Bonne anne!
千秋真一×野田恵


気づけばパリで迎える2度目の冬。今年も終わりが近づいていた。去年はノエルの乱闘の
後、二人でピアノを弾いたり、散歩をしたりして冬季休暇を過ごした。
今年は……引っ越した新しい部屋にもようやく慣れてきた千秋は、窓の外を眺めながらぼ
んやりと考えた。
相変わらずピアノに燃えているのだめは、時折学校帰りに夕食を食べに千秋の部屋へと訪
れるが、早くピアノの練習がしたいためなのか、あまり長居をしない。
のだめが本気でピアノに向き合っている、それは喜ばしいことだったが、なんだか少し寂
しさも感じてしまう。そんな自分に千秋はため息をついた。
ノエルのときはのだめの「待ち合わせデート」がしたいというリクエストで、外で食事を
とり、シャンゼリゼ通りのイルミネーションを散歩した。その後はもちろん千秋の部屋に
くるとばかり思っていたが、

「のだめピアノの練習があるので帰りマス!」
「じゃあオレもそっちの部屋に行くから、久々にピアノ聞かせて」
「だっ、だめデス!他にもやることいっぱいあるんで……」

千秋はそんなあやふやな言葉でのだめに断られた。すでに学校は冬期休暇に入っているの
に、ノエルに一緒に過ごしたきりのだめからは何の連絡もなかった。

「ま、連絡がないのはいつものことか……」

RRRRRRRR――――

千秋の呟きの答えるように、携帯電話の着信音が響いた。

「アロー?」
「のだめデス〜!千秋センパイ、今なにしてましたか〜?」

相変わらず能天気といえるほど明るいのだめの声が、千秋の耳に飛び込んできた。

「何って、別に……」

おまえのことを考えていた、とは口が裂けてもいえない千秋は言葉を濁した。

「あのデスネ、今日これからセンパイの部屋に行ってもいいデスか?」
「別にいいけど?」

千秋はわざとそっけなく答える。

「じゃあ、これから行きマスから待っててくださいネ〜」

のだめはそう言うと、一方的に電話を切った。

「相変わらず、唐突なやつ……」

千秋はそう呟くと、お腹を空かせてやってくるであろうのだめに食事を作るためにキッチ
ンへと向かった。

ピンポーンピンポンピンポン―――ー

玄関のチャイムがせわしなく鳴る。千秋はため息をつきながら扉を開けてやった。

「うるせえ!1度鳴らせば聞こえるんだよ!」

千秋がドアの外ののだめを乱暴に部屋の中に引き込むと、のだめはバランスを崩してその
まま床に倒れこんだ。

「ぎゃぼーん!ひどいデス。センパイの顔を早く見たかっただけなのに……ていうか、セ
ンパイが合鍵をくれればこんなことしなくていいんデスヨ?」
「合鍵なんて持たせたら、おまえオレの留守中に勝手に入ってシャツ盗むだろ!」
「はうううう。前にも言いましたケド、匂いは長く持たないんデス!!」
「だからその変態行為をやめろ!」

千秋はそういうと、床に座り込むのだめを無視してキッチンに戻って行った。

「あーセンパイ食事の支度しちゃいましたか?」

のだめはがっかりしたようにキッチンへ入ってきた。

「なに?おまえ食事してきた?」
「イエ、ヨーコが引越しソバを送ってくれたんで、一緒に食べようかと思って持ってきた
んデス」

のだめは手にしていた紙袋を掲げてみせた。

「……引越しって……タイミングズレてんだろ。もしかして年越しソバじゃねえの?」
「あ、そういう言い方もありマスネ!」

千秋の口から小さなため息が漏れる。

「センパイ?どうしたんですか?」
「いや、いい……それは明日食おう」
「そうデスネ。明日は大晦日ですから、その方が年越しソバっぽいデス……あ!でも明日
はのだめが年越しカレーを作ろうかと……」
「いいっ!遠慮する。おまえのカレーは一生食いたくない」
「ぎゃぼーひどいデス!」

日本にいた頃と、三善のアパルトマンにいた頃と変わらないたわいない会話。千秋は先ほ
どまでの寂しさが拭い去られるような気持ちになっていた。


二人で食事をした後、後片付けのためにキッチンへ入って行った千秋に、のだめが珍しく

「のだめも手伝いマス!」

とついてきた。
千秋が洗った食器をのだめが拭く。なんだか新婚夫婦みたいだ、そう考えて千秋は少し照
れくさくなった。そして、後片付けを終えると、いつものようにのだめがそそくさと帰っ
てしまうような気がして、千秋は逃がさないようにさっさと唇を奪ってしまった。

「んん――セン、パイ……」

すでにベッドの上で千秋によってすべての衣服を剥ぎ取られたのだめは、千秋の腕の中で
甘い声を漏らした。
千秋はノエルの夜から焦らされた想いをぶつけるように、のだめの唇を乱暴にむさぼった。
口の中に差し入れた舌は、怯えたように逃げ惑うのだめの舌を執拗に追いかけ絡めとり、
手は豊かな胸の蕾を弄ぶ。

「はあぁっ」

重ねた唇からのだめの吐息が漏れ、その声は千秋の耳をくすぐる。たまらず唇を首筋から
胸へと落とし、蕾を口に含んだ。胸を弄んでいた手は滑らかな肌を滑り、秘所へと下りて
いく。そこはのだめの甘い声と同じくらい、すでにたっぷりと潤っていた。千秋の指を難
なく飲み込んでしまいそうなほどに。
千秋はのだめの体の反応の素直さに、満足げに口元をゆるめた。そしてわざと焦らすよう
に花びらの周りだけを指でなぞる。
千秋に与えられる快楽に素直に身を任せていたのだめは、期待していた次に来る刺激がや
ってこないことに気づき、我に返った。

「……センパイ……?」
「なに?」

千秋は相変わらず胸の蕾を吸い上げたり、舌でなぞったり、歯を立てたりなどせわしなく
のだめを追い詰めている。でも……のだめの一番敏感な所に触れることはない。

「あっン……あの、センパ……もっと……」

のだめは必死に声を絞り出した。

「もっと……なに?」

のだめの胸から顔を上げた千秋と目が合う。その目にはからかうような光が浮かんでいる。
のだめは千秋の意図に気づいて、すでに体と共に上気した頬が、さらに赤くなるのを感じ
た。

「やっ……センパイ、いじわるデス……」
「なにが?言ってくれなきゃわかんないんだけど?」

千秋はそのまま蕾に吸い付き、指で花びらのまわりを愛撫し続ける。その指はのだめの敏
感な部分を掠めるように通り過ぎてしまう。

「あンっもう、カズオデス……」
「のだめ……どうして欲しいか言ってみて」
「やっ……」

千秋が自分の反応を見て楽しんでいるのも悔しくて、のだめは恥ずかしくなってぎゅっと
目を瞑った。

「じゃ、やめる?」

その言葉と共に愛撫する千秋の指がぴたりと止まり、のだめは驚いて目を開いた。すると
すぐ目の前に千秋の顔があり、からかうような視線でのだめを見つめていた。

「ほら、言えって」
「い、いえないデスヨ……」

のだめは思わず千秋から目をそらした。もちろんそんなのだめを許す千秋ではなかった。

「ふーん、じゃオレのこれはどうすればいいの?」

千秋はのだめの手を取って、張りつめた千秋自身に導く。のだめは指に触れたその熱い感
触に堪らず手を引こうとしたが、その手を千秋が押さえつける。

「あの、センパイ……」
「オレはのだめに入れたい……おまえは?」

千秋の顔がさらにのだめに近づいた。少し動けば唇が触れそうなほどに。

「のだめ……もシンイチくんが……欲しい、デス」
「よく言えました」

千秋はそう呟くとのだめに口付けて、焦らしていた指を花びらの奥へと押し込んだ。

「ああっっん」

のだめは待ち望んでいた刺激に堪らず声を上げる。千秋の指が花びらの中で乱暴に動き回
り、静かな部屋の中にくちゅくちゅと水音だけが響く。花びらから零れ落ちる蜜は、すで
にしっとりとシーツを濡らしていた。

「すごい濡れてる」

のだめの耳元で千秋が囁く。

「はあぁっ、やっん……」

普段ののだめからは想像できない甘い声が漏れた。千秋はその声がもっと聞きたくて、親
指で花びらの突起に触れる。

「やっあああぁん」

のだめの口から一際高い悲鳴にも似た声が上がり、奥にもぐりこんでいた千秋の指を強
く締めつけた。

「シン……チくん、だめ、イっちゃ……」

千秋がのだめに沈めた指を二本に増やし、さらに花びらの奥深くを突くと、のだめは堪ら
ず逃げるように上半身をひねって、シーツに顔を伏せた。

「ああんっ、も……やああっ」

逃げようとするのだめの腰を持ち上げうつ伏せにすると、千秋はさらに強く花びらの突起
をこすり上げてやった。

「ああああっ―――」

すでに絶頂を迎えかけていたのだめはその刺激に耐え切れず、体をぎゅっと折り曲げなが
ら体を震わせた。
千秋がのだめの中からそっと指を引き抜くと、のだめは力尽きたように伏せたまま、荒い
呼吸だけを繰り返している。千秋はうつ伏せののだめの腰に軽く唇を落とし、手早く準備
をしてのだめの上に覆いかぶさるようにして囁いた。

「のだめ、入れるぞ」
「……ハイ」

千秋の言葉に、のだめは腕を突っ張るようにして体を起こそうとした。

「そのままでいいから」

そう言うと、千秋はのだめの後ろから強引に足を開いて自分を押し込んだ。

「やあンっ」

千秋はのだめの上半身を抱えるようにして抱き起こし、後ろ向きのまま自分の上に座らせ、
わきの下から両手を胸に伸ばした。

「センパ……イ、こんなカッコ、やデス……」

千秋はのだめの言葉を無視して、両の手で胸を揉みしだく。

「のだめ、自分で動いてみて」
「あン、なんか……恥ずかしいデスヨ……」

そういいながらも、のだめはぎこちなく腰を動かし始めた。その慣れない動きは、逆に千
秋にとって扇情的で、気持ちを高ぶらせるのには十分だった。その気持ちをぶつけるよう
に胸の蕾をぎゅっと摘み上げ、片手でのだめの顔を後ろに向けて口付けた。

「んっんん――んん」

のだめの体がびくりと反応して、千秋をより一層締めつける。

「くっ……」

千秋の唇からも思わず声が漏れた。ぎこちないながらも何度も上下するのだめの動きに、
自分自身の限界が近いことを感じて、のだめから自分自身を引き抜いて仰向けにした。そ
のままのだめに覆いかぶさり片足だけを持ち上げ、再び自分自身を押し込む。

「ああっン」

のだめは千秋の乱暴な仕草と与えられる快楽に、すでに目がうつろになっていた。ただ何
度も深く、激しく打ち付けられる千秋の体に応えるように声を漏らすことしかできなかっ
た。

「はっああっ、シ、インチくん……のだ、め、もう……」

千秋も自分の唇から漏れる荒い息を意識しながら、それでものぼりつめていく段階を楽し
んでいた。
苦しそうに眉を寄せ閉じた目、かわいい泣き声の漏れる唇、日焼けしていない白い肩、大
きく揺れる胸……そのすべてが千秋を甘い快楽へと誘う。
千秋はそののだめの姿にたまらなくなって、もう何度目かもわからなくなった口づけをす
る。その口付けに応えるようにのだめの締めつけが強くなった。千秋はたまらなくなって
のだめを強く抱きしめると、のだめも千秋の首に腕を絡めしがみついてきた。

「……シン……チくん……」

耳元で呟くのだめの声を聞きながら、千秋は自分を解き放った。

「センパイ、今日はなんだかやる気マンマンでした?」

ベッドの中でシーツに包まったのだめが芋虫のように這いながら、ベッドサイドで後始末をする千秋に近づいてきて言った。

「はぁ?」
「だってーいつになく強引な展開だったというか……」

ちらりとのだめに視線をやると、なにやら含みのある笑いで千秋を見上げている。

「悪かったなっ。おまえと違って匂いじゃ充電できねーんだ!」

千秋がやけくそ気味に言い放った。

「ギャボ!じゃあ、のだめがいないときに充電する方法考えないと、会うたびに大変じゃ
ないですか。のだめ体がもちまセン」
「おまえだって、喜んでたじゃねーか!」
「なっ、喜んでって……アレはデスネ、真一くんの強引さに抗えなかったというか……」
「その割には何度もイッてたみたいだけど?」
「んもう!なんでそんなにカズオなんですか!」

のだめが真っ赤になって言い返す。

「もういいから、おまえもっとそっち行けって」

のだめはベッドサイドまできていたのだめを、シーツに包まったまま反対側に転がして、
自分もその隣に横になりのだめを抱き寄せた。のだめも素直に千秋の胸に頬を寄せてくる。

「はうん」
「……あのさ、明日もこっちに泊まる?」

全身でのだめの温かさを感じながら千秋は呟いた。

「だって、のだめがいないとセンパイ充電できないでしょ?それに明日は大晦日デスヨ?
やっぱり年越しは夫婦一緒に過ごさないと!」
「なんだよ夫婦って……べつに向こうの部屋でもいいぞ?あっちはバスタブあるし、オレ
もたまにはゆっくり……」

言いかけた千秋の言葉をのだめが慌てて遮った。

「イイデス!せっかくのだめが通い妻してるんですから!それにセンパイの部屋は掃除も
行き届いてるし」
「あ!」

千秋はのだめの言葉の意味に気づいて身を起こした。

「おまえ、向こうの部屋また散らかし放題なんだろ!だからノエルの夜オレが行くってい
うのを断ったんだな」
「えっ、そんなことないデスヨ?」

のだめは見下ろす千秋の視線を避けるように目をそらした。

「なに目そらしてんだ!」
「のだめはホントにピアノの練習が……」
「うそつけ!おまえ明日朝イチで帰って大掃除しろ!それが終わるまで出入り禁止!なに
が通い妻だ!」
「ひどいデス〜妻の愛を疑うんですか!」
「うるせー自分の部屋が住みにくくなったからこっちの部屋に避難してきただけじゃねー
か!今すぐ帰れ、バカ!」

千秋はそう言い放つとベッドから起き上がり、ビールを取るためにキッチンへ入っていっ
た。ベッドからは相変わらずのだめの奇声が聞こえている。

「ムキャーカズオー!」

千秋はのだめの奇声をあえて無視して、冷蔵庫の中から出した缶ビールに口をつけた。そ
して、こんなふうに言いながらも、明日の朝から一緒に大掃除をしてしまうだろう自分を
想像して、千秋は深いため息をついた。
やがてのだめの奇声が収まったのを見計らって、冷蔵庫からのだめの分のミネラルウォー
ターを取り出してベッドに戻った。






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