千秋真一×野田恵
![]() 「おはようございマス!!」 「……何だその荷物は…」 「『プリごろ太DVDボックス・スペシャルエディション』デス!ぎゃは」 「…なんでうちに持ってくるんだ」 「なんでって、観ようと思って」 「自分の部屋で見ればいいだろ!?」 「だってこっちのテレビの方が大きいデスしー」 「帰れ!」 「なっ…!先輩、昨日のこと覚えてないんデスか!?」 「…何だよ昨日のことって」 「酔った勢いでのだめにあんなことやこんなこと…」 昨日はオケのみんなと飲んで……あれ… どうやって帰ってきたんだっけ…覚えてない… でも朝起きたときは服着たままだったし…… 『のだめにあんなことやこんなこと』って何だ……何したんだオレ…!? 「酔っ払って帰ってきて、部屋に入るなり倒れこんできて 玄関で寝ちゃいそうになったんデス。で、ベッドまで連れていこうと思って こうやって先輩の腕をのだめの肩に回して抱えようとしたら、 その手でいきなりおっぱい触るわ、ベッドに引きずり込もうとするわ… まだあるんデス!!それからー」 「も、もういい!!」 「ホントに大変だったんデスよ!?」 「……悪かった…」 「なんとか腕から抜け出せたから良かったものの…先輩あと一歩で犯罪者になるとこでしたヨ」 「…犯罪者……いや、本当にごめん…」 「というワケなんで!テレビ、いいデスよネ?」 「………どうぞ…」 なんてことしたんだオレは… 昨晩晒した醜態と、これからとことん弱味につけられることを思うと 恥ずかしいやら申し訳ないやら、情けない気持ちでいっぱいになった。 仕方ない、今日は言うこと聞くか…。 - - - - - - - - - 「じゃ、ちょっと仕事行くから」 「はーい」 「6時には帰るし…」 「いってらっしゃーい」 のだめはこちらをちらりとも見ることなく、テレビを観たまま手を振った。 いつもなら「いってらっしゃいのキスー!」とか言って飛んでくるくせに…この扱い…。 もうこのまま飯もほったらかしでいいかな…と思うも、 昨日のことがあってそんなことはできない。 - - - - - - - - - 片手にスーパーの袋を下げながらアパルトマンの階段を昇る。 腕時計を見るともう6時などとうに過ぎて、7時になろうかというところだった。 結構遅くなったな…。 「ただいま」 「ふぉぉぉぉーー!!後ろデスよごろ太ーー!!」 ……まさかずっと観てたのか…!? 「のだめ」 「あ、先輩おかえりなサイ」 今度はこちらを向いて笑顔を見せた――が、すぐにテレビの方へ向き直った。 …もういい。今日は仕方ない。 - - - - - - - - - 「ごちそうさまデシターー!!さて、ごろ太ごろ太♪」 こいつ……飯だけはしっかり食いやがって…。 オレは何だ?こいつの召し使いか?飼い主か? 『あと一歩で犯罪者になるとこでしたヨ』 犯罪者……少しずつ込み上げてきていた怒りも、のだめのあの一言でかき消されてしまった。 そう…昨晩のことはどう比べたってオレが悪い。 「うう…プリリン……先輩、ティッシュくだサイ…」 「むきゃーーカズオしゅてき〜〜!!先輩、お茶くだサイ!」 「先輩ー、パジャマ取ってくだサイ、観終わったらすぐ寝るのでー」 オレが悪い――けど。 「…おい……いい加減にしろよ」 「わかってマスよ」 それがわかってる態度か――――!! パジャマを投げつけてやろうとする手を止めて、テレビに食らいつくのだめの後ろに座った。 自分の太腿の上にそのチェックのパジャマを乗せて、 目の前のファスナーを下ろす。 「あ!ちょっ、今いいとこなんデスよ…」 「別に観たままでいいけど」 「もー昨日のこと忘れたんデスか…!?」 「十分仕返ししただろ」 いや…のだめのワガママくらいでチャラにならないことは分かっている。 でも。 ワンピースが肩から落ちて、白い背中が顕になる。 でもまだのだめの視線は画面に向けられたまま。 肩甲骨や背骨のラインを、わざとくすぐるように撫でた。 「…っ!もう…やめ……先輩…!」 テレビの音を気にしてか、声が大きくならないように必死にこらえるのだめ。 首筋に唇を這わせながら、前に手を回してブラの刺繍をなぞる。 その柔らかな膨らみの、ある一点でのだめの身体がぴくりと震えた。 ホックを外して、直接その突起に触れる。 さすがに怒ってこっちを向くかと思ったが、よほどいい場面らしくて… 身体は反応しても意識はまだ画面の上―――。 「あ、ん…―!!はぁ…」 オレの手をどかそうと動かす両腕を捕まえて、片腕で抱え込んだ。 そうしてから、腰のところで止まっているワンピースの中へ手を伸ばした。 もうそこは溶けるほどに熱くて… 「も…っ、ホントに……あ、やめてくださ…!」 抵抗しようともがくのも、やめてと言いながら感じてるのも… 何もかもが、そうやってオレを昂らせる。 つまらない嫉妬心と独占欲、 湧き上がる罪悪感と征服欲。 逃げようとしているのか、それとも求めているからか、 「のだめ、腰浮いてる」 「や…ぁ……っ!あ、はぁ……ん…!」 「オレがいないとき…自分でこうやってしてた?」 そう耳元で囁いて指を突き立てた。 もう、のだめの視線は画面ではなく天井を向いている。 抜き挿しを繰り返すと、それに合わせて甘い声が跳ねる。 「あっ、あ、はぁ…っ、セン……ん、あ―――!!」 一瞬のだめの身体が強ばって、オレにもたれかかってくる。 気づくとテレビの画面は真っ暗になっていた。 - - - - - - - - 「…何で朝から観てるんだ……」 「あ、おはようございマス!」 珍しくオレより早く起きたと思ったら…。 「だって昨日せっかく観てたのに、ムッツリな方のカズオが邪魔したのでー」 「邪魔されたくなかったら自分の巣へ帰れ!」 「ムキー!スケベ!一昨日のこと忘れましたか!?」 「うるせーー!!もう今日は飯抜き!ずっと観てろバカ」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |