指フェラ
千秋真一×野田恵


「先輩ただいまーデス!!」
「うお、あぶなっ」

千秋はぶつかってきたのだめの衝撃で、包丁を滑らせてしまった。

「いっ……!」

刃が指をすべり、冷たい感覚が走る。

「……おまえなあ、料理してるところに後ろから体当たりしてくるんじゃねえ!!」
「ぎゃぼーー!」

指の側面についた切り傷はぷつっと血の玉を作り、そのままゆっくりと垂れていく。
それを見たのだめは一瞬にして顔色を変えた。

「先輩!! 血!!」
「あ、オイ……」

がしっとその手を掴んだのだめは、勢い自分の口元にもって行く。
そして千秋がとめる間もなく、その傷の付いた指はのだめの口腔に飲まれていた。

「やめっ……! そんなことしなくていいから!」
「……ゴメンなはい……あうー」

人差し指を口に含んだまま、のだめがそうつぶやく。

「まったく……取り返しのつかない怪我なんてしたらどうしてくれる」
「はうぅ……」
「おまえ、ピアニストならわかるだろ、指が大事だって事」

オレだってピアノ弾くし、指揮するのに指先の動きだって大事なのだと千秋が言うと、のだめはますますしゅんとなった。
おずおずと伸ばされる舌が唇の中でうごめいている。
傷口を舌でなぞられることで、ぴりっとしみるような感覚が走る。
のだめはその千秋の様子を見て指をくわえるのをやめ、流れた血が溜まっている指の間に舌を這わせた。

「あう、血が……」
「もういいから」

いい、と言いながら手を引っ込めない。
のだめにされるままに手指を舐められていく。
流れる赤い血の筋を上目遣いのその表情……千秋の心臓の鼓動は一拍高く響いた

まるで……あれをされてるときみたいだ。

のだめはそういうつもりはないんだろうが、一度そう思ってしまうと考えはとめられない。
目を細めて舌を伸ばし、時に指を含んでぴちゃぴちゃと音を漏らす。
赤く温かな舌が自分の手や指の皮膚の上を這っていく間隔に、千秋は少し身震いした。

いや……見つめているとだんだん顔つきが変わってきたか……?
そんな想像を軽い咳払いで何度かやり過ごしたが、のだめにも伝わったのか目をうっとりと細め始めてきた。

「なんか……」
「なに?」
「なんかとてもいけない気持ちデス……先輩の血を舐めてるなんて……」

千秋はされるままだった指を動かし、のだめの口腔をくすぐるように撫でた。

「はむ……らめぇ」
「続けて……」
「傷、ひたくなひれすか」
「大丈夫……」

のだめはそのまま素直に続けた。
次第に、傷口を癒そうとする舌の動きが、明らかに愛撫の体裁になってきている。
指と指の付け根の間を入念に舐められると、千秋は溜息をつき、シンクに寄りかかった。
二本そろえられた指。
あたかも千秋自身を口で愛撫しているかのように、その根元から先端へと何度ものだめの顔が揺れる。

「……おい」
「先輩、なんでおっきくなってますか……?」

不意に伸びたのだめの手が、体の中心に触れてもぞもぞと動くのを感じると、千秋は小さく溜息を漏らした。
触られたからだけでない熱を感じると、のだめも自分の体の奥が熱くなるのを感じた。
少しだけ頭を擡げはじめただろうそれが、手のひらの中で脈を打ち始める。
ぴくり、と動くのがわかると、のだめは我慢できなかった。
千秋の指をくわえ、舐めている状態でスウェットのウエストゴムから片手を差し込む。
そして、ボクサーパンツの上から形をなぞるように指を這わせた。

千秋の前髪が揺れ、目が閉じられるのが見えた。
細く長い千秋の指はのだめの口腔で舌をこね回し、くすぐる。
弱い上あごも、舌の根元も。
深いキスの時のような舌への刺激と、長いものを舐めしゃぶっているあの行為にも似た、精神的に征服されているような。
でも、実際にそのものは自分の手の平の中にあり、脈打っている。
……とても不思議な感覚に、のだめも捕らわれて溢れてくるのを感じていた。

「先輩、座って……」

千秋は黙ったまま、キッチンの脇のスツールを引き寄せてそこへ腰掛けた。
はいている物を下げ、もどかしく片足だけ抜く。
のだめはその間、千秋のシャツのボタンをはずしながら、唇にキスをした。
そしてそのまますとんと千秋の開いた足の間に両膝を付き、正座する。

「……っ……っぁ!」
「んく……ん……」

ゆるゆるとやわらかい感触がまとわり付いたかと思うと、急激に吸い付かれ、千秋は思わず声を漏らした。
薄目で見下ろすと、のだめと目が合う。
のだめはふ、と笑うと、見せ付けるように横から千秋を咥えた。
指先は括れの段差を優しくなぞり、時々爪で突付くように引っかく。
指とは比べられないほどの大きさと太さが、ぴく、と揺れるたびに硬度を増していく。

グロテスクとさえ思えたものが、今は愛しい気持ちでいっぱいだ。
別の生き物のように跳ねるのも、少し苦いような不思議な味も。
千秋の体の一部だと思うと、愛しくてたまらなくなる。
……そして、これが自分の中に入ってくるのだと思うと…………。
のだめはその瞬間を想像して身震いし、突き出すような格好になっている腰を左右に振った。

「んっ……しんいちくん、のだめ……」
「……おい、ゴムがないからここじゃ」
「とってきます……!」

すっと立ち上がったのだめはそう言うや否やキッチンを出て行った。
二人でベッドへ移動してそこですればいいのに……。
千秋がそんなことを考えていると、小走りでのだめが帰ってくる。

「どぞ……」
「ん……サンキュ」

手渡されたパッケージの封を開け、千秋は準備を始めた。

「移動してベッドで、っておまえ考えないか、ふつー」
「あ……あ、そうデスよね……」

再び千秋の前に正座したのだめは、千秋の指先をじっと見つめている。
そして、我慢できないのか指先で亀頭をくるくると撫で始めた。

「そんなにすぐに欲しいわけ? そういう思考が働かないくらい」
「ぎゃぼ、あの、あっ、あのあの……」

恥ずかしそうにいっそう顔を赤らめて、目を泳がせてみせるのに、指先の動きは止まらずにいる。
かがんで顔を寄せ、これが欲しい? と千秋が囁くと、のだめは黙って頷いた。

「……ほら、来いよ。立って……」

片足を上げる格好で、千秋はのだめを自分の上に跨るように誘った。

「こんなに?」
「あう、あ、だって……」

ショーツの片側だけリボンを解き、指をしのばせるともうそこは滴るほど潤っていた。
わざと音を立ててかき混ぜ、小さな突起を震わせると、のだめは千秋にしがみついて、いやいやと首を振る。
もうすっかりとろとろの、熱い部分。
待ちわびて、ひくひくと蠢いているところに自分をあてがうと、千秋は支えていたのだめの腰を一気に下ろした。

「はう!! あぁん!!」

勢いよく入り込んだそれはのだめの内壁を強く擦りあげ、一気に坂道の頂点の手前まで連れて行った。
自分の中の自分でないものの存在感を強く感じ、のだめは仰け反って体をふるわせる。

「すご……あ、きつ……っ」

それにあわせてぎゅっと締まる感覚に千秋は唇をかんだ。
根元かららせん状に締め上げられ、吸い込まれるような感覚に、背筋にぞくっと何かがが走る。
ただ入れただけなのに。
それだけなのにこんなにも……。
千秋は深く息をついて背筋を駆け上がろうとする快楽をやり過ごした。

そして静かにのだめを揺らし始めた。

「だ、っめ……あ、足が、浮いてるから……」
「から、何?」
「や、やぁ……ふ、深い……デス、いきなり……んくぅん」
「深いほうがいいんだろ……」
「や、あん……でも、だって……あっ、ああ!」
「当たってる、奥……わかるか?」

のだめはこくこくと何度も頷く。
突き上げる体のゆれと共に、目尻から涙がこぼれていく。
自分の重みを自分で支える場所のないのだめは、千秋に体重を預けるしかない。
そして、その自分の重みで、先ほどまで愛しく愛撫していた千秋の物を奥の行き止まりへと導いているのだ。
開いた唇からは、絶えず甘い声があがり、その中で蠢いている赤い舌が見える。
……自分の血を舐めた赤い舌が蠢いている。
千秋は少々乱暴にキスをして、舌をねじ込んだ。
微かに感じる塩味と独特の鼻に抜ける香り……のだめの舌の上に残る血の味を二人は共有した。

「胸、見せて」

引きちぎらんばかりの勢いでワンピースの前ボタンを外し、ストラップと共に肩を抜く。
ぷるん、と飛び出した真っ白な乳房の頂は、まるでそこへの口付けを待っているようにつんと上向いていた。
迷いもなく口に含むと、のだめは高い声と共に千秋を締め付けてくる。

「やっ、ああ、だめ、だめぇ!」

千秋は乳首を舌で転がし、ちゅっと吸い、それを左へ右へと繰り返していく。
ちりちりとはじけそうな電流が、刺激を受ける胸の突端と、こつこつと突き上げられている自分の中の一番奥を結ぶ。
強い強い、頭がくらくらするような快楽が体中を満たして、のだめは体を捩じらせて悶えた。

「ほんとに、だめ・・・ね、せんぱい」
「なんで……」
「きもち、いいんだも……っちゃ、う」
「なに?」
「むね、いっちゃう、から……ダメ……」
「……いけよ」
「や……あっっ!!」

千秋は優しく、けれど的確に追い詰めるような強さで、のだめの両の乳首をつまみ、弾いた。

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「きず……大丈夫みたいですね」
「お湯使って温まってたから、血が多かったんだろ」
「でも、あとでちゃんと消毒してばんそうこ、デスよ」
「うん」

スツールの上で繋がったまま息を整える。
それにしてもひどい格好だ、と千秋はサイドボードのガラスに微かに映る自分たちの姿を見てぎょっとした。
のだめの腰の辺りでたまっているスカートと、ホックの外れていない状態のブラ。
ゆれているのだめの足のふくらはぎ辺りに引っかかっている、レースのショーツ。
自分といえば、はだけているシャツと、片足だけ抜けていないパンツとスウェット。

「おい、おろすぞ」
「あ、んんっ」

千秋は抱きしめたのだめの体を傾け、足をつかせるようにしながら自分を引き抜いた。
のだめは力なく膝から落ち、ぺたりとしゃがみこんでしまう。
目の前では、千秋がコンドームを外しているところだった。

「ほわ……先輩、いっぱいデスね」
「……見てんじゃねえ」

吐き出した物を包み込んでいるゴムを外すが、近くにティッシュがない。
千秋はそれをキッチンペーパーにくるもうとした。
ふと気づけば、興味津々といった眼差しで、その一部始終を見つめているのだめがいる

「だから見んな……」
「えー、いいじゃないですか」
「……まさかおまえ、こんなの集めてないよな? まさかそこまでいかれた変態じゃないよな?」

「ほわぉ……!」

「……『なるほどいいアイデア』みたいな顔してんじゃねー!!」
「ぎゃぼー!! のだめ何もそんなこと考えてないデスよーー!!」
「そんなことしたら本気で別れるからな!! 変態!!」

まだ腰の立たないのだめを置き去りにして、千秋は薬箱を取りに隣の部屋へ向かった。






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