過去にデリ使いましたねしんいちくん疑惑リレー
千秋真一×野田恵


「フンフンフーン♪」

のだめはいつも以上に浮かれていた。
というのも今日は千秋のスペシャル呪文料理が食べれるからである。
フランクの一件で、千秋がのだめに対して強い嫉妬を抱いてしまい
「あの時の俺は俺なのか…?」と自責の念にかられる程のSなセックスをしてしまったこと。
その反省の意味を含めて、今夜は腕をふるって料理をする、といって買い物へ出かけた千秋。
そんな千秋の気持ちが嬉しくて、それ以上に久々の呪文料理への期待が膨らんで、のだめはスキップをふまずにはいられない。


「ずんたかたーずんたかたー」

リズムが変わったその時。

ずべしゃーん

床に無造作に置かれた譜面で滑りまともにコケた。
ドカッ バサバサ… という不快な音が部屋に響きわたる。

「…あたた、先輩のレコード、やっちゃった…」

散らばるクラシックレコードの山。
その中に、妙なものが交じっているのに気付く。

「…んと、峰くん…?」

のだめが手にとってみると、それはレコードよりも小さな、どうやらCDの類であった。
ケースにはジャケットなど何もなく、ただクリアケースに「千秋へ 峰より」とペンで書かれてある。

何気なくパカッと開けてみた。


『裏物大全集!マンネリ解消スペシャル』


目に飛び込んできたタイトルにしばらく硬直するのだめ。

「マンネリ…」

独り言を呟きながらまた何気なくディスクを取り出してみた。
すると、小さく折られて隠されていた紙きれがポトッと落ちた。
広げてみるとそれは・・・


『あなたのデリヘル☆いつでも天国
 090-XXXX-XXXX 愛です♪』



クシャっ…と紙を握りしめて叫んだ。
「むきゃー!!ゆ…許せまセン!!」

「のだめ、ただい・・・」

千秋の前に広がる光景は騒然としていた。
床一面に散らばるレコードや雑誌。
今週末古紙回収に出す予定だった新聞も一枚一枚がバラバラになって広がっていた。

―まさか泥棒でも入ったのか?

千秋はサーッと血の気が引くのを感じるのと同時に、その名を呼んでいた。

「のだめ!!」

リビングを見回すが姿はない。
千秋は寝室のドアを突き破るかのごとく勢いよく開けた。
真っ暗な部屋にぽつりと浮かぶ人影。
窓から漏れ入る光に照らされてすぐに誰だか判別できた。

「はぁ・・・のだめ・・・!!」

息を切らす千秋の額にはうっすら汗がにじんでいる。
良かった・・・と座り込むのだめを抱きしめようと彼女の肩に触れた、その時

「触んないで下サイ!!!」

涙声でそう叫ぶと千秋の手を叩くように払いのけた。
千秋は何が起こったのか全く解からず、ただその背中を見ている。
左手の甲は赤くなっていた。


432 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2006/08/07(月) 20:33:21 ID:Lm7uMOwX
寝室には物はほとんどないのでリビングほど荒れていないが、
あの時の行為の後を思わせるほどにベッドのシーツは乱れ、
枕は部屋の隅っこまで飛ばされていた。

「おい、お前どうかした・・・」

言葉が途切れる前に、千秋に背を向けたままのだめはすっくと立ち上がった。

「ゴメンナサイ。今は放っておいてくだサイ。」

そのまま、ドアの方へと進んでいく。

「お、おいっ・・!」

今度は、その肩に触れることも許されず、千秋の腕は宙を舞った。
部屋中にドンッと激しくドアが閉まる音が、響いた。

「何だって言うんだよ、一体・・。」


***


「マンネリ・・・・」

「デリヘル・・、デリバリヘルス?」

「う〜、マンネリ・・・」

一人部屋に戻り、ブツブツと呟く。のだめは先程千秋の部屋で見たものを、頭の中で反芻していた。
色々と考えあぐねた結果、導き出された答えは一つ。『千秋は自分とのセックスにマンネリを感じている・・?』

「だ、だから、昨日、あんなに・・?」

昨日の千秋は、明らかにいつもと様子が違っていた。熱をもってどうにもならないのだめの体を執拗に責め続け、「欲しい」と強請ると、とても満足そうな顔をしていた。
のだめに結合部が見えるといやらしく伝え、絶頂を迎えようとすると腰を引いて、それを許さなかった。

「先輩・・、いつもなら絶対あんなに意地悪言ったりしないのに・・・。」

しかし、それはフランクとのことを勘違いをしたからで、のだめのことを独り占めしたいから、
愛しているからだと思っていたのに・・・。
そうではなかったとしたら・・?

「のだめは飽きられちゃったんでしょうカ・・?」

あんなことで愛されていると感じてしまった自分が、何だかとても恥ずかしく思えてくる。

一人残された千秋はその場に立ち竦んで、
ただただ物が散乱する部屋を呆然と見つめていた。
先ほどのだめが出て行った玄関の側には、夕飯の材料が転がっていた。

「・・・人の部屋を散らかすだけ散らかして・・・」

千秋は考えても答えが出るはずもなく、
しかも荒らされた部屋を見るだけで何をする気も沸いてこない。
脱力感に襲われる中、とりあえず床に散らばったものだけでも片付けておこうと
広がったレコードを拾い始めた。
ちょうど6枚目を手に取ったとき、
その下にくしゃくしゃに丸められた紙切れが落ちているのを見つけた。

「・・・なんだこれ・・・」

一度抱えていたレコードを机の上に置くと、
その紙の塊を開いた。

峰の奴がウケ狙いで送りつけてきたエロDVDに、デリヘルの名刺・・・。
まさかこんなものを見て嫉妬しているのか・・・?
いや、そんな訳無いよな。じゃあなんでだ?
でも・・・確かに俺に対して怒ってる・・・よな。

「理解不能・・・。」

一人つぶやく千秋はとりあえず部屋の片付けを続けた。

          ******

のだめは悶々と考えていた。

(のだめじゃ満足できないのかな・・・。)
(しんいちくんはやっぱり色っぽい女の人がスキなんデスかね。)
(のだめ、しんいちくんとしかしたことないし、経験が足りないのかな・・・。)
(彩子さんみたいな人が・・・。)

今までろくに男性との恋愛を経験したことがない自分。
ピアノを愛し、千秋に恋をし、がむしゃらに追い掛け続けてきた日々。
振り返れば誰かと自分を比べてみたことなどなかったことに気付く。

のだめはのだめで、先輩はセン…しんいちくんで。


頭の中には今までもこれからもピアノと千秋の存在が占める。
自分の中にはずっと千秋がいて、千秋の中にもずっと…自分が…


いるはずだ、とイマイチ思えないことを嫌でも感じてしまう。

「センパイの中に、時々違う人がいたら…」

声に出してしまう、心の不安。
のだめの頭では到底抱えられるような悩みの大きさではなかった。
部屋に戻ってる場合じゃない、と決意を新たに駆け出す。


バーンと勢いよく千秋の部屋を開け開口一番に言い放った。

「千秋センパイ!のだめは…のだめは何番なんですか!!」



のだめのあまりの気迫に、千秋は下拵えをしていたオマール海老を二、三匹落とした。

「はい?!」

千秋は突然ののだめの言動にわけが分からずにいた。

「答えてクダサイ!何番なんですか?!」
「ちょ、ちょっと待て!いいから落ち着け!」
「ムキャー!これが落ち着いていられマスか!」
「何番って、何がだ?!」

のだめは涙が溢れそうになっている目をぎゅっとつむり、叫んだ。

「今まで先輩がえっちした女の人の順位デスよ!!」

白目、青スジで立ち尽くす千秋。

(こいつはそんなくだらない事で俺の部屋をむちゃくちゃにしやがったのか?!)

のだめはぽろぽろと涙をこぼして言った。

「そりゃのだめは先輩を満足してあげられんとよ・・・。
のっのだめ、先輩がはじめての人で、ひっく。どうしたらキモチよかとか、よう分からんし。
でものだめでっちゃそれなりに頑張ってきたつもりばい。
でも・・・でもっ・・・プ ロ に は 勝 て ん と よ !!」

(はい―!??)

「ちょ、のだめ、なんか勘違いしてないか?!
あのデリヘルの名刺は峰の奴が勝手に・・・」
「言い訳は聞きたくないデス!のだめとのえっちが飽きたんなら
そう言ってくれればいいのに!!」

(こいつ、完全に勘違いしてる・・・。)

呆れ果てた千秋は、のだめを落ち着かせるため声のボリュームを落とし静かに言った。

「いつ俺がオマエの事飽きたとか言った?」

「だ、だって昨日センパイどう考えたっておかしかったじゃないデスか!?
フ、フランクが寝てる横であんなこと始めるなんて・・!しかも、あんなにネチネチとしつこく・・。
そりゃあ、センパイがネチネチしつこいのはいつものことですけど、それにしたって度が過ぎます!
のだめ、前にネットで見たことあるから知ってるんですヨ?
男の人のエッチが急に変わるのは、何か隠してる証拠だって!
何かのだめに言いたいことがあるのなら、はっきり言ってくだサイ!」

「き、昨日のことは忘れろっ!」

捲し立てるのだめを遮るようにして、千秋は再度声を荒げた。
のだめの肩がビクッと震えたのが分かる。

(しまった・・・、あれだけのコトしておいて、「忘れろ」は無いよな・・。
しかし何なんだよ、いきなり・・。やっぱり、刺激が強すぎたのか?
けど、自分だって結構楽しんでたクセに・・。ネチネチって・・。
くそっ、これだからコイツは訳わかんねぇ。)

のだめは、大きな瞳を涙で一杯にしてこちらを見ている。
いや、この場合睨んでいるといった方が正確か・・。
身長差がある為に、のだめが上目使いになってしまうのは当然なのだが、それにしてもこの光景は、保護欲、
いや、加虐心をジリジリと燻る。

「はぁー」

真一は大きく息を吐いた。

「お前分かってて、やってんの?」

「だから、分からないから教えて下サイ!って言ってるんじゃないですか!?」

「なんの話だよ・・・・。」

「・・・とりあえず落ち着け。
俺はお前に何も隠してないし、お前に飽きたとも思ってない。」

のだめは千秋へ向けていた視線を床へと落とす。
ぽたぽたと涙が落ちた。

「じゃあなんで・・・なんでマンネリなんて言うんデスか・・・!!」

(一言も言ってねー!!!)

千秋はうつむくのだめにゆっくりと近づき、背中に手を回すと、
お尻から抱え込むようにして彼女の体を抱き上げた。

「はっ、離して下サイっっ!!まだ話は終わってないデス!!」

のだめは手足をジタバタさせてなんとかその腕から逃れようとするが、
千秋は無言のまま寝室へと向かう。
乱れたベッドに腰掛けさせる形でそっとのだめを下ろすと、
泣いてぐちゃぐちゃになっているその顔を覗き込んだ。
しかしのだめは目を合わそうとはしない。

「ズルイです…しんいちくんは…」

溢れる涙を拭うこともせずのだめは呟く。

「エチすれば、のだめが許すと思ってるんデスよ…」

千秋はワンピースのファスナーを降ろし、ゆっくりとのだめの裸体を露にする。

「近付いたと思ったら離れてく…ぐすっ…ノエルの時と一緒デス」

器用にブラジャーのホックを外すと、豊かな胸がふるふるっと弾けた。

「だからっ…!!のだめの話ちゃんと聞いて…」

言いかけたその口をキスで塞ぐ。


長い、長いキス。
深く、強く、優しく。


「…っんぁっ、は、苦し…」

息苦しさにのだめが口を離した。
その顔を両手で優しく包み、千秋自身へと向けさせる。
交差する視線。
しばらく見つめあう沈黙の時間。


千秋が沈黙を破った。

「お前に対する愛情がどれくらいなもんか、今から体で感じとれ」

千秋はのだめの前髪を優しくかき上げ、つるんとしたおでこに軽くキスをした。
そして、鼻の頭、ほっぺに触れるか触れないかの優しいキスをした後、耳たぶを甘噛みする。

「んっ・・・。」

のだめは昨夜とは全く違う優しい愛撫にすっかりおとなしくなってしまった。
耳に舌を這わすと、ぴちゃ・・・といういやらしい音がのだめの脳まで響く。

「はぅん・・・。」

たったそれだけの事でふるふると体を震わせて頬をピンク色に染めるのだめが
愛らしくてたまらない千秋は、思わず耳元でささやいた。

「・・・好きだよ・・・。」

のだめは普段聞けない千秋の言葉にふおぉ〜、と一瞬目をキラキラさせたが、すぐに悪態をついた。

「そんな事言われても騙されませんヨ。どうせのだめなんて・・・。」

(まだ言うか・・・。)

千秋はのだめの唇をそっとふさいだ。小鳥のように軽く触れるだけのキス。
いつもなら衝動的に舌を絡ませるが、はやる気持ちを抑え、何度もくちづけした。

「俺を信じろ。」

のだめのふわふわの髪をなでながら優しく微笑む千秋に、
瞳をトロンとさせたのだめはもう、抵抗など出来ないでいた。

なんでこんなステキな人がのだめの事スキって言ってくれるのかな。
のだめ、お料理もできないし、お掃除も苦手だし、おベンキョも出来ないのに。
のだめには・・・ピアノしかないのに―・・・。

されるがままになっているのだめはぼんやりと考えていた。

端正な顔が胸元をまさぐる。指揮棒を持ち、正確なピアノを奏でる指が
胸の一番敏感な部分をもてあそぶ。
昨日まであたりまえだった光景が、今は何故か不思議で仕方が無かった。

「あ・・・んっ、せんぱ・・・い。のだめなんかで・・いいんデスか・・・?」

千秋は困ったような顔をして微笑んだ。

「いいも何も、俺にはオマエしかいないんだけど?」

「はう・・・先輩・・・ごめんなさいデス。信じます・・・。のだめがばかでした・・・。
嫌いにならないでくだサイ・・・。」

千秋の愛情をしっかりと感じたのだめは、
さっきまでの自分の愚かさを思い出して情けなくなり、泣き出してしまった。

「もういいから。嫌いになったりしないから。」

シャツの袖で涙を拭いてやり、もう一度額に優しくキスをした。

ゆっくりと体を預けていると、千秋の指が這わされてきた。
表面を優しく掌でなぞり、指先でカーブを辿る。
肩のライン。華奢な鎖骨。
その後で、柔らかな唇が追いかける様に触れる。
官能を高める様な触れ方ではない。
優しく慈しむ様に、大事なものを丁寧に扱う様に千秋はのだめに触れた。

「ン……ふ……」

のだめはその行為に自然と体を開いていく。
二の腕の内側に千秋の硬い黒髪が触れると、くすぐったさに身をよじったが、
眼前の唇が「じっとして」と囁くと、力が抜けていくのを感じた。

千秋は頭の上の方で掌をゆっくりと絡み合わせながら、二の腕に唇を押しつける。
そしてそのまま、無防備な脇の下をぺろりと舐めた。

「やっ、ん……」

くすぐったさに腰が浮いてしまう。
それでも、千秋の愛撫はあくまでもゆっくりと優しい。
いつもなら急速に追い立てられてしまうのに、自分の反応もどこか違うのを
のだめも感じていた。

じんわりと皮膚に熱がともる様な。
触れられるところすべてを辿り、キスで埋め尽くす様な千秋の優しさ。
ふわりと包まれて、とても安心できる場所……。

ショーツの紐を解かれるのも、開いた足の間に千秋が入り、自分の中心の程近い部分に触れても、
のだめは抵抗しなかった。
ざわざわと遠くから快感の波の音が聞こえるが、それよりも体が弛緩し、
リラックスしているのがわかる。
辿る千秋の掌の熱さ。
何か囁きながら押しつけられる唇。
しっとりとしはじめたのだめの肌を時々啄む様にしては、可愛らしく音を立てて。

「きれい。……肌」
「ぁ……」

ほんとうは、括れのないウエストを触れられるのは恥ずかしい。
前の彼女……彩子さんと比べられている様な気がして。
あの人は香水のいいにおいがして。
スレンダーで、括れもあって。
洗練された格好でどうみてもお嬢様で。
……どう見たって千秋先輩とはお似合い、美男美女で…………。
やっかみじゃなくて、本当に綺麗な人だから。
なおのこと、どうして自分がいいと言ってくれるのか。

のだめはわからない……と首をふるふると振った。

千秋は肌触りのいいのだめの臍の回りを撫で回し、頬をすり寄せる。
真っ白な薄い皮膚の下の柔らかさを愛しく思い、何度も口づけた。

「くびれなくて……ごめんなさ……い」
「……そんなもの」
「……のだめ、赤ちゃん体型みたいですよね……大人の女の人みたくなりたい」

千秋は埋めていた顔を上げてのだめを見た。
目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。

「…………彩子さん、みたいな……」

……千秋は何も言わない。
のだめの言葉になにも答えず、かわらずの時間をかけた優しい愛撫を続けた。
いつもだったらすぐに触れるだろうところには少しのキスをしただけで、
そのまましなやかな足へと移動する。
抵抗なく自分に体を預けているのだめの姿には、いつもの敏感すぎるほどの反応とも違うものが見えて、
千秋自身も次第に脈を速くさせていた。

何を言っても、二人の出会えなかった時間の埋め合わせは出来ない。
自分がそれでいいと思っていても、きっとのだめは違うのだろう。
今がすべてだとしても、のだめは気にするんだろう。

……過去の女性と比べた事。
無いといったら嘘になる。
柔らかな大きな胸に触れる時の、いつもながら感じる感動。
薄い毛も妙にそそり、かわいくて、そこに口づけしやすいから、いっぱいそうしてあげたいと思うのも。
人の肌が優しくて柔らかくて、抱きしめているつもりが自分が抱かれてるみたいだと思うのも。

過去の事があったから、今ののだめをとても愛しくて、とても素敵だと思うのだ。

のだめは勝手に勘違いをしているが、マンネリなんてとんでもないところだ。
抱くたびに見つける敏感な場所。
一つ一つのかわいい部分を、どれだけ自分が楽しみにして、いつものだめを求めてしまうのか。

言葉じゃ……言い尽くせない。
それに、伝わるんだろうか、のだめに。

千秋は膝頭からふくらはぎへと舌を伸ばしながら考えていた。

「その名前はもう出すな。」

彩子か・・・。思えばそんな時もあったな。
彩子も、その前の彼女も、女性らしくてセクシーな雰囲気の女だった。
・・・若かったんだ。あの頃は。
たいしてお互いの事を知りもせず、そのセクシーさに惹かれた。
結局、性格の不一致ですぐに別れてしまったけど。

・・・のだめの第一印象は最悪だった。風呂にも入らなくて、変態で。
音楽にも正面から向き合おうとしない。童顔で幼児体型で。
恋愛対象外だと思っていた。
なのに知れば知るほど魅力的で、かわいらしく思えてきて、一緒にいたいと思った。
知り合って、付き合うまで2年。
俺は完全にのだめに惚れてしまったんだ。
これが本当の愛じゃなかったら一体何なんだ?

「あっ!ああんッ!せんぱい・・・はぁ・・・。はぁん・・・。」

愛液が溢れ出すのだめの泉を2本の指で掻きまわすと、
指のリズムに合わせてのだめの声が漏れる。

千秋はのだめを初めて抱いた夜の事を思い出した。

愛撫はくすぐったがり、挿入すると痛がって泣くばかりだった。
感じる、という事がまだよく分からなかったあの頃。

今では少し触れただけでも色っぽい声が漏れ、秘部を濡らす。
何度か行為を重ね、初めてのだめが絶頂を迎えた時は、俺は涙が出そうになった。
のだめは俺だけしか知らない。誰にも触らせたくない。

行為を重ねるほど、のだめがどんどん敏感になって、感じてくれる。
すべて自分が教え込んだこと。
こんなにうれしい事はない。
まして、マンネリとか、飽きるなんて事は考えた事もなかった。

真っ白な下腹部に顔を埋める。鼻先でなぞるようにして、
のだめ本来の薄い香りを肺いっぱいに満たす。

自分の下でのだめは体を小さく震わせ、満たされつつある。
そんな様子を眺め、感じることが、千秋はなにより嬉しかった。


素直に快感を受け入れて、大きく開ききったのだめの足の指を
片手で軽く閉じ、口に含む。くちゅと殊更に大きな音を立てて。

「あぅっ!」

千秋を求める可愛らしい声と共に、目尻から涙がこぼれた。

「指、感じてる証拠・・。」

足の甲にキスしながら、のだめの秘所をジッと見つめる。

「や、恥ずかしいデス・・・。」

「うん。」

舌先で涙を受け止め、千秋は、のだめの瞳に映った自分の姿を確認した。

「俺も恥ずかしい。」

「ッひゃあぁんっ!あっ・・・やんっ!」

もう一度足の指の間を丁寧に舐め上げると、のだめはシーツにしがみつく。
そして足首、ふくらはぎ、内ももに下を這わすと、
期待が高まる秘部から蜜が溢れ出し、お尻の割れ目からシーツに伝う。

千秋はのだめの足を大きく開き、望みどうりにその部分を舐め上げた。

「ああぁっっ・・・!!はぁんっ!・・・やだやだっ、恥ずかしい・・・っ。」

「のだめ?」

のだめは両手で自分の顔を隠した。いつもはされるがままなのに。これが好きなのに。

自分を本当に愛してくれているかまだ少し不安の残るのだめは、
初めてされる時のような気持ちになり、なんだか急に恥ずかしくなってしまった。

「の、のだめばっかり気持ち良くなってごめんなさい、
今度は先輩に気持ちよくなってほしいデス。」

そう言うとのだめは起き上がり、千秋をゆっくりと押し倒した。

「え・・・?」

のだめはそそり立つ千秋のものを下から上に舐め上げた。

「―――っっ!!」

突然の快感に、千秋は声が漏れそうになるのを必死でこらえた。
先の方にキスをされ、唇で軽く挟まれながらちろちろと舌を転がされる。
そしてのだめは口を大きく開けて千秋のすべてをくわえ込む。

「はぁ・・・。」

濡れた唇を上下させ、同時に根本の方のくわえきれない部分を手のひらで
優しく握り、ゆっくりとしごいた。

「ッのだめ・・・!」

千秋が一番感じる部分を探すように何度も角度を変え、
執拗に舐め上げるのだめに、千秋は少し罪悪感を感じていた。
自分が教え込んだ行為なのに・・・。
まるで小さな少女にいけない事をさせているようで。

「のだめ・・・はっ。・・・もういいよ。」

いつものようにある程度のところでやめさせようとする千秋に、
のだめは首を横に振って言った。

「やめまセン。もっともっと先輩にキモチ良くなって欲しいデス。」

「お、おい・・・!」

のだめはもう一度咥えながら両手で握ると、スピードを早くして上下させた。

「はっ・・・あ・・・っ!」

千秋の口から声が漏れると、のだめは嬉しそうにその動きを早くしていった。

じゅぷっじゅぷっじゅぷっ・・・

いやらしい音が部屋に響き渡る。
千秋は快感に酔いしれていた。昂ぶりはもうすぐそこまで来ていた。
だんだん強く握られ、激しく擦り上げられ、・・・限界だった。

「あ・・・のだめ、もういい、いいから・・・っ!」

のだめは強引に続けた。もっともっと、はやく、激しく。

「?!のだめ・・・いく・・・っ!」

千秋はのだめの口内にすべてを放った。のだめはそのまま飲み干した。

「ごめんっ、のだめ・・・。」

「…のだめヘタクソですよね」

口の周りを涎だらけにしながら呟いた。

「のだめはずっと先輩だけでした。今までもこれからも」

とりあえず聞こうと千秋は身を起こす。

「でも先輩はいろんな人と経験してマス」

すがるような目を千秋に向けた。

「だからこれからいっぱい勉強して上手くなりますから…のだめだけを見てて下さい…!」


(…こいつなりに不安になったってことか…)

当たり前のことを懇願するのだめを目の前に、未だ下半身の余韻が抜けぬまま千秋は思う。
いつかどこかへ飛びたってしまいそうな感覚。
手元を離れて違う場所を見つめてしまうことを恐れ捕まえていたくなる。
それはまさに、のだめに対する俺自身の想い。
でものだめはのだめなりに俺のことを心配していたんだ。

(まぁそのうち100%が誤解だけどな…)

ふっと笑みがこぼれる。
不思議とその嫉妬を、不安を、嬉しいと思える自分。
ふわっと広がる優しく暖かな気持ちに、比例するかのように反応する下半身。



「…わかった。わかったよのだめ」

千秋はのだめをゆっくりと押し倒した。

「お前の不安、取り除いておかないとな」

千秋の唇がのだめ、と小さく震えて、舌が入り込んでくる。
……まだ、のだめの舌の上には千秋の放出したものがあったので、のだめはむしろ自分から
それを避けさせようと千秋の胸を押し返したが、千秋は深い口付けをやめなかった。
絡み合わせる舌の間にある、苦味。
二人はそれを共有した。

「あ……」
「……まだ終わってないんだよ」

耳にかかる吐息に身をよじったのだめの体をうつ伏せに返し、
千秋は再び肌の表面を埋め尽くすような愛撫を始めた。
汗で項に張り付いた髪を唇ではずし、耳朶に、首筋に唇を滑らせる。
肩甲骨の隆起に歯を軽く当てては甘噛みする。
一点のくもりのない、滑らかで白い背中に、千秋は今日はじめて強く吸い付いて痕をつけた。

優しい掌が、太腿の外と内を円を描くようにたどってから、膝裏のくぼみに親指が当たるまでに、
のだめは自然と足を開いていた。
唇が足首に到達し、くるぶしを舐められると、しなった体は無意識にふっくらとした双丘を持ち上げる。
千秋は腿裏にキスを落としながら、そこへ少しずつ近づいた。

「あ、っん」

かぷりと歯を立てられた。
痛さよりもくすぐったい感覚がのだめを襲う。
逃れようとすると腰だけが持ち上がってしまい、けれど背中を優しく押さえつけられて逃れられない。

「や、ダメ……」

舐められるのは好きだ。
でも。
……見えちゃう。
……見られてしまう。
いまさら、と思うけれど、この格好では恥ずかしい。

のだめが手を伸ばし、隠そうとしたそこに何かが触れる。

「……〜〜っ!?!?」

千秋はのだめの小さな後ろの口にキスをして……ゆっくりと舌をあてがった。

声にならない声が上がり、のだめは頭を振る。
それでも、千秋は優しくそこを舐め続けた。

「いやっ、いや!! そんな……ダメ!」
「見せて、全部……キス、させて……」

千秋はのだめの尻をそっと左右に割ってさらに開かせた。
先ほどの雫が流れたラインを舌でたどり、すぼんだところで音を立ててキスをする。

顔から火が出るように熱い。
こんな恥ずかしいことは経験がない。
涙がぽろぽろとこぼれる。
でも……でも。

いやじゃ、なかった。

シーツを握り締めている指が、白んでいるのが千秋には見えた。
そののだめの手を包み込み、握る。
悲鳴にも似た声がすすり泣く声まで変わり、ため息に艶がともるころ、
千秋はもう一度熱っぽくそこに口付けた。
力なく息をするのだめの体を抱きしめて、こちらを向かせようとするが、
のだめは先ほど以上に頑なに顔を覆っていた。

「のだめ……のだめ……?」
「……や……はずかし……もう、や……」

すすり上げる涙声に、少しやりすぎたかと思ったが、どうしても伝えたくて。
自分にとって、のだめがどれだけ特別で大事なのか。
比べようもないほど、胸の中にいっぱいおまえの存在があるんだと、わかって欲しくて。

「こんなことできるのは……おまえだからだ」

耳朶に唇をつけて、囁く。
髪をなでて、くったりとした体を包むように抱きしめて。

「おまえが好きだから……全部知りたいし、見たいし……」

のだめのすべてを知りたい。
持っているもの、秘めているもの、すべて。
その瞳に映るものも、心も体も感じるものすべてを。
体の中に流れる音楽。
作り出す音楽。
すべて、全部を。

「……愛したい」
「……し、んいちくん……」

のだめは胸の中で顔を覆っていた手をはずし、千秋の顔を見上げるようにのぞいてみた。
……その顔は、見たこともないくらい赤い。

「こ、こんなことおまえにしかしたことねーぞ……」
「せんぱい……顔、真っ赤」
「……言ったろ。恥ずかしいのはオレも一緒だ」

愛すること。
愛されること。
その上で大切なのは愛する人を信じること。
でも…愛されることに疑い深くなってしまうこと。

時に相反する気持ちが互いを責めあい、むやみに傷付き涙を流す。
そんな時のためのとっておきの武器が備わっているのに、それを使うことは至難の技だ。


『素直になる』ということ。


こんなに傷付いて涙を流して…
のだめの中でどれほどの不安があったのか。
誤解から生まれた嫉妬だとしても、何故今まで自分はもっと素直になれなかったのか。
愛しているんだということを、何故もっと早くに伝えようとしなかったのか。
月の半分は不在になる状況でも、のだめなら一人でなんとかやっていると過信していた。
でも本当は…

本当は寂しさと闘っていたのかも知れない。

不器用なのは俺ものだめも一緒だったはず。
それを俺がもっと汲みとってやるべきだった。
きっと…俺は明日からまた、いつものようにのだめを野放しにして変わらぬ毎日を送るだろう。
でも今なら…


今なら「愛している」ということを伝えられるかも知れない。

体で、心で、伝えたい。



千秋の巡らす想いを知ってか知らぬか、のだめは愛しい人の胸にそっと手をそえた。

「…センパイ」

蒸気した表情、桃色の躰で精一杯伝える。

「のだめ、センパイのことが、大好きデス」


…そうだ、こいつはいつだって素直だった。
嘘のない直球勝負。
完全に俺の負けだな―――…


「…もう、我慢できねぇ」

千秋はのだめの腰を掴むと、一気に貫いた。

「あっ、あっ、あぁ、んんっ、や、せんぱ・・・ああっ!すご、気持ちいいよぅ・・・!」

千秋の腰の動きに合わせてのだめの声が漏れる。
ベッドは壊れそうなくらいギシギシと音を立ててきしむ。
のだめは後ろから激しく突いてくる衝撃に必死で耐えようとシーツを握り締めた。
手を伸ばし、胸はベッドに擦り付けられ、お尻を精一杯上げている。
まるで猫のような、女性らしいしなやかな姿勢に、千秋は思わず唾を飲んだ。

一度動きを止め、のだめと繋がったまま、のだめの体を起こして座った。

「はぁ・・・先輩・・・?」

顔を上げたのだめはギョッとした。ベッドの前の大きな鏡に、裸の自分が映っている。
そして千秋と繋がっているままの恥ずかしい部分がさらけ出されている。 

「や、やだ・・・!先輩!こんなカッコ・・・恥ずかしいデス・・・。」
「のだめ・・・かわいい。ここ、こんなに濡れてる・・・。」

左手でのだめの胸をもてあそびながら、
右手で千秋自身をくわえ込んでいる部分の少し上にある芽をぐりぐりと押しつぶした。

「ッあ―――っっ!」

のだめは思わず顎を上に向けて喘いだ。千秋はのだめの汗ばんだ首筋にキスをする。
恥ずかしさと快感が交互に入り混じり、なんとも言えない快楽に溺れていく。
目を開ければ自分のあられもない姿。
恥ずかしいのに目を反らせない。そんな事をされている自分に感じてしまい、
シーツを濡らしてしまう。

「はあっ、あ、あ、やぁ、・・・っ!!」

奥を突かれ、乳首を震わされ、一番敏感な芽を抓まれ・・・。
そんな自分を目の当たりにされて、のだめは一気に絶頂へと駆け上がる。

「んんぅ・・・は・・あぁんっ!あっあっ先輩!も、だめっ許してぇ・・・。」
「のだめ、愛してる。」
「!!」

その言葉が合図のように、のだめは体を震わせた。

「あぁッ―――っ!!」

びくんと波打つ内壁に締め付けられた千秋は我慢できず、後を追うように登りつめた。

最後は、技巧とは縁のない、ただただ体と体の交わりだった。
千秋は達した後も、のだめの中に留まり続ける。
のだめの滑らかな体温を感じ、許されるならそのまま眠りについてしまいたい、
と己の本能が疼くのを感じた。

「のだめ・・?」

愛しい女は、弛緩しきった体で肺だけを大きくふるわせている。

「大丈夫か・・?」

「ン、だいじょぶデス・・。」


千秋は、己の後始末をすませるために、立ち上がった。
ベッドに戻るまでの間に、次にのだめに何と声をかけるべきか・・と思案する。
少しでも不安を取り除くために・・、どこまでも純粋で、寂しがりやな彼女のために・・。


「のだめ?」

「ハイ?」

「知ってるか?俺とお前の一番相性の好いところが、どこか?」

「・・ほぇ?ピアノ・・?、音楽・・デスか?息ピッタリデス・・。」

「ん、正解。でも・・、それと同着で・・」

千秋は、再びのだめに覆い被さり、その耳元でそっと囁く。


「こんなに相性の好いカラダは、全宇宙探したって見つからないよ。まさに、運命だ。」






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