夏の宵
千秋真一×野田恵


「今日もアツイですネ」

ソファに寄りかかって、扇風機の風を浴びながら食べるアイスは最高デス。

「センパイも一緒に食べましょー」
「オレ、アイス食べないから」

目の前でカランと持ち上げたアイスティー。薄い琥珀色のそれはミントティーデスか?

お風呂に入ってさっぱりしたハズなのに、暑くてすぐに汗が浮かぶんデス。
あ、また胸の谷間を汗がつつっと落ちマシタ。
のだめの身体を挟むようにセンパイが足を広げてソファに座ってマス。
……くっついてるから暑いんですヨー。

「センパイ、少し離れて下サイ」
「別にくっついてる訳じゃねえ! ここしか風が来ないんだ、暑いならお前がどけろ」
「……いやデス」

フン、と勝ち誇ったようにセンパイがグラスを揺らした途端……。


「ぎゃぼっ! 何すんデスか!」

グラスからつたって首筋に落ちた水滴にのだめが声を上げた。

「わ、わざとじゃねえ」

半分はわざとだ。しっとりと汗ばんで上気した肌を見てるうちに、ムラムラきた。
オレもいよいよ変態の森の住人にふさわしくなってきたか……。

「んもー」

ぶつぶつ言いながら再びアイスをくわえ、手元にあるプリごろ太のマンガに目を落とす。

……オレ様よりプリごろ太か?

ちょっとムッときて、再びグラスを揺らした。
暑さに水滴をたくさんつけたグラスから、あっけなくまた数滴落ちる。

ガーゼのワンピースが少し濡れて背中に張り付いて、再びのだめがアイスを咥えたまま後ろを向く。

「ヘンアイ!」
「お前それ、変態って言ってるつもりか? それともセンパイか?」

口に氷を入れたまましゃべっていると、今度は氷のカケラがのだめの胸元に落ちて入った。

「ムキー! もう本当に止めてくだサイってば!」
「い、いや、これは本当にわざとじゃ……」
「じゃ今までのはわざとだったんデスか!」

オレを見据えて口をとがらすのだめの前髪が、汗で額に張り付いている。

……くそ、変態のくせに可愛いじゃねーか!

なんだかオレは今ムショーに悔しい。
黙ってグラスを持ち上げると、静かにのだめの胸元にグラスを傾けた。

「あー」

自分でも予想しなかった子どもじみた行動に驚いて声が出た。

「!!!!!」

グラスの半分ほども注いだのだろうか、ワンピの前がすべてぴたりと張り付いて……。

「お、お前! ブラとか何もしてねーのかよ!?」
「お風呂上がりだもん、いいじゃないデスか!」
「だって、こんな薄いの一枚で……、普通は中にキャミとか着るもんだろ!」
「暑いからいいんデス。もー、のだめビショビショじゃないデスかー……」

のだめが膝立ちになって自分の身体を見下ろしている。

こいつ、自分の姿態に気付いてないのか……?
んなわけないよな、だって生地が張り付いて身体の線も丸見えだし、乳首の色もへその窪みも。

「……」

一瞬焦って目を反らして、いや、コイツだって隠しもしないし、オレが焦る必要は全くないと思い直し。
ゆったりとしたワンピに隠れていた胸のラインがあからさまに出て、思わず誘われるように手のひらで包み込んだ。

「な! 何してんデスか!」

白っぽいガーゼ生地はぴたりと張り付いて肌の色をそのまま伝え、乳首はほんのりピンク色だ。
親指でさりげなくこすると、冷たい刺激と一緒になって、すぐにぷっくりと指を押し返した。

「やめて下サイ! もー、早く着替えなきゃ……」

と言いながらも、のだめの身体からふわんと力が抜けていくのが分かる。


あへー……、変な感じデス……。
布が肌に張り付いただけなのに皮膚が変に敏感で、締め付けられてるみたいデス……。
センパイが、見てる……。

「み、見ないで下サイ! のだめ着替えてきマス!」
「やだ。今更それはないだろ」

言いながら、センパイが後ろから両手でのだめの両胸を持ち上げる。
センパイが、のだめの胸を……、指で……。あへー。

「お前、胸大きくなった?」
「ふ、ふぁっ、ん……」

立ち膝の足から力が抜けて、床にぺたりと座り込んでしまった……。

「ほら、立てよ」

のだめの脇の下に腕を入れて引き上げると、くるりと後ろを向いて抱きついてきた。
オレの上に足を開いて座ると、額に額をぶつけて

「シたくなったじゃないデスか……」

真っ赤な顔で下を向く。
のだめが、オレの首に両腕を絡ませて顔を覗き込む。
薄く開いた口元、上気した頬、こいつ、自分がどんなエロい顔してるかなんて考えたことないだろーな……。
のだめが唇にむしゃぶりついてきた。
片手を胸の下から這わせると、唇の端からすぐに甘い吐息が漏れる。
濡れた布から透いて見える、痛々しいほど紅く尖っている乳首を親指でこすると、のだめが一瞬大きく身震いして息を吐いた。

背中を支えたまま、胸元に顔をうずめた。
乳房の脇から甘く噛み付く。濡れた柔らかい布越しの、しっとりと熱い肌……。

「センパイ……、なんかスースーしマス」
「ミントティーだからな」

クスクス笑っていたのだめが、乳首を咥えると小さく声を上げた。

「セ、ンパ……。赤ちゃん、みたい……デス、ね」

咥えたまま見上げると目が合って、のだめは紅潮させた顔をゆがめて首を後ろにそらした。
片手を上げてのだめの口元をなぞると、のだめが咥えて甘く指の腹を噛む……。


センパイの指、ちょっとしょっぱいデス。
熱い指、のだめの口の中を這い回って、それから大きな手全体でのだめの頬を包むように掴んで。
センパイがのだめの胸を舐める音が響いてる。

布越しなのがすごくじれったくて、まとわりついてくる布が邪魔なのに、いつも以上に感じるのは何でデスか?
あ、あー……。気持ちいい……。

首にぎゅっとしがみつくと、のだめのアソコに熱いものがあたった。

「ぁふぅ。センパイ、すごく熱くなってマス……、っあ!」

センパイが片手でパンツの紐をほどく。

「のだめ、ちょっと腰浮かして」

浮かした瞬間、センパイの指がぬるんと中に入り込んだ。

「熱いのお前の方。すげ……」
「やぁ……ん」

「のだめ、お前ホントすごい、ほら」

センパイの指の動きが速くなると、部屋中にのだめの中の音が響いた。
中腰のままセンパイの首にしがみついて首を振る。胸元から汗が流れた。

「センパイ! のだめ……、のだめ、おかしくなっちゃいマス……!」

センパイが汗を浮かべてのだめを見上げてる。

「うん。オレももー限界」

センパイが指を抜いてのだめの腰を抱えた。

「ゴム取ってくる」
「はぅん……。のだめ、ゴム持ってマスよ」
「はぁ?」

な、何言ってんだコイツ。熱さで頭までやられたのか? いや、頭は元々だ。

「さっき、シャワーから出た時に持って来ました」

ハイ、と濡れたワンピのポケットからゴムを出した。
思わず頭を抱え込む。

「お、お前、風呂上がりから準備してたわけ?」
「ハイ。今日はそろそろシたくなる頃だと思って」
「はー。お前やっぱ変態」

ため息をついてソファに寄りかかって天井を見上げた。

「センパイちょっと腰浮かして下サイ」
「な! それはオレが!」

いいじゃないデスかー、とのだめはオレの部屋着もパンツも無理やり下ろす。

「や、やめろーーーー!」
「遠慮しないで下サイ」
「遠慮じゃねえーーーー!」

のだめはオレの上に座ったままお構いなしにゴムの包みを破り……。

「お、お前、それじゃ裏返しじゃねーか!」

貸せ! と、のだめの手からゴムを奪い取って急いでつけた。

「なんかオレ、やる気なくなってき……」
「センパイのココ、やる気満々デスよ」
「……」
「いーデスよ、センパイそのまま寄りかかってて下サイ」

まてよ、と言う間もなくのだめがオレの上半身に身体を預けて、そのままそっと腰をおろした。

「く……」

さっきも思ったけど、熱い。いつもよりずっと熱くて、溶けてる……。


「……全部、入ってマスか?」
「ん、もちょっと」

センパイが下から突き上げて、ぐっとのだめの奥に当たった。

「はぅん……」

ソファに寄りかかったセンパイの髪が、汗で乱れて額に貼り付いてる。
まぶしそうにのだめを見て、そのまま気だるそうにワンピを捲り上げた。
扇風機の風が、濡れた肌に当たって気持ちいいデス……。
両手が伸びて、のだめの胸を包んだ。のだめの乳首を弄ぶ、センパイの長い指。
かすれた声と一緒に涙が出る。センパイが触れるところ全部、どうしてこんなになるの。

「センパイ」

呼んだら涙声になった。

「ん?」
「のだめ、すごく気持ちいいデス。どしたらいいデスか」

センパイがちょっと目を見開いて、それから身体を起こした。
あ、もっと奥にセンパイが来る……。
センパイがのだめの背中を抱き寄せて、それから「のだめ」って呼んだ。

「のだめ」

センパイの親指がのだめの口に入る。貪るように舐めているのにすぐに手を離した。

「やぁん、もっと……」

センパイが濡れた指を身体の合わせ目に下ろして、のだめの茂みの敏感なところを探し当てた。

「あっ! ダメ! だめデス!」

びくんと身体に電気が走って、思わずセンパイの首にしがみついた。
濡れた指でぬるぬると探られるたびに新しい電流が何度も何度も身体を走る。

「や、ぁ、怖い……。あぁっ!」


「怖い?」
「ちょっと、怖い、デス」
「じゃ、怖くないくらいに自分で動いてみて」
「でも、恥ずかしいデス……」
「目、つぶってるから」
「……絶対デスよ」

のだめの首の後ろに顔を隠すと、ためらいがちに腰を揺らし始めた。
動きに合わせてそっと指を動かすと、のだめの喉の奥から小さな声が漏れた。

「ふぁっ、ぁ、あん……」

のだめが動くたびに、自分の官能も甘く揺さぶられて、強く突き動かしたくなるのをじっとこらえる。
抱いた肌がしっとりと汗ばんで甘酸っぱい香りを放った。
そっと首を起こしてのだめの顔を見つめる。
赤く上気した頬、汗ばんだ額、甘く湿った声を上げるのだめ。可愛い……。

「やっ! 見ない、って、言った、じゃ、ない、デスか」
「だってお前、すげー、可愛い……」

のだめが目尻に涙をためて切れ切れに呟く。

「どーしてのだめ……、こんななっちゃうんデスか」
「え」
「セ、センパイのさわるとこ、ぜ、全部気持ちよくて、のだめばっかりおかしくなって、ずる、いデス」

喘ぎながら、なまめかしく腰を動かしながら、オレの頬を両手で挟んで哀しそうに。

……たまんねー。

その顔を見たら我慢も限界で、のだめの動きに合わせて下から腰を突き上げた。

「あぁあっ!」

自分の口から出た悲鳴みたいな声に驚いて、でもその声を恥ずかしいと思う間もなく、センパイがまた腰を突き上げる。

あ、あ、すごい……。

ぎゅっと閉じた目尻から涙が流れて汗と混じる。
そんな感覚だけが鮮明で、あとはセンパイの動きに揺さぶられる熱い身体の奥だけが何かを待ってる。
がくんがくんと頭が揺れて重い。
センパイの吐く熱い息。肩につかまろうとしたら汗で滑って、両手で首にしがみついた。
お腹の奥に熱いカタマリがあって、センパイが突くたびにもっと熱く大きくなる……。

「のだめ、オレ、イきそ……」

センパイが大きく最奥を突いた瞬間、のだめの中のカタマリがぐわんと弾けた……。



びくん、びくん……。

のだめの身体の奥が痙攣して、その度に全身にじんわりと甘い快感が広がる。
おさまったと思うころそっと身体を起こすとまた、びくんと奥が動いた。

「あふ……」

くたりとセンパイに身体を預けた。

「お前の中、まだ動いてる……」
「センパイ、体ベタベタデスね……」

ふうーと一緒にため息をついた。

「シャワー、浴びるか……」
「のだめはいいデスよ……」

まだセンパイと繋がっていたくて、汗だくになった身体をくっつけたまま目を閉じる……。


「おいこら! 寝るな!」

ぐいと身体を起こすとのだめの中がまだひくりとうごめいた。

「あへー……」

しぶしぶといった風情で身を起こしたのだめを引き剥がす。

「ほら! シャワー浴びるぞ!」
「あー、のだめはいいデス……。もう寝マス」
「そんな汗だくでベッドに入るな! 洗ってやるから来い!」

片手を伸ばして棚からティッシュを取って始末しつつ、片手でのだめの手首をぐいと掴んだ。

「あー、じゃあのだめが真一くんを洗ってあげますよー」
「やだ、お前のすすぎ甘いんだもん」
「ムキー! のだめちゃんとすすげマス!」

ふらふらと歩き出すのだめのワンピを直してやる。
もうほとんど乾いて、汗でしわくちゃになってるけどな。






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