のだめはのだめ
千秋真一×野田恵


「は……あぁん……!」

入り込むその瞬間、のだめは鼻にかかった甘い声を上げた。
熱い内部も微かに震えて、柔らかい肉がみっちりとまとわりついてくる。

もう、痛がることはなくなった。
最近はむしろ、つながることを悦ぶ。
一つ溜息をついてからオレの首に腕を回し、ゆっくり瞬きをする。
その艶っぽさは、日常ののだめとはかけ離れすぎていて、オレはまた背筋に力を入れた。
……つながるとき、油断は禁物なのだ。

「しん、いち、くん……」
「ん……」

引き寄せられるままに唇を重ね、お互いの吐息を交換する。
くちゅ、くちゅ、と淫らな水音が自分たちの間でおこっているが、のだめはそれでも物足りないらしい。

「や……あっ、ん、もうっ」
「なに?」
「……いじわるデス……もっと」

声に出さずにのだめの口がものを言う。

……奥。もっと、奥まで。

そんな可愛らしいおねだりに、ぐんと血がたぎるのを感じた。
のだめの太ももを抱え、腰を前に突き出す。
奥まで入り込んでいくオレ自身を五感のすべてで感じようと、のだめが息をのんで止めるのがわかった。
つまった柔肉がうごめいて、温かく……いや、熱いくらいにオレのを包み込んでくれている。
吸い込まれる、なんてよく言うけど、本当にそんな感じだ。

「ふぁああ……ぁん」

のだめが、今日一番の甘く高い声を上げた。
一番奥へと、先端がたどり着いたからだ。
そのままのだめの体をぎゅっと抱きしめて、一つになった体を一緒に前後に揺する。

するとのだめは二、三度頭を振り、少し間をおいた後で短い悲鳴を上げ、のけぞった。
一緒にのだめの内部がきゅうっと締まる。

「……いった?」
「……」

のだめは恥ずかしそうな真っ赤な顔でなんとか息を整えようとしている。
逸らした目の端に、涙の粒が浮かんでいる。
そして、オレのことをせつなげにきゅんきゅんと抱きしめてくる。

隠そうとしたって無駄なのに。
つうか、なんで隠そうとするのだろう。
オレは、嬉しいと思っているのに。
敏感で、感受性の強い、素直な、そんなのだめが。

「のだめ……」
「は、あん……」

バラ色の頬のふくふくとした柔らかさを唇ではむと、のだめは少し笑った気がした。

キスをしながら、二人で揺れる。
引き抜きかけて、再びのだめの奥へ穿つ。
何度も、何度も。
その度に、温かいものがオレの脚の間を伝っていく。

初めての時、あんなに痛がったのに。
きつくてきちきちでかたかったのに。
つらそうに口を結んで、くぐもった声を更に押し殺していたのに。

「あっ、あっ、はぁん、しんいち、く、んっ」

痛い涙は悦びの涙に、つらさに耐える声は甘く高く変わった。

「はうっ、そこ……あぁ」
「ん、こう……?」
「あっ、あはあ、あぁーん……!」
「すげー、おまえ……」

先端に感じる「そこ」を丹念に突いてやると、のだめはとろけてしまいそうなほどの甘い声を放った。
そして、のだめの中はびくびくと震えるように痙攣しはじめた。
脚はオレのことにからみつき、自らも腰をくねらせる。

ふと、視界の端にクリスマスツリーが入った。
そろそろノエル。
そう、あれから一年。
……こんなに感じてくれるようになるなんて。

「しんいちくんっ、も……だめ、デス……っ」
「ん、オレも……もう……」
「は、う、あぁ……! あぁん!」

隙間がないくらいにぎゅっと抱きしめあって、密着した腰をお互いに更に押しつけあう。
きゅうんと一際きつくなるのだめの中で、オレものだめと共に上りつめた。
ふるふると体を戦慄かせてしがみつくのだめの、柔らかな体の温かさが胸まで入り込んでくるようだ。
愛しさでいっぱいで、たまらない気持ちになる。
去年よりも、もっと。
もっと、もっと……。


○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○

「はう……」
「おい、服着ろよ」
「着せてください」
「甘えるな」

ぶーぶー文句いいながらのだめは体を起こした。
が、動きはのろく、時々溜息を体から逃し、体を震わせる。

快感の溜まるところがあって、終わった後もそこから少しずつそれが流れ出してくる感じ。
……そんな風にこの間言っていたっけ。
さらっとそんなことを言う。
どんなに自分がエロティックなことを口にしているのか、自覚がないんだろう。
奥へ欲しいと口走ることも、きっとのだめは覚えていない。

それより、今隣で……口の周りを汚してアイスクリームを食べる女と、さっきまで
オレの腕の中で色っぽく喘いでいた女が、同一だとは……。

「むきゃ、なんですか?」
「……口の周り、汚れてる」
「ぎゃぼん」

……いや、やっぱり同じだ。
濡れた唇の輝き、指を舐める舌の赤さ。
オレの中で再び熱が起こる。そう、この感覚は、のだめしか起こせないもの。

「まだついてる」
「えー、あ、そんなとこにはこぼしてませ……んふっ」
「なあ、まだ……」
「えっちデスね、しんいちくんは……」

髪に指を入れられ、地肌をそっとなぞられるのを合図に、胸の間に顔を埋めた。
柔らかい感触がオレを包む。
ふわふわとして、すべすべでなんだかいいにおいがしている。

深呼吸をすると、上の方でのだめがくすっと笑うのが聞こえた。

「真一くん……好きデス」

……うん、やっぱりのだめはのだめ、どれものだめだ。






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