千秋真一×野田恵
![]() 「…お前、本当に納豆でいいのか?誕生日……」 「ハイ。っていうか納豆以上に欲しいものがなくて…」 「………」 「…納豆以外って言われるとー…………あ!」 暫く腕を組んで考え込んでいたのだめが、いかにも"閃いた!"という顔をした。 「してくだサイ!」 固まった。 シて……? 今まで数え切れないほど同じ夜を過ごしてきて… なのに今更……それも誕生日プレゼントとして…? しかも納豆以下ってどういうことだ。 キスは散々迫ってくるくせに「そういうとき」は今でも恥ずかしがるのだめが、 自分から…こんな直球で?まぁ積極的なのだめもちょっと魅力的… いやいやそうじゃなくて… 「先輩!聞いてマスか!?」 「えっ?」 「先輩、あの、どうしたんデスか?…顔にやけてますヨ…」 「え、あ、いや、あの………」 「…やらしいこと考えてたんですか?…ムッツリ」 「ち、違う!えっと、で、何だっけ」 「もー…だからー、告白してください!」 「…は?」 「『先輩の愛の言葉』をプレゼントしてくだサイv」 「…断る」 「なっ、何でもいいって言ったじゃないデスか!!」 「で、納豆いくつ欲しいって?」 「ぎゃぼっ、話そらさないでくだサイ!!…じゃあ告白しなかったら先輩も納豆食べるっていうのは」 「はぁ!?何でそうなる!!」 「告白は一言言えば済みますが、納豆は後味強いデスよ」 「うっ…」 「誕生日までに決めておいてくださいネ♪楽しみにしてマス!」 そう言い残すと、呆然と立ち尽くすオレに背を向け、 スキップでピアノのほうへ走っていった。 それからのだめの誕生日までの間、 四六時中オレの頭の中で、納豆と告白の天秤が揺れ動いていた。 「好き」だとか「愛してる」だとか、気持ちはもちろんある。普段だって、ベッドの中だって。 …でも改めて言葉にして、面と向かって言うなんて………無理だ、できねー…。 …とはいえ納豆は絶対に嫌だ……。 当日――― 「むきゃあああーー!!すごいデス!!」 のだめが学校に行ってから、すぐ買い物に出かけた。 晩飯の材料と、ちょっと高めのワインとチーズ。 「かんぱーい!!」 「誕生日、おめでとう」 「ありがとうございマス!…で、それから?」 「…それから?」 「もうひとつ、言うことあるでショ?」 …やっぱり忘れてるわけねーよな… オレはもう逃げ場がないことを悟って、覚悟を決めた。 「…目、瞑れ」 のだめは言われたとおりに瞼をゆっくりと閉じた。 椅子から立ち上がり、目を閉じたままののだめの後ろへ回る。 背中からのだめの身体を抱きしめて、耳元で囁いた。 「…愛してる、のだめ」 「ふぉぉ………あ、あの、あの…あ、ありがとうございマス」 「…何だよ。言われて動揺するくらいなら言わせんな」 「…あの、すごく嬉しいデス……のだめも愛してマス」 「……お前の『愛してる』は聞きすぎて信憑性に欠けるな」 「うきゅきゅ…照れ屋さんですネ」 「うるせー…」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |