だめ…なんですヨ
千秋真一×野田恵


「はぁ〜…夏の夜長は暑いデスね〜」

出窓から身を乗り出すようにしてのだめが言った。
ヨーコから送られてきた団扇が忙しなくパタタタ、と動いている。


――――くそ……
俺は地獄のようなマルレ合宿をやっと終えて帰ってきた。
といっても、合宿だったのは俺一人。
重要なことから忘れるらしいテオの性格が災いして、雑用やら掃除やらいろいろやるうちに
泊まり込みでの作業になってしまった。
コイツが学校に行っている間、二度シャワーを浴びに帰っては来たけれど。
だからというか…
しばらくのだめと夕食もとっていない。
ピアノも聴いてないし、洗濯もしていない。
それに―――――…
久しぶりに帰ってきてやったのになんだよ。
今日は久々に風呂で髪でも洗ってやろうかと思ったのに。

帰って早々「ぎゃぼ!なんで今日が帰ってくる日なんデスか!」とか言いやがって。

…俺ばっかり、会いたかったっていうのかよ。

千秋はのだめにむかつきながらシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。

「あっ!真一くんお風呂ですか!?」

振り返りざまに目を輝かせながら聞いてきたが、完全無視で風呂に向かった。

ノエルの夜だってつくづく思ったんだ。
あいつは俺がいなくても大して寂しくない。
ターニャもフランクもいる、ヤキトリオだっている…

だから?
俺に会わなくても寂しくないっていうのか?

シャワーの水圧を一層強くさせて頭から浴びる。
いつものように「じゅうでーん♪」がなかったこと。
久々の顔合わせなのに、まだキスもしていないこと。
ライブラリーにいる間中、のだめが気にかかっていたこと。
食中毒になってやしないか、餓死してやいないかと心配だったこと。
それよりもなによりも、こんなに腹が立っているのに…
…のだめを抱きたくて仕方がないこと。
そんな想いの全てが、なんだか一人空回りしているようで、やり場のない怒りがこみ上げていた。
そんな時だった。

「あの、真一くん…なんか怒ってます?」

扉越しにぼやけたのだめの姿が映る。

「…別に。お前に関係ない」
「……なんか、カズオですよね?」

人の気も知らないで、とカチンときた。

「まぁ、俺がいない間楽しくやってたのはわかるけど」
「え?」
「部屋はゴミ溜めだわ、洗濯物はたまってるわ」
「あ、はい、すみまセン…」
「勝手に人のベッドで寝起きして、シーツになんか染みくっつけてるし」
「あ、それオレンジジュー…」
「ほんと、お前ウザイ」

口をついてでた言葉に、ちょっと言い過ぎたか、と動揺した。
扉の向こうにいるのだめは無言のままだ。
…むかつく。のだめのくせに。
本当はこんなこと言いたいんじゃない、ということを嫌というくらい実感させられる。
千秋はバスルームの扉を開け、佇んでいたのだめを引き寄せた。

急に腕を引っ張られたのだめは、シャワーでみるみるうちにずぶ濡れになっていく。

「なにやってンデスかー!!!正気ですか!?」

さすがののだめも自分の状況に焦り出す。
千秋は全裸のまま、そんなのだめを冷たく見下ろしていた。

「…おまえ、この5日間なにしてた?」
「今そんなこと言ってる場合じゃ…」
「いいから、言え」
「えと…、ターニャとひじきメニューを研究したり」
「それから?」
「峰くんとチャットしたり」
「それから?」
「あとは…ピアノです」

千秋は目線をのだめの体へと落とす。
すっかりびしょ濡れになった白いワンピースは、もはや洋服という役目は果たしておらず
逆にのだめのボディラインを強調するかのようにピッタリと張り付いていた。
思わず、喉を鳴らす。

「俺のことは?」

シャワーの熱気にうなされたのだろうか。
いつもならもっと問い詰めるところで食い下がった。

「俺のことは考えもしなかったのかよ」
「……考えてたに決まってるじゃないデスか」

ワンテンポ遅い返事が更に苛立たせる。

「うそつけ。おまえむかつく」
「…先輩がいなくなって3日目に電話もしましたし」
「腹が痛いとかいう電話だろ!もーいい、あっちいけ」
「むん!先輩だって『食いすぎだろ!そんなことで仕事の邪魔すんな!』って切ったくせに!」

―――やっぱむかつく…こいつ。
珍しく引き下がんねーし。なんか俺に逆襲きてるし。
これじゃ本当にノエルと一緒だ。
苛立ちと悔しさとシャワーの熱気で、もうどーにでもなれ、と千秋はのだめを強く抱きしめた。

シャワーの音と熱気だけが二人を包む。
きつく、かたく抱きしめられているのだめから、か細い声があがった。

「せ、せんぱ…、痛い、です」

それでも千秋は無言のまま腕の力を緩めようとしない。

「の、のだめ、今日、だめ…なんですヨ」

意味合いをもたらす言葉を急に発したことに驚いて、千秋の力が緩む。

「もう……帰ってきたら絶対、すると思ったから…」

そう言うとのだめは、悔しそうな残念そうな顔をした。

なにが駄目なのか、それだとしたらどうして駄目なのか。
千秋はのだめと視線を合わせる。

「のだめ、お前なんかあった?」

スッと目を逸らされる。

「……のだめ…、お腹、痛いって言ってて」
「うん、電話で聞いたけどそれがどうかした?」
「……今日、ピークで」
「何が?」
「…量、が」
「量?………あ」

思わず目を泳がせた。
俺が帰ってきたら絶対するってわかってて…
のだめなりの気遣いで、俺がその気にならないように離れたり…してたとか?
そうと分かると、はぁ、と大きなため息をつき、千秋はもう一度のだめを抱きしめた。

「…んだよ、早く言えよな」
「そんなこと言えまセン!のだめがシたいみたいじゃないデスか」
「シたくないの?」

直球の質問に、「う…」と言葉を詰まらせもじもじする。

…ほんと、むかつくくらい可愛い。
千秋は一瞬ふっと笑った。

「俺は今日、止まんねーから」

抱きしめながらワンピースのファスナーを下ろしていく。

「せんぱ…真一くんっ、だからのだめ今日生理…」
「うん、知ってる」
「も、すごい、いっぱい出てるんですよ、あの」
「うん」

ワンピースがべちゃり、と下に落ちた。
ブラのホックを器用に外す。

「あっ、待って!ちょっと待って下さい!」
「なんで?俺は気にしないけど」

ブラが外されると、張りのある乳房がぷるっとしなった。
吸い付きたい衝動にかられながら、そっと手を添える。
あとはレースのショーツだけとなった。

気にしない、なんて豪語したけれど、そんなの嘘だ。
気にする気にしないなんてことより、生理中なんて初めてだから…
今、結構…いや、かなり興奮してると思う。

「ちょっと待って!」

のだめはドン、と千秋を突き飛ばした。
その勢いが強く、タイルの壁までよろけて頭を打った。

「いた」
「あ、すみません…でも!気にしないなんて…そんなの絶対うそデス!」
「そりゃ俺だって生理中は初めてだけど…」
「だから!いろいろあるとですよ!匂いとか…」

訛りが出るほど焦っているのだめを見ていて、なんだか申し訳ない気分になってきた。

「いや…うん、もしお前がそんなに嫌なら…やめる、けど」

嘘だ、本当は今すぐにでもひとつになりたい。

「でも俺はもうこんなんだから」

そう言って、あらためてのだめの視線を自身へと促した。
はっとした表情で千秋の大きく反り立ったものを見て、のだめはカァっと頬を染めた。

「そだ、真一くん…裸だったんデスね…」
「うん、だから…のだめ」
「………」
「嫌なら無理にとは言わないけど、でも」
「……はい」
「…無理にでもするかも」
「…ぎゃぼん」

最後のショーツに手をかけた。

ゆっくりと下ろしていくと、リアルに紅く染まった部分が露になった。
まるで、見てはいけない、踏み入れてはいけない、禁断の聖域を犯しているようで。
シャワーの熱気のせいなのか、湧き上がる興奮のせいなのか―――
既に荒い息遣いが、千秋自身を更なる興奮へと掻き立てる。

「う〜…ホラ、ちょっと匂いが…もう嫌デス…」

恥ずかしさでいっぱいという表情ののだめ。
そう言われてみて初めて、今まで知りえなかった独特の匂いに気付く。
自分には決して理解することも、経験することもない、「生理」という現象。
今までのだめはのだめだと思っていたが、ここ最近はずっと「女」として見ている自分。
その「女」の究極の部分を今、自分が犯してしまうことに興奮を覚えてしまっている。

俺…変態だったのか?

わずかに残る理性でそんなことを考えながらも、千秋はその部分に触れた。

「…っ!!」

声にならない声で、のだめは体を強ばらせる。
ぬりゅ、というような、いつもとは少し違った感触に、千秋ははぁっ…と大きく息をした。
指は普段よりも水に近いような滑りをみせ、さらさらしたものが指に絡みつくのがわかる。
そのまま押し進めて、指がのだめの中へと進入する。

「あっ…やめ…」

のだめのかすれた声が途切れる。
中はもう、熱く溶けていた。
とろとろ、というよりも、やはりさらさらした感触だ。
千秋はもう片方の手でシャワーを止めた。
きゅ、と閉まる音がして、バスルームは静かになる。
そこへ、恥ずかしくなるほどの、いやらしくも興奮するのだめの中の水音が響きだす。

「のだめ……すごい、音」
「あっ、…やっ…も、恥ずかし、から」

指をもう一本増やし、更にのだめをおいやる。
執拗に、けれど優しく。

「のだめ、こっちの脚、上げて」

片脚を上げさせ、千秋の腕で持ち上げた。

「は、あっ!だめ、や、んぁ…」

千秋がもたらす紅い泉と肉芽への愛撫で、切ないほどの快感がのだめを襲う。

ふと、指の感覚がとろとろしたものに変わってきた。
ぷちゅ、くぷ、ぷちゅ、と、水音は深さを増す。
のだめの脚が、がくがくと限界にきていた。
だがそれは千秋も同じことだった。

こんなに…我慢が効かないなんて。
俺が犯されてるみたいだ。
だってやっぱり、生理中にするっていったら―――
―――避妊、なしで…って考えるだろ。
絶対しちゃいけなかったことで、俺にとっては願ってもない行為。
考えるだけで、愛撫もそこそこに…入れたい、って思う。

「ハァ…も、いいかな」
「…あ、あっ、んっ」
「ごめん、我慢きかねー」

ちゅぷ、と指を引き抜くと、そのままバスタブを掴ませバックの体勢をとった。

初めて目にする禁断の紅い泉。

妖艶にぬらぬらと光るその泉を、そして指を交互に見る。

俺のものにしたい。
そう思わずにはいられなかった。

「そんなに見ちゃ…いやデス」

その言葉が引き金となったかのように、自身を一気に貫いた。

「ひぁっ!…」

いつもよりも敏感に感じているのはのだめも同じだった。

―――やばい…気持ちいい。

押さえの効かない衝動を堪え、規則正しく動き始める。

「あっ、あっ、んっ、あっ」

のだめから甘く切ない声が漏れる。
初めて、避妊という当たり前のことから解き放たれた。
直に触れ合っている部分が溶けるように熱い。
ぬちゃぬちゃといういやらしい音も、熱気に包まれた独特な香りも…
その全てが絶頂へと導くものへと変貌する。

もう、押さえられなかった。

「ハァ…ハァ、のだめ、俺」
「や、あ、あっ、しん…いちく…」

感じるがままに打ちつけながら、揺れる乳房を下から包む。
指の間に先端を挟み、そのままスパートをかけた。

「あっ!だめ!や、あ、しん、いちく…!!」

きゅうっ、と中が締まるのがいつもよりリアルにわかる。
それを受けて、千秋も極みへと昇りつめていった。

「…うっ……たまんねぇ…」

どく、どく、どく、と白濁したものをのだめの中に吐き出す。
未だ締め付ける中の余韻に、これ以上ないというくらいのエクスタシー。
初めての、そして禁断の、「生」の快感だった。

* * * * * * * * * * * * * * *

「ふぉ〜…センパイ、のぼせちゃったんデスね」

パタタタ、とまた団扇を忙しなく動かしている。
ぬるい風が、ソファに横たわる千秋の頬に優しくあたる。

あんなに興奮して…のぼせて当然だ。
しかも終わった後、体のあちこちに血が付いてて…
「どんだけ夢中だったんデスか〜」とか言いやがるし。
コイツはけろっとしてて、俺は―――
思い出すだけで、やばい、反応する。

「なんだかのだめ、お腹の中が変な感じデス」
「えっ…変って?」
「なんか…まだ出てきますよ?」

むきゃ、と変態的な笑みを浮かべた。

―――こいつ。  確信犯かよ。

この快感が虜になってしまわないようにと、ため息交じりに自分を戒めながら
のだめを引き寄せ、今日やっと5日ぶりのキスをした。


* * * 一週間後 * * *

「あ、センパイ、ネットで見たら、生理中に妊娠したっていう人もいたんですヨ〜♪」

この後千秋の顔から血の気が引いたことは言うまでもない。






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