一方で
千秋真一×野田恵


のだめの、肢体が反り、しなる。
透きとおる程の白い肌、細くて柔らかい髪。
体がしなる度に、マシュマロのような胸が揺れている。

俺しか知らない、左胸の小さなほくろ。
俺しか知らない、切なくも甘い声。
俺しか知らない―――…、のだめの熱さ。
もっと欲しい、もっと知りたい。
その想いが強くなればなる程、自分の制が効かなくなる。

『いつも一緒にいるようで そうでもない』
『ひとりで旅して いつの間にか帰ってきてる』

見失いたくない。

言葉に出来ない気持ちが、こうして体から溢れてしまう。
本当は自分でも分かっているけれど、いつもはぐらかす。
素直になることは、のだめ以上に自分が不器用で。
コイツのピアノを聴いて、涙が出るほど切なくなった。
愛しくも寂しい、まるで自分が置いてきぼりにされてしまうような。
捕まえて、自分の傍へ連れ戻したいような。
のだめの成長を知る程に、ふと、それが怖くなる。
見失いたくない―――…いや。

離れたくない。

――――… んな…!!


固まる千秋。
自分が今どんな状況なのか分からない。
ふと、周りを見渡す。
天井の大きなシャンデリア、隣には爆睡中ののだめ。
時計の短針は「W」を指している。

――俺は…  なんて夢見てんだよ…

リアル過ぎた夢に、自分でも呆れてしまう。
まだ鼓動が静まらないまま、水でも飲もうとベッドから身を乗り出し、
下半身の強い違和感に神経が集中した。
千秋自身がまさに、固く反り立っていたのだ。
思わずはぁぁぁぁ〜…と大きなため息をつく。
これがのだめに見られなくてよかった、とも同時に思う。

のだめとの付き合いが始まってから、幾度か添い寝もあった。
でも… まだそれ以上の関係には達していない。
コイツの全部だって一度も見たことがない。
それなのに俺の夢の内容といったら…
それもこれも、今日のリサイタルのせいだ!
コイツがあんな!  …あんな演奏するから…

『あんなふうに弾くの… 知らなかった』

きっとこれから、いろんな発見や驚きの連続なのだろう。
自分の知らないところで、もがいているのかも知れない。
自分がいなくても、成長出来るのかも知れない。
でも、それでいいんだ。

『オレが見失わなければ―――』


冷静に考える頭の中、一方で全くおさまる気配のない下半身。
隣にのだめがいては――…自身の手で鎮めることも出来ない。
それでものだめの寝顔を見ていると、不思議と気持ちが和んでくる。
しばらく添い寝の生き地獄もいいかもな…と、思ってみたり。
千秋は喉を潤すことを諦め、もう一度ベッドへ横になった。
そして、いつかこの生き地獄の辛さを、違う形でのだめに仕返ししてやる…と、
未だ鎮まらない下半身に誓うのだった。

のだめにも言っておかないとな。

『おまえもたぶん  いろいろなことを覚悟しておいたほうがいい』






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