寝顔
千秋真一×野田恵


「ほゎ…千秋先輩の寝顔…しゅてきー」
「……」
「寝顔まで完璧なんですね…なんか悔しいデス…」

ちゅっ

「うきゅきゅ…寝耳にキスです」
「…ん…のだめ…?」
「むきゃっ」

ガシッ ばたんっ ボフッ

「ぎゃぼ!びっくりしたぁ!!
先輩おきてるんですか?」
「……すぅ…」
「…って!寝ないでください!
先輩おもいです!どいてください!」
「……」

完璧に見えた千秋の寝顔だったが、
目のしたにクマをみつけるのだめ。

「…千秋先輩…つかれてるんですね…」

「のだめ、明日がこなんですけど…
そんなにガッシリだきしめられたら出られないじゃないですか…」

千秋の腕からの脱出を諦めたのだめは、黙って一緒に寝てしまうことにした。
千秋が寝返りをうったため下敷き状態は脱することができ、
いまは抱き締められたまま横に寝ている。

「はぅぅ…千秋先輩の寝顔をこんな至近距離で…
こんなことならカメラもってくればよかった…」

安らかな寝息をたてている千秋の顔をおもうぞんぶんみつめるのだめだった。
だが事態はおもわぬ方向へ…。

「はぅっ…
しんいちくん…さすがムッツリです…」

千秋がのだめの胸に顔をすりよせてきたのだ。

千秋の寝息が服ごしにのだめの胸にあたる。
それはあの時を彷彿とさせて…

「な、なんかのだめ…変な気持ちになってきました…」

のだめはそんな気持ちを振り払うように頭をぶんぶんふった。
そして目をとじた。

(早く寝てしまおう)

「……すー…」
「……」


寝息だけが響く寝室。
千秋の熱い体温にドキドキしていたのだめも、
ようやくウトウトしてきたころ。

「ひゃぅ!!?」

いきなり千秋の膝がのだめの足をわって入ってきた。
しかし千秋の寝息は熟睡しているもののそれだ。

「ふぉぉ…!」

誰も見ていないのに真っ赤になってしまう。
下着ごしに、千秋の膝が動くのをかんじる。

「…寝相悪すぎデス……ちょっ…やんっ…」

千秋の膝が、まるでそこを擦るように動くので、
のだめは下腹部がじんじん疼くような変な感じがした…

離れたくてもきつく拘束されているので身動きがとれない。

そして千秋の片手がのだめの胸に触れる。

「ちょっ…しんいちくん!
ほんとにねてるんですか!おっぱい星人!」

(…なんか濡れてきちゃったかも…)

体の奥があつい。
もっとふれてほしくてうずうずするのに、
千秋の体はぴったりと密着したまま、もう動かないのだ。

「はう…これがほんとのムラムラなんですね…
千秋先輩…寝てる時までお色気ムンムン…罪な男デス…」

千秋にじらされながらも、
なんとか眠りにつくのだめなのだった。


温かさを感じて、ふと目が覚める。

「…のだめ?」

なぜかのだめが自分の腕の中で眠っている。

(…なんでコイツ、俺のベッドで寝てるんだ?)

乱れた髪が顔を隠している。そっとかき上げてやると、すうすうと寝息をたてているのだめの顔が現れた。

(…だらしねー顔だな。口開いてる。)

笑いがこみあげてきて、思わずおでこに小さなキスを落とす。

「ん…」
「…のだめ?」

うっすら開いた目が千秋を見上げる。
震える睫毛、寝惚けまなこ、ピンク色の頬。そして…

「…し…んいち…くん?」

自分を呼ぶのだめの声がなんだか甘く、くすぐったく感じて
髪を撫でてギュっと抱きしめる。

(…起きたかな?)

千秋はすっかり目が覚めてしまい、抱きしめたままのだめの様子を窺っていたのだが…

「すぅ…」
「のだめ?」
「…ん…ガコ遅刻しちゃいマ…スよ…」

そう言って、またすやすやと寝息をたて始める。

(…はぁ。)

なんだかお預けを食らった気分だなと思いつつ、なかなか眠りにつけないであろう自分を心配しながら
腕の中の可愛い眠り姫にそっと呟いた…

「お前も俺も…明日たぶん寝過ごすぞ…」


「もう!先輩なんでちゃんと起こしてくれなかったんデスか!のだめ遅刻しちゃいそうだったんですヨー」

ふてくされた顔でのだめが部屋に入ってきた。

「俺のせいかよ…っていうか何で俺のベッドで寝てるんだよ」
「それはデスね…うっかり先輩の寝顔を盗み見たばっかりに、無理矢理寝惚けた先輩に羽交い締めにされて…」
「…もういい。わかった」

今までにも度々、寝相の悪い自分がのだめを羽交い締めにしたり、きつく抱きしめたりしてることは知ってる。
しかし…

「お前…危険だなと思ったら近付くなよ」
「えーでも先輩の寝顔があんまりにも魅力的で…あへー。」

なにやら思い出してニヤけている。

「とにかくのだめ、ムラムラのモンモンだったんデスよ!」

…ならなんで眠ってしまったんだ?
そのまま起きていてくれれば良かったのに…

「…お前、今すぐ目覚ましかけろ」
「えっ、なんデスか?」

ふいに千秋がそばに立つ。
みるみるうちに頬が赤くなるのだめの耳もとで、千秋が小さく囁く。

「また一緒に起きれなくなると困るだろ」
「や…でものだめ、今日は自分の部屋で…」
「どうせまた寝顔見に来るんだろ?」
「…あぅー」
「ならずっとここにいろよ。今日はお互いに『おあずけ』はナシな」
「な、なに言ってんデスか…んっ…」

唇をふさがれてすっかり力の抜けてしまったのだめは、目覚ましのことなど忘れてしまって…。






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