そんな風
千秋真一×野田恵


夜風が心地よい。
今夜はいい眠りにつけそうだ、と千秋は思った。
もうすぐ日付が変わろうとする時間。
こんな深夜でも、無性にピアノが弾きたくなる奴が一匹いる。
最近はよっぽど、自分のコントロールが出来るようになったのか、
ピアノピアノと騒がずに、譜面の上で「鍵盤」を叩く。

今日もそんな愛しい変態が、目の前に一匹。

「ふんふんふ〜ん♪ねこのふ〜ん♪」

ソファに寝そべり、脚をバタつかせている。
ヨーコが送ってきたというネグリジェがふわりと舞う。
すらっと伸びた脚。
白い太腿の付け根が時折…覗くような気がした。

「センパイ」

急に振り返ったのだめに悟られないよう視線を逸らす。
のだめはふぅ〜と息を吐くと、譜面を閉じて聞いてきた。

「さっきから、何聞いてんデスか?」

千秋の手には、シルバーのウォークマン。
このようにして音楽をたしなむ光景は珍しい。

「のだめにも聞かせてくだサイ」

うきゅ〜☆と奇声を発しながら擦り寄ってきたのだめだが、
千秋の手で頭を押さえられ思うように近づくことが出来ない。

「む…!負けまセンよ」

それでも尚、力ずくで千秋の傍に寄ろうとする。
のだめの顔が歪む。

顔…きたねー。

千秋はウォークマンをのだめの死角に隠した。
押さえられていた片手から急に力が抜けたことで、前のめりになるのだめ。
そのまま千秋の両手でのだめを起こし、「あっち」と、ベッドへ促した。

「あー…   ハイ」
「なんだよその返事」
「いや、急な展開だなぁ、と」

若干図星だったところをつかれて少し恥ずかしくなる。
普段こんな風にお互い音楽に没頭している日は、何もせずに寝るのが当たり前だった。
でも何故だろう、今日は千秋の欲望がおさまりそうにない。

『こんな深夜でも、無性にシたくなる奴が一匹いる』…

さっきの言葉が千秋自身にも置き換えられる、というのがわかり自滅する。

ベッドに入るなり、ぽーいぽーいと服を脱ぎ出すのだめ。
色気もなにも…あったもんじゃない。
一糸纏わぬ姿になったところで、体をくねらせ「さあ、しんいちくん」と言った。

「…やめろ。萎える」
「センパイも早く脱がないと」
「そんなに急いでやりたいの?おまえ」
「だって、明日早いんですよね?」

一瞬、明日のスケジュールが頭をよぎり…更に萎えた。

「はぁ」
「だから〜ちゃちゃちゃっと。ね♪」
「なにが「ね♪」だ!あ〜…くそ…」

脱ぎ終わった千秋がのだめに覆い被さる。

「今日は、そんな風にシたくない日だから」

どーゆう意味ですか、とのだめが言い終わらないうちに口を塞がれた。

いつもよりも軽くて、くすぐったいような、優しいキス。
舌が絡んだと思うとすぐ離れ、また深く絡みだす。
千秋はのだめの顔を軽く横に向かせると、そのまま耳に口付けた。

「あ」

久々の感覚に思わず、小さな吐息が漏れるのだめ。
この頃ずっと、耳や背中の愛撫などされていなかった。
のだめの心理にも、今日の先輩は違う、とわかる。
思う存分耳を堪能して、ゆっくりと首筋へ下りていく。
鎖骨より下の辺りで、千秋はのだめに自分の所有である証を付けた。
ぴりぴりとした焦れるような甘い痛みがのだめを襲う。
同時に、そんな千秋の自分に対する独占欲が、ちょっと愛しくなる。

「んふ」
「…なに笑ってやがる」
「いいえ、なんでも」

そんな他愛のない会話も交わされる。
千秋は、柔らかくも豊満な胸への愛撫を始めた。
優しく揉みしだき、その先端を口に含む。
既にその存在を主張している先端はとても敏感でたまらない。

「は…」

と声が漏れた。
すぐにその声を押し殺そうとするのだめ。

「…なんで?」

愛撫を止めずに問いかける千秋。

「だって…なんか、優し、から」

ふーん、と返事を返し、千秋はその手をゆっくりと下へ滑らせていった。

今日はこんなのだめを、もう少し見ていたい。

くびれを撫でた後、中心部を避けるようにして内股へ手を這わす。
いつもはここで両脚を開かせるが、今日は何もしない。
明らかに焦らされていることに、のだめ自身戸惑った。

「ん、あの」

待ちきれずにのだめが千秋を呼ぶ。

「なに」
「えと…ちょっと」
「ちょっと、なに」

わからない振りをされていることも、のだめには分かっていた。
どうしてよいか分からず、脚をこすり合わせるように焦れるのだめ。
そんなのだめが、今日はとても可愛くてたまらない。
千秋はもう少し手を進めた。
のだめの柔らかな茂みの丘を撫でる。
その手の侵入を容易に受け入れられるように、と、のだめの意思で少しずつ脚が開かれていく。
次に来るであろう千秋の行動に期待が膨らみ、既に上気したのだめの表情。
ここまでの間も、千秋の片手はのだめの胸を愛撫している。
早く―――もっと奥―――
ねだるような、すがるような気持ちを堪え、千秋の愛撫に身を任せる。
そんなのだめを見ていて、かなり耐えていた千秋もしびれを切らした。

「…ココだろ」

そう一言言って、千秋はのだめの茂みの中につぷ、と侵入した。

「…っ!」

息を呑む音。
待ち遠しい感覚に、快感は倍増する。
侵入を許した場所は、途端に溢れ出す愛液で千秋の指を濡らす。
指の動きはこれ以上ないほど滑らかに滑り、瞬く間に指を飲み込んでいく。

「あ、や、そん…な」

言葉が途切れだす。
千秋の指がのだめの中でゆっ…くりと動き出した。

「んんっ…」

のだめ自身わかってしまうほど、秘所が濡れそぼっている。
今まで何度も見られてきた場所なのに、何故か今日はとても恥ずかしい。
それに輪をかけるように千秋が言った。

「エロのだめ…」
「そんっな…!セ、センパ…が、やさし、から…デス」
「膝、立てて、脚もっと広げて」

言われるがまま、素直に従ってしまうのだめ。

―――今夜は長い夜になりそうだな。

思いきり広げられた脚。
その間に顔をうずめる千秋。
目の前に広がる光景が千秋を強く誘う。
勢いに任せて今すぐにでも欲望をぶつけたいという想いを堪える。
千秋はうずめていた指を引き抜いた。
とろっとした愛液が糸を引く。
その指を、のだめが一番感じる場所とする肉芽へと忍ばせた。

「あっ!だ、めっ…」

一段と声が大きくなる。
軽く触れる程度で愛らしい肉芽を弄りだす千秋。
遅くしたり、早くなったり…変化をつけながら摩擦する。
その小さな肉芽はやがて、千秋の指にコリコリという感触をもたらすほどに突起しだす。
それを見計らったかのように、千秋は肉芽を剥き、そこに口付けた。
のだめの太腿がピクピクと震えだす。

「はぁっ…や、もう…そんな、に、したら…」

千秋の、優しくあたたかい口での愛撫。
その刺激に耐えかね、のだめは徐々に高まっていく。
千秋は、止まることなく愛液の流れ出る場所に指を侵入させた。
指が二本、のだめの中で円を描くように動き出す。

「んんんっ…は、も、ホント…や、あ、だめぇっ…!」

舌と指と同時に攻め立てられ、のだめの体は大きく反り返る。
くっ、と呼吸が止まり、何度か小さく痙攣する。
その後どさっと体を投げ出し、脱力した。

千秋はのだめの頭上にある包みに、おもむろに手を伸ばした。
慣れた手つきで破り、数秒かからず被せ終わる。
それを間髪入れずに、まだ余韻の残るのだめの中へと突き立てた。

「ひぁっ!…センパ…」

一度昇りつめた体は、その後の快感をまともに受け入れる。
そんなのだめを見下ろしながら、千秋はのだめの片脚だけを自分の肩にかけた。

ドン、と深く突く。
めいっぱい引き、また深く突く。

「ダメっ…!んあっ!しんっ…いちく…」

やっと自分の名前を呼んだのだめを見て、なんだか少し嬉しくなる千秋。
深く突き、円を描くように中を擦り合わせる。
まさに恍惚、といった表情を浮かべ、甘い声を出すのだめを見ていると
今にもセーブが効かなくなりそうだった。
ふと、のだめと目が合った。

「真一くん…    も、きてください…」

虚ろな目、ピンクに染まった頬、切ない声で囁かれた甘い言葉。
―――これが、俺しか知らないのだめ。
千秋の脳内のロックが外れる。
その一言を合図にしたかのように、自分の欲望のまま突き立てる千秋。
今、もはや声にもならないほど、感じるままに身を任せるこの女が、
自分の殻をことごとく割り、唯一全てを理解してくれるかけがえのない女だと、
こうして二人繋がる度に実感してならない。
とても口に出して言えることじゃないけどな、と片隅で思いを馳せながら。

「はぁっ、ん、セ、ンパイ、…手…」

のだめがせがむ。
千秋はのだめの両手に指を絡ませ、強く握り締めた。
こうするとより強く、より深く繋がっているような気がしてくる。
そんな小さな触れ合いでさえも更に気分を高騰させる。
結合部からはぷちゅ、ぷちゅ、という溢れんばかりの水音。
焼け付くようなアツいものが、込み上げてくるのがわかった。
千秋はラストスパートをかける。

「…っ、……のだめ、…っ、ヤバイ、かも」
「んあっ、やっ、も、ダメ、イッ…!」

搾り出されてしまうかという程の締め付けが千秋を襲う。
程なく千秋も極みへと昇っていった。
締め付けたままののだめの中で、どく、どく、と波打つ千秋。
なんでこんなに気持ちがいいんだろう、と純粋に思ってしまう。
二度も高みへ追いやられ、肩で息をしているのだめを見て、
また今日も征服感が湧いてきてしまう。

「はぁっ…、真一くん、なんか…今日はとても」

まだ虚ろな目をしたのだめが、その後に続く言葉を濁した。
なんのこと?と言葉を返しながら、ゆっくりとのだめから引き抜く。
役目を終えた避妊具を手っ取り早く片し、のだめの隣にバタン、と突っ伏す。

「あらら…お疲れデスね。明日早いんですから…」

そう言うと、のだめも千秋の腕に絡みつき、枕に顔をうずめた。

のだめが寝たことを確認して、そっとベッドから離れる。
さっき隠したウォークマンを手に取り、再び再生ボタンを押した。

今日の午後、ひとつの荷物が届いた。
送り主は…峰だ。

  『 DEAR 千秋
    
    よ!元気してるか?
    俺たちは相変わらず元気いっぱいだ!
    最近の出来事といえば、まず俺の親父が新メニューを…(中略)
                :
                :
    …らしいぞ!まったく菊池のやつ、結構モテるよな〜!

    長くなったけど、手紙だけじゃなんだから、今日本で流行ってる曲
    いっしょに送ったから!千秋のジャンルじゃないだろうけど、まあ
    騙されたと思って聴いてみろよ!すっげーいい歌なんだから!
    じゃ、風邪引くなよ!のだめによろしくな!
              
                  FROM あなたの永遠のコンマス☆峰  』

…うっとうしい文面だ…。
何度も「!」とか使うなよ!
しかも永遠のコンマスって…。

半ば呆れながらも、久々にウォークマンを取り出しCDをセットする。
わざわざウォークマンで聴くことを選んだのは、のだめにこの曲を
聴いていたことを茶化されないためでもあった。
そして、千秋はその曲を何度も聴くことになる。
それは今の自分に当てはまるような歌詞が気になるからでもあり。
その曲を聴きながらのだめのことを考えている自分がいる。

   ♪デアッタトキカラ キットスベテノセカイ カワリハジメテイタヨ
     イマナラコノキモチヲ ショウジキニ イエル
     ミチニサイタハナニサリゲナク ワライカケルキミガダイスキデ
     ドンナホウセキヨリモ カガヤクシュンカンヲ ムネニキザモウ――…

    ココロカラ ココロカラオモウ キミガタイセツナモノハナンデスカ
    ソノエガオ ソノナミダ ズットマモッテクトキメタ

    コイニ オチテ――…      I LOVE YOU


峰って――…  曲のセンスあったんだな…

明日の早朝は辛そうだ、と思う千秋だった。






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