悪くない
千秋真一×野田恵


「ただいまデス〜」

玄関を開け、当たり前のように千秋の部屋に帰ってくるのだめ。
キッチンからは美味しそうなにおいが。

「千秋君、今日は何を作ったの?」
「ほんと、千秋はマメよね〜」
「いいね、のだめ、毎日美味しいご飯つくってもらえて」

のだめに続いて、がやがやと入ってくる友人達。

「お前ら、何しにきたんだ!」
「ヤキトリオ大成功だったし、お祝いしようと思って」とポール。
「みんなで食べたほうがおいしいからいいじゃない」とターニャ。

黒木だけがほんの少しすまなさそうな顔をしているだけで、あとは
我が家のように皿やグラスを準備している。

(明日はのだめの休日だし、ゆっくりしようと思っていたのに…)

「なに〜?千秋はのだめとふたりっきりが良かったの〜?」
「別にそんなわけじゃ…。もういいから食えよ」

図星をさされ、赤くなりながらワインを抜く千秋だった。

「むふぉ〜先輩おいしいデス。これは一体なんデスか?」
「トリュフのパイ包み…」
「すご〜い。張り切ってる〜」
「別に、張り切ってなんか…。たまたま安かったし」(←ウソ)
「のだめ、トリュフ初めてですよ。おいしいです〜。なんか、
食べてるうちに徐々に溶けて混じっていって…おいしい〜」

のだめの微妙な発言に他の4人が一瞬黙る。

「え?のだめ、何か変なコト言いましたか???」
「い、いや、別に全然変じゃないよ。ねえ、千秋君」
「あ、ああ…」
「そデスか?でも、ほんとトロトロしておいしいデス〜。トロケます〜」

立て続けに飛び出すのだめ発言に思わず顔をそらす千秋だった。

「あ〜、のだめ、また顔にソースつけてるよ」

のだめの隣に座っていたポールが、のだめの頬…限りなく唇に
近いその場所に手を伸ばしナプキンで優しくぬぐう。

(あいつ、また…。オレ様だってまだ今日は触ってないのに…)

そんな千秋を見ていたターニャと黒木が千秋にワインをすすめる。

「いや〜、千秋君はほんと何でもできるよね。今日は僕もワインを
持ってきたし、どんどん飲んでよ」
「そうよそうよ。そうだ、私も何か作ろうかな」

それから数時間…。すっかり出来上がったポールは黒木の部屋に
泊めてもらうことになり、ターニャも一緒に千秋の部屋を後にする。

「のだめ〜、また一緒に演奏しようね〜」

ポールがのだめにハグして、頬に軽くキスをする。

(こいつ、またしても…)

「そですね〜。また一緒にやりましょ〜」

酔っ払って頬を赤くしたのだめが上機嫌で答えた。千秋は憮然として
見送っている。

ドアがバタンと閉まり、部屋の外に出た3人…ターニャと黒木は
目を見合わせる。

「大丈夫かな、千秋君」
「のだめ、今日は大変ね」
「何、何、何の話?」

…一人能天気なポールだった。

「先輩、どしたんですか?さっきから黙ったままデスよ?」

相変わらず不機嫌そうな千秋をカウチに座ったのだめが見上げる。

「別になんでもない」
「…黒木君たち、連れてきたのが嫌だったんですか?」
「いや…」
「じゃあ何なんですか?変ですよ。さっきから」

押し黙っている千秋を横目にのだめが喋りつづける。

「今度の室内楽、なんの曲がいいと思いマスか?ターニャとデュオも
したかったけど、ポールにも誘われたし」

(またポールかよ!!)

千秋は持っていたグラスを一気に飲み干すと、のだめの方へ振り返る。

「もしかして飲み足りないんですか?のだめ、付き合いマス!」

すでにかなり酔いが回っているのだめが、窓際に立つ千秋のもとに
フラフラと近づき、グラスにワインを注ぐ。

「のだめも飲みマ〜ス」
「お前、そんな飲んで大丈夫か?」
「だいじょぶですよ〜。それにのだめ、今日はご機嫌なんです」
「なんかあったの?」
「…別に何もないですよ?ただ、明日はお休みだし、試験も終わった
ばかりだし、久しぶりに先輩とゆっくりできるかなと思って」

(…そんな事思ってるなら、一人で帰ってこいよ。それにポール…。
いや、ポールだけじゃない。黒木君やフランクだって油断できない)

「…先輩は、嬉しくないんですか?お休み、一人でいたかったんですか?」

また黙っている千秋にのだめが尋ねる。

「だいたいお前、無防備すぎんだよ!」
「な、なんですか!?突然。びっくりシマスよ…」

(なんでこんなに無自覚なんだ!)

「もういい。お前も今日はもう部屋に帰れよ」
「…わかりマシタ。でも、その前に…」

グラスを窓際に置くと、のだめが千秋にぎゅっと抱きつく。

「じゅうでん、させて下さい…」

小さな声でつぶやくと、千秋の胸に顔をうずめる。

千秋の白いシャツ越しに、温かいのだめの体温が伝わる。のだめは、
全身をぴったりと押し当てるようにして身体一杯に千秋を感じていた。
トクン、トクン…お互いの心臓の音が聴こえる。次第に千秋の心も
落ちついていく。グラスを置いて、ゆっくりとのだめの背中に手を回し
薄茶の髪をなでる。

「のだめ…」
「何デスか?」

千秋は答えず、少しかがむとうつむいたのだめにゆっくり口づける。

優しく唇をついばみ、頬や耳元にもキスをする。

「あっ…」

千秋の唇の動きに合わせて、のだめの甘い声がもれる。
その声に煽られるように、千秋のキスが激しくなっていく。
大きな手はいつのまにかのだめの頭と腰に回され、身じろぎしようとする
のだめの動きを封じていた。

唇も、歯も、舌も…千秋の思うようにされ、しだいにのだめの腕から
力が抜けていく。

「せ、せんぱい…」

思うままにのだめの唇をむさぼって、ようやく千秋の唇が離れた。
ワインのためだけでない、赤い頬とうるんだ瞳でのだめが千秋を見上げた。

「のだめ、やっぱりまだ先輩と一緒にいたいデス…。ダメですか…?」
「…」

だめなわけがなかった。のだめの背中に手を回し、抱き上げると
カウチにそっと降ろす。
覆い被さるようにして、再びくちづけた。

「ふ…しんいちくん…」
「もっと…」
「もっと…何デスか…?」
「名前、呼んで…」

千秋の背中に回された腕に力がこもる。唇にも、頬にも、首筋にも…キスの
嵐が降り注いでいた。息を荒くしながら、のだめがささやく。

「よかった…デス…」
「…何が…?」
「最近ずっと課題や試験で大変で…あんまりせんぱいといられなくて。
やっと一緒にいられると思ったのに…今日のせんぱい、変だし…」

千秋を潤んだ瞳でのだめが見上げていた。

「…のだめ、先輩に嫌われたのかと…おもって…」
「…」
「…のだめ、頑張ってるのに。ずっと、頑張ってるのに…」

絶句してみつめる千秋の下で、のだめの瞳に溢れた涙がこぼれる。

「嫌わないで、クダサイ…」

千秋は何も言えず、ただ、のだめを優しく抱きよせた。

「…別に、嫌ってるわけじゃ…」
「じゃあ、何ナンデスか…?」
「何でもない…」
「のだめの気のせいデスか…?」
「…うん」

(いえるか!!ポールにヤキモチなんて!)

「よかったデス…ほんとに。これで安心して眠れます…」
「はぁ?」
「だって、もう1時過ぎてマスよ…?のだめ眠いです」
「…お前、何言って…」

うろたえる千秋を見て、くすりとのだめが笑う。

「…でも、せんぱい、もう準備オッケーなんですね?いいデスヨ。のだめ、
朝まで付き合っちゃいます」

そう言うと、密着した下半身にのだめが自分の腰を押し付ける。
そこは、すにで熱く硬くなっていた。

「お前、のだめのくせに…」

顔を赤くした千秋が反撃に出る。のだめを降参させることは千秋には
訳なかった。のだめの方が圧倒的に経験も浅くて、敏感で…。
でも、だからこそ…。
今日は優しくのだめに触れたかった。少し前の涙を忘れたわけでは
なかったから。

「向こうに、行こうか…」

のだめはだまってうなずく。
抱き上げると、寝室のドアを開けた。ドアから洩れる薄い明かりの下
のだめのワンピースをゆっくり脱がしていく。

本当に久しぶりに、のだめの素肌に触れていた。柔らかくて、温かい
のだめの身体。

(オレは、ポールみたいにはのだめに触れることはできないな…)

豊かで柔らかな胸に顔をうずめて、意外とくびれた腰をなでる。
のだめの唇からは、絶え間なく甘い吐息がもれている。
吐息にあおられるように、千秋の愛撫が激しく、執拗になっていく。
薄い布越しでも、その部分は十分に潤いを感じさせていて、その事が
さらに千秋の熱をたかめていた。

「せんぱい…」
「何…?」
「…」
「言わないと、わからないぞ…」

両手で顔を被うと、小さな声でのだめが叫ぶ。

「…ちゃんと…ちゃんと触ってくだサイ!」
「…どこに?」

少し意地悪な気持ちになってのだめに言ってみたものの、千秋の欲求も
理性で押さえることは難しかった。

腰の両脇で結ばれたリボンは、片方だけが外された。
熱く潤んだ場所に指を滑らせる。

「はぁ…」

のだめの唇から吐息がもれる。

くちゅ、くちゅくちゅ…

千秋の長い指が動くたび、甘い水音がもれる。

「気持ち…いい?」

言葉にならず、頷くだけののだめ。

「どこが一番気持ちいい?ここか…?」

指はやさしく襞をなでる。

「ひゃ」

小さくのだめの身体が跳ねる。

「それとも、ここかな?」

指が入り口を優しく刺激する。

「それとも、ここ…?」
「それとも…?」

何度目かの質問の後、小さな突起を優しく撫で上げる。

「ひゃああ」

一際大きな声でのだめが叫ぶ。白い背中が大きくのけぞる。

満足そうに微笑むと、千秋が身体を下ろしていく。
すでになすがままになっているのだめの身体を開き、十分すぎる
くらいに潤った部分に唇を這わせる。

「はぅ。うう…う。せんぱい、そんな…ダメ…デス……だめ…」

のだめの言葉を無視して、舌で唇で指で…刺激を繰り返す。

「ああ…しんいち…くん…」

途切れ途切れの吐息が、千秋の名前を呼んでいた。
軽く絶頂を迎えたのだめの身体に、千秋がおおいかぶさる。
きつく、でも、やわらかく、千秋にからみつくのだめ身体。

「あ、あああ、あっ」

千秋が身体をすすめる度に、吐息がもれる。
久しぶりに感じるのだめの熱い身体…。すぐにでも達してしまいそう
な自分を抑えながら、甘い声と吐息と肌の感触を楽しむ。

「しんいちくん…もっと…のだめ…のだめ…」
「かわいい、めぐみ…」

千秋の動きに翻弄されながら、快感の波にのまれながら、千秋の名前を
呼ぶのだめに、愛しさがさらに募る。

「オレ、もうダメかも…」

身体を折り曲げ、のだめの唇をむさぼる。
上も下も…与えられる快感にのだめは悲鳴のような声をあげていた。
瞬間、のだめの身体がビクリとはね、千秋自身を絞るように刺激
していく。

「…っ」

千秋の胸に頬を寄せてのだめがまどろんでいる。

(オレも、まだまだだな…)

すっかり変態の森の住人になり、さらには天然のだめに振り回される
日々…。

(でも、こんなオレ様も悪くないか…?)

ドSのつもりが実はMかも?な事実にショックをうけつつ、それでも
隣で眠るのだめに感じる愛おしさを否定も出来ず…。

(だめだ、眠い…)

やっとつかまえたのだめ。明日になれば、何をしでかすか分からない
けれど…。それでも今は、二人で心地よい眠りに身を任せていこう…。

「むにゃ…しんいちくん…」

普段は寝相のいいのだめが裸の千秋の胸に抱きついてくる。柔らかな
胸が…触れる。

(おいおい…)

心地よい眠り…のはずが、再び目が覚めてきて。

(だいたいこいつ、さっき“朝までつきあう”って言ってなかったか?)

起こすか寝かせておくか…悩む千秋なのだった。






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