真冬の夜に
千秋真一×野田恵


やっぱり今、選んでしまおう。
そう決心するとベットから起き出して書斎へ続くドアを開けた。デスクスタンドをつけると、まだ開きっぱなしの楽譜が散乱したまま。休暇明けのレッスンで、マスター・ヨーダはまた大量の課題を出したのだ。提示された11曲のうち4曲選んで弾かなければいけない。

「うーん、最後の1曲はどれにしましょうかね…」

ピアノの譜面台に乗り切らなかった楽譜たちを前に再び考え込む。ヒーターは止めていないしネグリジェの上からガウンも羽織ったのに寒いと感じるのは、底冷えするパリの夜のせいだけではない。

「…先輩の、バカ」

つい言葉に出てしまう。原因はほんの些細なことなのだ。ウィーンで別れてからも毎日電話かメールをくれていたのに、今日はなかった。それだけのこと。
例の一件以来、離れていてもきちんとコミュニケーションしようというのが二人の暗黙の約束になっていた。だけど今日に限ってのだめからもアプローチしたのに、携帯の電源は切れたまま、メールの返事もない。

「…こんなの、なんてことないですヨ」

忙しいのも知っているし、もっとずっと長く放置されたこともあったのに、たった1日でこんな気持ちになるなんて。

「いけない、集中。集中しなきゃ」

慌てて近くにあった楽譜を手に取った。ラフマニノフの前奏曲、すぐに頭のなかにメロディが流れてきて自然に空いた右手がデスクの上で踊り出す。
Andanteで流れる峻厳で悲しい旋律…でもpppなのにどうしてfff で弾いてしまうの?感情をのせちゃダメなのに、でも止められない。

「よせよ、指を痛めるだろ」

不意に大きくて暖かい手が私の右手を包み込んだ。耳元で聴きたかった声がささやく。

「ふあっ、先輩!?どうして」
「マルレで緊急の理事会があって、1日だけ戻ってた。先刻やっと終わって
…でも朝にはミラノに戻らなきゃ」
「あっ、ご、ご苦労様です。そんな大変なのに寄ってくれたんですか」
「だって…」

椅子の背もたれ越しに抱きしめられた。

「連絡しなかったから、おまえが拗ねているかと思って」
「なっ、のだめはそんな心の狭い女じゃありませんよ」
「そうか?随分苛立っていたじゃないか」

そう言って耳たぶをあま噛みされる。

「ひっ、んっ、先輩いつからいたんですか?」
「先輩のバカ、からかな」

優しい手がいつの間にかガウンの紐をほどき、柔らかい舌が首筋を舐め上げる。

「あっ、こんなとこで…お顔を見せてくださいよ。それにだだいまのキスが、まだっ」
「やだよ」

少し意地悪な声で先輩が言った。

「バカはないだろ、バカは。だから…これはお仕置きだ」

不意に衣擦れがしたかと思うと、先輩は外したネクタイでのだめに
目隠しをした。
びっくりしたところを羽交い絞めにして立たせ、
ガウンを足元にすべり落とし、少し乱暴にデスクに押し倒す。

足の間に先輩が割り込んでくるのが分かった。ネグリジェの前がはだけられ、
右の乳房を強く掴まれ、左の乳首を唇で弄ばれる。太ももの裏を5本の指で
なぞられたかと思うと、足先を口に含み、指の間を舐めまわす…次にどうされ
てしまうか分からない恐怖感と期待感が、嬌声を大きくしてしまう。

「やっ…あんっ、ここじゃイヤです。お願い…ベットで」
「そうかな、おまえのここは嫌がってないと思うけど。ほら、よく見せて…」

先輩がのだめの脚を充分に広げ、そこに仄かに暖かさを感じたとき、全てを悟った。
デスクスタンドで照らして…!?

「いやあああああっ、!!やです!見ないでぇ〜」
「どうして?こんなにきれいで、俺を欲しがって溢れているのに」

先輩の指が蜜壷に深々と入り込み、蕾に蜜を運んでなで上げる。
繰り返されるたびにくちゅっ、くちゅりといやらしい音がして、
のだめの羞恥心と快感を高めてしまう。

「こんな、こんなことっ、先輩に会いたかったかったけど、こんなカタチは…」

気が遠くなりそうなのを堪えてやっとの思いで言うと、目隠しの下から涙が落ちた。

「…ごめん、悪かった」

意地悪をやめて、はじめて先輩は真正面からのだめを抱きしめてくれた。

「罪な女だよ、お前は。どんなに離れていても、何をしていても、お前のことを
忘れるなんてできない。誰かに奪われてやしないか心配で、つい乱暴にしてしまった。すまない」
「うん、わかったから、しんいちくん」

愛おしさがこみ上げてきて、のだめも腕をからめ、黒髪をそっとなでた。
今度は大切なものを扱うように、腕と背を支えてデスクから起こしてくれる。
ようやく、おかえりなさいのキス。優しく、お互いの唇をついばむように。そして徐々に貪るように…

「最後まで、しよ…」
「ん…」

のだめがデスクに手をつき、背後で先輩のベルトがカチャリと鳴った。
ネグリジェの裾をたくし上げられ、腰を支えられた。

「いくよ」

甘い声とともに、一瞬で体の中心まで貫かれ…

※※※※※※※※※※※※※※※※

ばさっ。

楽譜がいくつか落ちる音を聞いた数瞬の後、デスクに突っ伏している
のだということが理解できた。窓は薄明るく、長い夜も明けようとしている。
頬を伝った涙が前奏曲の譜面を濡らしていた。デスクスタンドは所在無く
投げ出された右手を照らしている。

「寒い…」

体を起こしガウンの前をかき合せた瞬間、下着を濡らし脚の間を伝う
体液を感じて、羞恥で頬が熱くなった。

「罪なのは…しんいちくんですよ」

そう呟くと、自分の体から出た色々なものを洗い流すためにバスルームに
向かった。






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