嫉妬千秋リレー
千秋真一×野田恵


疲れた…今日もテオに呼び出され、マルレの事務所で「アルバイト」…いや、ボランティアか…。
手首がだるい…。ずっと机に向かって作業していたからだろうか、
目も疲労でぼんやりしている。
前みたいに徹夜にはならなかったが予定より遅くなってしまった。

あいつ、まだ飯待ってるかな…

冷蔵庫の中のものを思い出しながら、アパルトマンの階段を上る。
のだめの美味そうに食べる笑顔が浮かぶと、
その重い足取りは上るごとに不思議と軽くなっていく気がする。


メニューがまとまって、
足元に落としていた視線を前に向けようと顔を上げた。

―その瞬間、オレの目に飛込んできた光景―。

ゆっくりそいつの顔が離れていって

のだめを抱きしめて

耳元で何か囁いて…



足取りどころか全身が重くなるのを感じた。
わざと大きく靴音を鳴らして最後の一段を上がる。

「むきゃ、センパイおかえりなサイ」

「あ、おかえり、チアキ。じゃあノダメ、また明日ね」

そう言って帰ろうとするポールに、
オレは何も言わなかった。
それは腹が立ったから挨拶しなかったというよりも、
何をする気力もなくなった、という感じだった。

のだめの視線すら無視して部屋に入る。

「…センパイ……?」

いつもと違う様子に気を使っているらしいのだめが、
そう言いながらオレに抱きつこうとする。
反射的にその手を払い除けた。

「…オレ疲れてるから。自分の部屋帰って」

荷物をどさっとソファに投げるように置く。

「…何かあったんですカ…?」

ふざけんな。

「お前こそ何があったわけ?顔赤いけど」


オレは立ったままののだめをちらりと見てそう言うと、
荷物の横に腰かけた。

「何もありまセンよ」

「じゃあさっきのは何だよ」

のだめもそっと横に座ってくる。
いつもならこいつがいるときは控えている煙草を、
構わずポケットから取り出して火をつけた。

「さっきの…?」

肺に溜め込んだ煙を一気に吐き出すように息をついた。

オレはまだほとんど長さが変わっていない煙草を灰皿に押し付けると、
横にいるのだめに覆い被さって、顔の両脇に手をついた。

「ポールと何してた?」

「…何もしてまセンよ」

のだめは目をそらしながら、そう言った。






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