のだめ不足(非エロ)
千秋真一×野田恵


「うわぁ〜っ!先輩、見てください!雪ですよ!雪っ!!!」

――あれ?さっきまで部屋で次の公演の曲の構想を練っていたはずなのに…

千秋はいつのまにか、のだめと一緒に街の中を歩いていた。
肌にはピリリと冷たい風が吹き付けていたが、なぜだか寒さはあまり感じなかった。

――こうやって、のだめと二人で歩くのも久しぶりだな……

「んもぅ!先輩!人の話聞いてマスか?!」
「あぁ…たまには雪も悪くないな…」

――寒くないのは、無造作につながったこの右手のせいかもしれない…

二人はいつもの橋についた。どこからか芳ばしい栗の香も漂ってくる。

「…のだめ、栗…」
「先輩?のだめ、先輩に話さなきゃいけないことがあるんデス。」

――悪寒がした。のだめがうつむく。顔がよく見えない。

「実は…黒木くんの、黒木くんとのだめの子供ができちゃったんデス…だから、のだめ、今度から黒木くんと一緒に住むことにしました」

思考回路が停止する。イマナニヲ…暑くもないのに汗が背中をつたう。

「ちょっ、ちょっと…ま、のの、め、恵!!!」
「真一くん、さようなら」

恵の背中が遠ざかる。雪はしんしんと街を白く染めていく。視界がぼやける。俺は、その場から動けない。

―――まってくれ!行かないでくれ!俺の、俺のそばにいろよ!!恵―――――


気が付くと、俺は自室の机で寝ていた。体が痛い。

――のだめ不足、か―――

窓の外にはちらちらと雪が舞っていた。






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