いつもと違う
千秋真一×野田恵


…何か違う…

「…や…だ…っ」
「…何が…いや?」

抽出を繰り返しながら、千秋はのだめの表情を窺う。

今日ののだめはいつもと違う…。
そう、千秋は感じていた。
明日は久しぶりに二人揃っての休日。
千秋の部屋で夕食を取り、たわいない話をして入浴した後、当たり前のようにベッドに入ったのだが…

「だ…め…デス…っ…やんっ…」

…そうだ…やたらイヤとかダメとか…
体は素直に反応していると確信している。
現にのだめの中はとても熱く、それを証明する蜜が溢れ出ている。

…なんだ?俺がなにかいつもと違うのか?
久しぶりだから、もしかすると無意識のうちに少し乱暴になってるのか…

「…のだめ…」
「…っ…」

目も合わせない…

******************

…先輩…今日も話してくれなかった…

千秋の熱い吐息を耳元で感じながら、のだめは言い表せない切なさを隠せずにいた。

千秋が引っ越して、いつも隣にいた愛しい人になかなか会えなくなってしまった。
たわいない話も、聞いてほしいことも、こんなふうに会える時にしか話せない。

…だけど。
のだめ、話したいことばかりじゃないんデスよ…
…なんで…先輩はのだめに…

話してくれないことが、こんなに不安になる。
自分が千秋を、飛行機のトラウマから解放できた時のように
もっとこの人を解放してあげたい…と思う。
…だけど…

今までこの人と一緒にいた女の人たちは、みんな聞いたことあるのカナ…
のだめは…どうすれば…

「…せ…んぱ…い」
「…なに?」

絡めた指に力が入り、千秋が強く深く、のだめの中を突き上げる。

「やっ…ちが…ぁ…う…っ」
「…なにが…違うんだよ…」

…聞きたいことがあるんデス…
でも…聞けない。
先輩から…話してほしい…

******************

千秋は動きを止めて、のだめの耳元で囁く。

「…どうして?」
「…な…にが…デス…か」

目を合わせずに、のだめがくぐもった声で返事をする。
それには答えず、千秋はゆっくり自身を引き抜く。

「…あ…んっ」

甘い声が漏れる。

ようやく目を合わせたのだめは、やっぱりいつもと違う表情に見えて…

「…今日…お前…何か変…」
「…のだめは…いつも変…デスよ」

…その答えすら…いつもと何か違うぞ…

千秋は絡めていた指をそっとほぐし、その長い指をのだめのしなやかな体に這わせていく。
また、ふい…と目をそらしてしまったのだめの耳たぶを、そっと甘噛みしながら
長い指を太股に這わせて、ゆっくりとのだめが一番感じるところへ移動させる。

「…あっ…や」

のだめのそこから溢れ出ている蜜をすくいとり、膨らんだ突起に指を擦りつける。

「だっ…めぇ…っや…あぁ…」

声を洩らすまいと、必死に顔を背けて枕に口元を押し付けている。
耳に熱い息を吹きかけ舌を差し込み、指はその動きを早めていく…。
激しく、強く…。

「あっ…だめ…デ…ス!…んっ…はぁ…あぁぁあんっ!」

******************

「イ…ジワル…」

荒い息で肩を震わせている。

…どっちがだよ…

「…言えよ」
「え…?」
「言いたいことがあるなら言えよ…」

今日、もう何度目かわからないくらい繰り返している
目をそらすその仕草をじっと見つめながら、のだめの言葉を待つ。

「…言いたいんじゃなくて…聞きたいんデス…」
「…何を」
「先輩の…」

そう言うと、黙り込んでしまう。
のだめの瞳にはうっすらと涙が見えた。
その切ない表情から、なんとなく、ようやく千秋にのだめの心情が読み取れた
…ような気がした。

…なんだ…そんなことだったのか…
いや、「そんなこと」ですまされる話ではないことは、自分が一番よくわかっている。
でも、自分の心の中で、まだちゃんと整理されておらず
何の成長も、解決も見えていないことを…
まだ、話せない。
感情的になって、八つ当たりのようになってしまうかもしれない。

はけ口にしたくないんだよ…お前を…

でも、今こうしている間にも、きっとのだめは…
そう思うと、千秋にも切なさが込み上げてくる。

どうすれば…

いま話したいこと…彼女に一番伝えたいことは…

「…のだめ」

そっと、やさしく両手でやわらかい頬を包み込み
しっかり目を合わせて…言った。

「…好きだ」

「…のだめ 」

**********

きっと、かなり驚いた表情をしてしまったに違いない。

のだめは正直なところ本当にびっくり…してしまった。

「せ…んぱい?」

ゆっくりと耳元にその唇が移動して、そしてまた囁く…

「…好きだ」

聞いたこともないような甘い甘い声で、いつもは絶対に口にしないその言葉を
先輩が自分に囁いている。
聞きたかった話ではない。今日話したかったことじゃない。

でも…だけど…

きっと一番欲しい言葉…

「ズ…ルイです…よ」
「好きだ」
「せん…ぱ…」
「好きだ」
「…んっ」
「好きだ…」

…のだめ、頭が痺れちゃいそうデス…
耳元で囁かれる甘い囁きにクラクラしてしまう。
両手を千秋の首にまわして、きつく抱きしめる。

「…のだめも、好き…デスよ…」

また目を合わせて、激しい口づけを繰り返す。
ゆっくり…入ってくる千秋を感じながら、目を閉じて思った。

のだめ…やっぱり待つことにします…

******************
******************

甘い時間の余韻に浸りながら、のだめの髪をそっと撫でて言った。

「あのさ…その…俺と親父の…」
「しんいちくん」

のだめが遮る。

「いいですよ。やっぱり、ゆっくりでいいデス。のだめ、待ちマス。」

そして可愛くいつもの笑顔で、いつものセリフを言った。

「妻デスから。」
「…ばーか」

「それに今日は、めったに聞けない愛の告白をいっぱい聞けた…ぎゃぼっ!」
「…いいからもう寝ろ」

思い出して恥ずかしくなって…
のだめの頭を布団の中に押し込む。

「…カズオ…おやすみなさい…デス」
「…おやすみ」

そのおでこに小さくキスをして、ゆっくり…ゆっくり眠りに落ちていった。






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