千秋真一×野田恵
![]() 「なんだよ……どうした?」 いつもなら感じるまま、顔を切なそうにゆがめたりするのに、今日はそれを我慢しているように見える。 息をのんで、じっと耐えて、声まで押し殺している。 それでも洩れてしまうくぐもった声は手の甲に押し付けて、顔を隠すように覆って。 そんななので、こちらも意地になって指を強めたりして……。 体の反応は、いつもどおりだと思うのに。 「声、なんで我慢してる?」 「ふぁ……だって」 そのまま、口をつぐんでしまう。 段階を踏んで慣れて馴染んできたオレ達の体。 ちゃんと中でいけるようになってからは深い快感を得られるようで、のだめもとても満ち足りた顔をするようになったのに。 今日は何か……。不満でもあるのか? 「隠すなよ……なに、どうした?」 「はう……だって、だって……」 「だって、なに?」 中をまさぐっていた指を抜き、のだめの足の間に座り込んだ。 顔を覆っていた両手を取り、少し強めに握って顔の脇へと指を絡ませて押し付ける。 赤く上気した顔が露になり、のだめは恥ずかしそうに目を伏せた。 「答えないならやめるか」 「えっ、やっ、ヤダ……」 「じゃ、なんでそんななんだよ。……何か不満なわけ?」 「違いマス! ……不満なんて……」 「ならどうして」 怒っているのではなくて、そののだめの行動の意図が見えないから、なだめる様な声で聞く。 「だって……変な顔してたら、とか、変な声だったりしたら、どうしようって考えちゃって……」 「はあ……?」 「先輩はいつも余裕綽々で、のだめの事いつもじっと見てるから……変な顔見られるの恥ずかしいデス」 「変?」 「声だって、変な声だったらどーしよう、って……先輩の気分を削いでしまうのではないかと」 バカだこいつ。 いや、わかってるけど、そんなこととっくに。 いまさらそんな事、何度だってそういうのだめを見てきたのだから。 それにむしろ、削がれるどころか……余計気分は高揚するんだけど。 「またくだらない事考えて……」 「くだらなくないデスよ!! のだめだって女の子なんですから気にしマス!! 乙女心デスよ!!」 ……黙らせるために唇を塞いで、舌で口腔をかき回した。 のだめの指に力が入り、再び腰をくねらせ始める。 唇を開放すると、小さく深呼吸して、濡れた唇を舌で拭った。 そんなのだめの耳元に唇を寄せ、ごく小さい声で息を吹きつけるように囁く。 「感じてる声も顔も、かわいいから安心しろ」 「うぎ……かっ、かわいい? 先輩がそんな事言うなんて、怪しすぎ……」 「そう思うからそう言ってんの。素直に受け止めろ、バカ」 「そんな、うそ……」 「うそだと思う?」 「あ……」 自分のかたくなった部分にのだめの手を導いて、触れさせた。 おまえだからこんなになるのに。 おまえのいつもと違う声やしぐさに、どれだけそそられるか。 「はう……真一くん……」 「ん……」 「のだめに、はつじょーしてくれてるんですね……」 「……そういうこと」 ……だから、もっと。 「オレに見せて……聞かせて」 指を差し込む事で促される吐息に、甘い声が混じり始めた。 同時に、こちらが恥ずかしくなるくらいの水音がたち始める。 顰められた眉と、うっとりと開閉を繰り返す瞼。 薔薇色の頬は夏の盛りのみずみずしい桃のようで、唇で噛み付くように食んだ。 のだめは柔らかな掌にオレを包み込み、そっと刺激を送ってくる。 あ……何で知ってるんだろう、オレが気持ちいい場所……。 お返しに膨らんだ蕾を親指でなでつけながら、内側からもその裏あたりを強めに刺激していく。 ……と、はりのある声が高く上がり始めた。 「あ……ん、っふ……あぁん」 「声出したほうが気持ちいいんだろ? さっきよりも濡れてきたぞ」 「う……ふ、うん……ぁ」 「……あんまり大きすぎるのも困るけど」 「はぁん……のだめ、おっきいですか、声……」 「……いくときに、少しだけ、な」 のだの顔は見る見る赤くなって、オレの潜り込んだ指はきつくぎゅっと締め付けられた。 指で届く限りの奥の部分が熱く震えている。 この中にオレが入る。 ……そう考えると、背中にぞくりと何かが駆け上がっていった。 「もう、いい?」 「あ、のだめも先輩に……」 「いいよ別に」 「……したいんです。なんだか、とっても」 ゴムをつけるために体を離すと、のだめも一緒に体を起こした。 のだめは、オレを握ったまま手を離さないでいる。 正直、もう……。 「……少しでいいからな?」 「ハイ……ぁむ」 うわ……いきなり。 前触れもなく、温かい口腔の内側に含まれた。 中でうごめく舌を感じながら、パッケージの封を切る。 目を伏せていたのだめが、オレの様子を確認するように視線を上げた。 言葉で答えるかわりに頭を撫で、自分も少しだけ声を漏らした。 「う……んっ……もう、いいって」 「……らめれふ……ぁん、もっと」 「やめ……」 のだめの肩を押し戻して離すと、ゴムを被せ装着していく。 その間も、のだめはオレのそこにキスをしたり、舌を伸ばしたりする事をやめなかった。 感じてる顔を見られるのが、感じてる声を聞かれるのが恥ずかしいというくせに……このギャップ。 やはり変態だ、こいつ。 まあ、それを結構楽しんでるオレもオレだけど……。 「……早くおまえの中に入れたい、って言ってんだよ、バカ……」 組み敷いて、息たっぷりに囁くとのだめはおとなしくなった。 * * * * * * * 「何でいきなりあんな事言い始めた?」 「ほえ?」 「顔とか声が変だったらどうしよう、って」 のだめはあーとか、うーとか言いながら、腕の中でもじもじしている。 「怒らないデスか?」 「……内容によると思うけど」 「じゃ内緒デス」 「……のだめ明日メシ抜き」 「ぎゃぼー!! ヒドイ!」 のだめは暫く黙って考えているようだった。 が、言えよ、と頬をつねっていると観念したのか、えとですね、と切り出した。 「ちょっとお勉強のためにとあるサイトをみてたんデス」 「勉強……とあるサイト?」 「……えっちな動画の」 またかよ。 そんなのはまあ大抵しょっちゅうなので、今となっては驚きも怒りはしないが。 つか、何だよ勉強って……。 「とても美人でかわいらしい女の人だったんですけど……あの、すごくて」 「何が?」 「……声は雄たけびみたいだし、うぉーうぉーって。 顔は鼻の穴全開って感じで、なんかすっぱいもの食べたときみたいな顔だし」 「はあ……」 「見た動画が立て続けにそういうのだったので、自分もそんなだったらどうしようって。 だって、自分でわからないから……。あれ、あんなだったら男の人、絶対萎えると思うんデス!! しわくちゃの顔とか。わんわん喚くのとか、どーなんですかね?」 「熱弁振るってんじゃねーよ……出入りすんな、そんなサイト!」 頭を小突き、髪に指を入れで大きくかき回すと、枕に突っ伏したのだめからぎゃぼん、と声が漏れた。 きっかけはきっかけでこいつらしくはあるが。 そんなこと気にするとは……バカだな。 「安心しろ。おまえはそーいうんじゃないから」 「あれ、ほんとですか? ……のだめのこと、かわいいって……うふ?」 「……うそじゃねーよ。あれだけしといてまだわからない?」 そう。 じっくりたっぷり声を上げさせて、間近で顔を見つめて。 何度も果ててしまうのを見届けて、その度、耳元で囁いてやり……境目がなくなりそうなほど抱き合って。 そういうときにだけ言うのは卑怯な気がするけれど、そうでもないととてもじゃないが素直に口になんかできない。 「今度撮ってやろうか。おまえのそのときの顔」 ……なんて冗談だけどな、もちろん。 「え、ええっ、そそそれってハメ撮りデスか……ハァ…」 「ハメ……あぁ!?」 「やらちいデス、真一くん……はふん……」 こ、こいつ……。 「冗談に決まってるだろ!! このバカ女!! 変態!!」 「先輩そういう趣味が……? は、恥ずかしいけど……先輩のためなら……」 「違うって言ってんだろ!! あーーもう、おまえ部屋帰れ!!」 「ちょ、ちょっと刺激的かもデスよ……ハァハァ」 「ハァハァしてんじゃねーー!!」 最悪だ、この変態───── ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |