千秋真一×野田恵
![]() パリの街は夕焼けにつつまれ、あちこちの窓からは温かな夕飯の匂いが立ちのぼってきていた。 「はぁ…さすがに疲れたな…」 千秋真一は重い体をひきずってアパートに帰ってきたところだった。 オケの経理やら楽譜写しやら、また雑務をやらされ3日も帰れなかったのだ。 のだめは寂しがっていただろうか……ちゃんとしたもん食ってただろうか…… 待っているであろう恋人の事を考えながら階段を上ろうとした時、降りてきたターニャと鉢合わせた。 「あら、千秋。久しぶりじゃな〜い!そんなにオケが忙しいの?」 「…ああ、まぁ」 適当に相槌を打って、それじゃ、と部屋に上がろうとする千秋をターニャが呼びとめる。 「のだめならフランクの部屋よ!この3日入り浸ってるんだから。気をつけた方がい・い・か・も・よ」 ニヤーっと笑って出掛けていくターニャに、千秋はため息をついた。 どうせ漫画やアニメを見てるだけだ。オタクの集まりのドコに気をつけろって言うんだか… 内心面白くはないが、のだめが浮気など絶対にしない確信はあった。自分にベタ惚れなのだから(うぬぼれ)。 部屋に入り、スーツケースを下ろすとソファに沈むように腰掛ける。 目を瞑り背もたれに体を預けて休んでいると、けたたましくチャイムが鳴った。 ピンポンピンポーン! 「…のだめか?」 少し表情が緩む。すぐに来るだろうと待っていたのだ。 しかし、勝手にドアを開けて入ってきた二人を見て、千秋は絶句した…。 「千秋先輩!おかえりなサ〜イっ」 「千秋っ見て見て、すごいだろ!?」 どこからどう見ても……プリリンの格好をしたのだめと、ごろ太の格好をしたフランク。 プリごろ太な二人が、意気揚々と乗り込んできたのであった。 「……何やってんだ、お前ら」 千秋は頬の筋肉をひくつかせながら問いかけた。 「何って、見たら分かるじゃないですかー。プリごろ太のコスプレですよ!ぎゃは♪」 「千秋を驚かせたいってのだめが言うから、3日で作り上げたんだ!」 ものすごい誇らしげだな、おい。 脱力しながらも改めてまじまじと見ると、なかなか良い出来のようだ。 のだめはプリリンと同じように高い位置で小さなポニーテールにしている。 水玉模様の丈の短いワンピース。背中には何で作ったのか煌めく白い羽が揺れ、足元は白いサンダル。 まぁ、似合っている。…というか相当可愛い。 ちなみにフランクは子供っぽいTシャツに短パンと白靴下。やっすいコスプレである。 「先輩の分もちゃんとありますよー!じゃ〜ん」 後ろ手に持っていた物をさっと前に出すと、それはオレンジのTシャツだった。 でかでかと「K」のアップリケ……紛れもなくカズオ専用シャツ。 「お前、殺されたいのか?」 「ぎゃぼっ…やめてくだサイ、ほんとに死にます…」 首をしめていた手を離すと、のだめは涙目でフォロー(?)を始めた。 「そんな怒らないでください。カズオは本当はいいやつなんですから!きっとこのシャツ、先輩に似合いますよ♪」 「似合ってたまるかーーー!!」 「ぎゃぼぉー!」 とりあえずいつもの夫婦漫才がオチた所で、フランクがにこにこと説明をする。 「実は来月、パリで大きなアニメのイベントがあるんだ。それに3人で行けたらいいね、って話になって…」 千秋は怪訝な顔でフランクに向き直った。 「3人って誰が行くんだ」 「のだめと、僕と、千秋」 「そのコスプレでか」 「もちろん!プリリンと、ごろ太と、カズオで」 「行くわけねーだろーーー!!!」 「ひぃ〜!」 千秋は軽くキレた。つい手近にあった楽譜を二人に投げつけてしまったのだった… フランクだけを自室に帰すと、千秋は勢いよく部屋のドアを閉めた。 「千秋先輩、なんでそんなに怒るんですかー」 悪びれもせずにのだめがむくれる。 「恋人がくたくたで帰ってきたってのに、お前が人んちに入り浸ってくだらないコスプレしてたからだろうが!」 「くだらなくないデス!先輩とアニメフェスティバル行くために頑張ったのに!!」 「だから、行くわけないだろ!!」 疲れと空腹と、3日ぶりに会えたのだめの奇行に、千秋はかなりイラだってきていた。 3日も男の部屋にいたのかよ……そんな短いスカートで脚を見せてたのかよ…… のだめがミニスカートを履く事はほとんどない。こんなレアで可愛い姿をフランクに最初に見せたなんて。 湧き上る怒りと独占欲に突き動かされるように、千秋はのだめを強く抱きすくめていた。 「ちょっ、先輩!痛いです」 「うるさい」 強引に口付けると、のだめがモゴモゴと抵抗した。 のだめは意外に雰囲気を大切にする方なので、甘く優しくしないと嫌がるのだ。 でも、今日は甘くしない。 そむけようとする頭を無理やり押さえて執拗に口腔内を味わう。 のだめが逃れようと突っ張っていた腕も、段々と力が抜けて下ろされていく。 唇を離したとたん大きく息をついたのだめを見つめ、千秋は意地の悪い笑顔を見せた。 「感謝しろよ。じゅうでん、させてやる」 「う〜…カズオモードですね」 恨めしそうな泣き言は無視して、抱きしめたまま首元に吸い付いていく。 うなじに近い首の側面を舐めあげると、小さく震えるのが分かった。 鎖骨まで舌でなぞっていく。抱きしめる腕は、のだめの柔らかな腰をすべる。 「この羽、邪魔だな」 「そんなぁ…力作ですよ……んんっ」 のだめは嫌がりながらも、抵抗はあきらめて千秋の首に腕をまわしている。 千秋の唇がのだめの胸まで降りる。服の上からその豊かなふくらみを掴み、頂をついばんだ。 「はぅ…」 鼻に抜けるような声が耳元で囁かれるとゾクゾクしてしまう。 指でぐにぐにと弄くりながら、角度を変えて何度もくわえ込んでいく。 同時にもう片方の手はスカートのすそから進入させ、お尻の割れ目をなぞる。 「やだ、先輩…立ったままじゃ」 のだめの苦情はキスでふさいで、下着の上から大事な場所に触れると、びくっと身を強張らせた。 「んー!んんっ」 モゴモゴ言うのは無視。熱いその場所を指で擦るように愛撫すると湿り始める。 「濡れてきてるな」 「うぅ…」 照れているのか怒っているのか、真っ赤になって睨むのだめ。 そういう顔すると益々いじめたくなるって事がわからないのか…… 千秋は自分の半身が硬くなってきたのを感じながら、のだめの下着の紐をほどいて取り払った。 「や、ダメです!今するのは……ひゃんっ!」 湿ったその中に指を沈める。 内壁を激しく擦り上げるとのだめは腰ががくがくと砕けて、千秋にすがるように強く抱きついてきた。 「あっ、あっ、やあぁ!」 「どんどん溢れてくるぞ。もう入れてもいいんじゃないか?」 「だめ……プリリンの服が汚れちゃいます…」 のだめの精一杯の懇願、せめて脱がして、ね?という頼みに千秋は考え込むと、にっこりと頷いた。 「汚さないから。入れるぞ」 「おにーーー!!」 「そこ、掴まれよ」 のだめをピアノにもたれさせると、千秋は後ろからスカートを捲り上げる。 後ろから見ると、小さなポニーテールといい丸っこく可愛い羽といい、プリリンそのものだ。 まるでのだめじゃなくプリリンを犯してしまうような、妙な背徳感。 「はうぅぅ…絶対、絶対!汚さないでくだサイね!」 「んー、さあな」 ひぎゃ!?と言いかけたのだめに、一気に挿入してしまう。 「やああぁっ…!」 体を反らせて千秋のものを受け入れるその背中に、ふわふわと白い羽が揺れた。 千秋はすぐに律動を開始した。のだめが甘い声で鳴く。 ピアノに上体を預けながら、千秋の突きこみに合わせて膣内を締めてくるのだめはすごく健気に見える。 「…すごくいいよ、……プリリン」 ちょっとした意地悪のつもりで囁きかけると、驚いたように振り返ってきた。 「あっ、やぁっ、…もう……カズオはエッチなんだから」 のってくるとは。なりきってるな。 「プリリンこそ、腰を突き出していやらしいな」 言いながら千秋がのだめの腰を掴んでぐいっと引き寄せる。もちろん腰の動きは止めないままだ。 のだめは腕だけピアノにすがりながら、お尻を上にあげる体勢になってしまう。 「カズオが、…あっ…させたんじゃない…っ」 本当に『プリリンとカズオ』としてセックスしてるような気分。ありえないけれど。 こんなふざけた情事ができるのも楽しいかもしれない。 千秋がふとそう思った時、のだめも同じ事を思ったのか、振り向いて微笑んできた。 激しい行為の中で少しだけ見つめ合い、くすりと微笑み合った。 上からねじ込むように入れると、内壁に擦れて感じるようだ。高い嬌声があがる。 再びがくがくとおぼつかなくなるのだめの腰を支え、千秋は夢中で突き入れ続けた。 「あぁっ…いい、……プリリンもう、いっちゃいそぅ……」 うっとりと頬を上気させて呟くのだめを見ると、千秋はいつもボルテージが上がってしまう。 「いかせてやるよ」 一層速く、最奥まで押し込むと、のだめは弓なりに反って羽を震わせた。 「やぁ……、んんんっ…!!」 びくびくと痙攣しながら絞り上げられる感覚に、千秋も登りつめていく。 「くっ……」 急いでのだめの中から引き抜くと、自身の手でしごいて吐精した。 少女のような水玉のワンピースにも、ふるふる揺れる可憐な羽にも、白いものが降りかかる。 「はぁ…はぁ……ふう」 ピアノに突っ伏したまま息を整えていたのだめが、恐る恐る振り返ってきた。 「カズオ…もしかして、かけた…?」 「あー。かかったかも」 目を逸らしながら、しれっと言う千秋の顔を見て、のだめは絶望した…。 「ひどいデスーーーー!!!」 「だから、拭いてやるって。動くなよ」 「うっ…うっ…汚さないって言ったのにぃ…」 とりあえず自分の下半身をきれいに拭いてから、ドロドロに汚れたのだめをなだめる。 ぐすぐすと泣きまね(?)をするのだめを押さえ付けて、ティッシュで羽を拭おうとした。 ぱりっ。 軽〜い音が響いて、見事ティッシュは羽を貫通してしまった。 「あ…」 「ぴぎゃあーーー!!!」 サテンのように艶があるそれは、実はオーロラ折り紙を張り合わせたものだったのだ。 針金で作った枠に丁寧に貼り付けていった羽は、確かに力作だったのだろう。 「わ、悪い…」 「ううぅぅ………うわあ〜〜〜ん!」 嘘泣きか本泣きか、すっかりご機嫌を損ねたのだめをあやすのに、千秋はそれから1日を費やした。 そして翌月のアニメイベントには、カズオTシャツを着て(上着の下にだが)同伴させられる千秋の姿があったとか……。 「先輩、次はベルばらプレイしましょ♪頑張って作りマスから〜!」 「誰がやるか!!」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |