センパイ、早く帰って来て
千秋真一×野田恵


先輩のベッド。先輩の匂いのする枕。
今朝、先輩が髪を拭いてそのまま投げ出していったタオル……。

あまりに先輩の帰りが遅くて、眠くて眠くてたまらなくて先輩のベッドにもぐりこんだ。
寝返りを打ったら伸ばした手の先に先輩の枕があった。
はぅん……、センパイの匂いデス。
じりじりと枕を手繰り寄せて、顎を乗せる。
思い切り先輩の匂いを吸い込んだ。
……ぁ、のだめ、変な気持ちになりそうデス……。

枕を抱えたまま横を向いて胸に手をやった。
先輩、早く帰ってこないと、のだめ自分でしちゃいますヨ……。
触れるだけでコリコリと指を押し返す乳首。
はぅん……、気持ちいいデス……。

でも、だめ、先輩に怒られちゃう。
先輩の服の匂い嗅ぎながらのオナニー禁止! って、もう何回も言われたし……。
でも、でも、今日は先輩が悪いんデス!
せっかくのだめ待ってたのに、早く帰ってくるって言ってたのに……。
そ、それにコレ、服じゃない、枕デス。
それに、それに……。のだめなんかもうおかしくなってきちゃ、った……。

先輩がいつもするみたいに、ネグリジェの上から乳首のてっぺんをツンツンって指ではじいた。

「ふぁ……ん、ん」

裾を捲り上げる。
自分の肌なのに、すべすべして気持ちいい……。
先輩もこんな風に指で感じる、の?

ああもうやめなきゃ、と思ってるのに手の動きが止められない。
手でしつこく両方の乳首をなぞっていると、その格好を考えただけで恥ずかしくて、おかしくなりそう。
くっと腰を突き出すと、快感がキュンと下腹に集中して、また声が出る……。

「ぁ、あぁあ、セ、ンパイ……、はやく、きて……」

早く帰ってきて、帰ってきたらこんないやらしいことやめるのに……。
でも、でも、もう、やめられないデス……。
ふるえる指で腰の紐を外す。

「ぁあ、センパイ……」

ここに触れる先輩の指は熱くて、のだめはいっつも蕩けちゃうんデス。
ああ、先輩の指じゃないのに、自分の指なのに、もうこんなに溶けてる。
くちゅくちゅと、音がのだめの頭の中にも響いてる……。やだ、恥ずかしい……。
先輩がしてるみたいに中指をそっと突き立てると、恥ずかしいほどすんなりと飲み込まれた。

そして、さっきからずっと疼いてるソコに。
ジンジンと充血して尖っているソコに、もう片方の指を押し当てた……。

「はぅん……、ぁ、ああぁ……」

飲み込まれた中指がいやらしい音を立てて、ソコに当てた指が、そっと、そっと動きだす。

先輩はいつもソフトに舌先で舐めてくれて、のだめはそんな風にはとても出来なくて。
もどかしくて、もどかしくて、……先輩!
もっと優しくして、もっと、もっとして、先輩、センパイ……!
半分開いた口から声が漏れて、涙がじんわりとにじんで頬を伝う。

くちゅくちゅくちゅ……、部屋に響く音。

「ぁっ、ああぁあ、センパ、イ……、し、んいちく……!」

ぎゅっとつぶった目の裏で、ものすごい火花が散って、体がびくんびくんと跳ねた。
中指がきゅっきゅっとリズミカルに締め付けられて、しばらくベッドに体を投げ出したまま呆然としてしまう。


のろのろと指を中から出すと、やるせない気持ちでいっぱいになって、枕に顔を押し付けた。
センパイ、のだめ、またいやらしいこと一人でしちゃいました……。
一人でも気持ちいいけど、気持ちいいけど……。
だけど、イっても淋しいんデス。
センパイがぎゅーってしてくれないと、のだめ、淋しいデス。

センパイ、早く帰って来て……。


随分遅くなった……、もうアイツ寝てるかな。
明るいリビングには人気がなくて、寝室のドアをそっと開く。
衣擦れの音が聞こえて、ああ、寝返りでも打っているのか……。

「ふぁっ、ぁん……。セ、センパイ! あ、あぁ……」

え?

思わず息を飲んで聞き耳を立てると、ベッドの毛布の中から、アイツの、のだめの喘ぎ声が聞こえてきた。

「や、あぁあ、センパ……! し、んいちく……!」

同時に、暗がりの中でもはっきり分かるほど切ない身震いをして、はぁはぁと湿った息を吐き出している。
ぱふっと枕に顔をうずめる音。くぐもった声で「せんぱぁい……」と、枕を抱き締めている気配。

のだめ……。
お前、アレほど俺が「服の匂い嗅ぎながらのオナニー禁止」って言ってんのに……!
電気を点けるなりつかつかと歩いて、ガバッと毛布を剥いだ。

「何してんだ変態」
「……はぅ! な、何もしてませんヨ!」

赤い顔に汗を浮かべたのだめが慌てて起き上がって目をそらす。
腹までまくれ上がったネグリジェ、片方の紐がほどけたパンツ、漏れ聞こえた喘ぎ声。
何もしてねーわけねーだろ……。

「はぁ……。オレ、今日はあっちのソファで寝るから……」

後ろを向いて部屋を出ようとした途端、

「やん! センパイ」

後ろからのだめが飛びついてくる。

「さわんな、変態」
「ムキー! センパイが悪いんデスよ! 今日は早く帰ってくるって言ってたのに……」

口をとがらせてしょんぼりとうつむく気配に、

「そっか、ゴメンな」

と振り向いて抱き寄せ……

「な訳ねーーーーだろ!」

ベッドに乱暴に押し倒した。

下からのだめがまぶしそうな顔でオレを見上げる。

「お前、オレがあれほどオナニー禁止令出してんのに……」
「ち、違いますヨ! アレは服の匂いを嗅ぎながらのオナニー禁止デスよね? 今日は枕デスから」
「ハァ?」

何言ってんだコイツ? ダメだ、やっぱりコイツにまともな言葉は通じねえ。

「お前には羞恥心ってものはないのか?」
「そりゃありマス。 何言ってるんデスか」
「……ちなみに何が恥ずかしいか言ってみろ」
「ぃやん」
「何が、いやんだ!」

よからぬことを想像してちょっと黙ったが、酔った勢いにまかせて言ってみる。

「……もっかいやってみろ」
「な、何言ってんデスか!」
「羞恥心があるのか見てやるから、さっきみたいにやってみろ」
「もう、センパイったら、変態デスねー」
「どっちがだ!」

……この変態め!

センパイ、少し酔ってる?
のだめの身体を見下ろして変なことを言ってる。エッチデスねー。
のだめ、何だかドキドキしてきちゃいましたヨ……。
センパイが無言でのだめの両足をぐっと開いた。

「やん!」

既にほどけている紐を邪魔そうによけて、のだめの中にいきなり指を突き立てる。

「ひゃん! な、何してんデスか!」
「お前、こんなに濡れてるけど、ひとりでイったの?」

いつもは熱いセンパイの指が、今日はまだ冷たい。
だけど、強引に中を探られるとピタピタとまた音が響いて……

「あへー……」
「変な声出すな」

だってだって、あ、やっぱり自分の指とは違いマス。
センパイの指、強引で荒々しくて、なのに気持ちいい。
最初冷たかったセンパイの指がだんだん熱くなってく……。

センパイがゆっくりのだめの胸元に顔をうずめた。

「ぁ、あ、やぁん……」

センパイの舌がのだめの乳首をなぞって、胸を下からやわらかく揉んでる。
あふん、やっぱり気持ちいいデス……。
やがて片方の乳首に吸い付いて、指が舌の動きに合わせて跳ねる。
のだめ、もうトロトロデス……。

やがてセンパイの頭がゆっくり乳房を降りて、のだめの、のだめが一番感じるところに舌先が着いた。

「んはっ……! セ、センパ、イ!」

小さく舌先をチロチロを動かして、のだめのソコを、さっきのだめが指でいじったところを優しく舐める。

「ん! やっ! やぁああ……。センパイ、のだめ、ま、また、イきそうデス……!」
「また、って言うな!」

「……やぁん」

舌を離すと、のだめが恨めしそうにオレを見上げた。
のだめのソコが、オレを誘うようにひくひくと濡れてうごめいている。
入れたままの中指を少し揺らしてやると、喉の奥でヒッと声を漏らして目をぎゅっと閉じた。

「センパイ、なんでやめるんデスか……」
「さっきイったんだからもうイイだろ。寝るぞ」

真っ赤な顔に涙を浮かべてのだめが首を振る。

「やぁん、センパイ……。意地悪しないでくだサイ……」

……じゃあなんで一人ですんだよ!

怒りにまかせて、まだ震えているソコに吸い付いた。

「やっ! あ、あぁああ!」

その瞬間、のだめはビクビクと身体を震わせてイった。


さっきとはケタ違いの快感……。
のだめ、さっきも気持ちイイと思ったのに、全然違いマス……。

まだ身体がびくんびくんって震えてる。
センパイは乱暴に服を脱ぎ捨ててのだめに押し当てて……

「あふっ、センパ……」
「コレ、欲しかったんだろ?」
「やん、違いマスっ!」

違うんデス。のだめ、コレだけが欲しかったわけじゃ……。

「あ、あぁあ……、ち、違うんデス……!」

あ、あ、もう言葉にならない! のだめ、のだめ、もうだめデス!

動きを止めたセンパイが、紅潮した顔をわずかにゆがめてのだめを見下ろした。
足が勝手にセンパイの腰に巻きついて、恥ずかしいのに腰がうねって止まらない。

「ふ、ふぁああ……」

あ、気持ちイイ、気持ちいいデス……。
センパイがのだめの顔をじっと覗いてる。

「やだ、見ないでくだサイ」
「お前、エロいな……」
「やん! 何言ってるんデスか! ああっ!」

突然センパイが奥を突いてきたので、変な声が上がる。
ちょっと奥を突かれただけなのに、のだめの頭の中がぎゅぎゅぎゅと塗りつぶされた。

「はぅっ! ぁ! ぁああぁあ!」

小刻みに震えて脱力した足をセンパイが持ち上げて肩に乗せた。

「やっ! もう、もうだめデス! センパイ!」

センパイが身体を沈めてきた途端、のだめの一番奥にセンパイが当たって……。
涙がこぼれて鼻の奥がツンとして、顔はもうぐちゃぐちゃだ。
センパイがのだめの奥を突いてる……。

もう声がかすれて、喉の奥がヒューヒュー言ってる。
センパイの吐く息に声が少し混じってる。
切なそうな声だ。

「のだめ、イクぞ」

耳元で囁かれて頷こうとしたんだけど、もうのだめの頭はガクガク揺れて頭すら思うように動かせなかった。

ぎゅっと目をつぶった。
揺さぶられる身体の奥の奥。
瞼の裏に走る光の線。
センパイ! センパイ! しんいちくん!

「し、いちく……!」

ガクガクと身体が痙攣して、汗で滑る手でぎゅっとセンパイにしがみついた。
身体の奥が熱く脈打って、さらに熱いものがドクドクと注ぎ込まれた。

のだめが涙を浮かべて天井を見上げ、はぁはぁと息をついている。
やっとのことで身体を起こしてベッドサイドのティッシュで始末して、ついでにのだめも拭いてやる。
のだめが驚いたようにその様子を眺めて

「センパイ、中で出しちゃったんデスか……?」
「あーうん。大丈夫だ」
「何が大丈夫なんデスか! 赤ちゃん出来ちゃったらどーするんデスか!」

それともこれって、とニヤニヤしながら一人でぶつぶつ言っている。……変態だな。

「センパイ、これってもしかしてプロポーズなんデスか?」
「はぁ? 何でそーなんの?」
「だって赤ちゃん出来たら……」

はぁ……、とひとつため息をついた。

「お前の生理周期くらい、ちゃんと分かってる」
「ほぇー。のだめにも分かんないのに、センパイってすごいデスね」

分かんないってお前……。

「……お前、生理がいつくるかくらい分かってるんだろーな?」
「えっと、だいたい月末くらいに来てマス」

脱力したが、まぁコイツの生理周期はオレが把握してるからいい。

「それと、お前、今後一切のオナニー禁止な!」
「ぎゃぼー! センパイ、のだめからオナニー取り上げてどうするんデスか!」
「どーもしねえよ! とにかく禁止だ!」
「したくなったらどうすればいいんデスか!」
「そん時はオレに言え」
「ぎゃぼ……?」
「オレが相手してやるから一人ではイクな!」
「ムキャー!」

……コイツちゃんと分かってるのか?
なんだか、ますます変態の森の奥深くへ進んでいるような気がしないでもない……。
オレはひとつため息をついて、眠りに入るべく、のだめの胸に顔をうずめて目を閉じた。






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