オマエカワイスギ
千秋真一×野田恵


「はぅ〜おいしかったデスね、せんぱい」

のだめの初リサイタルも大成功に終わり、部屋に戻る帰り道。
つないだ手にキスの熱がほんのり残っている。あのあとのパーティーでものだめは主役だった。
前日はワインを断ったくせに、今日は注がれる分全部飲んでかなり酔っ払っている。
パリに来て音楽の壁にぶちあたって、苦労したからこそこの喜びがあるんだろう。

「―ああ。本当に今日はがんばった…な」

「がぼ?先輩暗い?
もしかしてのだめがパーティーの時に先輩ひとりぼっちにしてたの怒ってるんですかぁ?」

こいつは…
たまに変な所が冴えてるから困る。

「そんなんじゃねーよ!」

「せんぱい…」

祝ってやるつもりだったのに、つい冷たく目をそらしてしまった。
なんだかのだめがどこか遠くに飛んでいってしまうようで、
あいつの音楽の良さが解るのが俺だけじゃなくなるなんて…。
こいつのピアノを知った時から、いつかこんな日が来るのは分かってたはずだ。なのに俺は…。
キスしてお互いの気持ちを知ったのに、安心しきれていない…。

「のだめ、先輩に今日のリサイタル聴いてもらえてほんと幸せでしたヨ。
先輩がいなかったら夜も不安で眠れなかっただろうし、あんな演奏はできなかったと思いマス。
のだめは先輩のためにもっとがんばるんで、先輩はのだめのためにがんばってくださいネ。」

のだめがそっと手をにぎる、のだめの笑顔が俺の不安を消し去る。
コイツなりには俺の気持ちをわかろうとしている事が伝わってくる。

「ばーか!なんで俺がおまえのためにがんばらないといけないんだよ!…まぁ俺も、おまえのおかげでがんばれる時あるから感謝してるけど。(ただ…)」

「むきゃー、あの愛の誓いは嘘だったんデスね〜?せんぱいの嘘つき〜!!」

俺の側から飛んでいってしまわないでくれ。と言いかけてやめた。
やさしくのだめの頭をなでて部屋に入る。

「はぅ〜今日は疲れれマシた〜。
でもこうやって二人になると、アパルトマンに帰ってきたみたいですね。
あっそうだ!ごほうびに今日は10分!ね、いいデスか?!」

「な!?…ふざけ―。」

抱きしめたい…。
心で思っていた時にのだめから望まれたので驚いた。

「じゅーうで〜ん♪ん〜いい香りデス〜。
ふふふ、のだめかのキモチ伝わってますか?」

「しるかっ」

「むきゃー!カズオ〜!
でも隠しててもせんぱいの気持ちは届いてますよ♪」

俺はわざとらしく溜息をつき、
しょーがなく抱きしめてやってるような態度でのだめを抱きしめる。
本当は力いっぱい抱きしめたいはずなのに、
両手に集まる熱を無視して余裕ある振りをしてしまう。

でも…のだめの体から伝わるぬくもりで、理性がどんどん薄れるのが分かる。
頭の中は、さっきの甘いキスでいっぱいで、
我慢できそうにない。
俺がこんなこと言ったらコイツどんな顔するかな…。

「じゃぁ、おまえに正しく伝わってるか心配だから言うけど。
…好きだよ。恵は俺の本当に大切な人だ。
…俺にも、じゅーでん…させてよ。」

「むきゃっ、セン… しんいちくん…。」

のだめの顔が急に赤くなるのが分かった。
俺の顔を見て冗談じゃないって事が分かったんだろう。
さっきまで力いっぱい俺に抱きついてきていたのに、急にぎこちなさが伝わってくる。
その分俺の腕に力を入れて、のだめを引き寄せる。

「のだめも―…しんいちくんと同じ気持ちデスよ?」

小さな声でのだめがささやく。

「本当はずっとこうしたかったけどなかなか素直になれなくてごめんな。
…でも、一回だけだからな、こんなこと言うのは!」

「あはは、耳真っ赤デスよ♪」

「〜!うるせー!好きだから抱きしめたくて悪いかよ!」

そう言ってから大切な物を扱うように、ゆっくりとやわらかい唇にキスをする。
そしてだんだん深いキスを交わす頃には、のだめの膝からも力が抜けて、ベッドにゆっくりと倒れ込む。

のだめは恥ずかしそうにうつむいている。
それが本当に愛おしくて、俺はのだめの首筋から耳にかけてやさしく舌を這わせる。

「ん…っ」

のだめから小さな吐息まじりの声が聞こえてくる。

俺は背中に回した手をのだめの胸の所へ移動させ、まるい膨らみを包み込む。
のだめの体に力が入ったのが分かったが、俺の手が止まるわけもなく、唇を重ねて緊張を解く。
初めて触れたのだめの胸は、本当に柔らかくて癒される。
服の上からさわっていたが我慢できず、
白いシャツワンピースの胸元のボタンをあけると水色のブラが見えた。

「あっ…や…」


潤んだ目元と赤い唇にキスをしてから、白い胸元にキスをしていく。
シャツの隙間から背中に手をまわし、ブラを外すと白くてまるい形の胸がこぼれた。

なんて綺麗なんだろう。
鼓動とともに、軽い震えを感じた。

俺は服を脱がしながら、ゆっくりと舌先で頂を舐める。
二人の同じ石鹸の香りがさらに混じりあう。

「はぁっ…んっ…ぁ…」

のだめの反応があまりにも可愛くて、
さらに唇と指先を使って頂を刺激する。

そして俺はのだめのなめらかな肌に指をすべらせ、下の水色の紐を解く。

「ん…ぁっ…せん…ぱい」

のだめの吐息が荒くなる。俺は内股をなでながら、のだめの一番感じる場所をさぐる。
やさしく指先を忍ばせると、そこは熱くしっとりと濡れている。

ゆっくり指をすすめると、トロトロとした熱い液体がからみついてくる。

「んあっ!や…んぁ…」

指の動きに合わせてのだめの声が漏れる。
同時に自分自身の熱もどうしようもなくなってきてる事を感じる。

「めぐみ… いい?」


もう少し気の利いたセリフを言いたかったし、もっと愛撫を続けたかったけど、
とても無理だった。

肩で荒い息をしながら、のだめはちいさく頷く。

俺はゴムをつけると、キスをしてのだめの中へゆっくりと進めた。

「あぁっ…んっ…んっ…ぁ」

「−っ…め…ぐみ」

のだめの声が聞こえるなか、あまりの快感に俺の頭は真っ白になった。
激しく腰を動かして、あまりにも気持ちよくて…。


けっこうすぐイッてしまったことだけは何となく記憶に残った。

★★★

「ねー、せーんぱい」

「ん?どーした?」

のだめが笑顔で問い掛ける。
俺に腕枕をしてもらってか、上機嫌だ。

「ほんとせんぱい激しすぎデス〜、のだめ初心者なんですよ。キスだってリサイタル後が2回目だったのに〜」

「−っ!おまえはいきなり何言い出すんだよ」

「だから〜、次はもぅちょっとゆっくりやりましょ?」



「…ごめん、もしかして痛かった?」

あまりにも夢中だったから、焦って体を気遣いのだめを見る。
しかし、なぜかのだめは苦笑い。

「ってゆーかデスね、…のだめ、ゆっくりやってもらわないと訳わかんなくなっちゃうんで…。
その…せんぱいが感じてる顔とか…今日見逃しちゃったんデスよ☆」


「〜〜!ずっと目つぶってろ!!」

「ぎゃぼ〜〜!」

手元にあった布団をかぶせる。
ほんとにこいつは変態だ。

「まったく、リサイタル前夜といい、俺の苦労もちょっとはわかれよ!
帰ってからメシぬき!スパルタダイエットだ!」

「せんぱいのカズオ〜!」

布団を取って俺に抱きついてくる。
そんなのだめがあまりにも可愛いから、俺はつい意地悪になってしまうんだ。

「あーそれと、おまえ間違ってるよ。
キスは2回目とか、そんなに少なくないから。
まぁお前が起きててキスしたのでは2回目かもしれないけど?」

みるみるのだめの顔が赤くなってくる。
やっぱりオマエカワイスギ。






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