ひみつのじゅうでん
千秋真一×野田恵


わたしは最近、がんばっている。
日本にいた時は、気ままに思うままにピアノを弾いていられればよかった。
…でも、私は出会ってしまった。…彼、千秋真一くんに。

ずっと一緒にいるためには、本気で音楽と向き合わなくちゃいけない。海外についていくためには、コンクルで勝たないといけない。
そして今は…コンクル禁止令がでているから、千秋先輩とずっと一緒にいるために、二人でコンチェルトをするために、ひとつひとつの課題をこなす。

…今が頑張り時だってわかってる。
…だからあの日、離れて暮らそうと言った先輩の言葉にも、素直に頷いた。本当は、

「なんでそがん言うと!」

って言って、泣いてすがりたかったけど、ぐっとこらえて

「わかりました」

って精一杯答えた。

今、初めてのサロンコンサトに向けて私は毎日ピアノを弾いている。…先輩とは、なかなか会えない。

どうしても恋しくて淋しいときは、一人でこっそりじゅうでんする。先輩がいるわけじゃないけど、この部屋には先輩の気配がそこらじゅうに残っているから、見られてる!?と思ってドキリとすることも…ある。

必須アイテムは先輩の匂いが残るシャツ。
その、微かな残り香をめいっぱい吸い込みながら、先輩がしてくれるように自分に触れる…。
それは、秘密でとても気持ちいい時間。
先輩の手の動きを真似て、硬くなった胸の突起をこね、蜜を溢れさせる場所へ手をのばす。
…先輩が触れなくても、そこは蜜で溢れるし、快感もある。

…でも、違う………。違うから、哀しくて会いたくて涙がこぼれる。
本当は、何時でも側にいたい。
いつも一緒にいられなくても、帰る場所に…いたい。でめ、それじゃ駄目だって、何かが囁くから。

だからこそ、私はがんばっている。
先輩と私が、同じ帰る場所を持てるように。音楽という、先輩が決して離さない大切なポジションの中で、対等でいたいから。

もうすぐ、サロンコンサト…。
今の最高の自分で、その場所に立つ。
それが、ずっと一緒にいるための最短距離だと…信じてるから。明日は、初めてのサロンコンサト…。絶対、先輩をギャフンと言わせて見せる!






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