のだめに触れる黒髪の男
千秋真一×野田恵


「のだめのところに楽譜忘れちゃった。取りに行くから先帰って。」

のだめの住むアパルトマンからだいぶ離れた頃、楽譜をピアノの上に置いたままだったことに気が付いた。
一緒に帰っていたヤスに別れを告げ、再び今歩いてきた道を走り出した。

本当はあの楽譜、今日必要なわけじゃない。
ただ、もう一度会ってのだめの顔を見たかった。二人きりで話したかったんだ。


今日はのだめの家へヤスと一緒に遊びに行った。
正式には、のだめの部屋じゃなくて「お隣さん」の部屋らしい。

「のだめの部屋は模様替えの途中で散らかっているから駄目デス。」

そんなことをのだめは呟いていた。
ヤスが少し困ったように笑っていたような気がするけれど、
僕はお土産を抱えながら、学校以外でののだめの生活が見れることにドキドキしていて、
その意味をあまり気にしていなかった。

招かれた部屋はきれいに整頓してあって、のだめは日本のお茶を入れてくれたり
ピアノを弾いてくれたりして僕たちをもてなしてくれた。
ヤスが一緒だったのは残念だったけど、途中でターニャも遊びに来てずっとヤスと二人で話していたから、
僕はのだめと二人でピアノを弾いたり話したりすることが出来て、楽しい時間を過ごすことができた。
ヤスとターニャは、いつからあんなに仲が良くなったんだろう…?

今日ののだめとの会話を頭の中で思い浮かべ、そして再び会えることに胸を弾ませながら
のだめの住むアパルトマンへ駆けていった。


もう一度、のだめが招待してくれた部屋の扉の前に立つ。
そっと忍び込んで現れたら、のだめ驚くかな。
でも、そんなこと子供っぽいことしない方がいいかな。
色々考えながらも、ぎゃぼっ、とか言いながら

「リュカ、びっくりしましたヨ!」

と微笑んでくれるのだめを思い浮べたら、
何だか嬉しくなって、どきどきしながら息を潜めて、扉をそおっと開けた。


扉の隙間から見えたのは、僕の見たことのないのだめ。
そして、のだめに触れる黒髪の男だった。

床にうつぶせになっていたのだめは男から逃げるように身を捩った。
男は這い出ようとした手をあっさりと掴んで、身体ごと引き寄せた。のだめの身体が僕の方に向けられる。
目を吸い寄せられたような気がした。
背を開けられたワンピースからは、肩が剥き出しになっていて、
その上ほとんど脚の付け根までたくし上げられていたから、もう服を着てる意味もなくなってる。
でも女の人のカラダとか、そういうのより、のだめの表情が気になった。
顔を真っ赤にして、泣きそうな、恥ずかしそうな、でもなんだか喜んでいるような、何だかよくわからない顔。
こんなのいつもののだめじゃない。

男の手が服の間から入れられると、体を震わせて何かを言った。
息を殺すようなごく小さな声。僕にはどこか外国の言葉みたいだってことしかわからない。
男がのだめの耳元で囁いた途端、もともと赤かった頬が熟れたりんごみたいになって、
のだめは必死な顔になった。小声ではあったけど口調は少し早く、訴えるように―――でもそれは男のキスに飲み込まれる。
男の顔はすぐには離れなくて、そのまま吸い付くようにのだめに被さった。挨拶なんかじゃない、恋人同士のキスだった。
白い手足を、男の下で魚みたいにばたつかせて、やがてのだめはあきらめたように男の背に腕を回した。
水みたいな音とくぐもった吐息が部屋中に充満する。
ときどき漏れるのだめの高い声は、さっきよりずっと大きく聞こえた。

キスしながら、男は脱げ掛かったワンピースを乱暴にずり降ろして、無造作に放り投げた。

男の下ののだめは下着だけの姿になってて、真っ白な肌がやけに目立つ。
でも顔だけは紅色に染まっていて。―――すごく、大人っぽく見えた。

のだめは体をゆっくりと撫でられると、
くすぐったそうに目を瞑って、息を閉じ込めている。
男はそのまま腰から背中へと手を沿わせて、右手が止まったかと思うと
ブラジャーがふわりと緩み、のだめの息が声に混じって漏れた。

床の上に仰向けにされて、もう抵抗もなくて、されるがままののだめ。
男の頭が下へと下りていく。その黒髪が白い肌の上を滑る。
のだめの胸が男の頭で隠されると、
ぴちゃ、と音がしてのだめの体はびくりと跳ねた。

僕はこんなところ見たくなかった。だけど、目を反らす事ができない。
大好きなのだめが、僕の知らない大人の男の手で、あんなに乱れている・・・。
いつもは本当に10歳も上なのかと思うほど、童顔で、子供っぽいのだめが、
あんな艶めかしい体で、あんなに切ない表情で、あんなにいやらしい声を出すなんて。

僕は自分の脈拍が上がり、下半身が疼くのを感じた。何だろう、この感じ・・・。

男は、のだめの大きくてきれいな形の胸をゆっくりと揉みしだいた。
親指で乳首を弾かれると、のだめはかわいい声を上げて腰を浮かせる。
胸をいじりながら、男の手がのだめの大切なところを下着越しに撫で上げる。
そして覆い隠しているものを全部剥ぎ取られ、足を大きく開いたのだめのそこは、
男の体が邪魔をして、僕には見えなかったけど、くちゅくちゅという音で、
のだめがすごく濡れていて、そこに指を入れられたのが分かった。

男はのだめのそこをいじりながら、耳元で何か囁いている。
・・・なんだか意地悪そうな言い方。
のだめはいやいやと言うようにして、首を横に振る。
そのとき、男の足の間から、のだめの大事な部分が見えた。
すごく濡れてる。そこはきらきらと光って溢れ出している。

すごい・・・。大人って・・・。

男は指を4本に増やし、激しく出し入れした。そうすると、
指の動きに合わせてのだめのそこからたくさんの水のようなものが。噴き出している。
のだめの声はだんだん大きくなり、体をよじっている。
そして、だんだん腰が浮いて、顎を突き上げ、つま先を伸ばしていく。
その瞬間、のだめの体は大きく痙攣し、床に沈みこんだ。

のだめはぐったりとしていて、けれど顔は上気してうっとりとしているように見えた。
男が指を抜くと、その先端からぽたぽたと雫が落ちる。
すり合わせている根元には絡むものがあって、彼はのだめに見せ付けるようにそれを自分でなめた。

そして再び、のだめの足を大きく開き、今度はその中心に顔をうずめた
のだめの声がまた高く上がる。
いやそうな声じゃない。
むしろ、喜んでいるような。

ひざの裏に手をかけて恥ずかしい格好をさせられているのだめ。
二人の体の隙間から、のだめのその部分が見えた。

…………どくん、と自分の中で何かが大きく脈打つのをリュカは感じていた。
紅くつやつやと光る、はじめて見る実際に目にした女の性器。
誰よりも大好きな、あののだめの、かわいらしいのだめの、女の部分。
サーモンピンクの亀裂の上に、薄い色素の毛が申し訳程度に飾られている。

リュカは口の中にたまる唾を、飲み込んだ。

彼が二言三言話しかけると、赤い顔ののだめは嬉しそうな顔をしてこくりと頷いた。
そして。
彼はのだめの女の部分に口付けた。

子猫がミルクを舐めるようなぴちゃぴちゃという音の合間に、ずず、っと啜るような音が聞こえる。
そのたび、のだめは体を揺らす。
頭を振り、高い声で彼への愛撫に答える。
大きくて温かい両の手は彼の黒髪を撫で、かき回し……。
せがむように、自分のそこへと押し付けるようにしている。

最初は逃げようとしてたのに、頭を振っていたのに、
ひどいことされながら、なんでそんなに嬉しそうにするんだろう。
いやじゃないの?こわくないの?
泣き叫んでほしかった。男の事を思い切り跳ね除けてほしかった。
そうしたら、ぼくは今すぐにでも飛び出せるのに。大事な君を守るために。

のだめは汗ばんだ肌を曝しながら、鼻にかかった声をあげていた。
男はぴくぴくと引きつる腰を押さえ込むように抱いている。
脚の間にある男の髪を、のだめの手が握り締めた。
水の音が早くなったのにあわせて、声が小刻みになり、一際高い声を上げて、のだめはぶるると身を震わせた。
男が口元を拭った指を舐めて、ベルトを外しながら、ズボンのポケットをさぐる。
何をしようとしているか、何となくわかった。

―――― やめて

横たわって、苦しそうに呼吸を繰り返すのだめを抱き上げて、男は短く何かを告げる。
のだめはとろけたような表情で微笑んで男の首に腕を回した。

―――― おねがいだから

開いた脚の間に、男の体が割り込んで

―――― いやだって 言ってよ

のしかかられた途端、のだめはまた甘い声を上げた。

水音はさっきより激しくなって、ますます僕の耳に響く。
男の首にはのだめの腕が更にしっかりと絡み付いていて、
男も同じようにのだめの腰をつかんで離そうとはしない。

その動きに合わせて2人の息が荒くなっていく。
のだめの声はまるで下から上へと押し出されるようにして出てくる。
また男に何かを囁かれてのだめは少し声を抑えようとしたけど、相変わらず大きく部屋中に響く。
それを楽しむように男はさっきよりのだめを強く突いた。

のだめの口が開き、何か言葉を生み出そうとしている。
読み取ろうと身を乗り出したとき、ふわっと柔らかいものが僕の顔を包んだ。
驚いて叫ぼうとするけど、口も塞がれている。

「し!黙って」

優しい声が耳元でささやく。
何も見えない中、夢中で何度も頷く。
床屋さんのタオルのように熱い掌。でも、それは僕の涙だったんだ。
ふわっと抱きかかえられそうになるけど、僕の体は動かない。
温かい指が、ドアノブを握り締める僕の指に重ねられる。
そうっとゆっくりとほどかれていく。

僕はのだめに会いたくて、のだめと話したくて、のだめを…。
なのにのだめは。
考えなければいけないことはたくさんある筈なのに、頭が痺れているみたいだ。
ふわふわとどこかへ運ばれながら、僕はただ涙を流し続けた。

手元のココアの湯気に、ちょっぴり部屋の中の油絵の具の匂いが混ざっていた。
好きな分だけと言われて、差し出された瓶から、たっぷりと砂糖を入れてよく混ぜて、
なのに、ちっとも飲む気になれなかった。

「落ち着いたかい、ぼうや?」

心配そうに尋ねるおじさんに頷いて返して、ぼくはまたカップに視線を戻す。
アトリエ(多分)に連れて行かれて、ココアを作って貰う間に、涙は収まった。
あれだけびっくりして、取り乱してたのがウソみたいに、今は何も感じない。
真っ白だった頭もだんだん冷えていって、少しずつ周りが見えるようになって、
はっと目の前のおじさんの顔を見上げた。

「ココア、ありがとう…えっと」
「長田でいいよ」
「ありがとう、ムッシュ長田」

どういたしまして、とにっこり笑ったムッシュ長田は、僕の膝にあったタオルを新しいのに取り替えて、
それきり部屋の隅の描きかけらしいキャンバスの前にいってしまった。
聞かれるかなと思っていた事には一切触れられなくって、少し安心しながら、息をつく。
絵筆は音を立てずに黙々と舞って、部屋中もしんと静まり返っていた。でも決して僕を拒んでるわけじゃない。
構いすぎないで、問い詰める事もしないで、ただここに置いてくれている。
沈黙がひどく心地よく思えて、ちょうどよく冷めたココアを一口、口に含む。
甘ったるさがいっぱいに広がったけど―――あたたかい。
胸の底から、何かが噴出してくる気がした。
じわと霞む目を代えてもらったタオルで抑えながら、僕は砂糖を入れすぎたココアのカップを握り締めていた。

いやらしく打ち付けている男の腰が持ち上がると、のだめの足をひじにかけ、
覆いかぶさるようにして、なおものだめをゆっくりと揺らす。

二人の体を繋いでいる部分が、リュカからは丸見えになっていた。
男のペニスが引かれ、抜け出そうになるとのだめは切なく鳴き、再び深く入り込めば鼻に掛かる甘い声を上げる。
白いものが二人の間であわ立って、荒い呼吸と共にいやらしく音を立てている。

……その時、リュカは自覚した。
自分の腰が前後に揺れ、張り出した壁部分に自分のものをこすり付けていた事を。

いけない……いけない事なのに。
マスターベーション中にのだめの顔を思い出しても、必死で打ち消して、わざと雑誌の女性たちの裸を見ては果てたのに。
同年代の友達で、もうセックスを済ませたやつだっている。
それに比べて自分は体の成長も遅く、ガールフレンドもいない。
好きなのはのだめで……。
そののだめが自分の知らない男に抱かれていて……。
のだめは自分の知らない女の顔をして、快楽に泣き、応えている。

嫌なはずなのに、飛び出していってのだめを奪いたいという気持ちもあったのに。
こんな風に自分は反応してしまっている。
リュカはかたくなった自分の雄をズボンの上から撫で、敏感な亀頭をこね回した。

罪悪感。
マスターベーションが?
人のセックスを覗いている事が?
それが、自分の大好きなのだめだから?

……全部だ。

「は……あっん、や!」

ひときわ高い声が上がると、二人が繋がっているところから、透明な何かが溢れた。
それに男がうめくような声を上げ、また何かのだめに……たぶん日本語で話しかけている。






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