Rendez-Vous
千秋真一×野田恵


「千秋タスケテーーーーーー!!」

テオからの、何度目か分からない泣きの電話が入ったのは午後1時。
今マルレでは、次の客演指揮者とのリハが始まったばかりで、今回オレの出番はないが、
ライブラリや事務作業もテオ一人では大変だし、午後から事務所に行くつもりではいたが。

明日必要な楽譜を取りに行って欲しいと泣きつかれ、車で出かける事になった。
楽譜を受け取り、そのまま事務所に向かい、貰って来た楽譜を渡すと

「ありがとう!ありがとう千秋ーーー!!」

テオは泣きながら礼を言った…と思ったらコロっと表情を変え、またいつもの調子で
「じゃあ次はコレね!」と、仕事を押し付けてきた。
……もう慣れたからいいけど。

オケの雑務は多い。
黙々と作業を続けていたら、気が付けば午後9時を少し回ったところだった。
あとは…楽譜か。

ルー・マルレ・オーケストラの歴史とも言うべき楽譜達が大量に納められたライブラリに入る。
少し背筋が引き締まる、神聖な空気を感じる場所。
前回新しく使った譜面をひとつずつ手に取り、納めていく。
オレが振り、またひとつ新しい歴史を刻んだ楽譜を自分のこの手でライブラリへ納める。
何だか誇らしげな気持ちになり、知らず顔が綻ぶ。

年代順、インデックス順にとライブラリの整理を進めていると一枚のピアノ譜が目に入った。
どこからはみ出したのかと手に取るとそれは“ピアノソナタ<悲愴>”の楽譜だった。

「なんでオーケストラのライブラリにピアノソナタの楽譜が…」

恐らく誰かが紛れ込ませてしまったんだろう。
譜面に目を走らせると、旋律が頭の中で流れ出す。

「初めて聴いたあいつのピアノもこの曲だったな……」

今は離れて暮らすのだめ。
毎日は会えないけれど、時間が合えばお互いの部屋を行き来したり、外で待ち合わせて
食事に行ったりはしているが、ここ何日かはあいつも課題で忙しいらしく会えていない。

「あいつちゃんとメシ食ってんのかな…」

ふと気になり、ポケットから携帯を取り出してのだめの部屋にかけてみる。

rrrrrr..... rrrrrr..... rrrrrr..... rrrrrr..... rrrrrr.....

出ない?
時計を見ると、もうすぐ10時。
ターニャの部屋にでも行ってるのか?
今度は携帯へかける。

rrrrrr..... rrrrプチッ

『アロー』

のだめの能天気な声が聞こえ、ほっと笑みがこぼれる。

『アロー?』

再び呼びかけられ、慌てて返事する。

「ああオレ。今何しt」
『はぅん“オレ”…何度聞いてもしゅてきなひびきデス…』
「おい聞いてんのかこの変態」

相変わらずというか……

『聞いてマスよー。千秋先輩お仕事終わったんデスか?』

ブオォォォォ……

微かに、電話の向こうから車の音が聞こえた。

「おまえ今何してる?外か?」
『あ、ハイ。今ガコ帰りデス』
「はぁ!?今何時だと思ってんだよ危ねえだろ!」
『うきゅ…課題に夢中になってて…。気づいたら誰もいなくなってまシタ』
「一人なのか?」
『ハイ』

はぁ…頭痛がする。

「今、どこ」
『ほぇ?』
「今どこだって聞いてんの」
『えと、のだめは今ガコ出たばかりなのでまだガコの近くデスよ』

コンセルヴァトワールの近くか。ならまぁ安心だろう。

「オレ今日車だから、迎えに行ってやるから学校の中で待ってろ」
『ふぉぉー!千秋先輩が車でお迎え…しゅてきデスーはぅん…』
「近くに着いたらもう一回電話するから。学校から出るなよ」
『わかりました!待ってマス!むっきゃー!!』

小躍りしてるのだめが目に浮かび、行くのやめようかと思ったけど、まぁ、行こう。
残りの楽譜を置き、またしても居眠りしてたテオを尻目に事務所を飛び出した。
車に乗り込み、のだめの待つコンセルヴァトワールへ向かう。

道路は大した混雑もなく、思ったより早くコンセルヴァトワールに着いた。
パパッと軽くクラクションを鳴らすと、門の向こうからのだめが駆け寄って来る。

あ…見たことない服。ヨーコの新作か?
軽く羽織ったカーディガンに、デコルテラインが綺麗に見えるワンピース。
首筋に光る、控えめな赤いハートのネックレスとよく似合ってる。

「先輩お仕事お疲れさまデス!お迎えありがとございマス」

ぺこり。

のだめが小さくお辞儀をした時、胸元からピンクのブラがチラリと見え…。
久しぶりの素肌に、思わずドキッとしてしまう。

「ま、待たせて悪かったな。何もなかったか?」
「だいじょぶデスよ。のだめガコの中にいましたから」

助手席のドアを開け乗り込む時、ふわりとワンピースの裾が翻り、
内腿の白い素肌が一瞬露わになる。
首の広く開いた服から、うなじがいつもより眩しく目に飛び込んでくる。
何だか今日ののだめは、服のせいか妙に色気を放っているような…。

う、狼狽えるなオレ!
これはきっとヨーコの策略、陰謀に違いない!
こいつらは変態親子なんだーーー!!

なんとか気を静め、アパルトマンの方向に車を走らせ始める。

「聞いてください!今日のだめオクレル先生に誉められたんデス!」

のだめが目を輝かせて、体ごとこちらを向いて話し始めた。

「何弾いたんだ?」
「こないだ課題を10曲出されて、そのうち3曲選んで、今日のレッスンで弾く約束してて…」
「うん」
「でものだめ、頑張って全部弾いたんデス!」
「へぇ?」

……さっきから、微妙に前のめりで話すのだめの胸元に谷間がくっきり見えていて、
運転中だというのに、気になって目が泳いでしまう。

「そしたら先生が、最初はちょと呆れ顔だったデスけど
『ベーベちゃん頑張ったね、よくできました』って言ってくれたんデス!」
「へぇ、よかったじゃん」
「でもそのおかげでまた新しい課題が出て…それでこんな時間までピアノ弾いてたデスけど…」
「まぁそれは、仕方ないよな。嬉しかったんだろ?」

そんな理由なら、遅くまで学校にいた事を咎めたりはしない。
こいつの成長は、オレにとっても嬉しい。
オレの言葉を聞いてのだめもぱぁっと表情を明るくし、声を弾ませた。

「じゃあ先輩、ご褒美にじゅうでーん」

いきなりがばっ!と、腕に絡みついてきた。

「バ、バカ!運転中によせ!危ない!」

押し付けられた胸の感触に顔が赤くなるのを感じたがなんとか腕を振り払い、ハンドルを握り直す。
体の右側がじんわりと熱を帯びてくる。

シートに背中をうずめるようにいじけて口を尖らせ

「しんいちくんのけちー。カズオー」

とむくれるのだめがなんだかかわいくて…。
信号待ち、のだめの頭に手を乗せクルッとこちらを向かせると
尖ったままの口唇に、チュッと音を立ててキスを落とした。

「ご褒美」

目をパチパチとさせ、次第に赤くなっていくのだめの表情に
なんだか照れくさくなって前を向き直すとちょうど信号が変わり、また走り出す。

「先輩…」
「なんだよ」

ハンドルを回しながらちょっと素っ気なく答えると、のだめが

「足りません!」

と訴えてきた。

「はぁ!?」
「のだめ3日で10曲も弾けるようになったんデスよ!?全然足りません!」

フーン!と息も荒く熱弁するのだめに思わず吹き出してしまう。

「はははははっ」
「ムキャー!笑わないで下さいっ」

真っ赤になって反論するのだめは顔も耳も首筋まで赤く染めていて
さっきチラリと見えた景色を思い出してしまう。

オレは近くに公園があるのを思い出し、車の進む方向を変えた。

ポツポツと、雨が降り出してきた。
オレは公園脇の駐車場の一番奥に車を停め、ライトを消す。
街灯が僅かに差し込み、なんとか互いの表情は見て取れる。
首を傾げ、きょとんとこちらを見ているのだめの頬に指を這わせると
ピクッと反応して睫を震わせた。

「千秋先輩?」
「ご褒美、足りないんだろ?」

シートベルトを外してこちらを向かせ、震える瞼に口づける。
そして額に、髪を潜ってこめかみに、目尻に、赤く染まった頬に、鼻先にと、
小さなキスの雨を降らせていく。
ごく近くで視線が絡み合う。
うっとりと薄く開かれた口唇を指でなぞり、頬を包み込み、
その柔らかな感触を味わうように、ゆっくりと口唇を重ねた。
角度を変え、隙間から舌を滑り込ませ、より深くのだめを味わう。

「ん…」

のだめのくぐもった声が漏れ、オレは更に舌を絡めとる。
きつく吸い上げ、上顎を辿り、柔らかな下唇を甘噛みし、口唇で嬲る。
何度も何度も、互いの唾液を飲み干し合う。

「んん…」

髪を梳き耳に掛け、指で耳を弄り、また髪を掬いとって首筋に手を回し
更にのだめを引き寄せ、深く深く貪っていく。

「は…ぁ……」

のだめの手が、首筋を掴むオレの腕を伝い、上腕の袖をきゅっと握る。

「はぅ……」

そっと口唇を離すと、のだめはとろんとした目をしてオレを見つめ、熱い吐息と共に呟いた。

「しんいちくんも…」
「ん?」
「じゅうでん切れ、デスか?」

……そうかも知れない。
離れて暮らし、のだめの温度を直に感じられない日々。
熱く溶け合った後のひやりとした独りの部屋…。

オレは答える代わりに再び口づける。
雨足が強くなり、車の天井に当たる雨粒の音と混ざり合うかのように
互いに舌を絡め合う湿った音が車内に響く。

どれだけ貪るようにキスを交わしただろう。
気付けば外はどしゃ降りで、道行く人影もない。
オレはのだめの首筋に顔を埋め、小さなネックレスに口づけを落としながら
左手で膝から太腿をするすると撫で上げる。

「や…」

のだめが小さく抵抗の声を上げ、スカートの裾を押さえて阻もうとするが、オレは手を止めない。

「こんなとこで先輩…人が来ちゃいマスよ」
「誰もいないよ」

のだめの手を取り、指を絡ませてぎゅっと握りしめる。
首筋から顎のラインに舌を這わせ、耳たぶを口唇でやんわりと咥え、
わざと音を立てて耳への愛撫を繰り返し、右手で背中を抱き寄せる。

……ん?
カーディガン越しの背中に、なんだか異物感が…。
手を腰まで滑らせ、カーディガンの裾から手を忍び込ませると
ボ、ボタン!?しかも何だこの数!
背中に手を這わせるフリをしながら数えてみる。
1、2、3、4……10、11、12。
12個!!

のだめの実家に行った時の光景が頭をよぎる。

『千秋くん開けるのここね!ボタン8コもあって大変かけどがんばってネ』

つーか、更に増えてるじゃねえか!

はぁ……。
のだめの肩口に突っ伏してうなだれると、のだめが

「せ、先輩どしたんデスか?」

と尋ねてきた。

「おまえ…この服母親が作って送って来たのか?」
「そですよー、よく分かりましたネ?」

やっぱり。

不思議そうにオレを覗き込むのだめは、ここが外で、車の中という
普段とは違うシチュエーションに戸惑っているのか、何だか落ち着きがなく
足を摺り合わせてソワソワしているようだ。

「あの、しんいちくん…早く……」
「早く…続きしたい?」
「ぎゃぼっ!違いマス!その…帰りまショ?」
「だめ」

真っ赤になったのだめの訴えを退け、柔らかな胸に手を伸ばす。

「あっ」

カーディガンをはだけさせ、ワンピース越しに下から掬うように揉み上げ
中指で少し強く先端を弄るとそこは既に硬く尖っていて、
柔らかな乳房とは対照的な質感をオレの指に与えた。

「のだめ…キスで感じてたんだ?」
「…やっ…ん……」
「感じてたんだろ?」

耳元で低く囁き、息を吹きかけると、のだめは背筋をゾクゾクっと戦慄かせた。

「素直に言えよ、感じてましたって…」
「うゅ…感じ、て…あっ……」

言葉で虐めつつ、再び背中に手を回す。
胸への愛撫は続けたまま、背中のボタンをひとつずつ外していく。
ちくしょうヨーコめ!この挑戦受けて立つ!
ひとつ、ふたつ、みっつ……ボタンの間隔が狭く、もどかしい。

「のだめ、動くな」

いやいやと身を捩り抵抗するのだめを低い声で制すと、ぴくりと動きを止めた。
“耳元で低い声”に弱いんだよな、こいつ。
ようやく全てのボタンを外し終え、軽い達成感を覚えつつ、
カーディガンごとワンピースを腕から抜いてゆく。

「や…デス、せんぱ…」

のだめはまだ外が気になるらしく、きょろきょろしながら両手で胸を隠した。

「のだめこんなとこ誰かに見られたら恥ずかしくて死んじゃいマス……」
「大丈夫だから…オレだけ見てろ」

そう言って再び口づけながら、ブラのホックを外した。

ふるるっ

ブラを外す瞬間、のだめはいつも小さく身震いする。
締め付けから開放された喜びなのだろうか、肌は粟立ち、胸の頂は
ますます硬くなって、上を向く。

「あ、やん…」

その桜色の突起に舌を這わせると、のだめは可愛らしい声をあげ、目を伏せて俯く。
さすがに上半身裸で、本当に誰か来たら…と思い、素肌にカーディガンだけ着させてやる。

「んっ、あ、あ……」

右手で胸をやわやわと撫でながら、もう片方は舌と口唇で執拗に攻める。
のだめは太腿の上でぎゅっと手を握り締め、羞恥に耐えていた。
オレはのだめの手を取り、オレの首に巻きつけさせ、スカートの中に手を潜らせる。

「やっ…ダメ…」

まだ集中してないのか。

「オレだけ見てろって言っただろ…」

そう、もっと、オレだけを……。

もう何度目かわからない口づけを交わしながら、膝の下に手を入れて、シートに上げさせる。
下着の上からそっと触れると、そこは熱く潤んでオレを誘っているようだった。
蝶結びにされた下着の紐をするりと解き、中心の最も熱く潤んだ茂みを目指す。

「ふゃっ」

口づけたまま、のだめの上げた声はオレの中に響く。

「ん、んんっ…」

辿り着いたそこはいつもよりも蜜が溢れていて、そっと這わせたオレの指を絡め取っていく。
たっぷりと蜜を滴らせた指先で花弁と、その上にある小さな蕾とを交互に刺激を与え
じっくりと溶かしていった。

しかし、のだめが身を捩らせる度、指がそこから離れてしまう。
二人を隔てるシートの間にはギアもあり、少し遠い距離がもどかしくて、
いっそう深くのだめの中に入って行きたいという欲望がオレの頭を支配する。
もうブレーキは効かない。

「のだめ……」
「はぁ…ハイ……」

呼吸も荒く、上気したのだめの表情に、オレも自身が昂ぶるのを感じた。

「後ろ、行こう」

シートを倒し、先にオレが後部座席に移り、手を差し出す。

「来いよ」

のだめはふらりと腰を上げ、這いずるようにオレの膝に手を置いた。
引きずり上げてのだめを膝の上に跨らせる形にする。

「千秋先輩…のだめこのカッコ恥ずかしいデス」

素肌にカーディガン、ワンピースは腰までずり下がり、スカートの下はノーパン。
確かにとんでもない格好だけど。

「オレしか見てないから…もっと見せて」

頬にかかった髪をどかし、愛しさを伝えるキスを与えると、
今度はのだめからキスを落としてきた。
そしてカチャカチャとベルトを外し、ファスナーを下ろすと、
すでに張り詰めていたオレ自身を下着の上から撫でてきた。

「のだめだけ…ズルイです。しんいちくんも脱いで……」

さっきまでの恥じらいが嘘のように積極的なのだめの指に反応して、思わず声があがる。

「は……」
「しんいちくん…大好きデス……」

口づけ、舌を出して求め合いながら、のだめはズボンを脱がせようと手を差し込んできた。
腰を浮かせてその動きを手伝うと、中から熱を持った自身が跳ね上がり、のだめの秘部に触れる。

「ひゃっ…んっ、ああぁっ」

敏感になっているそこに再び指を這わせると、のだめは待ち構えていたかのように
嬌声をあげ、もたれ掛かってくる。
その柔らかな感触を直に味わいたくて、オレも上着を脱ぎ、シャツの前をはだけさせた。
あたたかくて、やわらかい胸が、吸い付くように胸板に押し付けられる。

「や、そこ…だめ…だめぇっ」

のだめの蜜壷は熱く蕩け、オレの指を飲み込む。
親指で蕾をぐりぐりと捏ねるといっそう激しくオレの指を締め付ける。

「あ…しんい、ち、く……もぅ、あ、あっあっあぁっあぁっ」

オレは指の動きを早め、赤々と腫れ上がった蕾を執拗に攻め立てる。
のだめは、昂ぶりながらもオレの熱くなったモノを手で扱き続けるが

「あぁぁーーーー…っ」

悲鳴と共にその動きが止まり、全身をビクビクと戦慄かせ、くたりと身を崩す。

のだめがイッたのを確認し、指をずるりと抜き取る。
そしてさっき脱いだ上着から財布を出し、中からゴムを取り出す。
以前財布に入れたものの使うとは思っていなかったが…入れておいてよかった。
素早く装着し、のだめの腰を掴んで少し浮かせる。

「おいで」

のだめの蜜壷に昂ぶるオレの先端を擦りつけ、入り口に促す。
徐々に腰を落とさせると、のだめのそこはぐいぐいと奥へ誘い込んでくる。
熱さがたまらない……。

「はぅん…」

根元までオレを飲み込むと、のだめはうっとりため息をついた。
シートの背もたれに手を掛け背を仰け反らせると、オレの顔は柔らかな谷間に埋め尽くされる。
乳房を口に含み、舌でねっとりと嘗め上げるとまた肌が粟立った。

外はまだ激しい雨。
窓を叩く雨の音以外、周りの音は聞こえてこない。
車のガラスはすっかり曇ってしまい、規則的にキシキシとサスペンションが鳴る。
脇から腕を通してのだめの肩を抱え、下から思い切り突き上げを繰り返す。
夢中になって胸の頂を舌で転がし甘噛みすると、のだめの中はきゅぅっと締めつけ、
追い詰めているはずが、オレの方が追い詰められていく。
繋がりあった部分が奏でる卑猥な水音も、のだめの甘い叫びも、汗の滲んだ肌の感触も
汗の匂いもなにもかも全てがオレを快楽の渦に引きずり込んでいく。

狭い車内の行為では体位も変えられず、ずっと座位のままで
抱きしめたまま突き上げたり、かき混ぜるように腰を回す事くらいしか出来ないが、
本当に誰かに見られていたら…という、その背徳感からか
いつもとは違う興奮をオレに与える。

のだめも自ら腰をくねらせ、快感を貪りつくしている。

「はぁぁんっ」

腰が落ちてくるのと同時に突き上げると、一番奥の壁にぶつかり、
のだめは一際高い声を上げ、目に涙を浮かべる。
恍惚とした表情でオレを見つめ、頭をかき抱き、もっともっとと、うわ言のように呟く。
繋がりに手を伸ばし、はちきれんばかりに存在を主張する肉芽を強く擦り上げる。

「はっ…だ…もぉ……こわっ、こわれ…ちゃ……し、いち…く……やぁっあっあっ」

オレも限界が迫ってきている。

「そろそろ、いくぞ……のだめ…」
「あんっ、あっ、ひゃう…あぁ、あっあっ」

オレの声すら届かない程、快感に翻弄され乱れまくるのだめ。
もしかしたらこの状況にこいつも興奮しているのだろうか…。

「のだめ…のだめ……っ」
「ひぁ………ぁぁっっ」

オレの首にしがみつき、全身をビクビクと退け反らせ、のだめは白い白い高みへと昇りつめていった。
襞が奥へ奥へと誘う強い締め付けに耐えきれず、オレも熱い迸りを放った。

*******

一瞬意識を飛ばし、虚ろな表情でしなだれかかるのだめをぎゅっと抱きしめる。
のだめの中はまだビクビクと震え、その余韻を味わうように、浅く腰を上下させる。

「のだめ…大丈夫か?」

まだ焦点の定まらない目で、オレの肩に頭を預けはぁはぁと呼吸を整えて
背中に回した腕にキュッと力を込め、大きく息をついた。

「だいじょ…ぶ、デス」

切れ切れに言葉を発するのが精一杯な様子ののだめの髪に顔を埋め

「ご褒美…足りた?」

と囁いた。

のだめの体を離し、汗をシャツで拭ってやると、ようやく落ち着いた顔をして

「カズオ様にはかないまセン」

と上目遣いでぽつりと呟いた。

「当然だ」

まだ繋がったまま、額をくっつけてクスクスと笑い合った。

体を起こさせてのだめの中から抜き取り、ラゲッジに入れてあったティッシュで始末する。
まだ先程の熱が残るのだめの茂みも、丁寧に拭いてやる。
のだめは助手席からブラを拾い上げて、いそいそと身を整え出す。
腰に溜まったワンピースに腕を通すと、背中のボタンと格闘し始めた。

「後ろ向いてみろ」

オレが先程戦ったボタンを、今度は下から止めていってやると
のだめが「ぷぷぷっ」と笑い出した。

「なんだよ」

照れ隠しにぶっきらぼうに聞くと、のだめはまだ笑いながら答えた。

「だってしんいちくん、このボタン全部外しちゃうんデスもん〜」

……は?

ボタンを閉める手が止まる。
のだめは後ろを振り返り、イタズラを思いついた子供のような顔で続けた。

「この服、首がおっきく開いてるからボタン外さなくても脱げるんデスよ?」

……なんだと?

愕然としていると、更に追い討ちをかけられた。

「でもヨーコは手紙で、千秋くんは外しちゃうかもネ!って言ってたデス。ヨーコ神通力!」

……あの達成感も、お見通しだった…のか?
やはり陰謀だったのか!?
やられた……!!

まんまと策にはまってしまった己を恥じ、わなわなと怒りがこみ上げる。
するとのだめは満面の笑みで

「そだ!ヨーコの言ってた通りだって報告しなきゃデスね!」

と、さも素晴らしい思いつきのように提案してきやがった。
オレはティッシュの箱をのだめに投げつけ怒りをぶつけた。

「んな報告するなーーーー!!」
「ぎゃぼーーーー!!」


車の外ではまだ雨が降り続いていて、オレの代わりに泣いてくれているようだった。






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