ムッツリカズオ
千秋真一×野田恵


「センパイ、お湯はれましたヨー」
「オレまだ明日の準備あるし、お前先入って」

キュ、と蛇口をひねる音とバスルームから響くのだめの声。
オレが机の上の楽譜を整理しながらそれに答えると、
了解デス、と返事が聞こえた。

夜になってやっと訪れた静かな時間…。
もう一度見直しておこうかと明日合わせる曲の楽譜を手にとったとき、

「センパーイ!!」


………無視だ無視。

「助けてくだサイー!」

………。

- - - - - - - - -

「…何?」

あ…。
のだめの背中を見て、呼びつけられた理由はすぐ分かった。

「上げるのはムリでも下ろすのなら自分で出来るかなーと思ったんですケド」

それはワンピースのファスナー。

「見事撃沈デシた…」

例え自分で手が届いても掴みにくいであろう小さなつまみ。
1人で着るのは難しい。………………ヨーコ…。

「…何で風呂場まで呼んだ?」

片手で襟元を押さえてファスナーを下ろす。

「えー…だってリビングまで頼みに行ったら間違いなくそこでするじゃないデスか」
「間違いなくって何だ!!」

ワンピースの落ち着いた赤の中から白い肌が広がっていく。

「センパイならきっと下ろしてる間にムラムラと…」

お前みたいな変態と一緒にすんな!!
と言い返すつもりが。

「…センパイ?…ムキャ!ちょっ…」

のだめの肩に手を置いて、服を軽く押さえたままその手を横へと滑らせた。
こうやって「服を脱がす」となると新鮮な感じというか…少し緊張する。
いつもベッドに入っても、相手の体に触れ合って、
お互いを求めあううちに裸になってしまうから。

「ん………!!」

腕、肘、手首…掌を肌にそわせて撫でていく。
指先が袖口から抜けると、ぱさりとワンピースが床に落ちた。
下着姿ののだめから手を離す。

「あの…のだめは脱がせて下サイと言った覚えは…聞いてます?」

オレが自分のシャツのボタンを外すのに気をとられて返事をしないでいると、
ずっと背中を向けていたのだめがくるりと体を反した。

「ぎゃぼっ、何でセンパイも脱いでんデスか!?…まさか…!だっ、脱衣所は嫌デス!!」
「するか!オレも入るんだよ風呂」
「…一緒にデスか?」
「嫌?」
「嫌じゃないですケド……」

オレがベルトに手をかけようとしたとき、
妙な視線がある一点に向けられているのを感じた。

「何まじまじと見てんだ変態!!」
「ど、どうぞお構いなく続きを…!!」

ゴッ

「ふぎゃ!!」
「お前こそ下着のまま風呂入る気か!?さっさと脱げよ!」
「"脱げよ"……変態カズオ…」
「うるせー早く入れ!!」

- - - - - - - - -

バスルームの戸を開けると花の香りが体を包んだ。
泡風呂にしたのか…。

オレの知らぬ間に何故か脱衣所の棚に増えていく入浴剤。
一つ一つ小さな袋に入っていて、それぞれ形や色が違う。
以前その棚を開けるとそれらが山積みになっていて、
何でこんなにあるんだと聞いたら
お店にある全種類試してみたいんデス、と言っていた。

「ほわぉ…癒されマスね」

目を瞑ってうっとりしているのだめの名前を呼ぶ。

「頭、洗ってやるから座れ」

そう言ってバスタブの縁を指差す。
のだめが扉の方を向いてそこに腰かけると、
オレは泡だらけの湯に足を入れて湯船の中に立った。
頭をシャワーで濡らしてからシャンプーを手に取り、のだめの髪を洗っていく。

「はぅん…気持ちイイです…久しぶりデスね、シャンプーしてもらうの…」

確かに懐かしいな…
お互い服を着たままのだめを風呂場に突っ込んで
シャンプーをしていたあの頃を思い出すと、
今2人とも裸であることが急に恥ずかしくなる。

「流すぞ」

泡で真っ白になった頭を流して、壁に吊してあるスポンジを取った。
ソープをつけて何回か握るとたちまち泡が膨らんでいく。
そっと背中に滑らせた。

「…くすぐったいデス」

背中が終わると次は前に手を回して首から徐々に下へスポンジを動かす。
胸に辿り着くとのだめは小さく体を震わせた。

「あ……っん……センパイ…」
「何?」

空いている左手で左の膨らみを撫で回しながら耳元に近付いて続けた。

「俺は洗ってるだけなんだけど?」
「う……ムッツリ……あっ」

泡に包まれていても固くなっているのが分かるそこを親指で弾いた。
転がすように――段々のだめの呼吸が荒くなる。

胸…腰…太股…
まるでのだめの体の感触を手に覚えさせるように。
太股に置いた手を内側へと移すときゅっと体をこわばらせた。

「足…開いて」

後ろから覗くと、のだめは顔を真っ赤にさせている。
―多分温度のせいだけじゃない。
泡のついた手で最も感じる部分に触れた。

「あ、っ…はぁ…ああぁっ!」

くちゅくちゅという水音とのだめの声が風呂場で響くのがやけにいやらしくて……。

「のだめ…すごい濡れてる」
「や…ぁ…、ン……!!」

オレは一旦そこから手を離すとシャワーを取った。
洗っていたときと同じように、背中から順番にシャワーを当てて泡を流していく。
そして最後は―――

「きゃ、あっあぁ!!んんっ…!」

あまりの刺激にとっさに足を閉じようとするのを片手でとめる。

「泡ついてるから」

オレはそっと足を開かせるとシャワーの一番勢いが強い中心を、
まだ愛撫の余韻が残る敏感なところに当てた。

「はあぁ…っ!!あ、あっ…おかし…くなりそ、うデスっ」

のだめの手がオレの腕を強く掴む。

「し、んいちく…も…の…だめ…っ!!」

腕を握る手に更に強く力が入った後、
のだめの体がぐったりと持たれかかってきた。
片腕でのだめを抱えながら、シャワーをとめて元の位置に戻した。

- - - - - - - - -

「センパイは変態デス」

湯船の中で、オレの脚と腕の間にすっぽりおさまったのだめが呟いた。

「シャワープレイなんて…」
「プレイって言うな…でも気持ち良かっただろ?」
「まぁ…そうですケド……」
「けど?」

のだめは体を縮こまさせて寄って来て

「のだめは…しんいちくんの指の方が…いいデス…」

そう言って頬を赤らめるのだめが愛しくて、膝ごと包みこんで抱き締めた。
その頬にキスをして耳元で囁く。

「ベッドにはシャワーついてないから」
「………ムッツリカズオ…」


そしてバスルームを出た。

バスルームのドアを閉めて電気を消した。
棚から大きめのバスタオルを取り出して振り向くと――
体をほんのり紅く染めて髪の毛から雫を滴らせている、普段とは違うのだめがいた。
伏せ目と濡れた唇が色っぽくて――。
栗色の毛先から落ちた一滴が胸元を伝うのを見て、ドキッとして我に返る。
オレはなんとなく惜しい気持ちを抑え込むようにタオルを広げてのだめの頭に被せた。

「うきゅきゅ、フカフカです♪」

柔らかい生地の中で心地よさそうに笑っている。
のだめが頭をわしわしとふいている間に、自分の分のタオルを取った。

「ふぅーースッキリしましたネ〜」

…スッキリ………わざと言ってんのかこいつ………

「あ…センパイ、入れちゃったんデスか…」

体にバスタオルを巻いたのだめが、洗濯機を覗き込みながら言った。

「何を?」
「……下着」

着たってすぐに脱ぐのに

「要らないだろ?」
「………。今日のカズオはいつもに増していやらしいデス…」
「誰がカズオだ…」
「発情期デスか?」
「殺すぞ」
「がぼーーー!」

首にかけていたフェイスタオルで顔を覆って、
脱衣所から引きずり出したのだめをベッドの上に放り投げた。
顔の上にタオルを乗せたまま仰向けになって、乱れた呼吸を繰り返している。

「…はぁ……息止まるかと思いマシ………ん…」

タオルをはぎとって起き上がろうとするのを制して、唇を塞いだ。
深く口付けながら肩に触れる。
泡がついているときとはまた違う滑らかな肌。ほのかにする入浴剤の香り。
首筋に唇を這わせるとのだめは甘い声を上げた。

「ふ…ぁんセンパ…」

胸のところでとめられたバスタオルを開くと白い肌が露になる。
今日は月がとくに明るくて、照らされる体が本当に綺麗で。

――のだめのそんな顔も、こんな体も、誰にも見せたくない、と思った。

その体の全てを手に入れたい衝動が沸き上がる。

「あっ…ぁ…んっ」

すでに尖っている先端を口に含んで舌先で弄ぶ。
谷間から脇腹へ大きく擽るように撫で下ろすと、身をよじって逃れようとする。

逃がさねー…

過敏になったそこを軽く吸ってから唇を離すと、
畳まれて横を向いている膝を起こし、ゆっくりと割る。

「指でして欲しかったんだろ…」
「はあっ…あん…っ……えっち…」

その場所はすでに愛液で溢れていた。
シャワーで攻めたてたあの突起を何度も下から上へさする。

「あっあ…!!はぁっんっ」

体の下に敷いたままのバスタオルに染み込んでいく程…こんなに濡らして――。
指を立てると簡単に呑み込まれていった。

「すげー…熱い…のだめの中」

挿し入れては抜き出して…ぐちゅっくちゅ…と繰り返される卑猥な音。
だんだん指の動きを速めるのに伴ってその水音が増していく。

「聞こえる?」
「いっ…あっ、い…じわ…んんっ…」

ずっと目を瞑っていたのだめが、潤んだ目でオレを見る。
やばい…オレも限界…

ゴムを取ろうと引き出しに手をかけた。

ベッドに入る前はあんなに大口叩いてたくせに。
今はこんなに淫らな表情で、オレの余裕を無意識のうちに奪っていく。


「入れるぞ…」

枕をぎゅっと握り締めている手を解いて、指を絡ませあう。
そっとあてがって、徐々に腰を前へと進めていく。

「ふ…ぁああ…は…あん……!」

のだめは下から押し出されるように息を吐き出して、また大きく吸った。
指では届かなかった深いところまで徐々に入れていく。
中の温かさが全身に巡っていく感覚。
繋がったままキスを交わしてから、ゆっくりと引き抜くと、今度は一気に貫いた。

「あっ、あ!ん、ぅんっ」

奥まで、のだめの体を中から征服するように。
動く腰を押さえてもっと激しく。
のだめの声がますます荒ぶってくるなか、
オレは動きを止めてまとわりつくそこから抜き取った。

「はぁ…う、ん…セ、ンパイ…?」
「体起こして…」

背中に手を回して起き上がらせる。

「ここ、座って」

のだめがオレの太股を跨ぎ、そろりと腰を落としていく。

「は…ぁあ……」

柔らかいのだめに全てを覆われると、下から軽く突き上げた。
漏れたのだめの声がオレのすぐ耳元で響く。

「ぁ……はぁん…っ」
「掴まれよ…」

オレの首を腕で囲み、しっかりと抱きついたのを確認して、
軽く…だんだん強く奥を突いた。

「あっ、あ、ぁ…ん、んっ!!」
「のだめ…やらしい……すげー腰揺れてる」
「やぁ…あ、あ」
「いいから、そのまま…動いて」
「ん…ふ、ぁ…あっ、はぁぁぁんっ」

首に回された腕にぐっと力がこもる。

「も…もう、イきそ、う…デス…っ」
「ん…いいよ、イって」

そう言うと、のだめは高い声を上げて達した。
きつい……ぎゅっと中が締まる。
力が抜けて崩れそうになるのだめを寝かせると、
また最初の体位になって奥まで突くと、オレも絶頂を迎えた。

ひくひくと脈打つそこから引き抜いて、液にまみれたゴムを捨てた。
息を荒げるのだめの隣にどさっと横たわる。

「はぁ……スッキリ…デスね…」
「……脱衣所で言ってたの…わざとかよ…」
「ぎゃは…粘着デスね……しんいちくん…」
「気持ちよかった?」
「よくないって言わせないようなえっちするクセに………すごく気持ち良かったデスよ…」
「うん…オレも」
「あ…また汗かいちゃいマシタね…」
「……もっかいシャワーするか?」
「…そデスね」

- - - - - - - - - -

「…センパイ」
「何?」
「もし、『よくない』って答えたらどうするんデスか?」
「……いいって言うまで逃がさない」
「………やっぱり粘着のムッツリですネ…」

オレ達はさっきとは違う入浴剤の香りがする湯の中で、深くキスをした。






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