ヒゲリレー
千秋真一×野田恵


「千秋先輩…?寝てるんですか…」

のだめが、そっとカウチに横たわる千秋に近づいた。

「ムキャァ…不精髭です。こんな先輩もしゅてき…。デシカメ持ってくればよかったデスね。はぅ〜先輩の匂いがします……」

膝をついて、千秋の胸元に頬をよせるのだめ。鼓動が聞こえ、体温が伝わる。

(ほんとは充電したいんですけど…)

のだめは思う。
最近、自分は課題、千秋も公演前で忙しくゆっくり過ごす時間もない。今日も借りたい本があったから部屋を訪れたのだ。

「…風邪、ひきますヨ?」

のだめは千秋にそっとブランケットをかけた。
その時…

「むきゃっ!」

襟元が開かないようにとブランケットをかけたのだめの手首を、千秋がつかんでいた。

「あ、あれ?先輩寝ぼけているんデスかね?」

いきなり掴まれた手首に驚き、千秋の様子をうかがうもののそれ以上動く様子はない。
ギュッとのだめの手首を掴んだまま、未だ眠りの世界にいるようだ。

「先輩、相当お疲れのようデスね。おヒゲもこんなに……」

床に落ちてしまったブランケットを拾い、再び眠る千秋の胸元まで覆う。
ゆっくりと千秋の眠りを妨げないよう、ブランケットを整えるのだめの目に映るのは、
普段あまり見つめることの許されない、端正な顔立ちだった。

ここのところ、お互い肌を合わせていない。
こうしてゆっくりと千秋に触れるのは、久しぶりだ。
のだめは多忙だった時間の寂しさを埋めるように、そっと千秋の頬に触れた。

普段はきめ細やかな頬に、まったく違う感触がある。
ざらざらとしたその感触は、決して自分にはないもので……、
のだめは触れるほどに心が熱くなっていくのを感じた。

「先輩……、いつもは女の人みたいにすべすべのお肌なのに」

一人呟いてみるが、未だ千秋が起きる様子はない。
のだめは、さらに千秋との距離を詰め、そっとその様子をうかがった。
首元に顔を近づけるが、いつものコロンの匂いはしない。
かわりに感じるのは、微かな汗の匂い。
いつもはコロンの匂いと混じり合っていてはっきりと識ることはできない、
柔らかく少し芳ばしいような千秋本来の匂い。

スーッと息を吸い千秋の匂いを肺いっぱいに満たすと、どこか安心した様な気分になる。
そして、それと同時にやはり胸が熱く高鳴っていく。
肌で感じた髭の感触、混じり気のない千秋の匂いに、自分が高まっているのだということを、
のだめは自覚していた。

「な、なんかドキドキしてきちゃいました……」

これ以上、千秋を観察していたところで、何かが始まるわけでもない。
とりあえずこの場を離れようと、のだめは腰をあげた。
自分の部屋に帰ろうかと思案していると、パサッっという音と共に先ほど千秋にかけた
ブランケットが床に落ちていくのが見えた。

「先輩?起きたんデスか?」

声をかけてみると、今度は反応がある。

「んー?」
「先輩、眠るんだったらベッドに行った方がぐっすり眠れマスよ。のだめ連れて行ってあげますから……」
「ぁー、のだめ?」
「はい、のだめデスよ」

覚醒したばかりの千秋の受け答えは、普段とは違い妙に幼い感じがする。
のだめはそんな千秋の様子がおかしく、まるで母親の様な口調で語りかけた。

「真一くん。ベッドに行かなきゃ。それにお疲れなのは分かりますけど、
ちゃんとお風呂に入ってから寝た方がいいデスよ。疲れがとれないデショ?」

千秋からの反応はない。まだ半分は眠りの世界にいるようだ。

「真一くん。聞いてマスかー?」
「なんか、久し振り」
「へ?」

言葉を返す間もなく、ぐいっと腕を引っ張られた。
のだめは何が起こったのかも分からないままに、気がつくと千秋の胸の上に伸しかかる
体勢になっていた。

「え?ちょっと、せんぱっ……」

言葉を発する暇もなく、千秋の唇が押しつけられる。
長く熱い舌がのだめの口中に入り込み、各処を探っている。
いつもなら感じる加減がそこにはなかった。

「っは……」

唇を解放されやっとの思いで呼吸をすると、今度はきつく顎に吸いつかれた。

「きゃっ……」

感じたことのない快感が、のだめの体内に流れ込んでいく。
千秋の掌は熱く、いつの間にかのだめの胸元を捕らえていた。

次の瞬間には、また唇を捕えられる。肌に感じる千秋の息が、とても熱い。
赤い舌先はのだめの下唇をなぞり、そのまま歯列を舐めていく。
再び長い舌が入り込んだかと思うと、今度は口の上側をゆっくりと愛撫された。

「しんいち……く…ん」

普段の千秋からは考えられない強引な行動、呼吸もできない程の容赦ない口付け、
唇が触れ合うたびに感じるざらざらとした髭の感触、そして直に熱く感じる千秋の匂い。
経験したことのない出来事の嵐に、のだめは考える余裕を失っていった。

いつもだったらこういうときでも紳士でしかない千秋だが、今日は違っていた。
汗の香りや、キスに感じる、いつもよりも濃い煙草の香り。
こちらを気遣う動きではない、指先の動き。
強引に抱かれ、上に乗っかる体制になると、すかさず膝が足の間を割り入ってきた。

「あ、ちょっと、せんぱいっ」

のだめは的確なその愛撫にぎゅっと目を閉じた。
指先はどうしてわかるのか服の上から迷いなく乳首をつまみ、足の付け根はぐいぐいと圧迫される。
その間、唇も舌も休みなく求められた。

口腔に入り込んでくる、強い男の香り。
まるで千秋ではない人としているような……。
でも、感じる体温も、抱き合った体の形も、自分が知っている千秋の体である事に間違いはない。
こんなに、ワイルドな先輩って初めて……。
その、考えもしなかったギャップが、のだめの体の奥を疼かせる。

のだめはわかっていた。
自分のそこに千秋の腿が押し当てられたとき、すでに潤んでいた事を。
どうしよう、気持ちよくなっちゃう……。
一方的な強い愛撫に感じている自分に驚きつつも、それを振りほどく事が出来ない。

「や……あぁん……んん……!!」

強くピリッとした感覚が胸元から走って、驚いたのだめは顔を上げた。
胸元を見れば、シャツワンピのボタンの第2、第3ボタンだけが外れていた。
そのわずかな隙間から千秋の指が入り込み、中ではブラが押し下げられ……。
そこから窮屈そうに自分の乳首が顔を出していた。

なんでこんな……器用すぎデス!!
その尖った突起を指の間に挟まれ、くい、とつままれた。

「ひゃ……!」

またじんわりと自分が濡れだしてきたのがわかる。
衝撃的なほどの胸への愛撫が、のだめの理性をさらに吹き飛ばしていく。

「あん、だめぇ……」

たまらずに自分から唇を押し付け、夢中で舌を絡ませた。

ぬるっとした感覚と、かすかに響くくちゅっという音……。
気づけばのだめも、自分の大事な場所を千秋の腿に押し付けるようにして自分から腰を振っていた。

すると、ふっと千秋が上体を起こした。

「せん…ぱい?ベット…?」

のだめは少し息があがっている。言葉も続かない。
移動するつもりではだけた服をなんとなく直していると
千秋は何も言わずのだめの体をカウチに横たわらせた。

今度はのだめの上に千秋がのしかかる様になってしまった。
せまいカウチ。自由もきかない。

「しんいちくん…ここで?」

千秋は無言のまま。
でも顔が耳元に近づいてくると…
貪るように唇が這っていく。

「ぁ…んん」

耳朶を少しきつく甘噛みされて、ため息と吐息が混じったような声。
千秋の舌が耳の中に入ってきて、くちゅ…くちゅと鼓膜に響いてくる。

(先輩に…指でされてるときの音に似てる……)

そう思うだけで自分が潤ってくるのがわかる。

「んんっ…はぁぁ」

のだめを求めながら千秋が声を漏らす。
とたんにのだめの背中にゾクリとした感覚がはしった。
こういう状態で千秋が吐息を漏らすことがあっただろうか…。
舌先が顔のラインから顎をすぅっと伝っていく。
千秋の唇が近づくと煙草の香りが鼻腔をくすぐる。
顔が触れると無精髭が肌をかすめて…

「し…んい…ち…くん……何か…言って……」
いつもと違う刺激にのだめは意識を保つのが精一杯だった。

ボタンをはだけた隙間から覗く肌に、千秋の唇が這う。その度に柔らかな唇と…いつもとは違うザラザラとした感触がある。

「はぅっ、な…なんですか…?」

慣れない感覚に戸惑っていると、千秋はブラを押し上げて剥き出しになった乳首を舌で絡めとる。片方は舌で、もう片方は指でこねられて、身体の中心から疼くような快感が沸き上がってくる。

ちゅぷ…ちゅぱ…

吸い付かれる度に硬く、敏感になる場所を飽きる事なく千秋は弄ぶ。

「はう…」

ようやく舌と指での愛撫に開放され、のだめは小さく吐息をついた。

「ひゃっ、あっ!」

けれどもそれは一瞬で、千秋は唇を滑らせるようにして反対側の乳首を口に含んだ。
唇が、押し付けるように、円を描くように動くたび、敏感な場所にちくちくと…いつもとは違う刺激がある。
甘い快感と、きもちいいはずのない刺激が重なる。
未知の刺激に、のだめはもう理性などどこかに吹き飛んでしまっていた。

感じるのは煙草と汗の匂い。
いつもよりずっと色濃く分かる千秋の男の部分。

相変わらず千秋は何も言おうとしないが、その絶え間ない愛撫に
自分がどれほど求められているのかということが、よく分かる。
そして、千秋自身がこれまで無かった程に高まっているということも。

「しんいち…くん……もっと……」
「うん……」
「気持ちいい……デス」
「オレも……」

体の奥が痺れるように熱い。
足の付け根には、先ほどから絶えず千秋による圧迫を感じていた。
普段、のだめの準備が整うまでは決してそんな振る舞いをしない千秋が、
まるで少しの我慢もできないとでもいう様に、きつく自身をのだめに圧しつけている。
布越しでさえも激しく感じるその突き上げに、のだめは言い様のない疼きを感じた。

ここは、カウチの上で、部屋の中は明るく、自分はいやらしく衣服を乱されたままだ。
何もかもが、いつもとは違う。
いつもの様に、未だ慣れない自分を気遣って、千秋が知らぬ間に整えてくれている場の中で
触れ合っているのではない。
今、千秋は何にも捉われることなく、ただ自分のことだけを求め、高まっている。

のだめは、どこかに消えていってしまいそうななけなしの理性で、
男に求められるがままに抱かれるという感覚を理解し始めていた。

千秋の手が、ワンピースの裾を捲くり上げる。

「あっ…」

その動きの意図が分かって、のだめは思わず羞恥の声を上げていた。

けれど千秋の手は、ためらいなく細いリボンを解く。片方だけ解かれたショーツが頼りなくめくれ、あらわになった場所に滑り込む。

「ああっ!」

強烈な快感に、思わず大きな声が出てしまう。
ぬるぬると指が上下し、すでにぱんばんに膨らんだ場所を撫でさすられる。

「しんいち…くんっ…。そんなっ!」

震える手で千秋のシャツを掴み、のだめは絶え間無く与えられる快感を必死で受け止めていた。執拗な愛撫と、煙草とコロンの混じり合う千秋の匂いに包まれて、のだめは最初の絶頂を迎えようとしていた。

けれどその時、千秋の動きがピタリと止まる。

(どうしてデスか?)

普段の千秋なら、このままのだめを高みに押し上げてくれる。
けれど、今日は違う。
千秋は身体を起こすと、自分の服に手をかけていた。

シャツをはだけただけで、千秋がのだめに自身を押し当てる。
のだめは、瞬間我に返っていた。

「し、真一くん…待ってください」
「何…?」
「つ、付けてないデス」
「………」

千秋の反応はいつもとはまるで違っている。

「き、今日は、のだめがシマス」
「ん…」

のだめは、カウチの境目に手を伸ばしそれを手にするとフィルムを破った。

カウチに軽く腰を降ろした千秋のそこは…もちろんこんなに明るい所でまじまじと見るのは初めてで。
見ているのは自分なのに、恥ずかしい…。羞恥と戸惑いと好奇心とが混じり合うなか、既に硬く、先端から透明な液体を溢れさせているそこに、薄い膜を被せていく。

ピチピチという音と共に、膜を被せていく。指を通して伝わる硬さと質感と熱さ…。それを感じて、のだめの身体の奥がじんと熱くなる。蜜が溢れていくのが自分でもわかるくらいだ。

(恥ずかしい…でも…早く欲しいデス…)

直前まで高められた身体は、それで一杯になることを強く求めている。のだめは思わず熱い吐息をもらしていた。

「で、できましたよ…?」

やっとそれだけ言うと、千秋の手がのだめの身体にのび。再びカウチに仰向けにされていた。

(ここで…このままデスか?)

わかってはいたけれど、窮屈なカウチで、明るい部屋の中で…いつもとは違う千秋で……。

「あっ!はっ、あああ……んっ」

千秋が一気に押し入って来て、のだめは止めようもない声を発してしまう。

思いきり奥まで満たされて、息をするのも忘れるほどだ。そして、そんなのだめを待つ事なく、千秋が動きはじめる。

気がつくと、のだめの姿勢は、片足はカウチの背もたれの上に。
もう片足は千秋の腕に抱え上げられ、股間を大きくひろげられている。
大きく、ゆっさゆっさと身体を突き上げられて、のだめはあられもなく嬌声をあげていた。

「ああんっ!はんっ!や!ひ!ひろげ、すぎ!やっ!アっ!ああっ!ああ…!」

突き上げのリズムは徐々に早まり、ちゅぶっちゅぶっっと水音と、二人の衝突音が室内に響いた。
のだめは一方的な愛撫に翻弄されながら、薄目を開け、千秋を見た。
いつもの正常位ならば、こんなときはのだめの反応を観察しながらねちっぽく愛撫する千秋だったが、やはり今日はどこかちがう。
カウチの上で身体を起こしたまま、のだめを突き上げ、腰を激しく前後させながら、目線はある一点を見つめている。
千秋は、自分とのだめの結合部分を、凝視していた。
そこは愛液をほとばしらせながら、白く泡を吹き、千秋の太い幹が抜き挿しされる度、陰唇がめくれ、縮みを繰りかえし生き物のように蠢いていた。

「や、や、や、見、みない、で、あんっ、あんあ、あ、あ、あああああ…!!」

千秋の視線を感じ、羞恥にますます身体の芯が熱くなったと思ったとたん、千秋の突き上げが急激に早まった。

ただただ、縦に。まるで千秋自身を刻み込むように深く、動きは激しくなっていく。
いっぱいに満たされている満足感と圧倒的な質量に、のだめは言葉を発することすらできない。
中途半端な自分の呼吸に交じって耳に入るのは、ぐちゃぐちゃに混ざり合った粘液の音と、紛れもない千秋の吐息。
ハッハッと苦しそうにのだめの耳に響いてくる。

普段、千秋は行為の最中にあまり声を荒げない。そんな男が目を瞑り、快感を噛み締める様にして
自分の上に圧し掛かかり汗をかいている。
千秋の顎先から首筋へと幾筋も汗が流れていくのを見て、のだめは今二人が同じ快感の渦の中にいることを
強く感じた。

「っく……」
「しんいちくん……っ、もっと、もっと…っ」

のだめの身体は、突き上げられるたびに杭で貫かれたようにびくん、びくんと跳ねる。
幾度も繰り返される同じリズム。そして、同時に千秋の身体全体を使って与えられる激しい愛撫。

「っあ……ん……っ、ひゃ…ぁん…っああ……!」

律動は次第に二人の呼吸を一つにしていく。どちらからともなく両手を握り合わせ、二人離れている場所はもう存在しない。

「しんいちくん……いっぱい、いっぱい……っひゃぁ…ぁぁあっ……」

肉と肉が擦れる音と、粘液の交わる音、そして泣き声の様なのだめの嬌声が部屋の中に響き渡っていった。
二人、ぴったりと重なり合った間で、キツく性感帯が擦れ合い、のだめの声を荒げていく。
絶え間なく訪れ続ける快楽の波。二人の隙間を埋める様に、まるで互いを貪る様に交わす口付けは激しさを増していった。

「っは……ふぅっ……んん」

唇を離すと、透き通った糸がツゥっと互いの口の端から垂れる。それはねっとりとした線を引いて千秋とのだめを繋いでいた。

「はぷぅ…うっ…ア…き…も…ち…い…イ…イ…イ…イ…っつ…っく!…っく!…いくっ!…いくァッ!…っっっ!!」

嵐の中にいるような、これまで感じた事がない絶頂感にのだめはいた。
身体は熱い飴のようにとろけ、ありえないような角度に反りかえり、もう人の形をなしていないに違いない。
千秋もまた獣のようにうめき声を響かせて、ぴた、と律動を止めた。
その背がのだめの上で、ぶるるっと震える。

「くあああっ…うっ…う…う…っうううっ……。」

のだめは飛びそうな意識の端で、体内に千秋のそれを、受け入れた事を、数度の弾けたような爆裂感で感じとっていた。

千秋の身体がのだめの上に崩れ落ちる。

汗ばんだ身体と千秋の匂いにつつまれ、その重みは息苦しさと…今まで感じたことのない幸福感をのだめにもたらしていた。

(いつも、のだめが気持ちよくなるように…優しくしてくれてるんデスね)

のだめは、千秋の乱れた髪を直しながら額にそっと口づけ、抱きしめた。

そっと身体を動かすと、千秋の放ったものが流れだすのがわかる。

「はぅ…」

耳まで赤くなってしまうのが、自分で分かる。
のだめは腕をのばし、テーブルの上からティッシュを取って…いつも千秋がしてくれるように後片付けをした。

(な、なんだか…ドキドキしますね)

怖ず怖ずと身体をずらし、まだぼんやりとしている千秋を揺する。

「先輩…お風呂入りませんか?」

射精の余韻の律動なのか、千秋の腰はまだ前後していた。
のだめもまた、その動きでくすぐったいような快楽が引かないでいる。
すがるように胸に顔をうずめている千秋の黒い髪を、抱きしめて何度も梳いた。

こんなの、こんなのって……。
今まで千秋が教えてくれたセックスは、優しくて幸せに満ち、常にのだめを主体としたものであった。
本当に「嫌」だということはすぐにやめてくれ、「痛い」と言えばすぐに気遣ってくれる。
時に強く求めあう事はあるにはあったけれど、それですら、優しいものであった。
本能のままの、千秋の男の部分。
のだめは、初めてそれを見、感じた。
それと同時に、自分が限りなく女なのであると感じ、それがとてつもなく嬉しく思う。

やがて千秋の動きは止まり、大きな吐息とともに顔をあげた。

「しんいち、くん……?」
「は……あ……あ……?」

うつろにぼんやりとしていた瞳の焦点が定まり、生気が宿る。

「えっ……な……ああっ!?」
「や、はぁん」

慌てて千秋が上体を起こしたため、まだ硬度を持っていたものが、のだめの内部をこすり上げながら出て行った。
千秋は状況がつかめずに、目を白黒させている。

「やべえ…全然覚えてない…」

のだめがはってくれた湯に浸かりながら
千秋は必死に記憶の糸をたどる。
ずっと夢だと思っていた。
何かのだめがしゃべっている…
キスして、舌が絡んで…
その舌が執拗にのだめの豊かな胸の頂を吸い尽くす。

(それから……)

千秋は急に恥ずかしさがこみ上げてきて顔をお湯につけた。

(妙にリアルな夢だと思ったんだよな…感触とか…)


「先輩…お風呂入りませんか?」
「しんいちくん?」
「のだめ、ベトベトです〜。今までになく粘着でしたヨ?
しんいちくんもすごい汗かいてますし…、のだめが洗ってあげますから」

千秋は驚いてのだめを頭から足まで見つめたあと、自分の格好を身、

「あれ…俺……?」

状況がちっとも掴めないでいた。


「ごめ…なんか記憶が…(ゴムまで着けさせたなんて…)」

お湯が溜まる間のだめに話を聞いても自分のこととは思えなかった。

「覚えてないんですか…」

のだめは怒ったような残念そうな、複雑な表情をした。

「なんか…した?俺…」
「ハイ。ばっちり。のだめ、しんいちくんの本性を知りました。」
「マジかよ…(何やったんだよ、俺…)」

「しんいちくんはのだめんこつ大事に思ってくれとんやね」

カウチに並んで座っていると真正面を見つめながらのだめが言った。

「いつものだめのこと考えて触れてくれてたんですね。
でも今日はしんいちくんが男だってしみじみ感じました。」
「のだめにはぶつけていいんですよ?」

のだめは千秋の顔を覗き込んで言った。そして両手で顔を挟むと、

「無精髭もステキです」と軽くキスをしてきた。
「さぁ、先に入ってて下さい。のだめも後から行きマス」


ガチャと浴室のドアが開いた。

千秋の視線を避けるようにしながら、バスタブにのだめが身体を沈めていく。

それでも千秋の目は、のだめの首筋や胸元にくぎづけになっていた。…そこには、いくつものいつもより濃い色をした花びらのような痣が、無数に散っている。

「むきゃ!どこ見てるんデスか?」

恥じらうように身を隠すのだめは、まだ気付いていないようだ。

「鏡、見てみろよ…」

のだめはそっと立ち上がり、自身を映す。

「がぼん…これじやしばらくは首のあいた服、着れませんね」

再びバスタブに浸かると、のだめが困ったように微笑んでいる。

「あの…痛いとか……ない?」

のだめから目を逸らすようにしながら、千秋が尋ねる。

「だ、だいじょぶデスよ!」
「…本当に?」
「ハイ」
「でも、結構無茶をした気がするし…」

視線を移すと、のだめは耳まで真っ赤になっている。

「なっ、どうした…?」

(強引だったけれど、驚くくらい濡れて感じていたなんてとても言えません…)

のだめは、ほんの少し前の初めての快感を思い出し、再び身体の奥が熱くなるのを感じていた。

「……ち、良かったデス。」
「え?」
「ちゃんと気持ちよかった……です…だからダイジョブ…。」

のだめはのぼせたように顔から肩まで赤く染まりながら、小さな声でつぶやくように報告してくれた。
オレは記憶が無い間、どんな行為をのだめにしたのか、気になって、だが知るのはやばいような。
さきほど「本性」と言われたのが、いったいどういう意味からなのか。
自己を制御できていないのが、情けなくもあり、大失態のような気もして、。
湯につかっているのに、ちっとも温まる気がしない。

「けだものみたいな先輩でものだめ好きデスヨ?」

のだめは、しめった前髪の間から上目使いで言ってくる。

「のだめ丸呑みにされたみたいでした…。」

ジャブン!

急にのだめが膝立ちになると、ダイビングしてくるような勢いで、バスタブの中で抱きついてきた。

「おっ、おい!」
「ムキャーーー!」

バシャン!ザブ…ザブ…

のだめの身体をうけとめる。波だってあふれた湯がぶつかり合い、やがてまた静かな水面に落ちついてくる。
俺に覆いかぶさって来たのだめに、俺はの唇がふさがれた。

「好きデス…大好き…大好き…。」

両頬をのだめの手ではさみこまれ、俺の上唇、下唇が交互に食まれ、舌が歯列を舐めあげる。

「のだめ…。」
「大好きなんです…。」

「ん…」

キスしながらちょっと顔を動かすと、のだめの顎と自分の顎が触れ合い、
伸びていたヒゲがのだめの白いやわらかい顎をかすめた。
のだめの肌に傷をつけたくない、とオレは洗面所のシェーバーに目をやった。

「先輩…おヒゲ、そっちゃうんですか?」
「だって…、痛いだろ?」
「…まだ剃らないでくだサイ。」

のだめはまたオレの唇を自分の唇でふさぎ、唇のまわり、顎に唇を這わせた。
ザラザラとこすられる感触がちょっと気持ちいい。

「…なんで?」

オレはのだめをバスタブのふちに座らせて、自分も膝立ちになって
のだめの首筋に唇を這わせながら聞いた。

「んん…ちくちく、ザラザラする感触がきもちいいんですっ…」

のだめは顔を真っ赤にしながら小さくつぶやいた。

「……こんなところ、でも?」

オレは唇を首筋からのだめの胸まですすっと這わせ、乳首を口に含んで甘噛みすると
わざと強く顎ヒゲで乳首の頂をこすった。

「ああっ・・・」

のだめがのけそりながら、小さく叫んだ。

「はぅっ、あっん…」

千秋の唇が肌をかすめ、チクチクとした感触があるたびに、のだめが吐息を漏らし、バスルームに甘い声が響く。

「おまえ、こういうのがいいんだ…?」

見透かされたような言葉に、身体の奥がまた…甘く疼く、
思わずのだめは、足を擦り合わせるようにして身もだえる。そして、そんなのだめを今の千秋が見逃すはずもなかった。

いくつもの痣が残る胸元や首筋とは逆に、きつく閉じられた脚は綺麗なままだ。千秋は、まだ今日は触れていないらしいその場所を目指して唇を滑らせていく。

胸元から緩やかな曲線を描く腹部へ、舌を滑らせキスをする。と、同時に頬やあごが触れていく。

「ふっ…やっん…」

のだめが、いつもとは違う刺激に夢中になっているのがわかる。だからこそ、そこを刺激したらどんな反応をみせるのか…。
千秋は自分の欲情が高まっていくのを感じつつ、それでも急ぐことなく、のだめの肌を味わっていた。

千秋はバスタブに沈むとのだめを引き寄せ、後ろから抱きかかえる姿勢をとった。
さっきのだめがバスタブの中でサブサブと動いたせいか、
バスタブの水位はのだめの胸下になっている。
千秋は顔をのだめの肩にもたれかけ、両手でのだめの乳房をとらえた。
この体勢で胸を愛撫するのが、千秋は好きだ。
のだめの豊満な胸のふくらみを下から持ち上げるように、たぷたぷと揺らす。

「…しんいちくん、この体勢好きデスよね…んんっ」

ばれていたのか…。

「ほんとにおっぱい星人デスよね…」
「違う…」

図星をつかれてオレはのだめにぴしゃっと水をかけた。

「洗ってやるよ」

千秋は石鹸を両手にとると、のだめの乳房に泡をぬりこめた。
ぬるぬるした感触が広がる。

「ああっ…やっ」

千秋は泡だらけの指で先端をつまみ、こねる。
泡で滑ってくすぐったいような、もっと強い刺激を与えて欲しくて、のだめは身をよじって
後ろを振り返り千秋に唇を重ねた。
いつもは最初は遠慮がちにオレの舌の動きを待つのだめが
いきなり深く自分の舌を差し入れてきた。
オレはその舌に自分の舌をからめながらも、乳房への愛撫はやめない。
泡でぬるぬるになった乳房を円を描くようになでまわし、乳首をつまんだりこねたりをくりかえす。
単純な動きのはずが泡の滑りのせいで、自分でも予想外の方に指が動いていく。

「ああっ…せんぱい…もっと…」のだめの息が荒くなる。
「もっと、何?」

のだめは答えはこれ、と言いたいかのように、バスタブの中に手を入れて
オレの充血した部分をそっとなで上げた。

「のだめ、今日はずっと何か変…なんです。こんな…
先輩のヒゲの感触も、さっきのお風呂に入る前の汗の匂いも…
先輩のいつもと違う動きも、強引にされたのも…
初めてのことばっかりで…
すごくいやらしいってわかってるんデスけど…でも…我慢できないんです」

「だめ」
「え……あ……」

乱暴に抱いた分、今度はゆっくりやさしくこいつを抱きたい。
唇と、そのまわりの髭をおしつけ、うなじから背筋を下へと滑らせる。
ぴく、ぴく、と震えるのだめの反応が、なんとも可愛らしい。

「……おまえの好きな事、いっぱいしてやる」
「のだめが、好きな……?」

膨らんだ乳首をつまんでいた指を、そっと秘所へしのばせた。

「はぅ、やぁ……ん」
「こんなに膨らんでる……」

つつくと、のだめは腰を跳ねさせた。
その部分はぬるっとした感触に包まれ、ぷくっと存在を主張している。

「好きだろ、ここ舐められるの」
「……!」
「バスタブに座って」

のだめの耳が真っ赤に染まる。
そして素直に立ち上がり、言われた通りにバスタブに腰掛けた。
オレはその目の前に座りなおし、閉じられた膝を割る。

「もう少し前に」
「……」

のだめの腰が前進すると共に、足は大きくひらかれ、その部分もオレのまえで花開いた。

薄く少ないヘアは濡れて肌に張り付き、その下にピンク色の秘裂。
少し開いた襞から、膨らんだボタンが顔を覗かせていた。

「あん……ゃあ」

たまらず親指で開き、そこを露呈させる。
サーモンピンクの中心部は充血していて、ヒクヒクうごめきながら泉を溢れさせていた。

「そんなに開いちゃやだぁ」
「なんで?こんなにかわいいのに」

ふうっと息を吹き付けると、バスタブを握るのだめの指に力が入り、白むのが見えた。
そして、震えるクリトリスを伸ばした舌先でくるりと撫でた。

「はうっ!」

舌が動く度に、のだめの身体がびくびくとのけ反る。その様子を楽しみながら、千秋は膨らんだ突起を口に含むと、軽く吸ってみる。

「ひゃぅっ!」

一際大きく身体が跳ねる。
浅い息を繰り返すのだめを見て、そこから顔をずらし、何度か脚の付け根へキスをして再び唇をそこへ移動させた。

「あっ!?やっ…!」

(なんだ…?)

まだ、特別な刺激を与えたわけではないのに…。千秋は「いや」とは口にしながらも、強烈な快感を感じているらしいのだめの表情を伺う。
そして…思い出していた。

「チクチクして…キモチいい」

恥ずかしそうにそう言っていた事を。

千秋は、未知の感覚に快感とほんのすこし怯えているように見えるのだめのそこに…普段より強く顔を押し付け、少し前後させながら再び突起に舌を這わせる。

「えっ?あっ!いやぁん…はぅ」

突起をなぶる柔らかい舌と、敏感な入口を前後する千秋のヒゲの感触が味わった事のない快感になって、のだめは千秋の肩に腕を預け、崩れ落ちそうな身体を支えるだけで精一杯だった。

「はあん……」

鼻にかかった甘い声があがる。
根本からすくうように弾いては、左右に揺らす。
つるんとなめらかで、柔らかいけど芯のかたくなったこの場所。
初めのころは恥ずかしがって、くすぐったいだけだったのに。
今はこんなふうに口で愛撫されるのが好きで、自ら足を開く。
自分がこうなるまで、セックスを楽しむ体にしてきたのだと思うと、たまらない気持ちになる。

誰にも見せた事のない、のだめの女の部分。
オレしか知らない、オレだけの……。

「あ、ひゃ……あぁ!」

すぼめた唇で吸い付くと、守られている皮から全てが顔を出す。
そのままちゅ、ちゅ、と吸いつつ、飴玉のように丸く甘い存在を舌でこねまわした。

「あ、あん、やぁん」

視線を上にやると、のだめが見下ろしていた。
切なそうに寄せられた眉根に、うるんだ瞳。
唇は濡れて軽く開き、甘く声をこぼす。

「そ、んなにしたら、のだめのク……おっきくなっちゃいマス……」
「……もう大きくなってる」
「そじゃなくて……やん、エッチじゃない時も大きくなってるような……最近」
「自分で調べたの?」
「……」

のだめは困惑の表情になり、目をそらせた。
オレは……そういうの嬉しいけど。
刻み付けた証のようで。

「オレしか知らないだろ……のだめのここがどんなかなんて」
「でも……あひ、やあぁぁ?!」

のだめが残すのを所望した、髭のある鼻下を、のだめのそこへ当てて左右に擦ってみた。

「きゃぁぁぁ……んんっ!」

叫び声のような喘ぎが風呂場に反響する。

いかにのだめが感じているか…その声がより千秋を興奮させる。
千秋は少し顔をずらし、頬のところに触れたのだめの太ももに軽く唇を這わす。
ほんの少し触れるだけでのだめはピクッと背中をのけぞらせて反応する。

「そんなにいい?」
「ダ…メ……です。おヒゲ…当たるだけで…勝手に体…ビクンって…」
「疼いちゃうんだ?」

体も正直だ。先ほど舐めあげた部分にはまた蜜がぬらぬらと光っている。
じゅる…じゅっ…溢れ出てきたそれを千秋は吸い上げた。

「やあぁぁんんっ……もうっ……」

卑猥な音が響く…

(今度は音から責められる…)

辛うじて体を支えていた力が抜けていく。
のだめはゆっくり千秋に倒れこんだ。
待ち構えていたようにのだめを受け止めると、

「ほら…おまえの味…」

ぴちゃ…ぴチャ…千秋はわざと音が出るようなキスをした。

「はぁっ……」
「んん…んっ…」

2人は口内を貪りあった。

目が虚ろなのだめを支えながら千秋が言った。

「どうする?ここで続き?それとも上がってベッドに行く?」

千秋と向かい合い、肩に顔を埋めているのだめからは返答はない。

「のだめ…?」

千秋は頬にかかる髪を耳にかけてやる。

「しんいち…くん…、のだめ…」
「何?」
「もう…身体に力が入りません……」
「……なら…」

千秋は、自分の脚の上に跨がるように座るのだめの腰を軽く浮かせて、自身をあてがう。

「え…?あっ!ああああっ!!」

快感の余韻にうごめくのだめの中に、千秋が入ってくる。

(すげー、熱い……)

のだめの腰を掴んだまま、千秋はしばらく中の感触を楽しんでいた。のだめは、汗ばんだ身体を千秋にあずけ、浅く呼吸をくりかえしている。

軽く、耳たぶを甘噛みするとピクリとのだめが震え、千秋をキュッとしめつけた。

(うわ…)

カウチの上で何があったのか、記憶は定かでないから、千秋にとっては久しぶりの味わう感覚だ。だが、一度達している分、肉体的には余裕もある。

「今度はオレが楽しむ番だな…」
「え…?あっ、はうんっ!」

低く耳元で囁くと、千秋はのだめの腰を揺するように動き始めた。

のだめは千秋から目をそらし、小声で言う。

「のだめ…もう…待ちきれない…デス」

その言葉が終わらないうちに、千秋の分身がビク、と反応した。

── あ、ゴム…取りに行かないと。

立ち上がりそうな動作をした千秋を、のだめは一瞬早く上から押さえ込む。

「だいじょぶ…です、今日」

そして、脈打つ千秋の分身を両手で包み込み、ゆっくりと口に含んだ。

「今度はのだめの番ですヨ」

千秋はバスタブに背をもたせかけて、両足を投げ出した体勢である。
その足の間では、のだめがいとおしそうに千秋を愛撫していた。
竿の付け根から先端に向かって、螺旋を描くようにねっとり舐め上げる。
舌の先でくびれをぐるりと舐められると、たまらず千秋の声が漏れた。

「ん…っ」

── こいつ、なんかうまくなって…る…

「気持ち、いいれふか?」

怒張に舌を這わせながら上目遣いに見上げる表情がやけにエロティックで、
千秋の海綿体はさらに充血する。

「ああ…いいよ…」

その答えに満足したように微笑むと、のだめは千秋を奥までくわえ込んだ。
じゅぷ、じゅぷと大きく音をさせながら上下するのだめの紅い唇に、千秋は
激しく欲情した。

「あぁぁ…ぁんっっ」

のだめの身体を味わうようにゆっくり腰を動かしていく。

「せん…ぱい…そんな…こと…したら…のだめ…おかしく…なっちゃい…ます…」
「なれよ…。そしたら…さっきの俺みたいに…あとで…教えてやるよ」
「カズオ…ですね…」
「おまえ…そういうこと言う…余裕…あるんだ…?」
「コワイです…のだめ…どうなるか…わかんないっ…から…あぁ…ん」
「大丈夫…。なんかあったら…ベッドまで連れてく…」

千秋が首筋に唇を這わせながら話すのでリズミカルに無精髭があたる。

明るい浴室…響く声…千秋が自分を愛撫している姿…
五感のすべてで感じているのだめは自分の登りつめる瞬間が近いことを知っている。
一方千秋は肉体的には余裕ながらも、
心が早くのだめの中で果てたいと叫びをあげていた。

「おま…良すぎ……」

きゅうきゅうとのだめが締め上げていく。
千秋は片手でのだめの身体を支えながら、片方の手で蕾を探った。
ぐしょぐしょに潤ったその部分を優しく、時には強く指先で刺激する。
唇は首筋から胸元をたどる。頂を口に含むといきなり甘噛みした。

「はぁあぁんっ…」

のだめの身体はよく知ってる…もうかなり限界のはず。
千秋の体に爪が食い込みそうなくらい、首にまわされた手に力が入っている。

「おれも…もう…」

千秋は激しくのだめに打ちつけた。

「んぁ…はぁっ…はっ…。のだ…め?」

今この瞬間のだめは叫ぶような声を出すと、クッタリして動かなくなった。

(気を失ったか…?)

千秋は息を整えるとのだめの顔にかかった髪をそぉっとかきあげた。
自分のものを抜いて、のだめを横抱きしようとしとき
手にツウーっと白濁した精液が滴った。

自分の快感が頂点に達するのを感じて、千秋は慌てて自身を引き抜く。

「のだめ…?」

のだめは、千秋に身体を預けたまま意識を手放している。
千秋はバスタブの栓を抜くと、のだめを抱き留めたままシャワーヘッドを手に取ってコックをひねる。温めのシャワーをのだめと自分の身体にかけて、泡とぬめりと流していく。

「あ…千秋せんぱい…」

シャワーの刺激を受けて、のだめがぼんやりと目を開けた。快感の余韻で潤む瞳で千秋を見つめる姿は…普段ののだめとは想像がつかないくらいの色気がある。
千秋は、濡れた肌がぴったりと触れ合っている事を、今更認識していた。重なる肌は熱くてたまらない柔らかさだ。

「ん………」

シャワーを浴びてのだめが身じろぎすると肌がこすれあう。のだめはまだ、千秋の上に膝を開いて座ったままで…。欲情を吐き出したはずのものが、再び熱を帯びてくる。

「せんぱい…」

少しずつ意識を取り戻してきたのだめが、千秋の肩に腕をのばす。
千秋はのだめの身体に腕を回すと抱き上げてバスタオルにくるむと、寝室に向かった。

ベッドに寝かせたのだめの頬に、千秋は唇をそっと寄せた。
のだめはくすぐったそうに少し身をよじる。と、太腿に熱いものが触れるのを感じた。

「今日のしんいちくん、野性の王国デス」
「え?」
「なんか、ムラムラ狼、って感じです」
「……」

 ─── 『ムラムラ狼』……

「お髭のせい、ですかね」

そういえばまだ髭をそっていなかったことに千秋は今更ながら気づく。
のだめは右手を伸ばし、千秋の顔の輪郭に沿って撫でるようにしながら、ぽつりと言った。

「でものだめ…ヤミツキになりそう、ですよ」

千秋はいきなりのだめの唇を塞いだ。貪るように、舌で口中をかき回す。

「んっ…」

 ─── 今日のオレ、どうかしてる…
求めても求めても、まだのだめが欲しくてたまらない。
白い乳房を真ん中に集めて夢中で吸い付いた。わざと大きく音をたてながら。

「あぁんっ…し、んいちくんっ、ちくちく…あ…っ…や…ん……っ」

のだめの身体の芯がじゅんっ、と反応し、蜜が溢れた。
千秋は髭の伸びた顎を乳首に近づけ、そっとこすりつけた。

「ん…ぁっ…ふ…」

舌先を乳輪にそって一周させると、そのまま下のほうへと滑らせていく。
そしてのだめの両足を開かせ、腿の内側から付け根を愛撫した。
だが、露に濡れてひくひくしている肝心のところにはまだ触れない。
喘ぐのだめが可愛くて、もっと見ていたくて。

「せ…せんぱい…っ…あ…のだめ…もう…」
「なにが?」
「あの…お願い…しマス」
「なにを」
「ぎゃぼっ…先輩の意地悪…!!」
「何してほしいかハッキリ言えよ」
「えと…そ…その…そこ、もさわってクダサイ…」

最後は消え入りそうな声で、のだめは懇願した。
千秋はふ、と一瞬微笑して、のだめの中心でひくひくと脈打つ赤い蕾に自身を
あてがい、ぐりぐり押し付けた。

「や…ん!あ、あ……っ、んんっ…」

左腕でのだめの右ひざを抱えて、千秋はそのしなやかな指を3本、ずぶりとのだめに
挿し入れた。親指で蕾を刺激しながら、次第に動きを速めていく。

「ひっ…あ、いや、あんっ、あ、あ…」
「気持ちいいか…?」
「んんっ、い、いい…っ…のだめ、また…イっちゃいそうで…す」

その言葉に、千秋は更に指の出し入れを速めた。

「だ、だめ…っ、ゆびじゃ…なくて、のだめ…せんぱいの…でイキたい…っ」

「わかってるよ」

千秋はそう答えて、更に指の動きを速める。

「えっ?な…んで!ふっ…あああっ」

じゅぷじゅぷと中を掻き回され、のだめは頂点に達していた。

「せんぱい…ヒドイ…です」

千秋の指をきゅうきゅうと規則的に締め付けながら、のだめは不満そうだ。

「まだ…時間はあるし」
「はんっ」

千秋の長い指が引き抜かれるとのだめの中が、名残惜しそうにからみついてきた。
千秋は、のだめの脚を開いたまま、ひくひくうごめく場所に舌を這わせる。

「ヤミツキにさせてやるよ」
「あっ!はぅん…ああっ」

絶頂を迎えて、小さく隠れている突起を包皮の上から唇で挟む。抱えられたのだめの内股が、千秋の頬に触れる。唇が動くと、顎に触れている襞がちくちくと刺激される。
いくつもの刺激を受けて、唇で挟んだそこは、次第にぷっくりと膨らみ顔を出す。

(そろそろ…いいか?)

千秋は顔をずらし、ぬるついた顎を膨らんだ場所に軽く押し当てると、上下に揺らした。

「ひゃっ!だ…め!!それ…だめ、デス!」

強烈な快感が、背筋を走る。身体の奥から蜜が溢れ出す。

「はぅ!も…、ゆる…し…」

舌と顎と…不規則に繰り返される刺激。びくっびくっとのだめが身体を震わせる度に、余計に身体を千秋に擦り付ける事になり、再びのだめは快感の波にのまれていく。

もっと乱れさせてみたい。
恥ずかしがる姿もそそるが、のだめが本能的に「女」である部分を見てみたい。
のだめが自分の中の男である本能を見たというのなら、逆にのだめのそういう部分を知りたい。
我を忘れて快楽を求め、貪る。
愛情を確かめ合うだけでなく、よりもっと人間として、男と女として、求め合う。
そういう夜が、あってもいい。

千秋はのだめの膝を掴み、大きく開かせた。
谷間を伝ってこぼれそうになる雫をじゅるりと吸い、尖ったクリトリスにキスをして体を離した。

「せんぱい……?」
「もっとして欲しいんだろ?こいよ」

千秋はのだめの腕を掴んで体を起こさせた。
力が入らない様子で腰を震わせながら、促されるままのだめはベッドの上で膝立ちになる。
熱っぽく瞬きするのだめの頬にひとつキスを落とし、耳元で囁いた。

「おまえの本能の部分も見せて」
「え……」

ぼんやりしているのだめをそのままに、千秋は体を翻してのだめのからだの下へ自分の頭をもぐりこませた。

「や、やあっ」
「足閉じるな」

ぱちん、と軽くヒップを叩かれて、のだめは恥ずかしさを感じながらも内股の力を緩めた。
千秋の腹の上に掌を置き、背筋を伸ばせといわれるままそのとおりにする。
恥ずかしい。
見られている。
千秋の頭の上を跨って、見られているというより自分が見せ付けているようだ。
そう一瞬でも思ってしまうと、どうにも淫らな考えが止まらなくなる。

「あ……はあ……」

してほしい。
熱い部分にかかる吐息が、これからもたらされる快楽を予感させる。
触って、もっと。

でも、何もされない……?

「しんいちくん……?」
「どうして欲しい?」

……意地悪だ。
言わせようとする。
わざといやらしい事を言わせようとする。
でも……それに余計体を熱くする自分がいるのを知っている。

「……なめ、て」

のだめは、恥ずかしそうにそうつぶやいて、腰を少し落とした。

舌の感触を想像していたが、別のものが自分の一番敏感な部分に触れた。

「ふぁ……ああ……」

擦られる感触の中に感じるちくりとした刺激。
上に、下に。右に、左に。
ざらざらとした、髭の生えかけた千秋の顎がぐりぐりと押し付けられる。

「やっ、やぁっ、いやん……」
「ヤミツキ、なんだろ」

千秋はさらに、自分の中では一番密集して髭の生える、下唇のすぐ下をのだめの膨らみきった部分に押し当てた。
その部分の裏に自分の舌を差し入れ、持ち上げるように突出させて擦りたてる。

「ああぁぁ!!だめぇ……」

とりわけ敏感な部分に、今までにないくらいの刺激的な快感がやってくる。
のだめは背筋をしならせ、自然と千秋の顔に自分の秘部を押し付けていた。


千秋は自分にのしかかるからだの重みを感じながら、のだめを見上げている。
頬には柔らかいのだめの太ももがあって、風呂上りの湿った肌がなんとも心地よい。
ふっくらと真っ白な尻の双丘から伸びる、しなやかで女性的な背筋のライン。
そこを伝い流れ落ちてくる汗。

のだめは小刻みに腰を前後させ、天を仰いで歓喜の声を上げている。
自分で求めているかのように、のだめが自分に顔をのしかける。
押し付けられる柔らかく蕩けきった肉に感じる、強い女のにおいに、千秋は頭がくらくらとしてきた。
あふれ出る蜜はとどまる事を知らず、千秋の唇をぬらしてなおも左右に滴らせている。

……こんなに濡れるのか。
もう、顔中がのだめの蜜でべたべただ。
敏感で、溢れやすい体だとは知っているけれど、ここまでになった事はなかったかもしれない。

千秋は舌を突き出し、おもむろにのだめの膣内へともぐりこませた。

「はうぅぅ!!」

襞の合間をこそげとるように、舌先で内部をこね回し、啜る。
ひくんとすぼまる入り口をこじ開けては、さらに蜜をかき出す。

「いやあぁぁぁああ!!!」

温かいぬるりとした、指とも千秋自身とも違う、柔らかいものが、自分に中へと何度も出入りする。
入り口をぐるりとなで、内部の物をすべて吸い尽くさんばかりに力強く啜られる。
その合間も、突端は千秋のざらりとした顎でなでられ続け……。
のだめは我慢できずに今日何度目かの絶頂に達していた。

千秋の身体に突っ伏すようにして、のだめは浅い呼吸を繰り返す。目の前にあるそこは、赤くうごめきひくひくと収縮を繰り返していた。千秋自身も、先程からずっと熱く硬さを保っていた。

「のだめ…もっとして欲しい?」
「せんぱ…い。のだめ…」
「なに?」
「先輩のが…ほしい…デス」
「…いいよ」

だが、千秋はのだめの下で動かない。のだめは千秋の上から下りると困ったように千秋を見ている。

「先輩…?」
「…自分で、して」
「自分で…デスか…?」
「さっき、おまえがつけたんだよな?」

千秋は小さな包みをのだめに差し出す。のだめは自分の頬が赤くなるのがわかる。正気を失っているらしい千秋にしていてもたまらなく恥ずかしかったのに…。

「しないのか…?」
「………」

のだめは、視線から逃れるようにしながら包みを破ると、千秋にそれを被せてぎこちないながらもくるくると下ろしていく。

「で、できマシタ…」

ほっとした顔でのだめが千秋をみつめている。それでも千秋は仰向けになったまま、動こうとしない。

「先輩…?」
「自分で…してみろよ」

千秋の言っている意味が分かって、のだめは更に頬を赤く染めた。

「むきゃ…真一くんの…カズオ」
「欲しいんだろ?」

…そう、確かに欲しい。身体の奥にぽっかりと空いた部分がある。それを千秋に埋めて欲しい。
のだめは真っ赤になりながらも、千秋の上で膝を開き、千秋自身に手を添え十分すぎるほどに濡れている自分に宛てがう。

「ふっ、ああ…」

熱く硬いもので、一杯になっていくと同時に手足が痺れるような快感が走る。

(気持ち…いい)

ゆっくりと腰を沈め、根本まで飲み込んで、そして、おずおずと上下させ始める。
千秋から動いてくれるつもりはないのだ。…羞恥でどうにかなりそうだが、満たされない快感をどうにかしたくて…。のだめの身体はいつの間にか千秋の上で激しく動き出していた。

「あっ、ふ…。はぁ…んっ」

のだめが白い肌をそめ、腰をくねらせ快感を貪るように動いている。千秋からの動きがないから、自然とより自分が感じる場所を探してしまう。

(千秋先輩が見てるのに…とめられません…恥ずかしいのに…)

のだめは何度目かの絶頂を目指して、羞恥を覚えながらも身体を上下させていた。次第に、その動きが加速していく。
千秋の手がのだめの乳房に伸び、いつもよりきつく揉みしだく。

「はぁっ…やん…」

重なる部分から溢れ出す蜜は、千秋の身体を伝いシーツへと流れていく。二人の荒い呼吸と身体のぶつかる音とぐちゅぐちゅという水音で部屋は一杯になっていた。

「はっ…あ…のだめ…もう…あっ!はあっ!あああああっ」

激しかった動きはぴたりと止まり、のだめが再び千秋の上に崩れ落ちる。激しい快感の証が、千秋を規則的に締め付けてくる。

「満足した…?」
「ハ…イ……」

のだめが小さな声でようやく答える。

「じゃあ、今度はオレの番だな」
「えっ?はぅ…」

千秋はのだめの背中に手をまわすと身体を起こし、のだめを仰向けにしていた。

「真一くん…まっ…て…あっ!」

仰向けにしたのだめの足を掴み、胸のほうへと押し付けた。
途中までもぐりこんでいた自身をぐっと奥まで突き込み、のだめの体を大きく揺らす。

「はっ、ああっ、だ、めえ……」

標準より少し長めの千秋のペニスをすべて飲み込んで、のだめの奥はぎゅうっと締まった。
内臓を持ち上げられるような感覚に、のだめは息も絶え絶えといった感じだ。
千秋はそのままのだめを左右に揺さぶった。

「やっ、はあ……!!いった、ばっか、なのに……」

のだめの目尻から涙がこぼれる。
吐息はすべて声が重なって、甘い喘ぎにしかならない。
体の中に穿たれた千秋の体の一部が、先ほど感じていた身も心もすべての空間を、埋め尽くしている。
圧倒的な存在感の、自分に打ち込まれた杭。
それがどうしてこんなに嬉しいと感じるのだろう。

愛しさに腕を伸ばしかけると、その存在感がゆっくりと自分の中から抜け出していくのを感じた。

「やっ、やや、やあ……」

抜かれていくのが嫌で、自分の体が反応するのがわかる。
いや、いや、いや……。
のだめは涙をこぼしながら自身を意識して力を入れた。
と、その瞬間また一気に奥まで貫かれた。

「───!!!」
「あ、すげ……」

のだめは息を詰めて、耐えるように仰け反った。
繋がった部分に、温かい物を感じる。
潮が滴って、自分の袋を伝っていくのがわかった。
千秋はしごきあげられるような蠢きに我慢できず、腰を少しずつ前後させていく。

「また、いった……?」
「はう……あうう……」
「知ってる?おまえのここ、すげーやらしい……」

千秋はのだめの体を少し起こすと、枕を掴んで背もたれにした。
のだめのうつろな瞳の前には、千秋の物をくわえ込んだ自分のその場所が丸見えになっている。
か細く「いや……」と声にしたが、そこから目が離せない。
中ほどまで入っていた千秋が、再び奥まで入り込んでくる。

「奥まで入れると、奥がオレを締め付けて……」
「はっ、あん、ああぁ」

今度はゆっくりと千秋が抜け出ていく。

「いやぁ……」
「抜こうとすると、入り口がきつくなる……やらしい」
「だって、そんな……」

背筋がゾクゾクする。
自分がいやらしい、淫らだと言われると、どんどん奥が熱くなるのを感じる。
体が打ち震える……。

もっと、言って。
もっと、いやらしい自分を、千秋に見つけて欲しい。

のだめは自分の手を動かし、二人が繋がっている部分へとのばす。
そして、指でそこをめくりあげた。

また、千秋がのだめの身体から抜けていこうとする。のだめは思わず力を入れて、逃がすまいと入口を締める。けれど…
ちゅぷん…千秋がのだめから離れていった。

「や…どうして…あっ!」

仰向けになっているのだめの身体を、千秋はくるりと俯せにした。

「まだ欲しいんだろ…?腰をあげろよ」

いつもとは違うそんな言い方に、身体の奥が疼く。

(なんで…恥ずかしくてたまらないのに……気持ちいい…もっと目茶苦茶になりたい……)

のだめは、ゆっくりと白い尻を持ち上げていく。

「脚…開けよ」
「あ…。そんな…こと…」
「できない…?」

千秋の声音には有無を言わさぬ強さがあって、のだめはもう、逆らう事などできない。それに、こうして淫らな姿を曝していることが強烈な快感を生み出しているのも事実だった。

のだめはゆっくりと…千秋の視線を感じながら膝を開き、猫のように腰を突き上げる。

「…お願い…します…」

震える声でのだめが言う。それだけで、千秋は達してしまうのではないかと思うほどの欲情を覚えていた。

「真一…くん…?あっ、あああああ…」

ぱっくりと開いた場所に、千秋が一気に入り込む。

(こんな…こんな姿なのに……全部見られてるのに…)

のだめはすでに、身体を支える事ができず、千秋に細い腰を掴まれ、与えられる快感に酔いしれていた。
ただでさえ敏感な身体は、何度も絶頂に達しているからさらに感じやすくなってもいた。
千秋は、のだめ主導だった動きから、自分の快感を優先させた動きをしつつ…いつもより乱れている、女としてののだめを見つけて新たな慶びを得ていた。

視線の先には、赤くうごめき千秋をくわえ込むのだめ自身が蜜をしたたらせ、てらてらと光っている。
千秋は、ぎゅっと締め付けてくるのだめを感じながら深く、浅く抽送を繰り返す。
深く突き上げるたびに、のだめの唇から、甘いかわいい声が吐き出される。

のだめの腕には、自分を支える力はわずかしか残っていなかった。
上半身が沈むと、千秋に腰を掴まれる。
自然と、頭を丸めてそれを支点として体を支えつつあった。

のだめは、ぎゅっと閉じていた目を開けてみた。
自分の胸が、千秋の突き込みでぱちんぱちんとぶつかりながら揺れているのが見えた。
その向こうに、自分の足と、千秋の足が見える。
そして、何か光るものが……。

声を止める事もできず、ぼんやりそれを眺めていたが、のだめはシーツの上の有様を見て理解した。
自分たちの繋がっている部分からあふれ出たもの。
それが、シーツへと糸を引いて滴っているのだ。

ほら、また……。
泡だって粘着質の雫が零れ落ちる。
千秋がのだめの奥へとせめる度に、それはあふれるように雫となってこぼれる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
糸は途切れない。

のだめはもう目を閉じることができなかった。
快感の証の、溢れ出た雫。
こんなにも感じている。
先輩のせいで……ううん、のだめが求めたから。
いま自分の身体の中にある、千秋自身を。

自分と千秋の脚、自分の乳房。
その乳首はぴんと尖り、千秋が打ち付けるたびに、ぷるんと揺れている。
そんな、さかさまになった景色の中に、千秋の手が伸びてきた。

「すご……こんなになってる」
「や……ん……」

千秋は自身を奥まで埋め込み、動きを止めた。
腰を一度密着させ、ほんの僅かに動かすとぴちゃぴちゃと音が聞こえる。

千秋の長い指が、てらてらと光る液体を受け止めるのが見えた。
見えてしまうのは、こんな格好だから……
いつものように千秋と向かい合う体勢ならば、あんな恥ずかしいものは見えないのに。
あの奇麗な指を濡らしているのは、ほかでもない自分の……いやらしい蜜。
そう考えるだけでますます身体が熱くなるようだった。

「あ……っ!や……ぁ……!」

蜜をすくった千秋の指が、もうはちきれそうに膨らんだ蕾に触れた瞬間、のだめは息を飲んだ。
すっかり濡れそぼったその箇所をくるくると撫でる、そして弾く。
何度も何度も。

「ああ、すごい。コリコリ……」
「やあっ、やあんーー」

千秋はのだめの泡だった雫をすくいつつ、指の間に肉芽を挟んで弾く。
ぴりぴりとした強い快楽が何度も背筋をかけあがって、のだめはかぶりを振った。
自分の意識ではなく、体か千秋の物を締め付けていくのがわかる。

「こんなに、おっきくして……ここ……ほら」

千秋の指が、側面をなでて上へと引き上げる。
のだめは涙を滲ませながら、その部分を見ていた。
千秋の指が自分を開いていて、入り込んだ千秋のペニスに絡み付いている襞の上で、
自分の突端が恥ずかしく勃起しているのが見える。
すうっと冷たい空気が、むき出しに露呈させられたそこを撫でていったような気がした。

「さっき、自分でこうやって開いただろ」
「ふうう……あっ、あう……」
「いじりたかったんじゃないのか?」
「やっ、やだあ、そんな……」

責めるような言葉をかけるのを、千秋は一瞬躊躇した。
でも、そうされるとのだめの中は嬉しがるような反応を見せるのだ。
様子を伺いながら、のだめをいじめるような言葉をかけていく。

「やらしい……こんなに濡れて、こんなにここ尖らせて」

思ったとおり……。
のだめは言葉に反応して千秋をぐいぐいと吸い込むように締め付けてきた。
うねるように壁が蠢き、まるで握られて上下されているような刺激が与えられる。
千秋は目を閉じてひとつ深呼吸をし、冷静をかろうじて保った。

「いじって欲しい?それとも、自分でいじりたい?」
「はう、はあぁああぅ」
「おっきくなった、こんなにやらしい……」

その秘部の場所を、耳の近くで囁く。

「のだめの、えっちな……クリトリス」
「ぃぁぁああああ……」

痙攣にも似た震えを感じながら、のだめは無意識に自分の指をそこへ伸ばしていた。

指先に感じるのは、芯を持った丸い蕾。
のだめはあふれ出す雫を塗りつけるようにして、それをこね回した。
千秋もまた、それに合わせて奥をこつこつとつつく。
ゴリゴリとおなかに重く響くような快感と、体の表面が冷たくなるような鋭い快感とに、のだめは支配されていく。

「ひとりのとき、そう、してるんだろ」
「はうっ、ああん!!」

のだめはもう体を支えきれず、ベッドへと伏した。
腰だけを浮かせ、自分をまさぐりながら千秋を受け入れている。
そんなあられもなく「女」になったのだめの姿に、千秋はこれ以上なく自身を高ぶらせていた。

いつもよりも大きくてはりのある声。
かわいらしい声に時折混じる、本能の女の叫びにも似た喘ぎ。
あののだめが、こんな声を出すなんて。
こんなに、乱れて、腰をくねらせて自分を求めるなんて……。

千秋はのだめの柔らかな尻を左右に割った。
そしてのだめの快感をさらに高めてやろうと、自身をくわえ込み、付きこむたびに捲れる襞を撫でた。

どうしようもなく感じでしまっている自分…。そして、こんな淫らな姿を、大好きな…千秋先輩の前に晒している…。なのに、それが気持ちいいなんて…。

(嫌らしい、変な女だと…嫌われたらどうしよう…)

そう思うのに、身体は理性が制止するのを聞かず、快感を求めて動いてしまう。恥ずかしい声も止められない。

「あっ、ふぅ…うっ…」

千秋の指が、自身がのだめを攻める…。その度に洩れる吐息は、いつの間にか変化していた。

「のだめ…?」

千秋の動きがぴたりと止まった。

「どこか…痛い?」
「やっ、違いマス…」

のだめは慌てて否定するが、そな声は涙で湿っている。

「もう…止めてほしいか?」

千秋の声は、驚くほど優しくて…こんな時だから、再び身体の奥がジンとするような、甘い疼きをもたらす。

「や…やめないで…下さい」

(呆れられたらどうしよう…)

そう思うのに、口が勝手に言っていた。
千秋は、のだめが十分に感じでいるのがわかるのに、反応が変わって来た事が納得がいかない。

(なんだ?一体…)

けれど、甘い声に混じる湿った声音を無視はできなかった。

千秋は、俯せになったのだめを再び仰向けにすると、瞳を覗き込むようにしながら口づける。
のだめの瞳には涙が滲んでいて…千秋の胸が突かれたように痛んだ。

「嫌か…?」
「違い…ます。のだめ…」
「………」
「怖いんデス…」
「何が…?ちゃんと言えよ」
「だって…こんな…。のだめの事、嫌いになりませんか…?」

(こいつ…わかってねー)

千秋は、全身を強烈ななにかが駆け巡る気がした。目の前にいる女が、愛しくてたまらない。自分の手で、こんなに淫らになっている事を嬉しく思うだけで、嫌うなんて想像もしない事なのに。
驚くほど敏感で淫らな身体と純粋な自分への愛情と…初めての時から変わらない恥じらいと。

(オレの方が…)

千秋は、自分自身がよりのだめを手放しがたく思っていることに気付いていた。
そして、溢れ出す思いを込めたように、再び抽送を始める。

「のだめ…」
「あ…ふっ…」

ゆっくりと千秋が動きだす。それに合わせて、再びのだめは快感の波に飲まれ、唇から甘い声がもれる。何度も達した身体は、のだめの意識とは別に、規則的な千秋の動きに合わせて快感を得てしまう。

「あっ…またっ…ああっ」

抑えようもなく声がでてしまう。

(止めて欲しくない…でも…でも…)

のだめが薄く目を開けると、自分の表情を伺うようにしている千秋と視線がぶつかった。

「や…!み、ない…でっ」

腕の下で、逃げられるはずもないのに、のだめが身じろぎする。

「なん…で…?」
「恥ずかしい…デス!あっ…ん」
「もっと……見せて…」
「せんぱ…い?」
「顔も、声も…もっと…」

千秋の低くかすれた声が耳元でささやく。
のだめの中で、何かが弾けた。
誰にも見せたくない恥ずかしい姿も、声も…。なのに、それを…見せてもいい?
言葉にできない気持ちが溢れて、身体の奥から新たな快感が沸き起こる。たまらない…熱い。

「真一…くんっ」

のだめの腕が千秋の背中にまわる。ぴったりとひとつになりたいけれど、千秋の背中は広くて…のだめの腕では抱きしめる事ができないのがもどかしい。

「のだめ…」

背中にまわされる腕の強さと、自身を包み込む熱さを感じる。
”もっとひとつになりたい”のだめがそう言っている気がして、千秋は精一杯身体を合わせて、のだめの中を擦り上げていく。

「あっ、はっ…。また、いっちゃ…あっ」
「オレ…も…」

絶え間無く甘い声をもらす唇を唇で塞ぐ。
唇ごと包み込むようにして、からめ捕った舌をはむ。そのたびに、のだめの中が千秋をびくびくと締め付ける。

(もっと…ひとつに…)

高まる気持ちに合わせて、千秋の動きが加速する。

「ふっ、んっ!んんんっ!!」
「くっ…はっ…」

のだめがきつく千秋を締め付ける。それに合わせて千秋も欲情を吐き出していた。

「は…ふぅ…」

千秋が、のだめの身体の上に崩れてくる。華奢な腕で抱き留めながら、のだめは幸福感で満たされていた。

のだめは、自分の上に体重を預けた千秋の髪を撫でた。
自分の肩口に倒れ込んだ千秋の顔の、髭が頬にあたってすこしくすぐったい。
荒くなった呼吸を鎮めようとしてのだめが大きく息を吸うと、千秋が
小さな声をあげて、びくり、と中で震えたのが、のだめにもわかった。

「しんいちくん……」
「ん……おまえ、気持ち良すぎ……」

のだめの唇を軽く食んでから、千秋が手を添えて自身を引き抜こうとすると
のだめが脚を絡めてそれを阻止しようとした。
千秋が自分の中にいる感覚、埋め込まれている熱を、もうすこしだけ
感じていたかったのだ。

「おい、離せよ」
「もうちょっとだけ……」
「危ないだろ……ほら」

危ないという言葉には逆らえず、のだめは千秋を解放した。
起き上がり、のだめに背を向けて始末してから、千秋はベッドに戻ってきて
のだめの始末をしようとする。

「い……いいです、自分でやります、から」
「いいから」

千秋はのだめの返事を無視し、手にしたティッシュで
溢れ出た蜜を拭い取ってやった。
ゆっくりと、少しずつ、丁寧に。
襞も花芽も、優しく、執拗なくらいに、ティッシュにくるまれた千秋の指が通っていく。
あまりに丁寧に拭うせいで、のだめの身体が時折揺れるのを
千秋はわかっていて無視をしていた。

「……すごかったみたいだな。ティッシュ、1枚じゃ足りないぞ」
「……あの、あまり見てないで……早くしてくださいヨ」
「シーツが大変なことになってるし」
「だ、誰のせいだと思ってるんですか……んっ」

耐えきれずにとうとうのだめが声を漏らすと、千秋が満足そうに笑った。

「……しんいちくん、もういいです!!」

のだめは脚を閉じ、千秋に背を向けて丸くなった。

「ほんとにいいの?」
「カズオ……」

(カズオ、か・・・。)

「おまえ・・・さっき、怖い、って、言ったよな」

背中越し、その華奢な身体をを包み込んで、千秋はのだめをそっと抱き寄せた。
長い手を伸ばして、力なく投げ出されたのだめの掌に重ねる。

「オレも、怖い」
「え・・・?」

愛おしさで、重ねた手に、力がこもる。

「抱く度に、いつか、おまえを壊してしまうんじゃないか、って」
「・・・そんな。先輩、いつもちゃんと、のだめのこと考えてくれてて」
「思ってるよ、いつでも。おまえのこと大切にしたい、って。それなのに・・・」

(時々、本気で怖くなるんだ。いつでも自由に、生きてきたおまえだから。
どんなに抱きすくめても、この手からすり抜けていってしまうような気がして)

「それなのに、さっきみたいに無性に、おまえがオレの傍でオレの為だけに生きてるって
実感したくなって、どんどん歯止めが利かなくなって・・・いつかおまえが耐えられなく・・・・」
「真一くん!」

ぎゅっ・・・。それまで千秋の力だけで握られていた掌を、のだめは強く握り返した。

「大丈夫。のだめ、ここにいます。先輩がそんなふうに想っててくれる限り、
絶対に壊れたりしマセン!」

握りしめた手を緩めると、のだめはくるりと身体を翻して、その細い腕で、千秋を精一杯抱きしめた。

「千秋先輩、のだめのこと、すごくすごく、好きでいてくれてるんですね・・・うれしい」

全身を包み込まれるような温かさに、千秋は心が安らいでいくの感じていた。
そんな彼の耳元でそっとのだめは囁いた。

「本当はのだめ、先輩にならいっそ、壊されても・・・イイですヨ」


ベッドの上で目を開ける。

(千秋先輩のお部屋デス…)

余程深く眠っていたのか、のだめは自分がなぜここにいるのか思い出せないでいた。片腕をのばして千秋を探すが、すでに隣にはいない。
ぼんやりとした頭で昨日を振り返る。

(確か…オベンキョのために本を借りに来たはずデス…それで…)

意識がはっきりしてきて昨夜の記憶が蘇ってくると、身体がカッと熱くなる気がした。

(あんなこと…)

千秋にどんな顔をすればいいんだろう…。
そんな時、バスルームの扉がカチャリと開いた。

「のだめ…起きたのか?」

思わず振り向いて、千秋と目が合う。頬が熱くなるのがわかる。
…のだめはついと目を反らしていた。

「おい、なんだよ」
「…おはよ、ゴザイマス…」

かろうじてそれだけ言うと、また目を反らす。
こんなふうに恥ずかしく感じるのは、初めての時以来だった。

「どうかしたか?」

のだめの羞恥心に気付かない千秋が、顔を覗き込んで来た。

「な、なんでもないデス!」

視界いっぱいに、千秋の端正な顔。その肌には、昨夜のだめを狂喜させた”チクチク”の姿はない。

「あ…」

思わず声が出て、手を伸ばしてしまう。

(実は、夢だったとか…デスかね)

「…そのままの方が良かった?」

意地悪く言われて、全身から汗が吹き出す気がした。

「……先輩の、カズオ!!」

それだけ言うと、のだめはベッドに潜り込んだ。
丸くなって、千秋の視線から逃れるようにしていると、ぽんぽんと千秋の手が背中を叩く。

「おい、朝メシ食わないのか?」

(…そういえば、昨日晩御飯たべてないデス…)

突然、お腹が空いて来た気がした。

「飯、炊いたぞ」

最近忙しくて、千秋の作ったご飯も食べていない…。

「ほら、起きろ!まず、シャワー浴びてこい」

布団から顔をだすと、楽しそうに笑みを浮かべている千秋がいる。

「………わかりマシタ」

居心地の悪さを感じつつ、差し出されたシャツを羽織ってバスルームへ向かう。

「そうだ、のだめ」

後ろから声をかけられのだめが振り向く。

「髭は、すぐ伸びるから安心してろ」
「ムキャーーー!もう知りまセン!」

のだめは慌ててバスルームに逃げ込んだ。






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