 俺しか男を知らないのだめはセックスの時はどちらかと言うと従順で 俺に身を任せてくれていた。 『マンネリ…?』 そんな言葉が脳裏をよぎる。 確かに、ここのところずっと座位から始めていた。 のだめが一度絶頂を迎えた後は色々と体位を変えていたが、 その内に頭が真っ白になるのだめにとっては最初の座位のインパクトが全てなんだろう。 そうだよな、毎回毎回同じことしてちゃ嫌にもなるよな… 俺はフッと自嘲気味に笑い 「うん、ごめんな。そりゃ飽きるよな」 と言うと 「…はぁ?何言ってんデスか?」 と首を傾げ 訳分かんないデスね〜、と呟きながらブランケットを指でつかんだ。 肌寒さからか恥じらいからか、ブランケットをはおり つ、つ、つ、と俺の側に寄ってきて 「あの…デスね…その、いつも、のだめすごく気持ちよくしてもらって嬉しいんデスけど、 その・・・先輩はのだめの方ばかり優先してる気がして…。 たまには先輩が一番気持ちいいように、好きなようにしてほしいな・・・って思って」 俺の目を見てそれだけ言い切ると、後は耳まで真っ赤になって目をそらしてしまった。 俺はそんなのだめに釘付けになった。 か、か、かわいい。 なんてかわいい事を言うんだ。 こんな気配りのできるのだめがこの世に存在したなんて!!!! 俺は堪らずブランケットごとのだめを抱きしめ、耳元にキスをした。 「のだめ」 「…はい?」 「あのな、言っとくけど、俺はお前の方ばかり気遣ってる訳じゃねーぞ? そんな余裕ねーし。座位は、その、俺もめちゃくちゃ気持ちいいんだし…」 そう。 座位の時の、体を揺する度にぶつかる胸の感触。 耳元に響く嬌声。 俺の首にしがみついてビク、ビクと震えるのだめの体。 その全てが愛しくて愛しくて…病み付きになってしまったのは俺の方なのだ。 でも今日は… せっかくのだめが俺の事を気遣ってくれたんだし…。 「ありがと、な」 そう言いながらブランケットをはがし、一糸まとわぬのだめをギュッと抱きしめた後 のだめの体に手を添えてベッドに寝るよう促した。 「違うぞ、反対」 「え?」 「うつ伏せ」 肩と腰に手をあて、寝返りをうたせる。 「膝、立てて」 深い関係になって以降、数え切れないほど体を重ねてきたのだが 不思議とバックはやった事がなかった。 特別意識した事はなかったが、やっぱりのだめの顔を見ながら…という 願望が俺の中にあったのだろう。 しかし、少し不安げな表情をしつつも素直に膝を立て、お尻を突き出すようにしているのだめは 今まで見た事も無いほどいやらしく見えた。 本当、キレイだよな・・・。 そっと腰に手を這い、覆いかぶさる様にして胸まで辿る。 優しく、優しく包み込み、その頂を指の腹で撫でる。 「はぁんっ…」 四つん這いの状態で、重力に従って下を向いている豊かなふくらみは 仰向けで揉むのより格段でかく感じた。 間があいてしまったのでどうなってるかな、と思いつつ太ももから奥の方とへ辿っていき 指でスッと線を引いた。 先程の余韻からかそこは十分すぎるほど濡れていて… 「きゃぁっ・・・、あぁ、…はぁん」 一際高い声を上げ、白い背中を思いっきり反らすのだめ。 何故だろう。 その背中に思いっきりそそられてしまった。 本当はもう少し長く、後ろからの愛撫を楽しみたかったんだけど…。 「のだめ、入れるぞ」 後ろから先輩の声がしたかと思うと、返事をする間もなくすぐに入ってきた。 「きゃあぁっ!!あぁっ・・・はぁ・・・あん・・・」 腰をがっしりとつかまれ、奥へ貫かれる。 ぐ、ぐ、ぐ、と押し付けられた後、一旦抜きかけてまた奥へ・・・。 その度に、すごい声が出てしまう。 「あぁっ、あぁっ、あぁっ、あぁっ…」 いつも先輩にしがみついている両手は所在を無くし、 肘をついた状態でシーツを握りしめている。 叫びにも似た私の声と、太ももがぶつかる音が響いて・・・。 あぁ、もう、もう、頭が、おかしくなりそう・・・。 「・・・のだめ」 「は、はい?」 「右手、後ろにまわして」 「は?え?み、右手、デスか?」 物事を考える余裕なんて無く言われるがままに 体を支えていた両手のうち、右手をおずおずと後ろにまわす。 すると先輩の右手にギュッと捕らえられた。 「左手も…。そう。・・・体重、俺に預けて、ゆっくり後ろにもたれかかってきて・・・。大丈夫だから。」 ゆっくり、ゆっくり、つながったまま、先輩にもたれかかる。 しっかりとつながれていた両手は解かれ、肩の後ろからふわりと抱きしめられた。 気付いたときには、先輩の上に重なるようにして座っていた。 私の体が一際悦ぶ、座位に似てる。私が反対を向いているだけ。 なのに、それとはまた全然違う。 後ろから包まれる安心感。 背後から感じる荒い息遣い。 背中を通して伝わる鼓動。 そしてゆっくり先輩の手が伸びてきて・・・ 優しく私の胸を揉み始めた。 「あ、あぁっ・・・ふ・・・くぅ・・・」 快感に、全身が震える。 無意識のうちに、自然と腰が横に揺れてしまった。 「のだめ、もっと、動いて・・・」 「…ええぇっ、・・・あん・・・、あ・・・、う、動くって、どう、すれば…」 「ん、俺の膝に、手を置いて…うん、そう・・・で、膝をついて… で、腰を浮かせて・・・下ろして・・・」 「…あ、あぁん、…あぁ・・・」 「のだめ、気持ちいい?」 「は、はい・・・んっ…気持ち、いいデス…」 「自分の、気持ち良い様に、動いて…」 「き、気持ち良い、デスけど、んっ…は、恥ずかしくて、死にそうデス…」 そう言いながらも腰を上下するのだめ・・・。 これは・・・エロい、エロすぎる…。 ・・・う、やばい、このままでは・・・イってしまう…。 「ちょ、ちょっ、のだめ、やめ・・・。ストップ、ストップ」 ・・・ 「のだめ、のだめ、ちょっと、マジで、やめ・・・やめ・・・」 ・・・ 「のだめ!!やめ・・・!!」 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「先輩、いつまで怒ってるんデスか? 「・・・べつに。怒ってなんかねーよ。」 「・・・じゃ、いつまで落ち込んでるんデスか?」 「落ち込んでねぇ!!」 はぁ・・・。 俺としたことが。 俺としては、あの後正常位に持って行って、のだめを攻めながら果てるつもりだったのに。 こいつが、あんなに淫らに腰を振るから・・・。 いや、それを指示したのは俺か・・・。 いやいや、俺がやめろっていうのにやめないから・・・。 「のだめ、気持ち良かったデスよ。先輩も・・・気持ち良さそうでしたケド♪」 確かに・・・今日は、何と言うか・・・すごかった。 「・・・でもお前、イってないだろ?」 「え〜、もう忘れたんデスか?のだめは、先輩の指で・・・あへ〜」 「・・・それとこれとは別なんだよ。」 ふ〜ん、と呆れたように息をついて 「パジャマどこでしたっけ〜?」 とブランケットを巻いたまま立ち上がろうとする のだめの足首をつかんだ。 「ぎゃぼ。な、なんデスか?」 「・・・リベンジさせてくれ」 「・・・先輩って、本当に粘着の完璧主義者なんデスね・・・」 そんなのだめの呟きは聞こえないふりをして ブランケットを剥ぎ取った。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |