それでいい
千秋真一×野田恵


−それでいい オレが見失わなければー

初めてのリサイタルを終え、頬を紅潮させているのだめを抱き寄せ、くちづけた。夏の夜風が、ほてった身体に心地いい。
のだめを全身で感じたくて、抱き寄せると、重なった胸にお互いの鼓動を感じる…。

『のだめー、どこー?』

遠くで呼ぶ声がする。

「…呼ばれてマス」
「もう、いいだろ」
「…」

抱きしめた腕に力をこめた。のだめをこうやって抱きしめるのは、久しぶりだ…。

『一緒にキラキラ星、弾こう』

のだめを呼ぶ声が、また聞こえた。

「…行ってきマス!」
「えっ?」

引き止める間もなく、のだめは腕をすりぬけて、喧騒の中に戻っていった。



「真一くん…もう寝てマスか?」

シャワーを浴びたのだめがベッドに潜り込みオレの顔を覗き込む。…昨日と同じネグリジェで。

「起きてるよ…。おまえ、結局何曲弾いたんだ?」
「…よく覚えてません。ターニャも呆れてました」
「…楽しかった?」
「ハイ」
「なら、いいんじゃない?」

ふんわりと石鹸の香りのするのだめを抱き寄せる。

「ムフー、腕枕…。久しぶりデス」

腕というより、胸元にすりよるようにしてくるのだめの額にキスをする。…額だけでなく、頬に、首筋に、そして唇に…

「真一…くん?」
「いいだろ?」

ここ最近、リサイタルが近いからとのだめは休みでも学校へ行き、オレの部屋に来てもピアノを弾き、メシを食べるだけで、こうして過ごすことはなくて…。
それをわかっているからか、リサイタルの興奮が残っているのか…それとも、のだめも求めているのか、のだめはこくりと頷いて、自分からくちづけ舌を絡ませてきた。

ネグリジエの隙間から張りのある、でも、やわらかな胸に手をのばすて、ピクリとのだめが反応する。
唇が届く場所すべてにキスをしながら、やわやわと膨らみを弄ぶと先端が硬く尖ってくる。指ではさみ、軽く力を加えてこねてやると、のだめの唇から、甘い吐息がもれてきた。

ノエルの夜から半年以上過ぎて…初めはオレの行為ひとつひとつに驚き、恥ずかしがりためらいながら応えていたのだめだったが、最近はすこしゆとりも見え隠れする。
こんなふうに、胸の頂きを口に含んで舌で転がしたり、吸い付いたりすると、恥ずかしそうに顔を背けながらも、普段とはまるで違う、甘いかわいい声を聞かせてくれるようになっていた。
頬を染めて、荒い吐息をもらすのだめの反応を確かめながら、脚からウエストへとゆっくりと掌を滑らせていく。

「先輩…くすぐった…い…」
「くすぐったい…だけ?」
「…」

のだめは答えない。それは、Yesと言っているのも同じことだ。
オレは、ネグリジエの肩をずらし、足元から引き抜く。

「や…」

ベッドの中で、小さなレースのショーツだけにされたのだめが、恥ずかしそうに身をよじる。

見られる事、服を脱ぐことにまだまだ抵抗のあるのだめがかわいくて、思わずわざとそう仕向ける事もあったり…。
…久しぶりに触れるのだめの身体は、以前と同じように温かく柔らかで、指で舌で愛撫するたびに発せられる甘い吐息とも合わさって、オレの欲情を高めていく。
そして、ショーツごしにそこを指でなぞるとぬるりとした感触があった。

「もう、こんな…?」
「いやっ!真一くんの…カズオ…」
「カズオ?こんなに気持ち良くさせてるのに…?」
「それは…はうっ!ああっ…」

一際高く、のだめが鳴く。
見つけたその場所を円を描くようになぞるたび、のだめの声は
高くなり、途切れ途切れに喘ぎながら、快感を訴える。

その、甘い声に煽られるように、細い紐を解き、その場所に触れた。
のだめの身体がピクリと震える。
直に触れると、すでにそこが十分に潤っている事がわかる。…オレの欲情は、もう止められなかった…。

準備をして、のだめの中に一気に自身を沈めた。

「はぅっ、あああっ…」

オレを受け入れたのだめも、熱い吐息をもらしている。
熱くて締め付けてくるその中を、いつもより性急に出入りする。オレの動きに合わせてのだめの声がもれ、白い胸が揺れる。誘うような膨らみを口に含みながら、何度も何度ものだめの中をすりあげる。

のだめは、いつでもオレの考えもしない所へ飛んでいく。今日も……。たまらなく魅力的な、のだめのそんな部分が、オレをひきつけ、…不安にさせる事もある。…でも、きっと大丈夫なはずだ。
こうして…身体だけでなく…お互いが求め合う限り。

次第に加速していく動きに呼応するように、のだめの吐息も切れ切れに、切なげになっていた。

「はっ…ああっ、あ…んっ!真一…く…ん!ああっ…ん」
「の…だめ…、イイ…?」
「も、だめ…もう、だめ…デス!はっ、あああああっっん!!」

切ない甘い声と共に、のだめの中がびくびくと震え、しめつける。絞り上げるようなその刺激にオレも欲情をはきだした。


まだ、荒い息をしているのだめにくちづける。
のだめはまだ快感の波に漂い、ぼんやりとオレを見ている。
放心状態ののだめの汗ばんだ身体を抱き寄せ、乱れた髪を撫で付ける。

「のだめ…」
「ハイ…」
「おまえ、…太った?」
「…!?…のだめ、ウエストはちゃんと入りましたヨ!…あれは、真一くんのせいデス!」
「はあ?」
「だって、ターニャが、彼氏がおっぱい星人だと胸が大きくなるって!」
「………」

「……なら」
「なんデスか?」
「もっと大きくしてやるよ」
「ムキャ!はうっ!!」
「今度は、…じっくりしてやるから…」
「えっ?ひゃ!ああっ!」

再びその膨らみを唇で捉えられ、のだめの抗議は甘い吐息に変わっていった。



「千秋くん、大丈夫?」
「えっ?ああ…」

助手席にいる黒木くんに、何度目かのあくびを指摘されてしまった。

「昨日遅かったし、もう少しゆっくりしていても良かったんじゃ…」
「えー!もう嫌よ!お城はステキだけど、ご飯はまずいし、これ以上いたら、次は何をさせられるかわからなかったじゃない!」
「そ、それはそうだけど…。あっ、め、恵ちゃん、疲れてたのかよく寝てるね!」

…そう、のだめは後部座席で、ターニャにもたれかかるようにして眠っている。

「まあ、初めてのリサイタルだったし…」
「リサイタルの後も、千秋が離してくれなくてタイヘンだったんじゃないの〜?」
「なっ…!」
「ちょっと!ちゃんと前見てよ!」

ターニャに図星をさされ、思わず車体がセンターラインにぶれてしまったのだ…。

「ち、千秋くん、やっぱり疲れているんじゃない?海沿いに車を止められる所があったし、そこで一休みしたら?」
「い、いや!大丈夫だから!」
「でも、顔色が…」
「マルレのオーディションもあるし!バカンスはもう終わりだ!」
「え〜!!」

ターニャが文句を言っている。けれど、これ以上海に近づいて…ついでに、のだめとの事を冷やかされてたまるか!オレは必死で車を走らせていた。






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