千秋真一×野田恵
![]() 夕方。アパルトマンで夕食の準備をしながらオレは考えていた。 もう、チャレンジ4回か… 1度目はキスまで、2度目はキスと首筋まで、3度目はオレのシャツを脱がすところまで、4度目はお姫様抱っこまで… と、つい指折り数えてしまう。 進歩してるのか?そうでないのか? この調子だと最後までたどりつくのに、何年かかるんだ? オレから仕掛けるのはやめたほうがいいのか?がっつきすぎなのか? のだめが本当に本気になるまで自分からは何もしないほうが…いやでも… いつか、酔った時なんかに、のだめを無理矢理…なんて事をしでかしてしまいそうで自分が怖い。 どうすればいいんだ… 「ただいまデス〜!」 のだめが帰ってきた。 「ふお〜いい匂い!今日はポトフですか〜♪」 なぜかご機嫌ののだめは、キッチンに立つオレに後ろから抱き付いてきた。 「じゅうでーん♪」 ここまではいつものことだが、今日はちょっと違っていた。 後ろから抱きついたまま、オレのシャツのボタンに手をかけ、上から順にはずしていく。 「…っ?何…」 「センパイ…今までごめんなさい…今日こそ、のだめ頑張りマス!」 驚いて振りかえったのだめは、真っ赤な顔をしている。 「頑張るって…」 「のだめも、早くセンパイと一つになりたいんデス…!」 思わずごくりと唾を飲みこんでしまったが、ここでがっつくのもどうなのか… のだめを正面からぎゅっと抱きしめた。 ぽんぽん、と頭をたたく。 「ありがとう、嬉しいよ。でも、無理することはないから。とりあえず、メシを食おう」 今までの失敗を踏まえ、のだめが本当に心の準備ができているのか、メシを食いながら確認して、 お互い風呂に入ってからだな、と瞬時に頭で考えていた。 「いやデス…」 のだめは第3ボタンまではずしていたオレのシャツのボタンを、さらに下まではずしていく。 全部ボタンをはずし終えると、ベルトをはずし、シャツを全開にはだけさせた。 「今日は本当に本気デス!センパイの体を堪能します!」 「堪能って…」 キッチンのシンクに体を押しつけられて、立ったまま、上半身をあらわにされて、胸元にのだめが頬ずりしてきた。 「この前は…ここで気が遠くなっちゃったんデスよね…」 頬ずりしながら、オレの乳首をさわってくる。思わず、ビクっとしてしまった。 「センパイ、心臓がドクドクいってる?…いい匂い〜」 この前よりは、落ちついているようだな…でもまだ、わからないよな…どこですかされるか… のだめの髪をそっとなでてみる。のだめがゆっくりと顔を上げる。 「本当に、本気なのか…?」 「ハイ…」 そっと唇を重ねる。 「…?」 わずかに、酒の匂いがする…? 「なんか、酒くさい…。どこで飲んできた?今日は学校だろ?」 「帰りのスーパーで、新発売のワインの試飲をやってマシタ。一口だけ、飲んだんデスけど」 そーゆーことか… 酒に弱いのだめが、ちょっと飲んだゆえの大胆さだな。 嬉しいけど、このパターンだといいところで寝てしまうに違いない! 「…やっぱりメシにしよう。うん、それがいい」 のだめを引き剥がそうとしたが、のだめはがばっと抱き着いてきた。 足がもつれて二人でキッチンに倒れこんだ。 のだめはオレを押し倒すような体勢で、上から叫んだ。 「センパイ、また途中でのだめが寝ちゃうとか思ってマスね?大丈夫デス!本当に本気デス!」 涙目ののだめ。 「それもあるけど、おまえ少し酔ってるし…酒の勢いとかで初めてとか、オレはイヤだから… 大事にしたいんだ、おまえのことを…」 「センパイ…」 のだめがここまでオレのことを思ってくれているとわかっただけで十分だ。今日はここまででいい、オレは本当にそう思っていた。 「こんなの酔ったうちに入りません。ちゃんと意識はあります…」 のだめはまた唇を重ねてきた。 しばらく、お互いに唇の感触を味わう。 やばい、頭がしびれてきた…下半身も反応してきた… 頭上のシンクで、ポトフの鍋が吹きこぼれる音が聞こえた。やばい、火をつけっぱなしだった。 「ちょっとごめん…」 起き上がって火を止める。 ここでムードが途切れるかと思ったが、今日ののだめは違っていた。 ずっと着たままだったコートを脱いで、オレの腕をひっぱる。 「センパイ、ご飯は後でいいデス。ベッドへ行きましょう」 のだめがメシを後回しにするなんて本当に本気なのか… こうなったらやれるところまで…?もしかしたら本当に最後まで…? 案外、初めての日は突然訪れるものなのか…?頭の中がグルグルとパニックになりながらも寝室へ行く。 先にベッドに横になったのだめが、オレに腕を伸ばしてくる。 オレはさっきのだめに前をはだけさせられたシャツを脱ぎ捨てて、上半身は裸になった。 ベッドの上でぎゅっと抱き合う。 このへんから慣らしていかないと… しばらく抱き合っていると、のだめが自分でシャツワンピースのボタンをはずし始めた。 慌てて手を止める。 「オレに脱がせて…」 女に自分から脱がせては男がすたる。 上から順にゆっくりとボタンをはずしていく。心なしか指が震えてうまく動かない… 中学生か、オレは…? ボタンをはずし終え、前をはだけるとのだめのピンクのブラが見えた。 やっと、やっとここまで来た! 思わず顔がにやけそうになったが、表面上はこらえる。ここでムードを壊したら台無しだ。 のだめは真っ赤な顔をして、ぎゅっと目をつぶっている。 「うう…恥ずかしいデス…」 いいんだよな…?とそのまま続けて、のだめの背中に左手を添えてベッドから浮かせ、右手でブラの後ろのホックをはずす。 ふわ、っとブラの表面が浮きあがり、オレはのだめの胸のふくらみに手を伸ばした。 その時。 ピンポー−ン!! ピンポーン! チャイムが鳴った。はっと体を起こして起きあがるのだめ。 「のだめ、こっちー?頼まれた楽譜、帰りに買ってきたわよ〜」 ターニャだ。 まだ夕方だし、こんな時間からこんなことになっているとは思わなかったんだろうな… またか…とがっくり肩を下ろす。 おろおろするのだめ。 「センパイ、ごめんなさい…でも…でも、今夜は必ずヤリましょう!!」 「もういいよ…今夜じゃなくても…」 慌ててワンピースを着るのだめと、シャツを着るオレ。 せめてあと1分、いや10秒でも遅ければ、のだめの生乳を触れたのに…!!! 今度挑戦する時は絶対に誰も来ない、電話もかかってこない深夜にしようと心に誓った。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |