千秋×のだめin大川
千秋真一×野田恵


「い…てて…」

グラグラと痛む頭をおさえつつ目を覚ますと、夜明けの光と知らない天井。
首だけ起こして辺りを見回し、ようやく状況がわかった。

福岡県大川の、のだめの実家。
昨日はのだめ父に干潟だのラーメン屋だの連れ回され、
帰ってくるなり浴びるように酒を飲まされ、そのままコタツで寝たんだった。
すぐ隣には、同じく酔いつぶれて放置されたのだめの寝顔。
他の家族はみんな自分の部屋に戻って寝ているようだ。

「なんつー薄情な一家だ…」

唸りながら、まだ起きたくはなくて何気なくのだめの寝顔を見つめる。
口は半開きでだらしない。でもまぁ、微笑ましくもあるか?

「むむぅ…ふおぉ…」

妙な寝言をつぶやきつつもぞもぞと肩までコタツ布団に入ると、
のだめは自分の足をオレの足にからめてきた。

…ほそいけど、やわらかい。

唐突に、一昨日抱きしめたのだめの感触を思い出してしまった。

まだ酔いが残っているんだろうか。体が熱くなってきた…
からまった足をゆっくり動かす。脚全体が密着していく。
のだめは昨夜試着した、ヨーコさんの新作ワンピースのままだ。
短めのスカートはめくれ上がっているようで、布の当たる感じはしない。
ふとももの間に脚を割りいれると、抱き枕よろしくギュッと挟み込んできた。

「全然起きないな…」

オレの中にイタズラ心がむくむくと湧きあがってくる。
いつも着がえを覗かれたり、逆セクハラ受けてるんだし、ちょっとぐらいいいか。
酔いのせいだからな、これは。
自分に言い訳をしてるような気がしないでもない。
認めたくもないけど、オレはそのとき初めて、のだめに欲情してしまっていた。

のだめのふとももに挟み込まれた脚をグッと押し上げると、
敏感な部分を圧迫されたのだめが小さく身じろぐ。

「うう〜…ん」

顔をしかめるが、またすぐにスヤスヤと子供みたいな寝顔に戻る。
ちょっと、かわいい…かも。
音を立てないように腕を伸ばすと、のだめの髪をすいてみる。やわらかい。
出会ってからの約2年、オレの中で「変態」でしかなかったのだめが、
一昨日抱きしめたとき「女の子」になった気がする。
華奢でやわらかい体も、はじめてかいだ髪の匂いも、イメージをくつがえすものだった。
こうして間近で寝顔を見るのも初めてだ。なんだか妙な気分だな…。

髪をすいていた手がおりていく。
うなじをひと撫でし、肩をなぞり、胸元に触れそうになって止まる。

「…やっぱり…やばいよな」

頭ではわかっている。わかっているんだけど…
のだめのあまりにも無防備な寝顔に、止められない衝動を感じてしまう。
もっと深くまで踏み込みたい。

そう思った瞬間、ほとんど無意識に手が動いていた。
オレの脚を挟み込んでいる隙間に…のだめの一番大事な場所に。
下着の上から、その部分に指をあてる。
のだめの反応はなく、いまだに安らかな寝息を立てている。
そうっと力を込めて指をしずめると、温かく柔らかな肉感がリアルに伝わってくる。
緊張と興奮でクラクラしてきた…これ以上は、やばい…!

押すことも引くこともできずに動けなくなったまま、
のだめの寝顔を見つめると、少しだけ口を尖らせているように見えた。
なんだか毒気を抜かれた気分になって、笑ってしまう。
何やってんだろうな…のだめ相手に。
そっと手を引き抜き、もう一度髪をすいてやる。

こんなに、触れたかったんだ。
もう自分の心に言い逃れはできないかもしれない。

敗北したような、でも妙に穏やかな気分。

「…たいしたやつだよ」

苦笑して、ごほうびのキスをやろうと顔を近づけた瞬間。

「う〜〜〜んっ」

のだめが唸りながら寝返りを打った。絡ませていた足もあっさり離される。
内心死ぬほどビビりながらオレが上半身を起こすと、
のだめは反対側にあった座布団を抱き込んでむにゃむにゃ言い始めた。

「フランスパン…そげん食べれん…よ…」
「おい、起きてるのか?」

まさかさっきまでのイタズラを覚えてないだろうな!

「固かとやったら…煮込んだらよか…」
「おい!」
「ふぁっ…ふぁい…せんぱいっ」

のだめはこっちを向いて起き上がろうとした途端、頭を抱えて座布団に沈んだ。
こいつも相当飲んでたからな。二日酔いが激しそうだ。

「何の夢見てたんだ?」
「フランスに留学してる夢デス…セーヌ川をコタツ船で下ったり…」

うつ伏せで顔をしかめたまま喋るのだめ。
この様子なら、さっきまでの事は記憶になさそうだな。ホッと胸を撫で下ろす。

「留学できるつもりでいるのか」
「留学しますケド…」

オレは思わず、はぁーっと大きなため息をついてしまう。

「おまえ…オレに負けてるようじゃコンセルヴァトワールなんか受からないぞ…」

「じゃあ……勝ちマス」

そうだ、上ってこい。もっと近づいてこい。もっと距離をつめてこい。

「さっさと帰って練習だ!」






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