The Third
千秋真一×野田恵


「せ〜んぱい♪おかえりなさ〜い」
「のだめ?!どうしたんだよ・・・今日来るって言ってたっけか?」

オレが引っ越してから、数週間。
以前なら勝手にフロ入ってたり、ビデオ見ながら寝てたりなんてのは当たり前で、驚きもしなかったけれど、
隣同士でなくなってからは、のだめがオレの部屋で待っているのは滅多にないことだった。

「いえ・・・、アポなしで来ちゃいマシタ。いけませんでしたか・・・?」
「いや、そんなことはないけど、珍しいから。学校でなんかやったのか?」
「むぅ、やるってなにを・・・。ガコはいつも通りガンバってマスよ。今日は見せたいモノがあったので」
「見せたいもの?」

オレはジャケットを脱いでベッドサイドのイスに引っかけた。

「えへへ〜、今日はノエミ姉さんにちょっと協力してもらって」
「ノエミ、って、赤モジャか。お前またマルレの事務所出入りしてんのか?立ち入り禁止だってあれほど・・・・」
「いいじゃないデスか〜。常任指揮者の妻として団員の方達とコミュニケーションを取るのは大切なお仕事デスヨ」
「妻、ってな〜・・・テオがプロフィールにいれるべきだってうるせーんだからな。いいかげんにしろよ」
「いれていいのに」
「よくねぇ!」

いつも通りのお決まりのやりとり。こんなのもちょっと久しぶりな気がして新鮮だ。

「で、なにを見せたいって?」
「ふふ〜ん・・・ジャ〜ン!!」

のだめはおもむろにコートの前を開いてみせた。

「ぶっ!!なんだそりゃ〜!!!」

*****

コートの下は普段ののだめのワンピ姿とは似ても似つかない、真っ赤なミニのボディコン服だった。
身体のラインにぴったりと沿った、胸の谷間くっきりのチューブトップ。
深々とスリットの入ったタイトスカートからすんなり伸びた脚には、膝上の黒の網タイツに・・・・
見え隠れする・・・ガーターベルト?!
なんか背ぇデカイと思ったけど、10センチくらいの高さのピンヒールまで履いてる。。
まるで・・・・

「峰不二子みたいデショ?」
「・・・・」
「ポスターの一件以来、ノエミ姉さんには仲良くしてもらってるんデスよ。プリごろ太情報もらったりとか」
「で、なんでその格好に・・・」
「だってー・・・・先輩がお引っ越ししたから外で会うのは新鮮で、それは楽しいんですケド、
わりとあっさり2人きりになれちゃうから、なんか、同じパターンが続く、というか。
アパルトマンの時はしゅっちゅうみんなが遊びに来てて、いろいろ観察されたり、刺激的だったデスよね」
「刺激って、お前な・・・。それとこれと何の関係が・・・・」
「んで、ノエミ姉さんに相談したんデスよ。
そしたら、先輩がびっくりしちゃうようなセクシーなのだめになれば、
離れてるぶん、更にラブラブ度がアップするんじゃないか、って。ムラムラしますか〜?」

(なんか、前にもこんなことがあったような気が・・・・・)

「そいで、日本のセクシーの代名詞といえば、峰不二子だろう、って。
ノエミ姉さん、翻訳仲間のお友達からポスターもらってきてくれたんデス。ルパンって海外でも人気あるみたいデスヨ。
それをターニャに見せたら、下着専門店とかいろいろ、安くてセクシーな服売ってるお店に連れてってくれたんデス」
「いったい何の相談をしてるんだ・・・、お前らは・・・・」

******

のだめはコートを脱いでオレの脱いだ上着の上に乗せると、くるりと一回転してみせた。
スリット・・・ほとんど腰から入ってるんじゃ・・・・。

「ガーターベルトの付け方もノエミ姉さんに教わったんデスよ。
ガーターってこうやってストッキングをパッチン留めするから、
パンツ履く前に付けないとトイレで不便なんだそうデス。なるほど、デスよね。
これで、いつでもどこでも、パッチン取らなくてもサッと脱げちゃうんですよ。」
「いつでもどこでも脱ぐもんじゃ・・・・・、てゆうかお前、まさか、その格好で外歩いて来たのか?」
「そデスよ〜」
「ばっ、バカ、そんなんで何かあったらどうすんだよ!!」
「コート着てますからぱっと見、解りませんよ。・・・先輩ってば、心配して・・・はうん」
「ち、違っ・・・コートの下がハダカ同然じゃ変質者としてしょっぴかれるぞ」
「むきゃ・・・ヒドいコト言いますね。。。普通の男の人だったら喜びマスよ」
「だからマズイんだろ!!・・・・はっ」

のだめはにやりと笑って、不二子ばりにオレに絡みついてきた。片足を巻き付けるようにオレの後ろへまわして・・・

「うふふ、素直にならないとダメよ〜ん。ルパ〜ン」
「誰がルパンだ!!!」
「ぎゃぼー!!」

いつもどおり、思いっきり飛ばしてやった。

「はぅぅ〜・・・こういうときは「ふ〜じ子ちゃ〜〜〜ん」デショ!応用の利かないルパンですね・・・」
「ンなもん利かんでいい!この変・・・・た・・・?」

カチャッ・・・。
のだめがオレに向かって何かを突きつけている・・・?鋭く光る瞳。その手にあるのは黒い、小さい・・・ピストル?!

「この手は使いたくなかったんデスけど、しょうがないデスね・・・・」
「お・・まえ、な・・・にを?」
「黙って。もし先輩がいうことを聞かない時は、こうするしかないって。
あんまり会えなくなって、のだめも変わったんです。欲しいモノの手に入れ方・・・」
「のだめ・・・・?」

引き金をが引く指が白んだ。

「しんいちくん、天国に、一緒にいきましょ・・・。ね?」

******

パァ〜〜ン!!!!

ひらひらと舞う、リボンと紙吹雪。

「わー、すごいキレイ〜。こんなちっちゃいのにいっぱい入るもんなんですね〜」
「・・・こんのやろ・・・・」
「先輩?汗かいてるんデスか?・・・・まさか、本気にしたわけじゃ・・・・」
「ふざけるな〜〜〜!!!!」

一瞬でもビビッた自分が、恥ずかしすぎる・・・・。

「ごめんナサイ・・・・。不二子といえばスカートの中には絶対ショットガン仕込んでるって、
ノエミ姉さんが借りてきてくれて。使ってみたかったんデス」
「あのなぁ・・・、仕込むって。スカートの中・・・?」
「ココですヨ〜。も、歩きづらくって」

ただでさえ短いタイトスカートをさらにめくってみせた。太ももに、ガンホルダー。

「しかもスカートがぴっちりだから、真横だと解っちゃうんで、こう、おしりの下あたりに銃が来るように・・・」
「おまえ、その探求心、ピアノに回せよ・・・」

それにしてもさっきから、ちらちらと。オレを挑発してんのか?

「さて、と。」
「?」

のだめはコートを引っかけるとすたすたと戸口に向かった。

「じゃ、のだめは帰ります。楽しいおうちデートでした。」
「・・・おまえな〜」
「ハイ?」
「さんざん人のことコケにしといて、このまま帰れると思ってンのか?」
「と、いいマスと?」
「・・・フロ入ってる?」
「は、ハイ。この格好する前に入ってきましたヨ。ガンホルダーとか借り物だし」
「偶然だな。オレも入ってきたんだ。帰り際テオに捕まって、ライブラリーの掃除手伝わされたせいで埃被ってな」
「えっと、それは、やっぱり・・・、ん、んん!」

******

(ほんとふざけたヤツ)

オレは思いっきり強引に唇を吸い上げた。肩口から手をいれてコートを脱がせながら
舌で無理矢理に歯列をなぞり、のだめの舌を絡め取る。
立ったままでもすぐ手の届くほど短いスカートの裾から左手をいれ、ヒモごと軽くひくと、
いとも簡単に、ぱさり、とショーツは落ちた。確かに、いつでもどこでも、サッと、だな。
右手でチューブトップの胸元をまさぐると、ノーブラなのか服を下げただけで豊かなバストが、ぷるり
と露わになった。パット内蔵ってやつか。

「・・・あの、しんいちくん・・・」
「───聞かない。黙れ」
「で、でんきを・・・」
「やだ。言うこと聞かない時は、こうするしかない」

ぐい、と左手でのだめの腰と太ももを引き上げ、背後から右手の人差し指を一番敏感な場所へ挿し入れた。
すると・・・、触れるだけのつもりが意外にも、ずぶり、と指が飲み込まれた。既に熱く、とろけ出さんばかりの感触。

「ひぁ、あん!!」

・・・あれ?そんなに力をいれたつもりはないのに。コイツ・・・。

「・・・のだめ、この格好で、何考えながらウチまで来た?」
「なに、て、あ、ん、だから、驚かせ、よぉ、って・・・」
「それだけですぐに、ここ、こんなになんないだろ?ほんとのコト、言えって」
「は、ん、ちょっと、だけ」
「ちょっと・・・なに・・・?」
「し、しんいちくんにっ、こういう、風に、されっ、たら、どうし・・・よって」
「想像してたんだ?・・・ずっと?」
「ば、バカ・・・、あぁっん」

高いヒールのおかげで、立ったままでも十分に指が届く。
手を離そうとしないオレの責め苦に耐えかねて、何度ものだめの腰が落ちそうになる。
それをこらえようと、のだめはオレの首根っこにしがみつく。

「お、願い、し、マス・・・のだめ、もう・・・」
「ん・・・」

******

オレはほとんど膝のたたないのだめを抱きかかえると、イスに座らせて。

「せんぱ・・・い・・・・?」

ストッキングが軽く食い込む太ももを、開かせた。

「い、いやぁ・・・」

羞恥に身悶えて、のだめが荒く息を吐く。
黒のガーターストッキングと捲れ上がった赤いタイトスカートに縁取られたそこは、ルームライトに照らされて
ぬらりと光っていた。

(こんなになってるくせに・・・)

「さっき帰ろうとしたのも・・・オレへの挑発?」

尋ねると同時に、ぬるついた脚の付け根に唇を這わせる。
「は、ふぁ・・・、ど、して、帰るのが、ちょ・・はつになる、んですか」

答える代わりに、ひくひくと蠢く入り口に舌を差し入れた。
膨らみきった蕾を指でなぶり、舌で内部を擦りあげる。

「・・・んぁっ・・・はっっ、あっいっ・・・ッやぁ、だめっ」

のだめの膝がビクンと跳ね上がり、腿がぎゅう、と縮こまる。宙を泳いだ足首を掴んで、オレは自分の肩に乗せた。

「あぅ、は、んん・・・」

のだめが閉じようとする脚、隠そうとする手、すべてが裏目となって、逆にオレを押さえ込む。
ふるふると揺れる膝、荒い編み目から透ける白い肌が、生足よりも数倍なまめかしい。
オレの頭を剥がそうとも押さえつけようともする仕草で豊かな胸はぎゅっと寄せ上げられ、
のだめの身体が反応するたびにプルンと揺れる。半開きの唇からは甘い喘ぎと共に、唾液がわずかに流れでている。
視覚から入る刺激だけでも、痛みと錯覚しそうなほどに、オレは身体の芯が熱くなるのを感じていた。

(計算無しで、コレかよ・・・。いや、このコスプレは、計算、だよな・・・)

ぴくぴくと痙攣するつま先から、かろうじて引っかかっていたピンヒールが揺れ落ちて、
オレのかかとにコツン、と当たった。

******

息も絶え絶えといった風情ののだめをおいて、オレはベルトを緩めて下着まで一度に脱いだ。
準備を終えて、今度はのだめを抱きかかえて自分がイスに腰をかける、
と同時に一気にのだめの中心を刺し貫いた。

「あ!!はぁぁん・・・!」
「く、はぁ・・・」

(き、キツ・・・)

十分に潤っていても、今日初めて侵入するのだめの中は、まだ十分に開ききってはいない。
最初は大きく、膣の内壁全体を擦りあげる様に、腰を打ちつける。
ガーターの留め具がひとつ弾けて、オレの太腿をたたいた。
急いているつもりはないのに、
またがった体勢が故にのだめの全体重が繋がっている部分にかかり、自然と最奥を突き上げてゆく。

「あっ、はっ、んん、あっ、あん、い、んっ、あぁっ、くっ」

のだめはオレの首筋をかじりつかんばかりに抱え込んで、その突き上げに耐えている。

(す・・ごい)

突いているのは自分なのに、絞り上げられるような締め付けに、逆に引っ張り上げられているような錯覚すら覚える。

(止、め、らんねぇ・・・)

少しでも意識を外に持っていこうと、自分の目前で揺さぶられている乳房を片手でわしづかみにして
固くしこった突起を口に含んだ。
それを吸い上げ、揉みしだき、甘噛みすることに集中しようとしたけれど・・・

「ひぁ、あ、あぁ、ふぁっ、きも、ち、イイ、あ、はぁんっ」

(ぐ・・・・さっきより、きつくっ、なっ・・・)

乳首への刺激はより、オレ自身への締め付けを厳しくしただけで。
ぐちゅっ、ちゃぷっ・・・不規則なリズムで結合部から繰り出される水音。
さっきまでは”繋がっている”と意識出来ていたはずなのに、
もう、どこからが自分の身体で、どこからがのだめの身体なのか解らなくなってきた・・・・・。

「・・・っ、あ、もぉ、あっん、い、イッちゃ、う、・・・んっあっ、ぁぁぁぁんん!!」
「くぅっ・・・!!!」

達した瞬間、視界がぼやけて意識が飛びかけた。一瞬のホワイトアウト。
首に回されたのだめの腕から、力が抜けていく。
オレ自体も力が入らなくて、危うくのだめを取り落としそうになった。
顔を覗くと、虚ろに開かれた瞳の端から涙が滲むのが見えた。
うっ、少しやりすぎたか。。

「のだめ・・・、大丈夫か?」

一度身体を離してイスに座らせてから
オレはのだめの脇と膝下に腕を差し入れて、そっと身体を抱え上げた。
きゅっ・・・・。のだめは恥ずかし気に目を伏せたまま、オレの首に腕を絡めて、囁いた。

「大丈夫、デス・・・。でも今度は、ちゃんとベッドで、してくださいネ・・・・」
「ん・・・」

(ちょっと、乱暴だったよな。。)

のだめを抱えたまま、オレはスイッチを肘で押して部屋の明かりを落とした。

******

翌日。

昨夜は遅くなりすぎてしまい、こうして早朝にのだめを送ることになった。
アパルトマンの入口でのだめを降ろす。

「ありがとうございマシタ」

部屋に戻ろうとするのだめに運転席の窓をあけて声をかけた。

「・・・のだめ。おまえ、あんな格好してもう外、出歩くなよ」
「えぇ?なんでデスかー?
結局最後までガーターベルトもストッキングも脱がさせてくれなかったくせに・・・」
「ばっ!バカ、声デカイ!!」
「大丈夫ですよ。日本語わかる人いまセンよ」
「・・・・・・するな、とは言ってない・・・」
「あ〜、なるほど。先輩の前だけで、ってコトですよね」
「・・・・」

のだめはにっこりと笑うと、運転席の窓枠に手をかけて、オレにキスをした。

「真一くん、昨日ちゃんと、天国、連れて行ってくれましたヨ・・・」

なんなんだよ。。ふざけてるかと思えば、こんな殺し文句を・・・。女って、みんなこうなのか・・・?
こいつが特別、変態なだけなのか?

「あ、そだ。今日先輩、リハありますよね。これ、ノエミ姉さんに返しておいてもらえますか。
昨日使った、ガンホルダーと、ショットガン・・・」
「こんなもん、オレが返せるか〜〜〜〜!!!」

投げ返したショットガンをのだめが拾っている間に、さっさと車を発進させた。
やっぱり、あいつが変態なだけだ。
リハの前にノエミと顔を合わせたけれど、その表情には何の変化もなく、
普通に「おはよう」と言われた。
のだめが「相談した」というほど、大したことは言ってないんだな。。ふぅ。

と思っていたら・・・

リハ後、帰り際。

「朝から思ってたけど、首の横んとこ、かなり赤くなってるよ。お疲れさま、"ルパン"」

背中をポン、と叩かれた。
解ってて無表情だったのか・・・?女って、女って・・・・?!

─── 千秋 真一 24歳。人生修行は、まだまだ始まったばかり。






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