独占欲
千秋真一×野田恵


「ムホー やっぱり先輩のご飯は最高デス!」

嬉しそうにパスタを頬張るのだめに、オレはかなり満足していた。というか、やっぱり作ったものはおいしく食べてもらわないとな…。
オレは上機嫌で、2本目のワインをあけた。

「ムキャ!先輩、飲み過ぎデスよ」
「どうせ明日は休みだし、いいんだよ。ところでおまえ、普段飯はどーしてるんだ?」
「それは…ターニャが作ってくれたりとか…。そういえば、先輩今日はどしたんデスか?急に」
「いや…近くまで来たから…」

本当は、顔を見たかったとはとても言えず、オレはグラスをとった。

「あっ、ちょっとゴメンナサイ」

のだめの鞄の中で着メロが鳴っている。

「Oui?あっ、リュカ、どしたんデスか?」

…リュカ…って誰だよ。男?
オレは波立つ心を抑えながら、グラスに口をつける。

のだめの電話はなかなか終わらない。オレは、空になったグラスにワインを注いだ。

「…あ、明日ですか?明日は…。ハイ…。じゃ、それはまたガコで…」

学校…コンヴァトの友達か…。

「ハイ。じゃ、オルボワ〜」

…リュカって誰だよ!なんて聞けるはずもなく、オレはまた、グラスに口をつける。のだめは料理に手を伸ばし、最高の笑顔を見せている。…リュカ、気になるが、まぁいいか…と思っていたら、再びのだめの携帯が鳴る。

「あっ、ポールからデス」

ポール?あのポールか!?
携帯を開けようとするのだめの手をとり、オレは思わず聞いていた。

「いつも、こんなにかかってくるのか?」
「…そデスね。休みの前とかは特に…あっ!」

油断も隙もねぇ!オレはのだめの手から携帯を奪うと、カウチに放り投げた。着メロはまだ鳴っていて、のだめが気にしているようだが、オレは構わずのだめの唇を奪っていた。

息をすることさえ忘れる位に、唇も、舌も、思うままに弄ぶ。
身体にまわされた腕で、身動きもできないのだめに気付いて、やっとオレは唇を離した。
のだめは息を荒くして、オレを見ている。

「どしたんデスか?急に…」
「………明日、何かあるのか?」
「…明日ですか?リュカが、家に来ないかって言ってたんですけど、先輩が来てるからお断りしてたんデス」
「家…?」
「そですヨ。時々ガコの帰りにゴハン食べに行ったり、ピアノの連弾したり」
「コンヴァトの友達なんだ?」
「初見の授業が一緒で…最初、のだめの口が変だって笑ったんデスヨ!失礼デスよね!でも、リュカはいろいろ勉強してるので、授業の後に教えてもらったりとか…」

………何度も家に行ってる?メシも食わせてもらって、いろいろ教えてもらって?…何だそれは!こいつ、やっぱり誰でもいいのか?
オレの頭の中で、会った事のない、リュカ がぐるぐる回る。
いや、そいつだけじゃない。ポールも…黒木君だって…。いや、でも、のだめがちょっと(?)おかしいって分かっていても誘って…休みの前の日に誘ってくるってどういうことだ?

「先輩、痛い…デス」

オレはいつのまにか、抱きしめた腕に力を込めていたらしく、のだめが戸惑った顔をしている。

「さっきから、変ですヨ?」

……こいつ、わかってねえ!!…いつも、黒木君のときも、フランクだって、いつも分かってなかった。分かってなくてもいいが、今は一人でいるのに。
いつだって、無防備て無邪気で…。

「あっ」

再び、携帯が鳴った。
カウチの方に意識を向けたのだめが許せない…そんな気持ちになって、オレは思わずのだめを抱き上げていた。

「先輩…?」

ベッドに下ろされ、半身を起こしたのだめが、戸惑ったようにオレを見ている。
オレは何も言えずに、のだめの肩をベッドに押し付け、再び唇を奪っていた。

「ふっ、うっ…ん」

苦しそうな、とぎれとぎれの声が聞こえる。歯列をわり舌を絡ませながら、ワンピースのファスナーを下ろした。
のだめの身体が硬くなり、抵抗をみせるのがわかる。でも、かまわない。
襟元からワンピースをずりおろし、セーターをたくしあげると、ブラに覆われた白い膨らみが姿を現した。繊細なレースで縁取られたブラを押し上げると、弾けるように二つの乳房があらわになる。
オレはゴクリと喉をならして、手をのばした。

「まっ、真一くん…」

のだめが、悲鳴のような声をあげた。

「………イヤなの?」

自分でも驚くほど冷たい声だった。のだめが、びくりと震えるのが分かる。

「………イヤ じゃ、ない…デス…………けど…」
「けど?」
「………怖い……デス…ひゃ!」

微かに震えるのだめの膨らみを片手におさめ、片方は口に含んだ。
舌でねぶっといくと、与えられる刺激で、先端が硬く尖ってくる。

「ふっ、あ……やっ…」

のだめの声が泣いているようなのは、快感のせいなのか怯えているのか。どちらなのか推し量るのも嫌で、オレの手は性急に動いていく。

「だっ、だめデス!」

レースのショーツに手を触れた時、のだめが本当に嫌がっている気がして…それが逆にオレを煽る。
…何がダメだって言うんだ……?
オレに組み敷かれているのだめに、抗う術はない。オレは構わず、細い紐をほどき、きつく閉じられたその場所を、こじあけるように手を伸ばす。

「やっ…」

のだめは本当に泣いているのかもしれない。
けれど、のだめが、心も身体も、全部オレのものだと…そんなことは有り得ないことだけれど、この瞬間だけでも、オレの全てがのだめのもので、のだめの全てもオレのものであって欲しくて…。
それなのに、指がたどり着いた先は、いつもとは違っていて。
いつもは、オレの手が触れる時は、熱く蜜を溢れさせているのに…。

オレは、冷たく身体を強張らせているのだめの脚に手をかけると、強引に割開き、その場所に口をつけた。

「いや…いやデス…」

のだめの声が震えている。
怯えたように隠れているその場所に舌を這わせ、そっとゆっくり、刺激を加えていく。唾液を含ませ、包皮の上から揺らしていくと、少しずつ、のだめの身体から力が抜けていくのが分かる。
しだいにその場所がぷっくりと膨らみはじめ、同時に、のだめの唇から甘い吐息が洩れはじめる。

「はうぅぅ」

少し顔を出したそこを、直に舌で舐め上げる。唇で包み、吸い付くと、のだめの身体がぶるぶると震えた。入口に指を這わせると、蜜が絡み付いてくる。
オレはそのまま、のだめの脚を掴み、自身を宛てがった。

「えっ!?まって!!せんぱ…い」

抗うのだめを押さえ付けるようにして、オレはそのまま、のだめの中へ、深く、押し入っていた。

………キツイ…な。

何度も肌を合わせていても、こんなに性急にコトを進めたのは初めてで、離れて暮らしている分間隔も空いていて、しかも、のだめの身体も充分に潤っていたわけではなかった。
身体を動かす度に、軋むような感覚がある。
ふと、不安になってのだめを見た。

のだめは眉を寄せ、苦しそうな息をもらしている。…眦には、涙が滲んでいた。

「…のだめ……」
「………先輩…ひどい…デス。何で?……怖い…」

言葉もかけず、身体が潤うのを待つこともなく、ただ身体をむさぼるオレに、のだめが反発しているのが分かる。
オレは何も言えず…何を言っていいかも分からずに、何度も何度も突き上げていく。
のだめは口に手を宛て、苦しそうに横を向いたままだ。

伝わらない気持ちが苦しくて、オレはのだめの胸元に手を伸ばす。白い豊かな膨らみを弄びながら、首筋や胸元に、何度もキスをした。その度に、白い肌に赤い痣が花びらのように刻まれていく。

「う、あ……。ううっ…やっ、あん…」

前進に与えられる快感に、のだめの唇から少しずつ甘い声が洩れ、オレに絡み付く部分も熱く、潤いをましていく。
…それでものだめは、顔を背けたままだ。

「こっちを見ろよ…」

のだめが、弾かれたように目をあけた。
その表情には、まだ怯えた色が残っている気がして、胸がチクリと痛んだ。

「オレを…見ろって………。めぐみ…」

小さく、そうつぶやいた瞬間、のだめの腕がふわりとオレの肩へ伸びた。

「めぐ…み?」

引き寄せられるようにして、オレはのだめに口づけていた。

くぐもった息が洩れる。
さっきまでのキスとはちがう、与え合う喜びを感じる。お互いの唾液を飲み下し、舌を絡めながら咥内を味わう。
唇を、舌を吸うたびに、のだめがきゅうきゅうとオレを締め付けてくる。
深く繋がったままのだめを突き上げ、両手で豊かな膨らみの硬く尖った頂をこねていく。

「ふっ…あっ……んっ」

唇の合わせ目から、のだめの吐息がもれ、繋がった部分からは激しい水音が響いていた。

お互いを感じて、気持ちを合わせていたい…。こんな気持ちを抱いたのはこいつが初めてで、だから誰にも渡したくなくて。
腕の中で甘い声を上げるのだめが…いや、どんなのだめも堪らなく愛おしい。

「しんいち…くん……あっん…のだめ……もぅ…」
「……め…ぐみ…オレ…も」

強く激しくのだめの中をすりあげ、熱い締め付けの中で、オレは欲情をはきだしていた。

「あ……あ!?あああっん」

いつもと違うのだめの反応に驚き…そして、一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
…いや、のだめは大切だし、特別な女だし、いずれは…と思うところもある。…いや、オレはいいが、こいつはこれからが大切なのに…もしも…。
それとも、無意識のうちに独占欲が?ぐるぐる頭の中で状況を飲み込もうとしているオレの耳に、のんびりしたのだめの声が聞こえる。

「びっくり、しました…」
「ごめ…」
「? だって、熱くて…ギャハ!!」

相変わらずの変態ぶりに、肩の力がぬけるのがわかる。
…まぁ、どうなってもいいか?その時がきたら考えよう。とりあえず、今するべきことは…

「シャワー、あびるか…」
「…え?」
「キレイにしないとな」

オレの言葉にのだめが赤くなる。そして、たぶんオレも…。

ぬるめのシャワーでのだめの身体を洗いながら、オレは考えていた。このままではダメだ…と。

翌々日。

マルレの事務所の帰り、オレはいつもと違う方向に車を走らせていた。
路肩に車を停め、電話をかける。

「もしもし、オレ…」
「あへ〜千秋先輩…。どしたんデスか?」
「いや、近くまできたし、メシ食いに行くか?」
「行きます!行きます!!」
「でも、用事とかないのか?」
「あ、そでした。ちょっと待って下さい。…リュカ、今日は先輩とご飯を食べに行くので、お家に行くのはまた今度にします!あっ!!」

のだめがオレの車を見つけ、手を振っている。オレは、のだめの側にいるだろう リュカ を探した。
……あれが、リュカ?一体何歳だ?
それでも、喜々として助手席にのりこむのだめを、呆然と見送る姿に、ささやかながら優越感に浸る。
…そしてその時、同じように呆然としているRuiがいたわけだが、もちろんオレが現場を見ていた訳ではない。お節介なターニャが、後で教えてくれただけで。

「先輩、今日のご飯はなんですか?のだめ、米がいいデス〜」
「和食もたまにはいいか…」
「ムッキャー!嬉しいデス〜」
「ところで、リュカって…」
「リュカですか?先輩、会ったコトなかったですか?まだ15歳なんですけど、ピアノも上手だし、結構すごいんですよ」

………15歳…それは、安心していいのか、逆に心配なのか。
オレの苦悩は続きそうだ…。






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